映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ドリーム」「亜人」「僕のワンダフルライフ」etc.

エイリアン:コヴェナント

Alien: Covenant [Blu-ray](Import)
コールドスリープ中の男女2,000人を乗せた宇宙船コヴェナント号は、滅びゆく地球を飛び立ち、移住先の惑星オリエガ−6を目指していた。だが予期せぬ大事故で船体に甚大なダメージを受けた上、船長をはじめ乗組員の数十人が命を落とす事態に。船長の妻ダニエルズら、生き残った乗組員たちと最新型アンドロイドのウォルターが懸命に修復作業を行っている時、謎の電波を受信する。小型船で調査に向かった先は、移住先より近く、地球によく似た環境の神秘的な惑星だった。なぜか生き物の姿がまったく見当たらないその星で、乗組員が次々に体調異変を起こす中、凶暴な未知の生命体に遭遇したダニエルズたちは、絶体絶命の危機に瀕する。そこに現れたのは、ウォルターの前世代に当たるアンドロイドのデヴィッドだった…。

SFホラーの金字塔「エイリアン」シリーズの原点となる「エイリアン:コヴェナント」。リドリー・スコット監督の前作「プロメテウス」の続編で、エイリアン誕生の衝撃的な秘密が明かされる。ヴィジュアルは期待通りの素晴らしさで、幻想的な大自然が広がる楽園のような惑星の造形と、そこで繰り広げられるB級ホラーさながらのグロテスクな流血の惨劇というギャップに震えてしまう。エイリアンの誕生秘話に、人型アンドロイドの持つ知性や意志をからめたストーリーが、同監督の傑作SF「ブレードランナー」とも共通するモチーフなのが興味深い。映画の大きな特徴として、監督や俳優の、過去の他作品が色濃く影を落とすという興味深い事実を改めて認識させられた。

何の情報もない怪しい惑星に、部下が制止したにも関わらず、嬉々として足を踏み入れる新船長の愚行が、その後の長い長い惨劇の原点とは、情けない気がするが、ともあれ、エイリアン誕生のその理由をしっかりと知ることになるのはシリーズを見てきたファンとしては嬉しい。だが「プロメテウス」未見の観客にはわからない部分も多いので、少々不親切な作品でもある。クライマックスのどんでん返しは、予想通りのものだったが、それでもその衝撃とショックは破壊的だ。キャサリン・ウォーターストーンがタンクトップ姿でリプリーばりの雄姿を見せて好演しているが、そもそも「エイリアン」は戦う女性キャラがウリだったはず。それなのに、このシリーズが、いつのまにか、マイケル・ファスベンダーの映画になってしまっていることに、ちょっと苦笑いしてしまった。人間VSエイリアン、人間VSアンドロイド、さらにはアンドロイドVSアンドロイドまでも。この戦いに終わりはないと、ため息が出た。
【70点】
(原題「ALIEN: COVENANT」)
(アメリカ/リドリー・スコット監督/キャサリン・ウォーターストーン、マイケル・ファスベンダー、ジェームズ・フランコ、他)
(流血度:★★★★★)
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試写室だより 9月上旬

試写室だより今週末は3連休。それなのに、大型台風直撃の予報です  (T△T)
現時点では、日本列島縦断のコースをたどりそう(しかし、予報はコロコロ変わる…)。皆さん、天気予報をマメにチェックして十分に気を付けましょうね。

最近見た主な映画は以下。

「アナベル」「ルージュの手紙」「プラハのモーツァルト」
「エルネスト」「ユリゴコロ」「ミックス」「ラストレシピ」
などなど。

クリストファー・ノーラン監督の大作「ダンケルク」が好調です。
戦争映画なので、女性はちょっと敬遠するかもしれませんが、実はこの作品には、若き兵士の役で、人気アイドルグループ、ワン・ダイレクションのハリー・スタイルズが出演しています。本作が本格的俳優デビューで、なかなかの好演なのですが、何しろ名優が山ほどいるし、畳みかけるような戦闘で“個が埋没する”ストーリーのため、思ったより目立ちませんが… (;^_^A でも記念すべき俳優デビュー作が、いわゆるアイドル映画ではなかったことは、きっとこの先の彼の役者人生に影響を及ぼすはず。今後、俳優として活動するかどうかは未定だそうですが、とりあえず期待!といったところですね。


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三里塚のイカロス



1960年代、千葉県成田市三里塚地区。巨大国際空港建設のため突然立ち退きを要求された人々が、空港建設に反対して立ち上がった。主に農民たちが主導したその闘争には、武装した若者たちが全国から参加し、抵抗運動は激化していった。当時の闘争の責任者、農民運動家、地元農家の若者と結婚した女性らの証言をもとに、三里塚闘争とは何だったのか、あの時代とは何だったのかを検証していく…。

成田国際空港建設に反対した三里塚闘争に参加した農民たちと彼らに賛同した若者たちの生き様を描くドキュメンタリー「三里塚のイカロス」。同じ三里塚闘争を扱った記録映画「三里塚に生きる」(2014)の姉妹編である。「三里塚に生きる」が農民を描いたのに対し、本作では、農民たちを支持して共闘した若者たちにスポットを当てている。土地を暴力的に収奪した国家権力に対峙した農民を助けることで、若者たちは革命の拠点となった三里塚から、社会変革を成し遂げられると信じたのだ。

政治の季節は去り、本気で世界を変えられると信じた熱気は、今はもうない。成田国際空港も、規制の事実となり、現代の若者たちはサンリヅカの地から、楽しそうに海外旅行に出かけていく。この映画は、あの時代を生きた人々、とりわけ、今まで語りたくても語ることができなかった思いや事実を抱えてその後の人生を歩んできた人々の、集合写真のような役割を果たしている。特に、農民支援に入った農家の若者と結婚し、その土地に根をはった女性たちや、用地買収を担当した元空港公団職員らの言葉が聞けるのは、貴重だ。農民と若者たちは、単純な勝ち負けでは語れない歴史を共有したのである。本作は、三里塚闘争に身を投じた若者たちを、太陽に近づきすぎて墜落したイカロスに例えている。イカロスは墜落したかもしれないが、確かに飛翔した。そのことを覚えておきたい。
【60点】
(原題「三里塚のイカロス」)
(日本/代島治彦監督/加瀬勉、岸宏一、秋葉恵美子、他)
(時代検証度:★★★★☆)
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あしたは最高のはじまり

南仏できままに暮らすプレイボーイのサミュエル。彼の前に、かつて関係を持った女性クリスティンが生後数ヶ月の娘グロリアを連れて突然現れる。グロリアが実の娘と聞きサミュエルが驚いている間にクリスティンは赤ん坊を置いていなくなってしまい、サミュエルはクリスティンを探しだすためロンドンへ。しかし英語ができない彼はクリスティンをみつけられず、異国で途方にくれているところを、偶然出会ったゲイの敏腕プロデューサー、ベルニーから助けられる。映画のスタントマンとして働き出したサミュエルは、グロリアとベルニーといつしか本当の家族のような絆で結ばれていった。だが8年がたったある日、突如クリスティンが彼らの前に現れる…。

遊び人のシングルファーザーが子育てに奮闘する姿を描くハートウォーミング・ストーリー「あしたは最高のはじまり」。大ヒット映画「最強のふたり」で一躍スターになり、今やハリウッド大作からもひっぱりだこの国際派スターとなったオマール・シーは、ちょっといいかげんだけど明るく前向きなキャラクターが本当に良く似合う。お気楽に過ごしていた遊び人が、突然父親になることで、責任ある大人に変わる成長物語は、ゲイの友人と共に“男手ふたつ”での子育てがユニークだ。風変わりな父娘の絆は強く、成長したグロリアとサミュエルは“最強の”相棒となる。

納得できないのは、母親クリスティンの行動だ。情緒不安定とはいえ、娘を押し付けたり奪ったりでは、あまりに自分勝手で、生みの母である彼女に共感しようがない。ストーリーには、ちょっとご都合主義の展開も。だが、それらすべてを吹っ飛ばしてくれるのが、オマール・シーのはじけるような笑顔と、グロリア役の新人子役グロリア・コルストンのこれまた輝く笑顔である。母親のことをずっと世界を飛び回る凄腕スパイと信じてきたグロリア。後半にはやるせない決断が、そして終盤には思いもよらない悲劇が待ち受ける。少々風変わりな父娘の生き方に、親も子も不完全なのが当たり前、一緒に成長していくものなのだと教えられた。本作の原案は、日本未公開のメキシコ映画で、世界5ヶ国でリメイクが決定しているそう。常識破りの子育てと魅力的な父娘の絆の物語は、国境を越えて人々を魅了したようだ。
【60点】
(原題「DEMAIN TOUT COMMENCE」)
(フランス/ユーゴ・ジェラン監督/オマール・シー、クレマンス・ポエジー、アントワーヌ・ベルトラン、他)
(相棒度:★★★★★)
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ナインイレヴン 運命を分けた日



2001年9月11日、ワールドトレードセンターのエレベーターには、ウォール街で成功した実業家のジェフリーと離婚調停中の妻イヴ、バイクメッセンジャーのマイケル、恋人に別れを告げに来たティナ、そしてビルの保全技術者のエディの5人が居合わせる。だが突如、ビルに飛行機が激突し、エレベーターは北棟の38階辺りで停止。閉じ込められた5人は、外部との唯一の通信手段であるインターコムのオペレーターのメッツィーに励まされながら、なんとかエレベーターから脱出し生き延びる方法を探るが…。

2001年に起きたアメリカ同時多発テロ事件をビルの内部に閉じ込めらた人々の視点から描く社会派ドラマ「ナインイレヴン 運命を分けた日」。同時多発テロ下の実話から生まれた舞台『エレベーター』を映画化したものだ。様々な境遇の5人の男女は、狭い密室で互いのことを語り合い、人種や経済格差を超えて、ただ生き延びることだけを目標に力を合わせる。エレベーターの中は、そのままアメリカ社会の縮図になり、そこでなすべきことは何かと問いかけているかのようだ。

心が離れてしまったジェフリーとイヴの夫婦は互いに歩み寄り、不毛な恋愛を清算すると決めたティナは情緒不安定ながら初めて生きる意欲に燃える。マイケルやエディも、愛する家族のために、こんなところで死ぬわけにはいかないのだ。恐怖と戦いながら葛藤する5人の心理ドラマとしては良くできている。だが映画は見るからに低予算だし、ほとんどがエレベーターの中の会話劇なので、やや緩慢な印象は否めない。それでも16年前の衝撃的な悲劇を、今、改めて描くのは、互いに助け合い、団結して危機を乗り越える人々の姿を見せることで、分断の危機に瀕した母国アメリカのあるべき姿を伝えたいからである。NY出身のキャスト、スタッフが多く結集しているが、中でも、ゴシップまみれのお騒がせ俳優チャーリー・シーンが久しぶりに好演しているのが見所だ。
【65点】
(原題「9/11」)
(アメリカ/マルティン・ギギ監督/チャーリー・シーン、ジーナ・ガーション、ウーピー・ゴールドバーグ、他)
(一致団結度:★★★★★)
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三度目の殺人

三度目の殺人【映画ノベライズ】 (宝島社文庫)
勝つことにだわる弁護士・重盛は、同僚に頼まれてやむを得ず、30年前にも殺人の前科がある三隅の弁護を担当する。三隅は解雇された工場の社長を殺害し、死体に火をつけた容疑で起訴されていた。犯行を自供している三隅の死刑は確実なのだが、重盛はなんとか無期懲役に持ち込もうと調査を開始する。だが三隅は会うたびに供述を変え、動機も希薄だった。やがて三隅と、被害者の娘・咲江との接点や咲江の衝撃の告白が明るみに出て、それまでとは異なる事実が浮かび上がってくる…。

勝利にこだわる弁護士が殺人犯との交流で新たな真相にからめとられていく法廷心理サスペンス「三度目の殺人」。ホームドラマのイメージが強い是枝裕和監督だが、本作は、見るものを翻弄するミステリアスな心理サスペンスである。裁判で勝つためには、必ずしも真実や正義は必要ないというのが主人公・重盛のモットーだが、三隅の二転三転する供述に惑わされ、初めて真実が知りたいと切望する。重盛の心の変化はそのまま観客にも伝わるが、物語は単純な謎解きにはなっていない。残酷な殺人、咲江のおぞましい告白、“空っぽの器”であるはずの三隅の底なしの闇は、自信に満ちていた重盛を内部から崩壊させ、真相から遠ざかる。終始、寒々しいトーンの緊迫した映像が、往年のフィルムノワールのようなムードを醸し出しているのも効果的だ。

真相がつかめないまま物語が進んでいき、タイトルの意味さえも、観客に委ねられるこの作品は、ある種の実験映画かもしれない。ただそれでもなお、物語に引きこまれるのは、役者陣の名演に依るところが大きい。特に、福山雅治と所広司の二人が、接見室で向き合うシーンは迫力がある。ガラスで隔てられた二人が、時に探り合い、時に騙し合い、静かなバトルで対峙する様は、大きな見所だ。映画は、人が人を裁くことの意味を問うが、崩壊した家庭と不条理がまかり通る社会が、裁きと真実を遠ざけているような気がしてならない。重苦しい空気に覆われた物語の中で、重盛と三隅の故郷である北海道の雪景色が、一筋の明かりのようにまぶしかった。
【70点】
(原題「三度目の殺人」)
(日本/是枝裕和監督/福山雅治、役所広司、広瀬すず、他)
(藪の中度:★★★★☆)
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散歩する侵略者

映画『散歩する侵略者』オリジナル・サウンドトラック
数日間、行方不明になっていた鳴海の夫・真治が、突然帰ってきた。不仲だった真治が別人のように優しくなり、どこか以前と違う様子に、鳴海はとまどいを覚えるが、その後、真治は毎日散歩に出かけ、鳴海にガイドになってくれと、謎の提案をする。一方、町ではある一家の惨殺事件が起こり奇妙な出来事が頻発。事件を取材していたジャーナリストの桜井は、謎の若者に出会い行動を共にするうちに、ある事実に気付く…。

謎の侵略者によって日常が破壊されていく様子を描くSFスリラー「散歩する侵略者」。劇作家・前川知大による劇団イキウメの人気舞台を映画化したもので、国内外で高い評価を得る黒沢清監督の新作だ。侵略型SFには、何度もリメイクされている古典SF「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」(1956)があり、本作はまさに黒沢清版“ボディ・スナッチャー”という趣である。50年代に多く作られた米国映画のSF特有の不穏な空気は、目に見えない何かの気配を常に感じさせ、つかみどころがない黒沢ホラーの恐怖とも共通するものだ。

エイリアンたちは侵略のプロセスとして、身体を乗っ取るだけでなく、家族、仕事、所有などの人間の行動原理のベースとなる“概念”を奪っていく。この設定が新鮮で、興味深い。概念を奪われた人間は、不思議なほど解放され、自由になるというのは、現代社会への痛烈な皮肉に思える。鳴海と真治(の形をしたエイリアン)の夫婦の物語がラブストーリーならば、ジャーナリスト桜井と謎の若者の暴走は、奇妙な友情物語と言えようか。本作はSFという大枠を借りながら、ラブストーリー、ブラック・コメディー、サスペンス、ホラー、アクションと、さまざまなジャンルをクロスオーバーしたジャンルレス映画なのだ。のどかな地方都市を散歩する侵略者は、ゆっくりと、でも確実に世界を崩壊させていく。それでもなお、人間たちは、愛する人と一緒にいたいと願っている。絶望を描くかに見えて、今までにない“前向き”なメッセージを感じさせる内容に、黒沢清監督の新たな挑戦を感じる作品だった。
【75点】
(原題「散歩する侵略者」)
(日本/黒沢清監督/松田龍平、長澤まさみ、長谷川博己、他)
(ジャンルレス度:★★★★★)
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ダンケルク

DUNKIRK
1940年、英仏連合軍の兵士40万人が、ドイツ軍によってドーバー海峡に面したフランス北端の港町ダンケルクに追い詰められる。背後は海。陸も空も敵が迫っていた。若き兵士トミーとその仲間らはそれでも生き抜くことをあきらめてはいない。一方で、母国イギリスでは海を隔てた対岸の仲間の救出に、民間船までもが動員されることになり、船長のドーソンらは危険を顧みずダンケルクへと向かう。英空軍のパイロットのファリアもまた、圧倒的に形勢不利な状況の中、出撃。こうして、命懸けの救出作戦が始まった…。

第2次世界大戦中に約40万人もの兵士を救った史上最大の救出作戦を描く戦争スペクタクル「ダンケルク」。斬新な世界観で観客を魅了してきた俊英クリストファー・ノーラン監督が初めて実話の映画化に挑んだ力作だ。ダンケルクの撤退は、過去にも何度か映画化されていて、民間人が命がけで兵士を助けたということもあり、美談として語り継がれている。結果が分かっているスタンダードな史実だが、ノーラン監督の手にかかると、驚くほどの緊迫感で迫りくる戦争叙事詩となる。映画を見る観客は、そのまま曇天のダンケルクの戦場へと放り込まれ、すさまじい映像体験に圧倒されるはずだ。

ノーラン監督らしい演出は、時間と場所をシャッフルして描いたことだろう。陸・海・空の3つのパートに分かれているが、構成は極めて緻密だ。一見、3パートは同時進行しているように見えるが、ダンケルクの浜辺の陸上は1週間、民間船がダンケルクへと向かう海は1日、戦闘機が舞う空の戦いは1時間の出来事なのだ。その3つが最後には同じ瞬間に向かって収束していくストーリー展開は、見事というしかない。圧倒的な迫力の映像や、トム・ハーディやキリアン・マーフィ、ケネス・ブラナーら、名優たちの競演も素晴らしい。同時に、兵士のPTSD(心的外傷後ストレス障害)や仲間同士の諍いなどの極限状態のドラマも織り交ぜている。そんな中、マーク・ライランス演じる民間船の船長と息子の、毅然とした行動には心を打たれた。一致団結して戦った名もない人々の自己犠牲と勇気のおかげで、今の私たちがある。メッセージが明白だからこそ、華々しい勝利の戦いではなく、生き残りをかけた大撤退が、胸に迫ってくるのだ。くどくどと説明などせず映像で勝負する潔い演出で、上映時間はキリリと短い106分。無駄なシーンは何一つない。圧巻の臨場感を体験するためにも、ぜひ大スクリーンで見てほしい。
【90点】
(原題「DUNKIRK」)
(米・英・仏・オランダ/クリストファー・ノーラン監督/トム・ハーディ、キリアン・マーフィ、ケネス・ブラナー、他)
(愛国心度:★★★★☆)
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犬映画、猫映画、動物映画

コラム映画では「子どもと動物にはかなわない」とよく言われるんですが、まったく同感です。特に、動物好きの私としては、動物ものの映画にはめっぽうヨワくて(笑)。動物が名演技を披露する映画には、どうしても点が甘くなってしまうのです。やれやれ…(;^_^A

先日、試写で見た「僕たちのワンダフルライフ」(9/29公開)では、涙腺決壊寸前で困りました。映画は、大好きな飼い主の少年にもう一度会いたい一心で、何度も生まれ変わりを繰り返す犬の物語。監督は名匠ラッセ・ハルストレム監督で、「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」「HACHI 約束の犬」など、犬とは縁が深い監督です。犬好きの方は、ぜひどうぞ♪

猫派の方には、公開中(全国順次公開)の英映画「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」がおすすめ。「エル ELLE」に登場する黒猫はちょっと意味深でミステリアス。他の動物では「ハイジ アルプスの物語」のヤギが、ほのぼのムードでいい味出してます (^^)b

今、世の中は空前の猫ブームなので、映画にはよく猫が登場しているんですが、犬も静かに奮闘中。何しろカンヌ国際映画祭には、パルム・ドッグ賞という、優秀な演技を披露した犬に贈られる賞まであるんです。ちなみに現在公開中の「パターソン」に登場するイングリッシュ・ブルドッグのネリー(劇中でマーヴィンという名の犬を熱演)も受賞者ですが、惜しくも受賞前に亡くなってしまいました(涙)。

カンヌでは猫に贈られる賞はない現在、やっぱり映画では犬が猫を一歩リードしているということでしょうか。猫は、基本的に演技などしない、マイペースな動物なので無理ないか…。それでも作ってほしいなぁ、パルム・キャット賞。自他ともに認める猫派の私のつぶやきでした(←けっこうマジです)。

オズの魔法使 [Blu-ray]
ジュディ・ガーランド
ワーナー・ホーム・ビデオ
2010-07-14
←登場するのはテリア犬のトト。
自然な演技でダントツに評価が高い名優犬です。


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パターソン

Paterson (Blu-ray + Digital HD)
ニュージャージー州パターソン。街と同じ名前のバスの運転手、パターソンは、毎日を規則正しいリズムで暮らしていた。早朝、隣で眠っている妻ローラにキスをし、朝食を食べて出勤、業務をこなして帰宅する。妻と夕食を取り、愛犬マーヴィンと夜の散歩。馴染みのバーに立ち寄り一杯だけ飲んで帰宅した後は、妻の横で眠りにつく。そんな変わり映えのしない日々の中、パターソンは秘密のノートに、心に浮かぶ詩を書き留めていく…。

バスの運転手で詩人である主人公の一週間を淡々としたタッチで描く「パターソン」。市井の人々の、平凡な日常を丁寧に描く作風は、NYインディーズ映画の雄と呼ばれるジム・ジャームッシュ監督の初期の作品群にとてもよく似ている。バスの運転手のパターソンが作る詩は、どれも身の回りの物事を描写する静かな作品ばかりだ。映画で描かれる1週間には、内向的なパターソンの心を少しだけざわつかせる“事件”が起こったりはするが、外交的で活発な妻ローラのあたたかい励ましもあり、パターソンは詩作に励むことができる。バスの窓から見える風景や車内の乗客のとりとめのない会話、無邪気な狂気を感じさせるローラへの変わらぬ愛。そんな日常に目を凝らし、耳を澄ますパターソンは、毎日は1日として同じ日はないことを知っている。そのことがワーキングクラスの彼をアーティストにしているのだ。

繰り返し登場する双子、バーの常連客の痴話喧嘩、ローラのモノトーンへのこだわりなど、どうでもいいけれど愛おしいディテールは、日常からインスピレーションを得るパターソンの詩の得がたい味わいの糧なのだろう。ハリウッド大作からインディーズ作品まで神出鬼没のアダム・ドライバーの独特のたたずまいが素晴らしい。終盤に登場する日本の詩人役の永瀬正敏の存在感もまた印象的だ。この穏やかな映画は、平凡な日常の美しさと奥深さをつかめたなら、人生はきっと豊かなものになると教えてくれる。イングリッシュ・ブルドッグの名演と、まったりと流れる音楽が隠れた魅力だ。
【70点】
(原題「PATERSON」)
(アメリカ/ジム・ジャームッシュ監督/アダム・ドライヴァー、ゴルシフテ・ファラハニ、永瀬正敏、他)
(原点回帰度:★★★★★)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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