映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「人生はビギナーズ」「日本列島」「荒川アンダー ザ ブリッジ」

試写室だより 12.01月下旬

試写室だより1月下旬は、オスカーがらみの作品を集中的に見て、頭が飽和状態。配給さん各社も勝負映画で気合が入ってます(笑)!

最近見た主な映画は以下。
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」「ヒューゴの不思議な発明」
「戦火の馬」「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」
「マリリン 7日間の恋」「ドラゴン・タトゥーの女」「僕等がいた」などなど。

1月24日に、ギリシャの巨匠テオ・アンゲロプロスが急死しました。
てっきり病死かと思ったら、交通事故だそう(爆)。新作「ジ・アザー・シー(英語原題)」を撮っていた最中だったというから、映画ファンにとってあまりに悲しい。
あぁ…、あの長回し、もう見ることができないのね…。

筋金入りのアンゲロプロスファンの同業者Yさんなどは、抜け殻状態です。
しっかり、Yさん!傷は浅い…、いや、深いか(涙)。

こら〜っ、映画界の宝をバイクで轢いた非番の警官っ!
許さんゾ〜〜〜っ!!!


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劇場版 テンペスト 3D

テンペスト 第一巻 春雷 (角川文庫)テンペスト 第一巻 春雷 (角川文庫)
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NHKの歴史ドラマが3Dとなった波乱万丈の物語「劇場版 テンペスト 3D」。TVドラマの映画化の難しさが如実に出てしまった。

19世紀の琉球王国。嵐の中、無数の龍がガジュマルの樹を真っ二つに引き裂いた夜に、不思議な力を宿した女の赤子・真鶴が誕生した。容姿端麗で頭脳明晰な真鶴は、女が学問を禁じられていた時代に、父の願いを叶えるべく、孫寧温(そんねいおん)と名乗り、男として王宮に仕える。政治の世界で手腕を発揮し、異例の出世を果たした寧温だったが、王宮内の権力争いに巻き込まれ、ついに女であることが知られてしまう…。

原作は沖縄出身の小説家・池上永一のベストセラー小説。NHK・BSでドラマ化されたものが、劇場版として3Dで登場となった。沖縄がまだ独立国家だった時代に、男として学問や政治の世界で活躍した美女がいたという設定は、いかにも荒唐無稽だが、女性の活躍の場がなかった時代に生まれたヒロインの知性は、自分の可能性を試したいとの思いを抑え切れなかったのだろう。主人公の真鶴(寧温)は、王宮内で、素晴らしい政治手腕を発揮して、薩摩や中国の清、さらに米国を相手にしても一歩も引かない。そこには知的外交のベースは誠実さであるとするヒロインなりの価値観が垣間見えて清々しい。とはいえ、彼女の平和的外交は、琉球王国が独立を失う直前の最後の輝き。そのことを知りながら見ると、いっそうはかなさが漂う。だが、映画としての出来栄えはあまりにも拙い。王宮内での権力争いや、薩摩藩士との淡い恋、清国の妖しい宦官の陰謀、島流しになったかと思えば王の側室となってあっさりと復帰などなど、ストーリーは激しく飛躍を繰り返し、TVを未見の観客には何が何やら分からなくなる。これではTVのダイジェスト版に過ぎず、ドラマファン以外はついていけない。ただ、見所はある。嵐の日に生まれたヒロインを常に見守る龍は、ド迫力の3Dで描かれるし、何より世界遺産の首里城の壮麗な景観を3Dで堪能できるのは、映画版ならでは。色鮮やかな衣装や琉球舞踏にも魅せられる。沖縄の美しい自然も含め、映像美を楽しみたい。
【40点】
(原題「劇場版 テンペスト 3D」)
(日本/吉村芳之監督/仲間由紀恵、谷原章介、塚本高史、他)
(沖縄文化堪能度:★★★★★)
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劇場版テンペスト3D@ぴあ映画生活

麒麟の翼〜劇場版・新参者〜

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東野圭吾のミステリー小説“加賀恭一郎シリーズ”の映画化「麒麟の翼〜劇場版・新参者〜」。ダイイングメッセージは父からの愛だった。

東京・日本橋で男性が殺害される。被害者・青柳武明はナイフで胸を刺された状態で8分間も歩き、日本橋の翼のある麒麟(きりん)の像の下で、息絶えた。一方、容疑者の青年・八島冬樹は、現場から逃亡する際、車に轢かれて意識不明になってしまう。捜査に当たる日本橋署の切れ者刑事・加賀恭一郎は、事件を調べるうちに、関係者それぞれの家族や恋人、知られざる一面に近付いていく…。

「事件によって心が傷つけられた人がいるなら、その人だって被害者だ。そういう被害者を救う手立てを探し出すのも、刑事の役目です」。東野圭吾の作品群の中でも人気シリーズの主人公・加賀恭一郎が、なぜ多くのファンから愛されているのかが、この名セリフで瞬時に分かる。彼は単に事件を解決するだけでなく、関係者それぞれの思いに深く関わっていく。今回の事件では、いじめ、派遣切り、恋人の思いや親子の絆などが描かれる。ミステリーなのでストーリーを詳しくは明かせないのだが、物語には、麒麟の像の由来や、七福神など、魅力的で謎めいたアイテムが散りばめられていて、なかなか楽しい。だが、“泣ける”と評判のその謎には、実は疑問を感じる。なぜなら被害者が伝えようとしたメッセージは、彼が“生きているうちに”直接伝えるべきものだからだ。映画では“間違った教育”が重要な要素となるので、二重の意味で興味深い点ではある。容疑者・冬樹の恋人・香織のキャラクター造形にも首をひねる。都会で肩を寄せ合って生きる恋人同士が直面する現実は、なるほどやるせないが、冬樹を信じる強い言葉があるかと思えば、直後にはたちまち疑心暗鬼に。事件の動機と解明は、彼女とは離れた部分で進んでいくのだが、香織というキャラクターがブレずにいてくれれば、もっと物語に共感できただろう。阿部寛と中井貴一。共に、近年、日本映画で最も頻繁に“顔を見る”役者が共演しているのが何ともゴージャスだ。事件の性質上、2人が顔を会わせるシーンはないのだが、子を思う父の姿を静かに熱演した中井貴一の存在感が印象的だった。
【60点】
(原題「麒麟の翼〜劇場版・新参者〜」)
(日本/土井裕泰監督/阿部寛、黒木メイサ、溝端淳平、他)
(親子愛度:★★★★☆)
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麒麟の翼@ぴあ映画生活

映画レビュー「J・エドガー」

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◆プチレビュー◆
ディカプリオがフーバーの青年期から老年期までを怪演。伝説の男が信じた正義は現代アメリカの闇を照射する。 【75点】

 FBI初代長官のジョン・エドガー・フーバーは、70代になり回顧録を執筆する。それは、20代で後にFBIとなる組織の長に就任し、50年近く強大な権力を保ちながら、アメリカの“正義”を偏執的に信じた孤独な人生だった…。

 監督イーストウッドと俳優ディカプリオの初タッグで描くのは、権力者の功罪の物語だ。今も賛否が分かれる人物ジョン・エドガー・フーバー。FBI初代長官だった彼は、近代的な科学捜査や膨大なデータベースを構築する一方で、大統領をはじめとする要人の秘密を掌握してファイル化することで、権力を維持した。フーバーが信じた正義や公安は、時に法を曲げることさえ厭わない狂信的なもの。この複雑な人物を、ディカプリオが徹底した役作りで、不気味なほどに熱演する。時代を前後させ、老年のフーバーと、若き日のフーバーを交互に見せる演出は、謎多き人物に、深く、冷徹に切り込む手法として興味深い。

 実際、フーバーにはミステリアスな部分が多く、資料や証言でも真実は容易には見えてこない。イーストウッドは、そのことを逆手に取り、謎を残しながら描くことで、観客それぞれの解釈に委ねた。

 フーバーとはどういう人物なのか。鍵を握るのは、過保護な母親アニー・フーバー、長年の個人秘書ヘレン、腹心の部下で私生活でも“パートナー”だったクライド・トルソンの3人だ。同性愛や女装癖など、さまざまな噂があったフーバーだが、映画は、彼のスキャンダラスな秘密には焦点を当てず、絶大な権力を手にした男の強いコンプレックスと、権力者ゆえの孤独をリンクさせた。イーストウッド映画の特徴である、人物を黒々とした闇に置く撮影が、そのことをより強調し、深い渋みを与えている。

 イーストウッドの狙いは、フーバーが向き合った、禁酒法時代のギャングとの攻防や、リンドバーグ愛児誘拐事件、赤狩りなどの20世紀の事件を通して、米国近代史の光と闇を浮かび上がらせること。それが奇しくも、現代における正義の意味を検証することにつながる。

 フーバーが断行した正義とは、法を越えてまで自分を優位に置き、他者を抑圧する強引なものだった。それはかつて「許されざる者」でジーン・ハックマンが演じた、自分の正義を信じて町を牛耳る保安官の姿にピタリと重なる。そして、現代アメリカの強迫観念にも似た政治とも。市長の経験もあり、政治を知るイーストウッドは、国家の中枢にいた人物の複雑な輪郭をあぶり出すことで、米国が同じ過ちを繰り返してはならないとのメッセージを込めている。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ミステリアス度:★★★★☆

□2011年 アメリカ映画 原題「J.EDGAR」
□監督:クリント・イーストウッド
□出演:レオナルド・ディカプリオ、ナオミ・ワッツ、ジョシュ・ルーカス、他
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J・エドガー@ぴあ映画生活

メアリー&マックス

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オーストラリア出身のアダム・エリオットはこれが長編映画監督デビューとなるが、初監督とは思えない完成度の高さ。決して可愛いとはいえない奇妙なビジュアル、独特のアイロニー、ビターな味わいが世界中で絶賛されたクレイ・アニメーションで、ヴォイスキャストも、フィリップ・シーモア・ホフマン、トニ・コレットといった個性派俳優が揃っている。

8歳の少女メアリーはオーストラリアのメルボルンに住んでいる、ちょっと変わった女の子。いじめられっ子でひとりぼっちの彼女は、ある日、アメリカに住む“誰かさん”と文通をしようと思い立ち、電話帳から“マックス・ホロウィッツさん”を選び出す。ひときわ変わった名前の彼は、ニューヨークに住む、人付き合いが苦手で孤独な中年肥満男だ。マックスのもとに1通の手紙が届いたことから、メアリーとマックスの、2つの大陸を隔てた文通が始まる…。

クレイアニメというとすぐにニック・パークの「ウォレスとグルミット」などの可愛らしい作品が思い浮かぶが、本作の手触りはまったく違う。動物が活躍もしないし、魔法もなく奇跡も起こらない。そこにはリアルでビターな現実が横たわっているのだ。さらに紡ぐ時間はなんと20年!自閉症のマックスと変わり者のメアリーの二人にとって、他者とコミュニケーションをとることは、最高難易度のミッションだったに違いない。デジタル時代の今、手紙というツールは何とも古風だが、面と向かっては言えないことも、手紙を通せば素直に表現できる。メアリーとマックスは、手紙によって、互いを思い、理解し、自分自身が成長することを学んでいく。時には腹立たしいことがあっても、それを乗り越えてこそ、見えてくる幸福がある。このアニメーションのテーマは、思いのほか深い。

撮影は1日にわずか44秒、完成までに4年という時間と労力を費やした傑作アニメは、世界中で評価され、アヌシー国際アニメーション映画祭・最優秀長編映画賞、第76回アカデミー賞短編アニメ賞など、多くの賞を獲得した。

(出演:(声)フィリップ・シーモア・ホフマン、トニ・コレット、エリック・バナ、他)
(2008年/オーストラリア/アダム・エリオット監督/原題「MARY AND MAX」)


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メアリー&マックス@ぴあ映画生活

ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬

ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬 (ローワン・アトキンソン、ジリアン・アンダーソン出演) [DVD]ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬 (ローワン・アトキンソン、ジリアン・アンダーソン出演) [DVD]
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ドジなスパイの活躍を描くシリーズ第2弾「ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬」。前作よりスケールはアップしたが笑いは不発気味。

一度は祖国の危機を救ったものの、モザンビークでの仕事の失敗でチベットの僧院に引きこもっていたジョニー・イングリッシュにある指令が下る。それは英国諜報機関MI:7から「英中首脳会談に出席する中国首相の暗殺計画を調べ、阻止せよ」とのミッションだった。ロンドンに戻ったイングリッシュは、新人スパイのタッカーと共に、香港へ飛ぶ。謎の組織“ボルテックス”を探るうちに思いもよらぬ陰謀に巻き込まれていくイングリッシュだったが…。

ローワン・アトキンソン演じるマヌケなスパイ、ジョニー・イングリッシュは、やることなすこと裏目に出てしまうドジなスパイだ。何しろアトキンソンの顔つきが問答無用で面白い。眉毛や眼を必要以上に動かし、自分のドジを隠そうとしてますますドジを踏み、それでも間違いが明るみに出てバツの悪い表情を浮かべる。これらの大仰な動きや表情は、サイレント映画を見ているような可笑しさがある。加えて“マ”の取り方がいかにも英国風。これは腹を抱えて爆笑するハリウッドのコメディとは違う、英国発のおとぼけな笑いの世界なのだ。邦題の副題からもわかるように、明らかにジェームズ・ボンドをパロディ化している内容は、007のファンが見ればより楽しめるだろう。何しろ本家に悪役系ボンドガールとして出演したロザムンド・パイクが、イングリッシュの恋のお相手なのだ。気合が入っている。ユニークすぎる秘密兵器の数々、イングリッシュの命を狙ってたびたび登場する中国人の老婆の殺し屋、スイスの山岳地帯での大アクションと、明らかに前作よりスケールアップしているが、“笑えない”ギャグも多く、センスの違いは否めない。イングリッシュが見事なナイフさばきで料理を作ってみせるエンドロール、実はここが一番楽しかった。
【55点】
(原題「JOHNNY ENGLISH REBORN」)
(イギリス/オリヴァー・パーカー監督/ローワン・アトキンソン、ジリアン・アンダーソン、ドミニク・ウェスト、他)
(パロディ度:★★★★☆)
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ドットハック セカイの向こうに

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「.hack(ドットハック)」シリーズ初の劇場映画版は、3D映画「ドットハック セカイの向こうに」。ゲーム未体験の観客も十分に楽しめる。

西暦2024年、福岡・柳川で暮らす14歳の少女そらは、幼なじみの智彦やその友人の田中らから勧められて、世界規模で流行しているオンラインゲーム「THE WORLD(ザ・ワールド)」に初めて参加する。バーチャル世界の冒険に次第に魅力を感じ始めるそらだったが、ある不思議な少女に出会ったことから、現実世界でデジタルハザードらしき異変が起こり始める…。

「.hack(ドットハック)」は、ゲーム、アニメ、コミックなどメディアミックスで展開するオリジナルコンテンツプロジェクトだ。少しだけ先の未来、世界が当たり前のようにネットでつながるそこでは、虚構と現実の2つの世界がダイナミックに交錯している。ゲームではバーチャル世界が中心だが、映画版はリアルのキャラの心情が丁寧に描かれる青春ストーリーが中心なので、ドットハック・シリーズ初心者でも十分に楽しめるはずだ。現実とは違うキャラクター(アバター)になる二面性、バーチャル世界でこそ分かるかけがえのないリアル、次第に解放される自分を見出すヒロインの変化や、自分では気付かなかった恋心など、思春期特有の成長物語がみずみずしい。日常が丁寧だからこそ、バーチャルの壮大な“冒険”に胸が躍るのだ。北原白秋の生地としても知られる水郷・柳川の風景が美しいが、この街を象徴する水路は、考えようによっては、オンラインのネットワークに重なって見える。ザ・ワールドの美しい景観、世界を救う鍵となる謎の少女アユラの世界など、映像はため息が出るほど壮麗。3Dは作りこまれて見応えがあるが、柔らかい色調と練られた立体感は、目にも優しいので疲れをまったく感じさせないのが嬉しい。アニメーション制作は、サイバーコネクトツー映像制作チーム「sai−サイ−」。パステル・カラーが中心のビジュアルが、少年少女の、ゆるやかにつながっていたいと願う思いにフィットしていた。
【70点】
(原題「ドットハック セカイの向こうに」)
(日本/松山洋監督/(声)桜庭ななみ、松坂桃李、田中圭、他)
(みずみずしさ度:★★★★☆)
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ダーク・フェアリー

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ホラーというよりファンタジー色が強いサスペンス「ダーク・フェアリー」。欧米に伝わる歯の妖精がモチーフだ。

孤独で内気な少女・サリーは、両親の離婚で傷ついた心を抱えたまま、父アレックスと父の恋人キムが住む古い屋敷に引っ越してくる。その邸宅は、19世紀、家主の失踪によって100年近く放置されていた曰くつきの屋敷だ。ある日、サリーは、封印されていた地下室を発見し謎めいた扉を開けてしまう。そこには邪悪な魔物がひそんでいて、サリーに近づいて襲いかかる…。

オリジナルは、1973年のTVムービー「地下室の魔物」。残念ながらこちらは未見なのだが、「パンズ・ラビリンス」などで幻想的な美的感覚を発揮するギレルモ・デル・トロが強く思い入れる作品だという。そのデル・トロが製作した本作は、ホラーというよりダーク・ファンタジーの趣が濃い。欧米に古くから伝わる歯の妖精“トゥース・フェアリー”は、デル・トロが監督した「ヘルボーイ/ゴールデンアーミー」にも敵役として登場していた。親の愛を得られないと悩む孤独な子供というモチーフもいかにもデロ・トロらしい。本作の監督のトロイ・ニクシーは、もともとは「バットマン」などの作画を担当していたコミック・アーティスト。だからだろうか、登場する魔物のビジュアルは、デル・トロ好みのダークなクリーチャーに、リズミカルなアクションを加味した独特のテイストだ。ストーリーは、地下室のそのまた地下に住む魔物の封印を解いてしまい、惨劇が起こるというクラシカルなものだが、少女サリーを命がけで救うキムがたどる運命は、ゾッとする。今、私たちが住む現実とは別の、ダークな世界が常に存在し、その魔物はいつも闇の奥から人間をみつめているのだ。低予算ホラーらしい小品で、ほとんど怖さはないのだが、独特の映像美が楽しめる。
【55点】
(原題「DON'T BE AFRAID OF THE DARK」)
(米・オーストラリア・メキシコ/トロイ・ニクシー監督/ケイティ・ホームズ、ガイ・ピアース、ベイリー・マディソン、他)
(怖さ度:★★☆☆☆)
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ジャックとジル



アダム・サンドラーが男女の双子をCGなしで演じるコメディ「ジャックとジル」。名優アル・パチーノのはじけた姿に唖然。

LAの広告代理店の重役ジャックは美しい妻と子供に囲まれ、優雅に暮らしている。そんな彼のただひとつの悩みは、今年も、双子の妹ジルが感謝祭にNYからやってくることだ。40代で独身、天真爛漫でハイテンションなこの妹は、いつもトラブルを巻き起こす。ある日、仕方なくジルに付き合って観戦していたバスケの試合で、偶然試合を見に来ていたアル・パチーノがジルにひと目惚れ!パチーノにまるで関心がないジルとは裏腹に、ジャックはなんとかパチーノに、自分のスポンサーのドーナツのCMに出演してもらうおうと画策するのだが…。

アダム・サンドラーはコメディ・センスの違いからか、日本での人気はいまひとつ。だが、本作の笑いはかなり分かりやすい。双子という素材を十分に生かし、CGなしで一人二役、爆笑ものの女装、一つの場面で同じ動きを見せるヴィジュアルの面白さは、単純だが愉快だ。キャラも、一人はエリートの勝ち組、一人はかなりイタい性格の負け組とメリハリがある。もっとも物語は手垢がついたもの。一族に一人はいる“困ったちゃん”にさんざん振り回された主人公が、ブチ切れた後に、自分の傲慢さと大切な家族の存在に気付くというテッパンのストーリーだ。ではこの映画の見所は? それはかの名優アル・パチーノの怪演に他ならない。長年さまざまな役に没頭してきたパチーノは、現実と役柄の区別が曖昧になる狂気の老俳優を演じるが、これがかなりの確率で本人とカブる。パチーノに関心がないジルが、彼の家に飾ってあるオスカー像を誤って壊したときのセリフがいい。「ごめんなさい。でも他にもあるわよね?」「名優なんて言われてるけど、実はこれ一つだけなんだ」。これには思わず吹き出して笑ってしまった。おおらかに自分自身を演じるパチーノは、舞台の上で携帯で話し込み、豪華客船にヘリで乗りつけるなど、やりたい放題。ついには歌って踊る。これを見るだけでも本作を見る価値がある。主演のサンドラーの熱演よりもパチーノのはじけっぷりが勝ったのは苦笑ものだが、これまた本人役でチラリと登場するジョニー・デップの姿も拝めるおまけ付きなのだから、まぁ、良しとしよう。
【50点】
(原題「JACK AND JILL」)
(アメリカ/デニス・デューガン監督/アダム・サンドラー、ケイティ・ホームズ、アル・パチーノ、他)
(豪華ゲスト度:★★★★☆)
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ジャックとジル@ぴあ映画生活

きみはペット

「きみはペット」オリジナル・サウンドトラック「きみはペット」オリジナル・サウンドトラック
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高学歴、高収入のキャリアウーマンの美女と、宿なしで子犬のような年下男性との恋を描く「きみはペット」。チャン・グンソクがペットを“熱演”する。

チ・ウニは、才色兼備の女性編集者だが、最近、左遷と失恋が重なって落ち込んでいた。そんな時、ひょんなことから、イケメンのダンサー、カン・イノと知りあう。恋人でも友人でもなく「ペット」になりたいと提案する、年下のイノと、奇妙な同居生活を始めるハメに。主人とペットとして、互いに干渉せず気を使わない関係は、最初は心地よく感じられたが…。

原作は日本の小川彌生の大人気コミック。松本潤と小雪の共演でTVドラマ化された物語だが、このありえなさ、確信犯的わざとらしさ、超スウィートな設定は、まさに韓国映画のラブストーリーのテッパンと言えるものだ。“チャン・グンソクは、本作で、日本では初の本格的映画デビューとなる。ダンボールの中からの登場や、ご主人さまとペットという関係など、笑ってしまうほどアリエナイ設定ばかりなのだが、キム・ハヌルとチャン・グンソクの2人にかかると、突飛な話も楽しいおとぎ話に思えてくる。特に、ペットになるイノは、愛玩動物のような可愛らしさがないと務まらない。この役に、チャン・グンソク以外の誰がいるというのか。たとえ話の途中で唐突に歌い踊っても、ファンならすべて許すだろう。この映画は、設定のありえなさを煽るかのように、ミュージカルという脱リアルな世界で二重のファンタジーとして構築されている。ご主人様とペットとの契約は、いつしか生まれた嫉妬から恋愛感情へ。ラブコメ好きの誰もが望むハッピーエンドへ向かって一直線である。アイドル映画に間違いないが、女性の社会進出が目覚しい韓国社会では、女性が異性にパーフェクトな癒しを求めるストーリーは、案外、アイドル映画以上の意味があるのかもしれない。
【50点】
(原題「きみはペット」)
(韓国/キム・ビョンゴン監督/キム・ハヌル、チャン・グンソク、リュ・テジュン、他)
(リアル度:★☆☆☆☆)
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きみはペット@ぴあ映画生活
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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