映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ジャスティス・リーグ」「火花」「ギフテッド」「光」etc.

密偵

The Age of Shadows [Blu-ray]
日本統治下の1920年代の朝鮮半島。朝鮮人でありながら日本警察に所属するイ・ジョンチュルは、部長のヒガシから、武装独立運動組織“義烈団(ウィヨルダン)”を監視するよう特命を受ける。義烈団のリーダー、キム・ウジンに接近し、懇意になったジョンチュルだったが、それは義烈団の団長チョン・チェサンが、ジョンチュルを義烈団に引きこむために仕組んだ餌だった。日本警察の中でジョンチュルを見張るライバルや、それぞれの組織に潜入させた情報屋などが流す出所不明の情報が飛び交う中、義烈団は、上海から京城(現ソウル)へ向かう列車に大量の爆薬を運び込むことに成功する。誰が敵で誰が味方か判らない探り合いの状況の中、列車は国境を越えて京城へと向かうが…。

韓国の独立運動をめぐる秘密諜報戦の駆け引きを描く歴史サスペンス・アクション「密偵」。日本警察で働く主人公ジョンチュルは、独立など夢と諦め、権力側についた“売国奴”だが、心の底では愛国心を失っておらず、義烈団の行動や理念を知れば知るほど、ジョンチュルの意識と心情は揺れ動く。一見、日本を悪役にした抗日愛国映画のスタイルだが、時の権力におもねる者、保身に走る者が韓国の側にもいた事実を冷静な視点で盛り込んだ点は、評価したいところだ。裏切りや内通などが繰り返され物語はスリリングに進んでいくが、裏切る側の理由をきちんと描いているので、観客の感情に訴える内容になっている。

ハリウッドにも進出したキム・ジウン監督は、主人公を複雑な内面を抱える人間として描き、戦争が時に人間性を破壊する様や、裏切りや騙し合いの中でも決して奪えない誇りがあることを訴える。思わず目を背けたくなるような残虐な拷問シーンや殺戮シーンもあるのだが、基本は娯楽サスペンスなので、演出はスピーディーだ。名優ソン・ガンホはさすがの名演を見せるし、人気急上昇のコン・ユが、動く密室の列車の中で攻防を繰り広げるシークエンスは、彼が出演した大ヒット映画「新感染」を彷彿とさせる。ジウン監督作品の常連イ・ビョンホンも美味しい役で貫禄たっぷり。1920年代の衣装や家具調度品などが美しく、艶やかで湿度を帯びたダークな映像が歴史ものらしい重厚感を与えている。
【65点】
(原題「THE AGE OF SHADOWS」)
(韓国/キム・ジウン監督/ソン・ガンホ、コン・ユ、ハン・ジミン、他)
(スパイ映画度:★★★★☆)
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人生はシネマティック!

Their Finest
第2次世界大戦中のロンドン。コピーライター部の秘書だったカトリンは、情報省映画局特別顧問のバックリーから、映画の脚本家としてスカウトされる。仕事は、戦意高揚を目的としたプロパガンダ映画の制作で、フランスのダンケルクから撤退時に、兵士を救出した双子の姉妹の感動秘話を映画化することだった。早速、脚本執筆にとりかかるが、政府や軍部からの横やり、わがままなベテラン俳優や演技力ゼロの新人などに振り回され、脚本は二転三転し、さまざまなトラブルに見舞われる。それでもカトリンは、戦争で足を負傷した夫に代わって家計を支えるため、創意工夫で頑張り続ける。やがて撮影は最終段階を迎えるが、同時に戦況も激しさを増していった…。

執筆経験ゼロの女性が映画の脚本家として奮闘する姿を描くヒューマン・ドラマ「人生はシネマティック!」。ノーラン監督の「ダンケルク」が先に公開されているので、裏ダンケルクのようなイメージで見られているが、本作ではダンケルク撤退作戦の話はあくまでも脇役。働く女性が自立していく成長物語であり、映画製作の内幕を描く映画愛に満ちた爽快な物語なのである。ちょっともどかしいが、ロマンスだってちゃんとあるのだ。戦時下という設定上、むごく悲しい出来事も起こるが、喜怒哀楽のどれもが、とても奥ゆかしいのがいかにも英国風だ。

カトリンが、女性ならではの柔らかい感性で、さまざまなトラブルを解決しながら脚本を書き進め、映画を完成に導くプロセスが何よりも痛快だ。まずは乱雑な部屋をすっきりと片付けて作業の効率化を図る。わがままな老俳優をうまく“ノセて”その気にさせ、米国の参戦を促すためにアメリカ人を出して活躍させろと言われれば、これまた鮮やかなアイデアで実現する。脚本の才能を開花させるカトリンの存在感は映画作りの現場でも増す一方で、平行して、劇中劇の女性がどんどん活躍するようになるのも嬉しかった。コメディタッチの描写で笑わせると同時に、常に戦争の恐怖にさらされていた一般の人々の暮らしにもきちんと寄り添っている。劇中劇がそうであるように、この映画の主人公は、一人の突出したヒーローではなく、市井の、とりわけ普通の女性たちの勇気なのだ。数多くのトラブルや悲劇を乗り越えて出来上がった映画には、どんな状況であろうとも良い作品を作りたいという映画人たちの情熱が感じられて目頭が熱くなった。ヒロインを演じるジェマ・アータートンが好演で、ベテランのビル・ナイもいい味を出している。虚構である映画をなぜ人々は愛し、求めるのか。その答えは本作の中にある。映画を愛し、人生を愛することを教えてくれるこの作品が、たまらなく好きになった。
【75点】
(原題「THEIR FINEST」)
(イギリス/ロネ・シェルフィグ監督/ジェマ・アータートン、サム・クラフリン、ビル・ナイ、他)
(映画愛度:★★★★★)
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ネルーダ 大いなる愛の逃亡者

Neruda [DVD] [Import]
1948年、冷戦の影響を受けるチリ。共産党員で詩人のパブロ・ネルーダは、共産党が非合法の扱いを受けると知り、上院議会で政府を公然と非難したため、ビデラ大統領から弾劾される。警察官ペルショノーは、大統領からネルーダ逮捕を命じられ、追われるネルーダは、逃亡生活を余儀なくされるが、追うものと追われる者であるはずの2人の関係は、次第に奇妙な親密さを帯びていく…。

ノーベル文学賞を受賞したチリの国民的詩人、パブロ・ネルーダの逃亡生活を描くサスペンス仕立てのドラマ「ネルーダ 大いなる愛の逃亡者」。1948年の逃亡生活に焦点を絞って描く本作は、詩人ネルーダの享楽と、彼を追う警察官ペルショノーの禁欲が見事に対比され、あらゆる面で真逆だった二人の間に芽生えた奇妙な絆が浮かび上がってくる構図だ。ネルーダは、共産主義者だが特に政治的な面は強調されず、むしろ、娼館に入り浸り、女と酒と乱痴気騒ぎを好む快楽主義者として描かれる。一方、ネルーダを執拗に追うペルショノーは、曖昧で卑俗な出自からアイデンティティーの模索に苦しむ禁欲主義者。同時に無意識のうちにネルーダに魅了されていて、そのことが二人をコインの表と裏のように分かちがたくしている。

本作は偉大な詩人ネルーダの映画には違いないが、単なる偉人伝ではなく、かといって、かつて名作「イル・ポスティーノ」で描かれたような穏やかで老成した知識人の横顔でもない。抒情を帯びたロード・ムービーは、やがて雪山でのスリリングな追跡に至る頃には、西部劇の様相を呈してくる。さらに、物語の端々に現れるネルーダの詩の断片が、詩人の複雑な人物像への興味をかきたててくれるのだ。ガエル・ガルシア・ベルナル演じるペルショノーの心の声であるヴォイス・オーヴァーが効果的で、終わってみれば、ネルーダ本人よりもネルーダを愛した人々の記憶のような印象が残る作品だ。
【70点】
(原題「NERUDA」)
(アルゼンチン、フランス、スペイン/パブロ・ラライン監督/ルイス・ニェッコ、ガエル・ガルシア・ベルナル、メルセデス・モラーン、他)
(ロード・ムービー度:★★★★★)
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ジグソウ:ソウ・レガシー



街で複数の死体が発見される。おぞましくも特徴的な惨殺死体から、捜査線上にかつて人々を震撼させたジョン・クレイマーの名前が浮上する。“ジグソウ”の名で呼ばれ、凄惨な死のゲームを仕掛けた人物だが、彼は十数年前にこの世を去っていた。誰が殺人ゲームを仕掛けたのか。ジグソウの後継者、崇拝者が存在するのか。犯人の正体とその目的とは。様々な憶測が飛び交うが…。

殺人鬼ジグソウが仕掛ける殺戮ゲームを描いて大ヒットを記録したシチュエーションスリラーシリーズの最新作「ジグソウ:ソウ・レガシー」。一連の事件の犯人だったジグソウことジョン・クレイマーの死から10年後に、新たなゲームの幕が切って落とされる。2004年の第1作があまりにも強烈だったためか、それを超える作品となるとなかなか難しいが、7年ぶりの新作であるこの第8作には、死んだはずのジグソウが10年後に再び姿を現すという、反則技に近い驚きがある。だが、その驚きには大掛かりな仕掛けがあって、その仕掛けの内容を知れば、10年後の登場の真意、巧妙な伏線、整合性に気付くだろう。人気シリーズ再始動の役を引き受けたのは、双子の監督、スピエリッグ兄弟だ。

5人の男女が目覚めると、そこは見知らぬ空間。頭にバケツ、首と壁をつなぐ長い鎖、壁には無数の電動のこぎり刃。例によって、凝りに凝った残虐シーンがてんこもりだが、その死のひとつひとつに、登場人物たちが隠す嘘と罪があり、姿が見えない殺人鬼は、告白と犠牲を要求する。グロテスクな死に様の中でも、ラストのそれはビジュアル的にも強烈だ。とっくの昔に死んだはずのジグソウの復活という不可解な展開も含めて、今までになく謎解きミステリーの要素が強い。こじつけに見えなくもないこの復活劇は、劇中に登場するジグソウ心酔者だけでなく、映画ファンの多くがジグソウと彼のゲームを待っているということなのだ。シリーズは、人々が命の価値に気付くまで続くのだろう。
【60点】
(原題「JIGSAW」)
(米・カナダ/ピーター・スピエリッグ、マイケル・スピエリッグ監督/マット・パスモア、カラム・キース・レニー、クレ・ベネット、他)
(トリッキー度:★★★★☆)
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ザ・サークル

Circle [Blu-ray] [Import]
世界一のシェアを誇る巨大SNS企業「サークル」。誰もが憧れるこの一流IT企業に勤めることになった新人のメイは、ある事件をきっかけに、カリスマ経営者ベイリーの眼に留まり、新サービスの実験モデルに抜擢される。サークルが開発した超小型カメラを使って自分の私生活24時間をネット上に公開したメイは、瞬く間に1000万人を超えるフォロワーを獲得し、アイドル的存在になっていく。だが、そこには思わぬ悲劇が待ち受けていた…。

巨大SNS企業が個人のプライバシーを侵食する脅威を描くサスペンス「ザ・サークル」。SNS社会の光と闇を描く本作は、監視社会の危険性に警鐘を鳴らすもので、もしかしたらそう遠くない未来に起こりうる同時代性をはらんでいる。テクノロジーの進歩には功罪の両面があって、サークルの言い分は「隠し事は罪。すべてをさらして共有すれば悪いことはしないし、世界はもっと良くなる」というものだ。どう考えても危なすぎるこの主張に、主人公のメイが何となくのせられてしまうのは、憧れていた巨大企業の中で埋没したくないという虚栄心があったのだろうか。日常に孤独を抱えていたメイは、フォロワーの数を人気と勘違いし、アイドルとなった自分に舞い上がってしまうのだ。

サークルの社員は、個人情報や嗜好を執拗にシェアしたがり、新サービスの提案のプレゼンでは「シェアは思いやり。隠し事は嘘」と全員で大合唱するなど、まるで新興宗教のような不気味さだ。もちろん誇張はあるのだが、あまりにも描写が薄っぺらい。一流の頭脳が集う最先端IT企業で、この無自覚って?!何をシェアするべきかも考えない浅はかさは、見ていて不快だ。10代のティーンエイジャーならともかく、ヒロインは24歳の社会人。家族や友人を犠牲にし、やっと真実が見えてくるようでは遅すぎる。終盤のリベンジが、根本的な解決になっていないのも、モヤモヤが残る原因だ。ただ、実生活でSNS被害の体現者であるエマ・ワトソンが、監視社会によるプライバシー剥奪や、集団心理による個人攻撃を扱ったこんな作品に出演するのが、興味深いところだ。
【50点】
(原題「THE CIRCLE」)
(アメリカ/ジェームズ・ポンソルト監督/エマ・ワトソン、トム・ハンクス、ジョン・ボイエガ、他)
(問題提起度:★★★★☆)
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グッド・タイム

Good Time… Raw [解説付 / 国内限定盤CD] (BRC561)
ニューヨークの最下層で生きる若者コニーは、知的障害の弟ニックと銀行強盗を企てる。だが、強盗は失敗に終わり、途中でニックが警察に捕まってしまう。ニックは刑務所の中でいじめられた末に暴れて大怪我を負い、病院に送られることに。逃げ延びたコニーは、ニックを救おうと奔走するが、保釈金が用意できず、病院に忍び込んで何とか弟を取り戻そうとする。だが思いがけない事態に遭遇し、コニーは次第に追い詰められていく…。

投獄された弟を取り戻そうともがく兄の一夜の出来事を描くクライム・ムービー「グッド・タイム」。ドキュメンタリーを思わせるザラザラした質感の映像で描かれるのは、最愛の弟ニックを取り戻そうとする兄コニーの、あまりにも無計画な暴走ぶりだ。不運と滑稽さも加わって、コニーの運命はトンデモない方向へと舵を切る。彼の行き当たりばったりの行動は、やればやるほど事態を悪くしていて、このヤバい状況、分っているのか?!とツッコミたくなるが、コニーに迷いがないのは、ニックへの深すぎる愛情ゆえだ。兄弟の背景はほとんど説明されないが、劣悪な環境で生きてきたであろう彼らには、互いの存在だけが心の支えなのである。

前半、綱渡りにも似たコニーの衝動的な行動は、意外にも成功率が高いが、病院から弟を連れ出すところから大きすぎる誤算が生じ、そこからは“何でこーなるの?!”と言いたくなる展開に。色々な意味で目が離せなくなるが、共感とか応援などではなく、あっけにとられて見守るというのが正直なところだった。それでも、必死すぎるコニーの姿から、社会の底辺であえぐ若者の閉塞感や、都市にひそむ狂気がゆっくりと立ち上ってくる。コニーを怪演に近い熱演で演じるロバート・パティンソンは、ただならぬ迫力で素晴らしいの一言だ。地元ニューヨークのリアルを切り取った物語、クローズアップを多用した映像など、随所でインディペンデント映画の父、ジョン・カサヴェテスを思わせる。それでいて、今まで見たこともないような息苦しいほどのパワーを発散する本作。「神様なんかくそくらえ」で注目されたサフディ兄弟監督の名前は、映画ファンならぜひ覚えておきたい。
【70点】
(原題「Good Time」)
(アメリカ/ジョシュア・サフディ、ベニー・サフディ監督/ロバート・パティンソン、ベニー・サフディ、ジェニファー・ジェイソン・リー、他)
(疾走感度:★★★★★)
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シンクロナイズドモンスター

Colossal - O.S.T.
憧れのNYで働いていた作家志望のグロリアは、失業して以来、酒浸りの怠惰な日々を送っていた。ついには同棲中の恋人ティムに愛想を尽かされて家を追い出され、生まれ故郷の田舎町に逃げ帰る。そこで再会した幼馴染のオスカーが経営するバーで働くことに。時を同じくして韓国のソウルに、突如、巨大怪獣が出現。そのニュース映像に世界が騒然とする中、グロリアは、怪獣が自分とまったく同じ動きをすることに気付く。舞い上がったグロリアは、怪獣を操り、世界をさらなる混乱に陥れる。だがそこに“新たなる存在”が立ちはだかることになる…。

ダメウーマンがなぜか遠いアジアに出現した巨大怪獣とシンクロしたことから巻き起こる騒動を描く異色コメディー「シンクロナイズドモンスター」。職なし、家なし、彼氏なし。おまけに酒浸りでぐうたら。そんなダメウーマンを演じるのはオスカー女優の美女アン・ハサウェイというところがまず笑える。米国の田舎町に住むヒロインとソウルの怪獣がどういうわけがシンクロするという設定はなるほど奇想天外なものだが、そこには自分という存在が図らずも他者を傷つけてしまった時、それを反省し正義に目覚めるか、あるいは鬱積したストレスを発散するかのように暴走してしまうのか、というなかなかシリアスな問題が横たわっているのだ。もちろん見て見ぬふりという日和見も選択肢なのだが、主人公グロリアは、この不条理に向き合うことで、自分自身を見つめることになる。一見、おバカ映画路線に見えるが、ベースは見慣れた成長物語なのだ。

スぺイン出身の監督ナチョ・ビガロンドは、怪獣映画が大好きだそうで、このヘンテコなファンタジーを実に楽しんで演出している。誰もがモンスターとシンクロできるわけではないが、正義に目覚めたダメウーマンのパワーをあなどってはいけない。オスカー女優が楽しげに演じる負け犬ヒロインは、あなたの中にもモンスターがひそんでいるかも?と問いかけている。珍作だが何とも憎めない1本だ。
【55点】
(原題「COLOSSAL」)
(アメリカ/ナチョ・ビガロンド監督/アン・ハサウェイ、ジェイソン・サダイキス、ダン・スティーヴンス 、他)
(ダメっぷり度:★★★★☆)
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IT/イット “それ”が見えたら、終わり。

Ost: It
児童失踪事件が相次ぐ静かな田舎町。内気な少年ビルの弟も、大雨の日、道路に血痕を残して姿を消した。責任を感じて自分を責めるビルの前に、突然姿を現した“それ”を目撃して以来、ビルは恐怖に取りつかれてしまう。しかし“それ”を目撃したのは彼だけではなかった。ビルと秘密を共有することになった仲間たちは、力を合わせて“それ”に立ち向かうことを決意するが…。

子どもたちを狙う“それ”の恐怖を描くホラー映画「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」。原作はホラーの大家スティーブン・キングの小説で、田舎町に住む子どもたちの友情と冒険を描くことからホラー版「スタンド・バイ・ミー」の趣がある。実際、本作の恐怖“それ”は、子どもにしか見えず、心の闇が具現化したピエロ(の姿をした悪霊ペニーワイズ)は子どもしか狙わない。いじめの標的にされていたり、親から虐待を受けていたり、肉親を失っていたりと、何らかの心の傷から恐怖心を抱えた子どもだけが“それ”を見る。不気味なピエロは、大人にとっては何でもないものも恐怖の対象になる子ども時代特有の心理や弱みにつけ込み、子どもたちを捕食していくのだ。自分自身の深層心理とリンクした恐怖。これはかなり怖い。

一見のどかで平和な田舎町に潜む悪意や残虐性は、ホラー映画の定番だが、本作は、子どもが主人公だというのに、堂々のR15指定。排水溝から顔を出すトラウマ必至のペニーワイズの登場シーンのインパクトもさることながら、いじめや残酷シーンもかなりハードなもので、作り手の気合が伝わってくる。特に父から虐待を受けている少女ベバリーのシークエンスで登場する、血まみれの浴室のビジュアルは壮絶で息をのんだ。本作では、27年周期で現れる“それ”と闘う少年時代を描くが、壮年時代の闘いもまた映画化されるとのこと。力を合わせて恐怖に挑んだ負け犬のいじめられっ子、ルーザーズ・クラブのメンバーが、大人になってどう変化するのか、楽しみである。
【70点】
(原題「IT」)
(アメリカ/アンディ・ムスキエティ監督/ジェイデン・リーバハー、ビル・スカルスガルド、フィン・ウォルフハード、他)
(心の闇度:★★★★★)
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ノクターナル・アニマルズ

Nocturnal Animals (Blu-ray + DVD + Digital HD)
LAの現代アート界で成功したアートギャラリーのオーナー、スーザンは、経済的には恵まれていても心が満たされない日々を送っている。そんな彼女の元に、20年前に離婚した夫エドワードから、彼が書いた小説「夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)」が送られてくる。暴力的で衝撃的な内容のその小説はスーザンに捧げられていた。小説を読み進めながら過去を回想するスーザンは、かつて才能がなく精神的に弱いと軽蔑していたエドワードの、非凡な才能を見出し、やがて彼との再会を望むようになるが…。

監督デビュー作「シングルマン」が高い評価を得たファッション・デザイナーのトム・フォードの長編第2作となるミステリアスなドラマ「ノクターナル・アニマルズ」。原作はオースティン・ライトの小説で、現代と過去、現実と小説を交錯させながら描く物語は、常に不穏な空気に包まれている。別れた夫エドワードが送ってきた小説を読むスーザンは、エドワードを残酷な仕打ちの果てに捨てた自分の罪を思い出すことに。スーザンの心の葛藤と彼女を待つ運命を、緻密な心理描写とスタイリッシュな映像で綴り、現代のLA、過去のNY、小説のテキサスが、ひとつに溶け合っていく構造は、重層的で巧みなものだ。虚実が曖昧で濃厚な世界は、どこかデヴィッド・リンチのテイストと共通している。

ミステリアスで巧妙な語り口で描かれるサスペンスだが、物語そのものはメロドロマ。だがトム・フォードというとびきりの美意識のフィルターを通すことで、繊細で大胆な芸術作品のような映像が抽出されてくる。冒頭の、超肥満女性のパフォーマンスから、スーザンが身に着ける衣装や随所に登場する現代アート作品、果ては残酷な死までもが、美しく刺激的だ。スーザンが購入したことさえ忘れていた作品には、大きく太い文字で「REVENGE」とある。これは、愛をないがしろにした者への復讐の物語なのだ。エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノンら、実力派俳優たちの深みのある演技も見応えがある。トム・フォードの一部のスキもない演出の“着こなし”に、この異業種監督の映画の才能が本物であると確信した。
【75点】
(原題「NOCTURNAL ANIMALS」)
(アメリカ/トム・フォード監督/エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノン、他)
(スタイリッシュ度:★★★★★)
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氷菓

氷菓 (角川文庫)
神山高校に入学した折木奉太郎は“やらなくてもいいことはやらない。やらなければいけないことなら手短に”をモットーにしている高校一年生。姉の命令で廃部寸前の古典部に入部し、そこで好奇心旺盛な少女・千反田えると出会う。奉太郎がその明晰な頭脳と分析力で校内で起こる不思議な出来事を次々に解明してみせると、奉太郎の推理力を見込んだえるは、10年前に失踪した叔父がえるに残した言葉を思い出させてほしいという風変わりな依頼をする。中学時代からの同級生の里志と摩耶花も巻き込みながら、謎解きに挑む奉太郎だったが、そこには33年前に神山高校で起きたある事件と古典部文集「氷菓」に込められた謎があった…。

省エネ主義の男子高校生が好奇心旺盛な女子高生からの依頼で33年前に起こった事件の謎解きに挑む学園ミステリー「氷菓」。原作は米澤穂信による人気ミステリー小説だ。主人公・奉太郎は、何事にも冷めた態度で深入りを避け、灰色の学園生活を望む、高校生らしからぬ少年だ。一方、同じ古典部のえるは「わたし、気になります!」となると誰にも止められない、好奇心旺盛な少女。熱いえるが依頼人、クールな奉太郎が探偵の役を担う。えるが、自分が伯父から何を聞いたかを思い出させてほしいと赤の他人の奉太郎に頼むというのは、かなり奇妙な話だが、記憶も吹き飛ぶほどに強烈な出来事があったということだ。

33年前に神山高校で起こった事件が大きな鍵となるが、ポイントとなるのはそれが学生運動が盛んな熱い政治の季節だったということ。時代の狂騒は、文化祭を巡って、苦く悲しい挫折を生んだ。集団の中で個が抹殺される悲劇が、文集「氷菓」の中に封じ込められたまま、現代を生きる奉太郎らに届くプロセスは、そのまま歴史の検証となる。小さなヒントから、とんとん拍子に謎を解く展開はかなりご都合主義なのだが、真実へと導く案内人役に、決して熱くならない奉太郎という老成した少年は適役だ。ただ現代パートは、2000年という設定。携帯電話やインターネットは存在しているはずなのに、登場人物たちはあくまでもアナログの推理に終始する。そのためか時代設定がつかみにくく、てっきり現代パートも昭和の時代かと勘違いしてしまいそうだった。良くも悪くもノスタルジックな、謎解きエンタテインメントである。
【55点】
(原題「氷菓」)
(日本/安里麻里監督/山崎賢人、広瀬アリス、本郷奏多、他)
(ほろ苦度:★★★★☆)
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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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