2009年11月07日

ソウ6

秋来たりなば「ソウ」遠からじ。今や季節行事的なムードが漂う人気シリーズ第6弾だ。2004年に誕生して以来、ソリッド・シチュエーション・ホラーというジャンルを決定付けたこのシリーズ、いいかげんに終わってくれよ…という願いを抱きつつ、完全にクセになっているファンも多いだろう。死のゲームを強要する殺人鬼ジグソウ亡き後、彼の遺志を継ぐ者が新たなゲームを仕掛ける。今回のターゲットは保険会社の社員たち。重病で高額の医療費支払いに苦しむ加入者を非情な態度で切り捨てる彼らは、強制的に死のゲームの参加者となる。一方、前作で生還したホフマン刑事への疑念を抱くエリクソンFBI捜査官は、真相を調べ始める。

生を軽んじる者に更正するチャンスを与えるという、ムチャクチャにして深淵なジグソウの精神は、彼が死んでも生き続ける。「ソウ」シリーズはとりあえず3で完結していたのだが、なぜか続いてしまい、本作は2つ目の三部作の最終章という位置付けだ。例によって、すさまじい残酷描写が炸裂するオープニングに絶句するが、今回は保険会社と医療制度を取り上げるなど、社会性が感じられる。一方で、ジグソウが元妻のジルに残した遺品の箱の中身が明らかに。ゲームを続けていたのはホフマン刑事であることは既に承知だが、真の後継者は誰であるべきかという謎に答えていく。このシリーズの最新作が出るたびに同じことを言っているが、元祖「ソウ」は本当に面白かった。だがその後の続編は、凝った残酷描写を競うような安易な内容でがっかりである。ただ、今回のストーリーには“選択”というキーワードが見えたことと、終盤で、思いがけない人間関係があらわになるのが見所。この大掛かりでややこしい装置をいったいいつ作ったのか?といういつもの疑問はさておき、シリーズのファンの楽しみのひとつである殺人マシーンの中では、回転木馬の仕掛けがビジュアル的に冴えていた。
Saw VI【40点】
(原題「Saw VI」)
(アメリカ/ケヴィン・グルタート監督/コスタス・マンディラー、マーク・ロルストン、トビン・ベル、他)
(集大成度:★★★☆☆)

Saw VI


人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)



cinemassimo at 00:05|PermalinkComments(0)TrackBack(2)この記事をクリップ!プチレビュー09下旬 
2009年11月06日

SOUL RED 松田優作

11月6日は、40歳の若さでガンのため急逝した伝説の映画俳優・松田優作の命日だ。本作は、彼の出演作の映像と、彼を知る映画関係者、共演者、さらに龍平と翔太の二人の息子のインタビューなどでつづる、最初で最後の公式ドキュメンタリー映画とされている。1949年生まれの松田優作は、TVドラマ「太陽にほえろ!」でスターの仲間入りを果たす。多くの名監督との仕事で秀作・話題作に出演しながら、映画のみのならずTVドラマや音楽活動、監督業でも才能を発揮した。熱い魂を持った一人の俳優の、演技への情熱を浮き彫りにする。

あまりに早すぎたその死ゆえに伝説となった松田優作だが、改めて彼の出演作をたどってみると、幅広い役柄で違った顔を見せながらも、常に“松田優作”その人であり続けたのだと分かる。映画に対するこだわりはハンパではなく、周囲は時に圧倒されたようだが、彼にひきずられるように70年代から80年代の名作が生まれているのが興味深い。この人を語るとき、初期のハードボイルド映画群がすぐに思い浮かぶが、個人的には、鈴木清純監督の「陽炎座」の優雅な狂気を感じさせる演技が印象深い。貴重なのは、ハリウッド・デビューとなる映画「ブラック・レイン」のオーディションの映像。アンディ・ガルシアが、その時米国では無名の松田優作を、高く評価するコメントを出しているのは、多少のリップサービスもあったにせよ、真摯なものに聞こえた。日本の枠だけに収まらないスケールを持った俳優だったのだと改めて思う。映画の総合プロデューサーは妻の松田美由紀だが、この人のインタビューがないのが残念。家庭人としての松田優作を知る彼女の声を聞きたかった。
松田優作

公式サイト


【65点】
(日本/御法川修監督/松田優作、他)
(秘蔵映像度:★★★★★)

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)



cinemassimo at 12:25|PermalinkComments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!プチレビュー09下旬 

映画レビュー「スペル」

スペル公式サイト
◆プチレビュー◆
不気味な老婆に呪いをかけられたヒロインの壮絶な運命に絶句。怖くて笑えるお得な1本だ。 【70点】

 銀行のローンデスクで働くクリスティンは、仕事ができることを上司にアピールするため、顧客の老婆のローン延長願いをきっぱりと断った。ジプシー風のその老婆は逆恨みし、クリスティンに不気味な言葉で呪いをかける…。

 呪い。この言葉からは、いまさら感とやっぱり感の二つが同時に漂ってくる。ホラー映画の古典的アイテム“呪い”をモチーフに、問答無用の恐怖を活写するのが本作「スペル」だ。監督のサム・ライミは、今では大ヒット作「スパイダーマン」で知られるが、彼の原点は「死霊のはらわた」。泣く子も黙るホラーの巨匠が、長年あたためた企画をついに映画化しただけあって、格が違う。

 そもそも呪いをかけられるヒロインにはほとんど非はない。薄汚い老婆はローンの延長願いも3回目で、銀行側がそれを断るのは正当なものなのだ。返済のあてもないのに、ひざまずいて懇願するのも芝居がかっている。案の定、願いを断られると「自分に恥をかかせた」と態度を豹変。いわゆる逆ギレだ。しかし老婆に理屈は通用しない。ここから物語はがぜん活気づく。

 まずは呪いをかけるところから。夜の駐車場で待ち伏せした老婆と、クリスティンが格闘するシーンだが、まるでアクション映画並みの激しさで驚かせる。見かけによらず体力がある老婆が入れ歯を吹き飛ばして闘えば、若いクリスティンはホチキスなどの地味な文房具で懸命に応戦。怖さを通り越して笑いが出る。ありえない、というより、あってはならない強烈な老婆の気合は、呪いをかけなくても十分に怖い。だが、謎の呪縛は確かにかけられた。

 その呪いは3日間続いた後に、ターゲットの魂もろとも地獄へ連れ去るというすさまじいものだ。おどろおどろしい幻覚と不気味な幻聴が炸裂する。たまらず謝りに行けば老婆は既に死んでいたという想定外の状況も、ショッキングだ。すがる思いで教えを請うた占い師に、強力な呪いがかかっていると告げられ、必死でそれを解こうとするが、タイムリミットは刻々と迫る。本当の敵は老婆ではなく、人食い鬼に変身する女神ラミアなのだが、老婆に扮するローナ・レイヴァーのキレッぷりの前では、ギリシャの女神も影が薄い。

 元来、ホラー映画というのは、いい意味での悪趣味が必要不可欠というのが私の持論だ。本作は、この条件を見事に満たしている。目が飛び出し、口に物差しが突き刺さるなど、笑いを喚起するショック場面のつるべ打ちで、ファンキーなムードを醸しだすかと思えば、古びた屋敷での悪魔祓いや深夜の墓地での格闘と、クラシックな仕掛けも忘れない。追いつめられながらもけなげに闘うヒロインの心理も丁寧だ。単純な血しぶきに頼らない、創意工夫に満ちた恐怖描写は、ホラーの名手の真骨頂である。何よりも、小さな不親切を発端に、破壊の限りを尽くす呪いのパワーが圧巻だ。そして迎えるクライマックス、前半にさりげなく登場する、ある小道具を使うそのオチは、ホラーの収まりどころを心得ていて、思わず「上手い!」と膝を打つ。ラミアの魔力と老婆の執念を見せつけるラストは、華麗なるフィナーレ。さすがはサム・ライミと唸った。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)執拗度:★★★★★

□2009年 アメリカ映画 原題「DRAG ME TO HELL」
□監督:サム・ライミ
□出演:アリソン・ローマン、ジャスティン・ロング、アドリアナ・バラーザ、他

映画レビュー用BRバナー
←応援ポチ、よろしくお願いします!



cinemassimo at 00:02|PermalinkComments(2)TrackBack(6)この記事をクリップ!映画レビュー2009 
2009年11月05日

ホワイトアウト

南極を舞台にした映画はいくつかあるが、この地でのサスペンスは珍しい。極寒の地・南極大陸。米国連邦保安官キャリーは、あと3日で2年の任務を終えるはずだった。しかしキャンプから離れた場所で他殺死体が見つかる。捜査を開始した彼女は、長い間氷の下に埋もれていた重大な秘密を知ることに。南極で初めて起こった殺人事件の謎を追うキャリーに危険が迫る。

ホワイトアウトとは、南極特有の自然現象で地球上で最も危険と言われる吹雪のことだ。純白の美しい光景は、本格的な冬が到来すると、狂ったような白い地獄へと豹変する。襲いかかる謎の犯人から逃げるため、ほんの一瞬の間、手袋なしで外に出たため、たちまち凍傷で指を失うという容赦ない環境は、頂点に達した寒さとはもはや凶器なのだと分かる。その凍傷が犯人探しのヒントになるという設定はなかなか上手い。外は、ロープをつたわなければ歩くことさえできず、もし強風にさらわれれば命を失う。すぐ目の前に殺人者がいるのに猛吹雪でその姿が見えないという状況は緊張感たっぷりだ。ヒロインは過去に同僚に裏切られたことでトラウマを抱えているが、人間同士の不信感など瞬時に吹き飛ばしてしまう自然の力が彼女を逆に強くした。事件の底辺には、人間の欲深い業(ごう)があるが、破壊的な寒さが支配する南極は、そんな欲さえ存在できないのだ。ミステリーとしては平凡だし、犯人の動機も弱い。だが、極限状態の人間の本能を、獰猛な自然とからめて描いたことが、作品の個性になった。
Whiteout【55点】
(原題「WHITEOUT」)
(アメリカ/ドミニク・セナ監督/ケイト・ベッキンセール、ガブリエル・マクト、トム・スケリット、他)
(人間不信度:★★★★☆)

Whiteout


人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)



cinemassimo at 00:03|PermalinkComments(0)TrackBack(1)この記事をクリップ!プチレビュー09下旬 
2009年11月04日

サイドウェイズ

ハリウッド映画の日本版リメイクという珍しいパターンで、オリジナルはアレクサンダー・ペイン監督の「サイドウェイ」だ。物語の舞台は同じカリフォルニア、登場人物を日本人の男女4人に置換え、さえない40代の男二人が人生を見つめなおしていく様子を描く。俳優は日本人だが、監督やスタッフは海外という点は作り手のこだわりなのだろう。売れない脚本家の道雄は、米国留学時代の親友でアメリカ在住の大介の結婚式に出席するため、LAを訪れる。式を前に、二人はワインの産地ナパ・バレーへドライブ旅行に出かけるが、そこで道雄はかつての片思いの相手・麻有子と出会い心ときめく。一方、大介は麻有子の友人のミナに惹かれる。

オリジナルの「サイドウェイ」は、小品ながら、オスカーにもノミネートされた秀作だ。物語の骨格は同じだが、登場人物の背景を日本人向けに変えるなど細かい変更がなされている。本作は例えるならば、“お箸で食べる西洋料理”という感じだ。アラフォー男性が結婚や仕事に対し、ジタバタする様は可愛いやら可笑しいやら。ユーモアとペーソスを巧みに取り入れ、大人になりきれない大人の成長物語としてよく出来ている。道雄は麻有子の元・家庭教師という設定だが、離婚を経験し、外国でキバッて生きている麻有子の方がずっと大人びている。だがそんな彼女も肩の力を抜きたい瞬間があって…という描写がリアルだ。オリジナルが大好きだった私としては、手放しで褒める気にはなれないのだが、人生を前向きに進もうとするあたたかい物語や、みずみずしいナパ・バレーの美しい映像はオリジナル同様に悪くない。ジェイク・シマブクロの音楽も耳に心地よく、後味さわやかな一杯のワインのような作品になった。
サイドウェイズ・オリジナル・サウンドトラック【65点】
(日本/チェリン・グラック監督/小日向文世、生瀬勝久、菊地凛子、鈴木京香、他)
(前向き度:★★★★☆)

サイドウェイズ・オリジナル・サウンドトラック



人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)



cinemassimo at 00:06|PermalinkComments(2)TrackBack(6)この記事をクリップ!プチレビュー09下旬 
2009年11月03日

ジェイン・オースティン 秘められた恋

「高慢と偏見」や「エマ」など、著作の映画化も多い英国の女流作家ジェイン・オースティン。今なお人気の作家だが、封建的な環境で結婚をハッピーエンドととらえる彼女の物語は、時に古臭く思えたものだ。だが本作では、そんなジェイン本人の、生涯唯一の激しい恋の顛末を描いて、思いがけず引き込まれる。1795年の英国。女性の地位は低く、恋愛結婚は愚かなことで、裕福な相手との結婚でなければ不幸せと思われていた時代。オースティン家の次女で小説家を目指すジェインは、両親が望む地元の名士との結婚をしぶしぶ検討していたが、ロンドンから来た法律を学ぶアイルランド人青年トム・ルフロイと出会い、運命的な恋に落ちる。

アン・ハサウェイという女優は、見るたびに上手くなる。最初は、たぬき顔の美人でロマ・コメが得意の女優という程度の、薄い印象だったが、はつらつとした雰囲気はそのままに、陰影のある演技を披露するようになった。この物語のハサウェイも、実在の作家ジェインの一世一代の恋と、当時のしきたりや価値観を尊重しながらも、新しい時代を生きていこうと奮闘する、知的で意志の強い女性を演じきり、感動を呼ぶ。自由に生きたくても社会がそれを阻む時代の恋は、情熱と分別の折り合いが難しい。ジェームズ・マカヴォイ演じる青年トムも、古い慣習や貧しさゆえにしばられるキャラだが、一見遊び人風だが実は…という興味深い人物なのだ。美しい衣装だけが見所のような、底の浅いコスチューム劇かと思っていたら、とんでもない。映画は、残された資料をもとに史実を検証しつつ、空白の部分を豊かに想像して、魅力的なエピソードで構成されている。この秘めた恋物語を見れば、お堅い中年の独身女性との印象のオースティンと、彼女の小説への見方が変わりそうだ。もちろん良い方向に、である。
Becoming Jane [Original Score]【70点】
(原題「Becoming Jane」)
(イギリス/ジュリアン・ジャロルド監督/アン・ハサウェイ、ジェームズ・マカヴォイ、ジュリー・ウォルターズ、他)
(自立心度:★★★★★)

Becoming Jane [Original Score]

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)



cinemassimo at 00:04|PermalinkComments(0)TrackBack(1)この記事をクリップ!プチレビュー09下旬 
2009年11月02日

わたし出すわ

何だかドキッとする響きのタイトルだが、出そうとしているものはお金だ。この映画には、本来、お金というのは何かの目的のためのツールであるべきなのに、いつしかお金そのものが目的になっている世の中への素朴な疑問がある。と同時に、目的のための大金を手にしたら、それがその人の幸せにつながるのかとも問いかける。東京から故郷の函館に突然もどってきた摩耶は、再会した高校時代の同級生たちの夢や希望を叶えるために、大金を差し出す。陸上選手としての再起、世界の市電めぐり、魚類の研究資金などの夢はかなうのか。そして、大金を提供する摩耶の真意とは。

「(ハル)」以来13年ぶりのオリジナル脚本となる本作には、森田芳光監督の原点ともいえる、間(マ)の魅力が満載だ。森田監督の最高傑作は「家族ゲーム」だと疑わないが、お金の使い方を描く本作は、あえて説明的な要素を省いた演出や、謎めいた主人公のクールなたたずまいなど、共通項が多い。お金の“量と質”とは、これまた現実的かつ哲学的なテーマだが、語り口はあくまでもサラリとしたものだ。どうやって稼いだかもわからない大金をポンと出されて、友人たちがあっさり受け取る様子に唖然とするが、本題はそこではなく、摩耶が“投資”したその大金が、手にした者の人生をどう変えるかに真意がある。もちろん、お金イコール幸福と安直につながるはずはなく、結果は概ね予想はつくのだが。それでも冷静な結論に達するものやビックリの秘密を隠したものがいて、終盤は見所が多い。人を幸せにしようとするヒロインの行為も、ことお金となると単純な善意とはなりえないのだ。地味な服装で、ちっとも幸福そうに見えない摩耶が一人でしりとりをする場面が印象的。そんな寂しげな彼女に、最後に訪れる奇跡には、人生に必要な信念や希望が感じられ、幸せの意味が少し分かった気がしてくる。
わたし出すわ

公式サイト


【70点】
(日本/森田芳光監督/小雪、黒谷友香、井坂俊哉、他)
(アイロニー度:★★★★☆)

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)



cinemassimo at 00:12|PermalinkComments(0)TrackBack(6)この記事をクリップ!プチレビュー09下旬 
2009年11月01日

風が強く吹いている

風を感じるさわやかな映画だ。駅伝に賭ける若者たちの絆を、けれん味のない演出で描いて感動を呼ぶ。事件を起こして競技から遠ざかった天才走者カケルと、故障によりエリート・ランナーの道を諦めたハイジ。二人の若者が出会い、彼らの才能に引っ張られる形で、寄せ集めに等しい大学陸上部のメンバーたちが、無謀ともいえる箱根駅伝に挑戦する物語である。

個性的な10人がつなぐタスキは、自分を待つ仲間に手渡した時、確かな“生きる手応え”となる。野球、水泳(飛び込み)、ボクシングと、スポーツ映画の常連になった林遣都がカケルを、生真面目だが熱い思いを胸に秘めるキャラがぴったりの小出恵介がハイジを演じて、キャスティングは適材適所だ。走るというと単調な動きに思えるが、陸上競技を描いた映画には意外にも秀作が多い。「炎のランナー」や「長距離ランナーの孤独」、廣木隆一監督の「800 TWO LAP RUNNERS」も秀作だ。本作では、区間賞や繰り上げスタートなどの駅伝独特のルールを巧みに盛り込み、緊張感が味わえる。走者のモチベーションも、ライバルとの確執や過去の自分との戦い、好きな女の子への思いなどメリハリがあって上手い。さらに、沿道の景色や起伏のあるコースの映像も魅力だ。違うタイプの心の傷を抱えた部員それぞれの長所を活かして戦術を練る様子は、個人ではなくチームで戦う駅伝競技の素晴らしさを伝えてくれる。「長距離選手に必要なもの。それは速さではなく強さだ」という言葉は、この作品を象徴している。伝説のOBである監督の存在感が薄いのは不満だが、共通の夢を目指して成長する青春映画の後味はさわやかだ。冒頭とラストに映る空と、走るシルエットの美しさが忘れられない。
風が強く吹いている (新潮文庫 み 34-8)【75点】
(日本/大森寿美男監督/小出恵介、林遣都、中村優一、他)
(さわやか度:★★★★★)


風が強く吹いている (新潮文庫 み 34-8)


人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)



cinemassimo at 00:09|PermalinkComments(2)TrackBack(8)この記事をクリップ!プチレビュー09下旬 
2009年10月31日

試写室だより 09.10月下旬

試写室だより

今日はハロウィーン。街中には仮装した人たちの姿もチラホラ。夜になるともっと増えるんでしょうね。でも、映画的には季節は先取りが基本。試写でも、クリスマス映画やお正月映画が続々と登場してきています。

最近見た主な映画は以下。
「パブリック・エネミーズ」「ヴィクトリア女王 世紀の恋」「インフォーマント!」
「Disney's クリスマス・キャロル」「天使の恋」「なくもんか」「よなよなペンギン」などなど。

ミーシャ/ホロコーストと白い狼 [DVD]ミーシャ/ホロコーストと白い狼 [DVD]
見逃していた、仏・ベルギー・独合作映画「ミーシャ ホロコーストと白い狼」をレンタルDVDで観賞しました。原作は大ベストセラー小説で「少女ミーシャの旅」といいます。
それはいいとして…、DVD化された途端に、この映画のタイトルが「狼少女ミーシャ 虐殺の戦場、3000マイル」というヘンテコなものに変わっているのはなぜ??副題はさておき「狼少女」って…(汗)。これじゃ、まるでホラー映画ではないですか!
DVDのジャケも、セル用はまっとう(写真上参照)だけど、レンタル用のそれはまるでオカルト、しかもB級臭プンプン。劇場公開時、セルDVD、レンタルDVDとタイトルがころころと変わるのは、混乱のもとです。原題と違うのは、いたしかたないところですが、ちぐはぐでおかしな邦題も含めて、何とかならないもんでしょうか…(悩)。

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)



cinemassimo at 19:01|PermalinkComments(0)この記事をクリップ!ひとりごと09 

母なる証明

母と子の関係はすべての人間関係の基本だ。本作は、とりわけ母親であることの原初的な力強さを感じる、すさまじい映画である。だが俊英ポン・ジュノ監督は、ありがちな親子愛ではなく、複雑な魅力を持つ、ミステリアスな人間ドラマを作り上げた。漢方薬店で働きながら、一人息子のトジュンを女手ひとつで育て上げた母は、貧しくとも静かに暮らしていた。ある日、二人が住む街で、凄惨な女子高生殺人事件が起き、トジュンが第一容疑者に。無垢な心を持つ息子の無実を信じる母は、真犯人を追うべく、たった一人で走り出す。

子供を守るためならどんな苦労もいとわない、時に過剰とも思える母の愛情。おそらくそれは韓国の母親像の典型なのだろう。その証拠に、キム・ヘジャ演じる母親には特別な役名はなく、登場人物は誰もが彼女を“お母さん”と呼ぶ。だが息子を愛する母の無償の愛というお涙頂戴の感動ドラマを期待すると、とんでもないメに合うのがこの映画だ。田舎町で起こる殺人事件の裏には薄汚い人間の業があり、その部分はヒューマン・ドラマに、捜査をないがしろにし犯人を決め付ける警察の姿は社会派に傾き、母とトジュン、トジュンと友人の会話には、とぼけたユーモアが漂う。もちろん真犯人を追う過程は、見事なミステリーだ。単純にジャンル分けできない複雑さがある物語なのだが、終盤の母親の心理描写は、名女優キム・ヘジャの熱演、物語の衝撃的な展開とともに、圧倒される。冒頭、光にあふれる草原で放心したように踊る母の姿の意味を知るとき、この作品の深い魅力に観客は絡みとられるはずだ。ラストの母の行動の是非は、観客に映画との真剣な対話を強いる。ポン・ジュノの映画は見る側にも体力を要求するが、それだけの価値がある内容で、今後もこの人から目が離せない。
母なる証明 (幻冬舎文庫)【80点】
(原題「Mother」)
(韓国/ポン・ジュノ監督/キム・ヘジャ、ウォンビン、チン・グ、他)
(親子愛度:★★★★☆)


母なる証明 (幻冬舎文庫)

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)



cinemassimo at 00:06|PermalinkComments(6)TrackBack(15)この記事をクリップ!プチレビュー09下旬