映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「フィフティ・シェイズ・ダーカー」「ハクソー・リッジ」「結婚」「ありがとう、トニ・エルドマン」etc.

セールスマン

The Salesman
教師のエマッドとその妻ラナは、小さな劇団に所属している。稽古で忙しい日々の中、新居に引っ越すが、そこでラナが侵入者から襲われてしまう事件が発生。ラナは心と身体に深い傷を負ってめっきり口数も少なくなる。一方、エマッドは犯人を捕まえるために「警察に行こう」と妻を説得するが、ラナは頑なに拒否する。立ち直れないラナとやり場のない怒りを持て余すエマッドの心はすれ違い、夫婦仲は険悪に。やがて犯人は前の住人だった女性と関係がある人物だと分かる。残されたトラックから手がかりをつかんだエマッドは、自力で犯人をつかまえようと決心するが…。

突然の暴行事件を機に心がすれ違っていく夫婦と、現代イラン社会の歪みを描く人間ドラマ「セールスマン」。乱暴な建築工事のせいで引っ越すハメになった夫婦は、冒頭の住宅崩壊場面から不安な表情を浮かべている。妻ラナをレイプ、暴行された夫エマッドの犯人捜しと復讐劇がストーリーの軸となるが、そこで描かれるのは、近代化してもなお、イスラム教の古い価値観やモラルが横行する、矛盾した社会の在り方だ。前の住人の女性はどうやらいかがわしい商売をしていたようで、犯人はその女の常連客との目星がつく。だが被害者であるラナは、不注意からドアを開けたことや、暴行されたことそのものを恥じ世間体を気にして警察に訴えようとしない。それを聞いた隣人は「正しい判断だ。どうせ警察は当てにならない」と言い放つ。一方、夫のエマッドは、犯人を捜して復讐したいのだが、見知らぬ人物を招き入れた妻を心のどこかで責めている。夫婦にアパートを斡旋した劇団仲間は、前の住人が怪しげな仕事をしていたことを故意に黙っていた。皆、それぞれ後ろめたい部分があって、犯人捜しのミステリーというよりも、被害者側の心理サスペンスに傾いていく。単純な正義や善悪では割り切れないこの曖昧さこそがアスガー・ファルハディ監督の持ち味だ。登場人物たちの葛藤を、劇中劇のアーサー・ミラーの傑作戯曲「セールスマンの死」と重ね合わせて描く手法が巧みである。急激な時代の変化に取り残された老セールスマンの心情が、現代イランの社会、特に、自由になったかに見えて、まだまだ抑圧されているイスラム圏の女性の実態と重なって見える。そして終盤、夫婦が対峙する意外な犯人と、その顛末に、言葉を失った。監督と主演女優は、トランプ政権によるアメリカ入国禁止令に抗議して、米アカデミー賞授賞式をボイコットしたが、本作で見事にアカデミー賞外国語映画賞を獲得。政治的な流れが受賞に大きく影響したのは確かだが、それを差し引いても、社会風刺と人間の深層心理を緻密なドラマで描いた秀作であることに間違いない。
【75点】
(原題「FORUSHANDE/THE SALESMAN」)
(イラン・仏/アスガー・ファルハディ監督/シャハブ・ホセイニ、タラネ・アリシュスティ、ババク・カリミ、他)
(葛藤度:★★★★★)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

ありがとう、トニ・エルドマン



ドイツに住む、悪ふざけが大好きな父ヴィンフリートは、ルーマニア・ブカレストのコンサルタント会社で働く娘イネスが仕事ばかりしていることが心配でしかたない。イネスを驚かそうと、連絡もせず彼女が働く会社を訪ねるが、重要なプロジェクトを前にしたイネスは父親の相手もろくにできないまま、滞在期間が過ぎていった。心配そうにドイツに帰ったヴィンフリートだったが、突如、ダサいスーツを着て、かつらに出っ歯の入れ歯をつけた姿で「私はトニ・エルドマンです」と、別人のふりをして現れる。それからというもの“トニ・エルドマン”はイネスの前に度々現れることに。イネスはイライラを募らせるが、父娘は衝突すればするほど、互いの距離を縮めていった…。

キャリア志向の娘と、そんな娘を心配して一風変わった方法で励ます父親との触れ合いを描く人間ドラマ「ありがとう、トニ・エルドマン」。仕事人間の娘が父親の愛情と荒療治で幸せを取り戻す…という大枠から、心温まる感動作を連想するが(いや、それ自体は間違ってはいないが…)、この作品はそう単純ではない。父ヴィンフリートが、連絡もせず娘のもとを訪ねたのは、たまに家に戻っても話もしない娘が、人生の喜びや大切なものを見失っていると感じたからだ。ちっとも幸せそうじゃない娘を心配するのは親として当然なのだが、その方法がすこぶる変わっている。というか、かなりウザい。もっといえばあまりに空回りしすぎてあっけにとられる。だがイネスを含めた周囲は、どういうわけかこの変装バレバレのトニ・エルドマンのペースに巻き込まれ、いつのまにか心の奥に隠していた本音をさらしてしまうのだから不思議である。上映時間はなんと162分。この長尺は、父のお寒いギャグや度が過ぎた悪ふざけにキレ気味の娘が、少しずつ少しずつ自分の殻を破るために必要な時間なのだ。時に熱唱し、時に衣服を脱ぎすて、最後には自分の人生にしっかりと向き合うイネス。大笑いするコメディでもなければ、大泣きする感動作でもないし、ヒロインの人生の選択が完璧な幸せかというとそうとも言えない。複雑で曖昧、だからこそリアルな、奇妙奇天烈なこの怪作は、オフビートな人生讃歌の物語と言えよう。しかもこの映画、引退していたジャック・ニコルソンを突き動かして、ハリウッド版が作られるという。ハリウッド・リメイクで、どうアレンジするか、恐いもの見たさ半分で期待している。
【65点】
(原題「TONI ERDMAN」)
(独・オーストリア/マーレン・アデ監督/ペーター・シモニシェック、ザンドラ・ヒュラー、ミヒャエル・ヴィッテンボルン、他)
(奇天烈度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

ジーサンズ はじめての強盗

ジーサンズ はじめての強盗
ウィリー、ジョー、アルの3人は、慎ましくも幸福な老後生活を送っていたが、長年勤めていた会社から一方的に年金を止めるとの通達を受け、ショックを受ける。愛する家族や仲間たちと、幸せな余生を送りたい。そんなささやかな願いを叶えるため、ジョーはウィリーとアルに「俺たちの年金を取り戻そう!」と銀行強盗を持ちかける。今まで真面目に生きてきた3人は、すべてをかけて人生最大の勝負に挑むが…。

年金を一方的に止められた老人3人が初めての銀行強盗に挑戦するコメディ「ジーサンズ はじめての強盗」。老人の犯罪コメディというよくあるジャンルだが、何しろ演じるのが、モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキン。主演全員がアカデミー賞受賞の名優なのだから、細かいツッコミどころは、ゆったりとかわして、余裕のお芝居で笑わせてくれる。もっとも内容は、弱者に冷たい高齢化社会を照射したもので、笑いごとではないのだが。無論、銀行強盗は犯罪なので手放しで応援するわけにはいかないが、実際に理不尽な理由で年金を奪われても、なす術がない現実を考えると「こんなこと、やってくれちゃったら最高!」と思わせる、一種のファンタジーと考えれば楽しめる。利益優先なのは、長年勤めた会社だけでなく、銀行も同じ。その銀行で偶然、強盗に遭遇したことから「自分たちにもやれるかも」と思って、ワルに弟子入りするという短絡的な思考が苦笑ものだが、そこは、年金なしでは生きてはいけない老人三人組、失うものなどない!というやけっぱちの強みがある。スーパーでの予行練習(万引き)や射撃のレッスン、指南役の強盗の心得のうんちくなど、おとぼけぶりに笑いながらもフムフムと思わずうなずいてしまった。そして、いよいよ本番へ。それは意外なほど綿密な計画で、楽観的なご都合主義の展開には、最後の最後に粋なプレゼントまであって、嬉しくなる。歌手としても活動している往年の美人女優アン=マーグレットは、今も変わらず美しくてキュートだし、名優3人にそれぞれ見せ場がちゃんと用意されていて、ザック・ブラフ監督が彼らをリスペクトしているのが伝わってきた。行け、ジーサンズ!80歳超えはまだまだ“若い”。
【60点】
(原題「GOING IN STYLE」)
(アメリカ/ザック・ブラフ監督/モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキン、他)
(痛快度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

いつまた、君と 〜何日君再来(ホーリージュンザイライ)〜

いつまた、君と ~何日君再来 (ホーリージュンザイライ)~ (朝日文庫)
81歳になった芦村朋子は、亡き夫・吾郎との思い出を手記にまとめようと慣れない手つきでパソコンに向かっていた。だが朋子は病で倒れてしまい、代わりに孫の理が作業を引き継ぐことになる。手記を読み、まとめていく中で、理は、戦中、戦後の困難な時代を必死に生き抜いてきた祖父母の波乱の歴史と、強い絆で結ばれた夫婦、家族の物語を知ることになる…。

俳優・向井理の祖母・芦村朋子さんの半生を映画化した人間ドラマ「いつまた、君と 〜何日君再来(ホーリージュンザイライ)〜」。祖母の卒寿(90歳)のお祝いに、家族や親せきが自費出版した手記「何日君再来」を、向井理自ら映画化に向け7年の歳月をかけて企画してきた作品だそう。朋子と吾郎は結婚し、満州へ。敗戦後の引き上げ、朋子の実家でのつらい暮らし、職を変えながら家族で支え合って生きた日々。それらを、過去と現代を交錯させながら丁寧に描いている。戦中・戦後の混乱と一言でいうが、朋子と吾郎夫婦は、不運と苦労の連続で見ていて痛々しいほど。それでも、時折訪れる小さな幸福を糧に、笑顔を失わず生きる姿が感動的だ。故郷・愛媛を出てから、茨城、福島、大阪と移り住んだのが不思議だったが、戦後すぐは、大都会への移住が制限されていたということをこの映画で初めて知った。ファミリー・ヒストリーは誰の胸にもあるものだが、この夫婦は、特別な才能や財産があるわけでもなく、偉業を成し遂げたわけでもない。物語として大きな盛り上がりに欠ける感は否めないが、だからこそ、昭和を生き抜いてきた、すべての名もない庶民の代表のような存在に思える。タイトルの“何日君再来”とは、1937年に上海で製作された映画「三星伴月」の挿入歌で、日本でも大ヒットし、多くの歌手によってカバーされた歌謡曲の名曲だ。本作で主題歌を歌うのは高畑充希で、彼女の透きとおるような歌声が耳に残る。先日、亡くなった女優・野際陽子さんの遺作となったことも付け加えておきたい。
【60点】
(原題「いつまた、君と 〜何日君再来(ホーリージュンザイライ)〜」)
(日本/深川栄洋監督/尾野真千子、向井理、岸本加世子、他)
(家族愛度:★★★★★)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

結婚

結婚 (角川文庫)
結婚詐欺師の古海健児は、小説家、空間コーディネーターなど、さまざまな職業に成りすまし、その端正なルックスと知的で優しい話術で女性たちを翻弄していた。ある日、彼に騙された女性たちが偶然つながり、古海のことを調べて行方を探し始める。彼女たちは探偵を雇い、元々は古海の被害者の一人だったが、後日、彼の相棒となった女・るり子の存在にたどりつく。古海にはたいした儲けにはならない結婚詐欺を繰り返す理由があった…。

結婚詐欺師と彼に騙された女たちの姿を通して人間の業を描く「結婚」。原作は直木賞作家・井上荒野の長編小説だ。スラリとした長身に端正な顔立ち、知的で上品な話術、匂い立つような色気。これらは結婚詐欺師・古海の武器だ。彼の元被害者で、ほぼ強引に“ビジネスパートナー”になったるり子が、何のために結婚詐欺などしているのか尋ねると「女たちの嬉しそうな顔を見るのが好きなんだ」と真顔で答える。実際、古海にプロポーズされたときの女たちの顔は幸福感に満ちているし、騙されて金を奪われても、悔しさと同時に彼に対して執着心を見せる。古海はと言えば、自分は営業の仕事をしていると偽って妻の初音と幸せに暮らしているのだ。この物語には、実は大きな仕掛けがある。それは古海が大事に持っている古い写真や、彼の言動に微妙な違和感があることから、薄々察しがつくかもしれない。詳細は明かせないので言及できないが、この詐欺の描写そのものがツメが甘く、探偵を使って真実を探ったり、彼を意外な形でフォローする大富豪の女性の調査を待つまでもなく、やがては破綻する素人レベルの犯罪なのだ。物語の核心は、詐欺そのものではなく、詐欺行為を繰り返す主人公の背景と心情にあるということだろう。朝の連続ドラマでブレイクした、イケメン俳優のディーン・フジオカありきの映画だが、彼の新たな一面が発見できるので、ファンは見逃せない。
【50点】
(原題「結婚」)
(日本/西谷真一監督/ディーン・フジオカ、柊子、中村映里子、他)
(切なさ度:★★★☆☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

ハクソー・リッジ

Hacksaw Ridge [Blu-ray]
ヴァージニア州の田舎町で育ったデズモンド・ドスは、幼少期の苦い体験から「汝、殺すなかれ」の教えを守ると固く心に誓っていた。やがて第二次世界大戦が激化すると、デズモンドは、衛生兵ならば自分も国に尽くせるとして、恋人ドロシーや父親の反対を押し切って陸軍に志願する。1945年、沖縄に到着するが、ハクソー・リッジと呼ばれる激戦地での過酷な闘いにさらされる…。

武器を持たずに人命救助に徹した実在のアメリカ兵、デズモンド・ドスの困難な戦いを描く人間ドラマ「ハクソー・リッジ」。ハクソーはのこぎり、リッジは崖の意味で、沖縄の激戦地の前田高地を指す。衛生兵のデズモンドは、地獄のような戦場で、包帯とモルヒネだけを手に断崖付近を駆け回り、たった一人で75名もの命を救った男だ。彼がこの奇跡のような行動に至るまでのドラマが非常に丁寧で説得力がある。幼少期の両親の不仲、第一次世界大戦の惨状を見た父親の心の傷、初々しい恋などで、デズモンドの人柄を手際よく描いていく。新兵訓練キャンプでは、武器を持たないことを、静かに、でもきっぱりと主張したため、上官や兵士たちの執拗ないじめに遭うが、それでもデズモンドの信念は揺るがない。ここまでの演出が的確でエモーショナルなため、いざ戦場に放り出されたときには、誰もがデズモンドの目線で戦争の現実をみつめられるようになっている。それにしても接近戦の戦闘描写の、なんと壮絶なことか。手足が吹き飛び、頭を打ちぬかれ、爆風と砂塵で息もできない臨場感。肉片と血しぶきが舞う地獄絵図は、監督メル・ギブソンの本領発揮といったところだ。戦闘シーンが生々しく残虐だからこそ、デズモンドが、このような場でも「殺さずに、救いたい」との信念を貫いた並外れた強さが際立つのだ。彼の勇気ある行動は、信仰心のためというのが本作のスタンスだが、仲間たちは、どんな困難に遭遇しても決して自らの信念を曲げないデズモンドの姿に、信仰以前の、人としての強さを見たに違いない。ただ、この舞台が日本であること、今、日本もアメリカも先行きが見えない岐路に立っていることを思うと、複雑な思いを禁じ得ない。デズモンドの立ち位置は、軍隊用語でいう良心的兵役拒否だが、自らを良心的協力者と呼んでいたそう。繊細さと大胆さを兼ね備えた男を、アンドリュー・ガーフィールドが真摯に演じて好演だ。近年、お騒がせのゴシップばかりが目立ったメル・ギブソンだったが、監督として「ブレイブハート」以来の秀作に仕上げて鮮やかな復活劇となった。圧倒的な暴力の中に、確かに存在した奇跡のような実話は、今までにないタイプの戦争映画に仕上がっている。
【80点】
(原題「HACKSAW RIDGE」)
(豪・米/メル・ギブソン監督/アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン、テリーサ・パーマー、他)
(信念度:★★★★★)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

フィフティ・シェイズ・ダーカー

Fifty Shades Darker - Unrated Edition (Blu-ray + DVD + Digital HD)
恋愛未経験で純粋な女子大生だったアナは、大企業の若きCEOで大富豪のクリスチャン・グレイと出会い、互いに強く惹かれあうが、アナはクリスチャンの歪んだ愛を受け入れられず、別れを告げる。卒業して出版社に勤務するアナは新生活を始めるが、彼女の前にクリスチャンが現れ関係の修復を望む。密かにクリスチャンを想い続けていたアナは喜びをかみしめながらも、ある条件を要求する。再び刺激的な日々が始まるが、二人の前に、その恋を邪魔する人物が現れる…。

官能ラブ・ストーリー「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」の続編「フィフティ・シェイズ・ダーカー」では、再会したアナとクリスチャンは、新たなルールでの恋愛をスタートする。二人の恋の障害となる男女といえば、クリスチャンの過去の“服従者”の女性はまるで幽霊のようだし、アナに執拗に接近する上司はストーカー状態と、かなり戯画化されている。そこに「ナインハーフ」で官能的な役を魅力的に演じたキム・ベイシンガーが登場。クリスチャンをSMの世界へと誘った年上の美女役で、時代の流れを感じさせる。それにしても問題はアナのキャラクターだ。「今度は私のルールで恋愛を進める!」と要求を出しておきながら、あまりにも受動的。公私ともに問題山積だが、それをすべて解決してくれるのは、クリスチャンの財力なのだから、失笑してしまう。クリスチャン・グレイがアナのどこに惹かれたのかをもっとしっかり描くべきなのではないのか? ただ、ダコタ・ジョンソン、ジェイミー・ドーナンの二人は相変わらずビジュアル的に完璧だ。特にドン・ジョンソンとメラニー・グリフィスの間の娘であるダコタ・ジョンソンは、いつもは少女のようにあどけないのに、黒やシルバーのドレスでドレスアップすると、目を見張るほどゴージャスに変身。スレンダーなボディは、大胆できわどいシーンを演じてもちっとも下品にならず、美しいからさすがだ。どうやら、次回作もあるようなのでファンには喜ばしいことだろう。“ハンサムでリッチ、心に傷を抱えたイケメン男性の運命の女性はこの私”。今さら感が漂うこの妄想ストーリーは、それでもハリウッドが作れば、薄っぺらいお話もゴージャスな雰囲気に仕上がるという好例だ。
【50点】
(原題「FIFTY SHADES DARKER」)
(アメリカ/ジェームズ・フォーリー監督/ダコタ・ジョンソン、ジェイミー・ドーナン、キム・ベイシンガー、他)
(障害度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

ある決闘 セントヘレナの掟



1886年、メキシコとの国境リオ・グランデ川に何十という死体が流れ着いた。この不可解な事件を捜査することになった、テキサス・レンジャーのデヴィッドは、妻と共に川の上流にあるマウント・ハーモンという町へ向かう。そこで彼は、人々に奇跡を見せて、町を掌握している“説教師”エイブラハムと出会う。身分を隠して町に住むことになったデヴィッドだが、エイブラハムは、決闘でデヴィッドの父を殺した男で、因縁の再会だった。町とその周辺を密かに調査したデヴィッドは、やがて驚愕の事実を知ることになる…。

メキシコ国境の町を牛耳る説教師の男と、彼に父親を殺されたテキサス・レンジャーの因縁を描くウェスタン・ノワール「ある決闘 セントヘレナの掟」。ヘレナ流の決闘とは、互いの左手を布で繋ぎ合わせ、右手に持ったナイフでどちらかが死ぬまで闘う男の掟だ。主人公のデヴィッドは、幼い頃、このヘレナ流決闘でエイブラハムに父を殺された過去がある。成長したデヴィッドはテキサス・レンジャーとなって、不可解な事件を調査し、そこで因縁の再会を果たすというわけだ。復讐は西部劇でしばしば描かれる主要なテーマのひとつだが、本作では実は主人公は復讐に対してはさほど思い入れはない。物語は、川に流れ着いた死体とその理由、怪しげな宗教的儀式で人心を掌握する男の謎を探るミステリー仕立てで、過去の復讐よりも現代の事件に重きを置いている、異色のヴァイオレンス映画という趣だ。ただ、この映画のストーリーは、西部劇というクラシックなスタイルで描かれるが、現代アメリカの闇を鋭く照射するもの。メキシコ国境での不条理な不審死事件の真相は映画を見て確かめてもらうとして、フィクションとはいえ、その人間性を欠いた暴挙に戦慄が走る。激しいガン・アクションやサバイバル、壮絶な暴力が全面に出ているが、戦争、宗教、人種差別といった今もアメリカを蝕む病巣を見る思いだ。謎のカリスマ説教師エイブラハムを演じるウディ・ハレルソンが怪演に近い熱演。エイブラハムが自らを正当化するかのように常に白い服に身を包んでいるのが不気味である。西部劇は今は映画界の主流ではないが、このジャンルを偏愛する映画人は間違いなく存在する。地味な小品だが、アメリカの伝統的スタイルで、現代の問題を浮き彫りにした意欲作といえよう。
【65点】
(原題「THE DUEL」)
(アメリカ/キーラン・ダーシー=スミス監督/ウディ・ハレルソン、リアム・ヘムズワース、アリシー・ブラガ、他)
(バイオレンス度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

ドッグ・イート・ドッグ

ドッグ・イート・ドッグ (ハヤカワ文庫NV)
服役を終えて出所したトロイは、刑務所で知り合った仲間で、薬物中毒のマット・ドッグ、巨漢のディーゼルと再会する。先が見えない未来を変えるため、仲間思いのトロイは、地元ギャングのボスに相談し新たな仕事を請け負うことに。それはボスへの借金を返済しない男の息子を誘拐し身代金を要求するというもの。簡単な仕事に思われたが、予想外の展開へと発展し、3人は追われる身となってしまう…。

誘拐を請け負った前科者の男たちが追い詰められていく様を描くクライム・サスペンス「ドッグ・イート・ドッグ」。タイトルは“喰うか喰われるか”の意味で、原作は、自らも服役経験があり、獄中で書いた小説で作家になったエドワード・バンカーの犯罪小説だ。バンカーは11歳で少年院に入ってから20数年、ほとんどを刑務所の囚人として過ごしたというから、かなり異色の小説家である。暴力や犯罪、刑務所の描写は、経験を踏まえているだけあって、リアルだと評判で、本作でも情け容赦ないバイオレンス描写やムショ仲間特有の腐れ縁などが詳細に描かれている。主人公のトロイは仲間思いで恩義に厚く“比較的”まともな男だが、マッド・ドッグはコカイン中毒で誰もが手を焼くキレやすい性格。家庭持ちで取り立て屋のディーゼルは、普段は温和だがキレたら怖い巨漢の男だ。こんなアブナイ3人組の仕事が無事に済むわけがなく、人生の一発逆転を狙った大仕事は、偶然や必然、悪運に疑心暗鬼が重なって、堕ちるところまで堕ちていく。まぁ、ダメ男の負け犬たちがたどる運命は最初から予想がつくのだが、それにしてもウィレム・デフォーの狂犬ぶりはすさまじい。本作の通奏低音は、暗い色調の映像と運命にからめとられてがんじがらめになる男たちのハードボイルドな転落ぶりだ。手あたり次第に役を引き受けている感がある、近年のニコラス・ケイジの仕事ぶりを見ていると、彼が出演するならB級映画と安易に思われがち。あながちハズレではないが、むしろ本作はカルト映画の部類で、バイオレンス描写の合間にシレッと挿入される乾いた笑いに独特の味がある。クールなモノクロ映像で始まる冒頭、トロイが、先に出所していたマッド・ドッグからプレゼントされたスーツに対して礼を言う。「スーツをありがとう」。直後にカラー映像になり、それが「誰が着るのか、こんなモン?」状態の鮮やかな青緑色のスーツだと分かり、思わず吹き出して笑った。
【55点】
(原題「DOG EAT DOG」)
(アメリカ/ポール・シュレイダー監督/ニコラス・ケイジ、ウィレム・デフォー、クリストファー・マシュー・クック、他)
(ハードボイルド度:★★★★★)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

こどもつかい

「こどもつかい」オリジナル・サウンドトラック
とある郊外の街で、子どもたちが次々に姿を消し、戻ってきた子どもに遭遇した大人は3日後に謎の死を遂げるという連続不審死事件が発生する。新人の新聞記者・駿也は、事件の調査を始めるが、そこで“子どもの呪い”の噂を耳にする。一方で、駿也の恋人で保育所勤務の尚美は、母親が迎えに来なかった男の子をあずかるが、不用意な言葉で男の子の心を傷つけて恨みをかってしまう。二人の前に謎の男“こどもつかい”が現れ、男に操られるように子どもの霊が出現。駿也は尚美を守るため、呪いのルーツの核心に近づこうとするが…。

謎めいた“こどもつかい”による怪事件の恐怖を描く「こどもつかい」。「呪怨」シリーズなど、ジャパニーズホラーの名手・清水崇監督がオリジナルストーリーで描くホラー映画だ。新聞記者の駿也が調べる都市伝説のような呪いの噂は、調べていくうちに、貧困家庭の児童虐待の実態へとたどりつく。駿也の恋人の尚美はかつて自分が母親から虐待されていた過去を持っていて、そのことが、二人を謎めいた呪いへと導いていく。子どもが、謎めいた人物に操られて行方不明になるという設定は、どこか“ハーメルンの笛吹男”に似ているが、ここでは行方不明になる子どもが大人に恨みを持っているというのがミソだ。古い伝承に、児童虐待という現代的な病巣を組み合わせ、恐怖を演出したところが興味深い。こどもつかいの呪いの源は、ちょっと意外だが、こどもつかいのいでたちを見れば、勘がいい映画ファンなら、なんとなく予想がつくだろう。しかし、問題はホラー映画なのにさっぱり怖くないということだ。こどもつかいは映画初主演の滝沢秀明が演じているが、ジャニーズのアイドルの哀しさか、特殊メイクも衣装もなんだかステージ衣装に見えてしまって困った。子どもたちの怨霊は、それでもどこかで優しい親を求めている。門脇麦演じる尚美が母親に抱く屈折した愛情が悲しかった。
【50点】
(原題「こどもつかい」)
(日本/清水崇監督/滝沢秀明、有岡大貴、門脇麦、他)
(恐さ度:★★☆☆☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
シネマッシモにようこそ
◇ シネマッシモについて ◇

このブログが気に入ったら、ポチッとクリックお願いします♪
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

映画レビュー用BRバナー
インフォメーション


映画ライター渡まち子が運営するセカンド・ブログ「映画の中に猫がいる」もよろしく!【猫目線】で語る映画評で、のんびり、まったり運営中です(笑)。 猫好きの方、映画好きの方、ぜひ遊びにきてください。相互リンクも募集中!
こちらからどうぞ!
おすすめ情報
作品検索はこちら
Google
WWW を検索
このブログ内を検索
コメント(承認済)
映画レビュー(長文)索引

    
    
    
    
    
    
    
  
    

A−Z
0−9
カテゴリ
お仕事受注
映画評やコラムの執筆、講演など、映画に関する仕事を承ります。連絡はメールでお気軽にどうぞ。

 メールはこちらから↓
cinemassimo555★jcom.home.ne.jp
(★を@に変更して下さい)

執筆やラジオ出演など、メールと電話で対応可能な場合は、全国から仕事を受注していますので、まずはお問合せください。
プロフィール
プロフィール more
◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
震災には負けない!
リンクシェア・ジャパン 東北地方太平洋沖地震 義援金プロジェクト

犬・猫の総合情報サイト『PEPPY(ペピイ)』

icon icon
おすすめ情報
おすすめ情報

twitterやってます!
おすすめ情報

楽天市場
おすすめ情報

Archives
相互リンクについて
相互リンクについて

  ↑ 必ずお読みください。
いいね!もよろしく♪
Facebookをご利用の皆さん、このブログが気に入ったら、ぜひ「いいね!」ボタンをポチッと押してください。 渡まち子の励みになります!
タグクラウド
  • ライブドアブログ