映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
アメリカ映画「シェイプ・オブ・ウォーター」

苦い銭



中国・東海岸に近い浙江省湖州。縫製工場が建ち並ぶこの町は、住民の8割を出稼ぎ労働者が占めている。人々は過酷な労働条件の下、お金を稼ぐためにがむしゃらに働いていた。雲南省出身の15歳の少女シャオミンもまた、縫製工場で働くため、長距離列車に乗ってやってきた。金が稼げず妻に暴力をふるう夫や酒に逃げる男もいれば、仕事になじめず1週間で故郷に帰るものもいる。カメラは朝から晩まで懸命に働く人々の日常を通して、急激な経済成長を遂げて変貌する現代中国の今を切り取っていく…。

中国の出稼ぎ労働者たちの人生を捉えたドキュメンタリー「苦い銭」。「鉄西区」「三姉妹 雲南の子」「収容病棟」などで世界的に高く評価される中国の名匠ワン・ビン監督の作品だ。いつも通り、唯一無二の被写体にじっくりと寄り添い、個人を丁寧に追うことで社会や国家を浮かび上がらせる手腕は健在である。だが本作で特筆すべきは、ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で脚本賞を獲ったこと。ドキュメンタリーであるにも関わらず脚本賞、である。加えて、人間の権利の重要性を問う秀作に与えられるヒューマンライツ賞も同時受賞しているのだ。只事ではない。

実際、映画を見てみると、現代中国の縮図を見るかのようなドラマチックな“群像劇”に仕上がっている。構成も巧みだ。登場する人々の共通の願いは“とにかく金を稼ぎたい”ということ。「1人騙せば1500元の儲けだ」「社長の気前のよさは2元ね」「200元やるからまずは落ち着け」。ちなみに1元は約17円。どうすればこんなリアルで滑稽なセリフが撮れるのか。ワン・ビン監督とカメラが彼らの暮らしにあまりに自然に溶け込んでいるからなのだが、基本は作り手が相手を尊重しているからだと思う。過酷な毎日の中にも小さな喜びを見出し、激しい夫婦喧嘩のあとにふと寂しそうな表情を見せるたくましくも心優しい労働者たち。大量の服や日本の百円ショップの商品の向こう側に、すべて彼らの姿があるのだ。「苦い銭を稼ぎに行くんだ」とつぶやく出稼ぎ労働者の青年の横顔が、いつまでも心に残る。
【75点】
(原題「KU QIAN/BITTER MONEY」)
(仏・香港/ワン・ビン監督/小敏、元珍、小孫、他)
(リアル度:★★★★★)


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THE PROMISE 君への誓い


1914年のトルコ南部。オスマン帝国の村出身のアルメニア人青年ミカエルは、医学を学ぶために首都コンスタンチノープル(現イスタンブール)の大学に入学する。彼はフランスから帰郷したアルメニア人の美しい女性アナと心を通わせるが、アナはアメリカ人ジャーナリストのクリスという恋人がいた。やがて第1次世界大戦が勃発しトルコが参戦すると、アルメニア人への不当な弾圧が始まり、ミカエルも問答無用で徴兵され強制労働を強いられる。ミカエルは、なんとか脱走を図り故郷へ戻るが…。

20世紀初頭にオスマン帝国が行ったアルメニア人大虐殺・追放事件を、運命に翻弄される3人の男女の姿を通して描く社会派ドラマ「THE PROMISE 君への誓い」。ナチス・ドイツによるホロコーストの約20年も前に起こったこのジェノサイドでは、150万の尊い命が奪われた。事件については、アルメニア系カナダ人のアトム・エゴヤン監督の「アララトの聖母」やトルコ系ドイツ人のファティ・アキン監督の「消えた声が、その名を呼ぶ」などで描かれている。また本作の劇中にチラリと登場する、修道士で作曲家コミタスの生涯を描いた映像詩の映画「コミタス」(ドン・アスカリアン監督)もある。だが、一般的にはあまり知られていないこの事件の全容を、正面から詳細に分かりやすく、有名スターを多く起用して描いたという点では本作が初だろう。ミカエルとアナ、クリスの三角関係のメロドラマは、決して物語を通俗化していない。時代と運命に翻弄されながら生き抜こうと奮闘する姿からは、悲しみだけではなく、人間が持つ生命力を感じさせる。

国家の都合で、ひとつの民族を、理不尽に抹殺しようとした歴史は、無慈悲な暴力そのもので、言葉を失ってしまう。知られざる歴史の悲劇に光を当てることは映画の使命のひとつだ。地味で暗い内容ながら、各国のスター俳優が集っているのも、そんなメッセージに賛同してのことだろう。「ホテル・ルワンダ」のテリー・ジョージ監督は、実在の人物をからめて虐殺事件の真実を描きながら、同時に民族や国境を超えた友情や愛情が存在したことを描くのも忘れていない。今もトルコ政府が事件を公式には認めていないことから、現地での撮影許可が下りず、映画は、3つの国約22ヶ所をめぐってロケを行うなどの逆境を乗り越えて作られたそうだ。想像を絶する体験から時に復讐の思いに駆られるミカエルに、アナが言う「生き残ることこそが復讐なのよ」との言葉があまりにも重かった。
【65点】
(原題「THE PROMISE」)
(スペイン・米/テリー・ジョージ監督/オスカー・アイザック、シャルロット・ル・ボン、クリスチャン・ベイル、他)
(歴史秘話度:★★★★★)


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羊の木

映画「羊の木」オリジナル・サウンドトラック
さびれた港町・魚深市。市役所職員の月末一(つきすえ はじめ)は、移住してきた6名の男女を受け入れるよう上司から命じられる。この6人は実は全員が元殺人犯で、移住は、受刑者を仮出所させ、過疎化が進む自治体で受け入れる国家の極秘プロジェクトだった。6人は、互いに接触しない、住民には素性は知られないようにする、最低10年は居住するなど、いくつかのルールの中で、町に馴染もうと努力していた。そんなある日、港で身元不明の死体が発見される。月末は不安にかられ、町と住民の日常が少しずつ狂い始める中、魚深市の奇祭“のろろ祭”の日が近づいていた…。

元殺人犯を受け入れた町を舞台に、異物が入り込んできたことで日常が歪んでいく様を描くヒューマン・サスペンス「羊の木」。原作は、山上たつひこといがらしみきおによる同名漫画だ。実写映画化された本作は、映画オリジナルの結末も含めて、原作からかなり離れているが、上手くまとまっている。元殺人犯の受刑者は、皆、挙動不審で、いつ爆発してもおかしくない人々ばかり。そんな緊張感の中心にいるのが、善良で凡庸な“普通の青年”月末というところが面白い。中心に平和を、周囲に波風を据える構図は、吉田大八監督の代表作の一つ「桐島、部活やめるってよ」にも通じる奇妙なテイストを感じさせる演出だ。

極端に臆病だったり、几帳面だったり、はたまた傲慢、迫力、過剰な色気、天真爛漫と、6人それぞれの個性はやがて衝突し連鎖していく。異物を排除する不寛容と、異質なものとの共生という寛容。その接点でせめぎあうこの物語には、奇祭の神・のろろが導く、思いがけない結末が待っている。それにしても、受刑者を受け入れることで刑務所の経費(税金)を削減しながら、同時に過疎化問題も解決してしまおうという突飛なアイデアは、架空なのに妙にリアルで生々しい。ユーモラスかつスリリングな演出、俳優たちの妙演のアンサンブル、そこに浮かび上がる人間の本性。なかなか奥深い群像劇だ。主人公・月末はいわば狂言回しなのだが、普通の青年役なのに群像劇に埋もれない錦戸亮の存在感が光っていた。
【70点】
(原題「羊の木」)
(日本/吉田大八監督/錦戸亮、木村文乃、松田龍平、他)
(オリジナリティー度:★★★★☆)


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不能犯

映画「不能犯」 オリジナル・サウンドトラック 音楽:富貴晴美
大都会を舞台に次々と不可解な変死事件が発生する。検死をしても何一つ証拠が出てこないそれらの事件には、決まって黒衣に身を包んだ宇相吹正(うそぶき ただし)という謎の男の姿があった。ある電話ボックスに殺人の依頼を残すと、宇相吹は、事故や自殺にみせかけて確実にターゲットを殺害する。警察は宇相吹の身柄を確保し任意で取り調べを始めるが、犯行は立件できず“不能犯”とされる。相手を見つめ話しかけるだけで相手を死に追いやる宇相吹だったが、刑事の多田友子だけは彼のマインドコントロールが効かないことが判明する…。

相手を死に追いやりながら立証不可能な犯行を繰り返す男の暗躍を描く異色サスペンス「不能犯」。原作・宮月新、作画・神崎裕也の大人気コミックが原作だ。タイトルの不能犯とは、目的は犯罪だが、常識的に考えて実現不可能な行為なので、罪に問われない。謎の男・宇相吹が行うマインドコントロールは、思い込みや先入観を利用するもので、専門用語でプラシーボ効果(別名、偽薬効果)と呼ばれるものだ。宇相吹とはいったい何者なのか?という疑問より、物語では彼に殺人を依頼する人々の殺意の純度と動機が問われる。愛、憎しみ、欲望、嫉妬が原因での殺人はブラックで皮肉な結果を伴い、宇相吹の「愚かだね、人間は」という決めゼリフへとつながる仕組みだ。

そんな宇相吹だが、唯一、彼がコントロールできない女刑事・多田に出会ったときは、なぜか嬉しそうな顔をするのが面白い。彼女は口は悪いが正義感で人情味があり、何より人間が持つ“善”を信じているのだ。「あなたなら僕を殺せるかもしれませんね」という静かなつぶやきは、人の心の闇を見すぎた宇相吹の、絶望と狂気の産物だ。主人公を演じる松坂桃李は、最近、単なるイケメン俳優ではないことをその挑戦的な役選びで証明しているが、本作はハマリ役。ダークヒーローを気持ちよさそうに怪演していて、興味深い。
【60点】
(原題「不能犯」)
(日本/白石晃士監督/松坂桃李、沢尻エリカ、新田真剣佑、他)
(ブラック度:★★★★☆)


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スリー・ビルボード

スリー・ビルボード
ミズーリ州の田舎町。数ヶ月前に何者かに娘を殺された女性ミルドレッドは、犯人がつかまらず警察の捜査が一向に進展しないことに腹を立て、3枚の巨大な看板に広告を出す。そこには警察署長ウィロビーへの非難の言葉が書かれていた。署長を敬愛するディクソン巡査のいやがらせや、町の人々からの抗議、一人息子からの反発を受けても、ミルドレッドはまったく引かないばかりか、ますます過激な行動で小さな町に波紋を広げていく。ミルドレッドが孤立無援に陥る中、事態は予想もしなかった方向へと動き出すのだが…。

田舎町に出現した3つの看板を巡り人々の思惑が交錯する物語「スリー・ビルボード」。娘を無残なレイプ殺人事件で失った母親が犯人逮捕を望んで過激な行動を起こすことが事件の発端だが、この物語は単純なサスペンスではない。看板を出した母親ミルドレッドは口も態度も悪く、時には法にも触れるような過激な行動を繰り返す。警察署長ウィロビーは知的で温和な人物で、事件こそ解決していないが真摯に捜査を続け町の人々から慕われている。ウィロビーを父のように慕うディクソン巡査は、暴力的な差別主義者な上、マザコンのダメ男なので、この愚か者が敵役なのかと思ったら、そうはならない。何より、犯人捜しがこの物語の主目的にはなっていないのだ。善悪では割り切れない型破りなキャラクターと、先が読めず、見るものの予想をどんどん裏切る展開に、思わず釘付けになる。

ではこの映画のテーマとは? それは“許すこと”である。人はなぜ憎み合い、いがみあうのか。そんな深淵な問いを、物語は、ブラック・ユーモアや滑稽さを交えて少しずつ解きほぐしていく。娘を守れなかった後悔と自分への怒りや孤独を全方位にぶつけるミルドレッドを演じるのは、名女優フランシス・マクドーマンド。大きな変化と成長を見せるキーパーソンのディクソンを演じるサム・ロックウェルや慈愛に満ちたウィロビー役のウディ・ハレルソンもベスト・パフォーマンスを披露している。監督・脚本は俊英のマーティン・マクドナー。一筋縄ではいかない群像劇を、怒りや憎しみから思いがけない方法で救い出すクレバーな演出は、目の肥えた映画ファンを虜にするだろう。クライム・サスペンスかと思わせておいて、見事なヒューマン・ドラマへと昇華する本作は、憎しみの連鎖を断ち切るひとつの答えを提示してくれる。柔らかな光が差すラストシーンに、極上の逸品を味わった時だけに感じる満足感を覚えた。
【90点】
(原題「Three Billboards Outside Ebbing, Missouri」)
(アメリカ/マーティン・マクドナー監督/フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、他)
(先読み不能度:★★★★★)


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試写室だより 18.01月下旬

試写室だより早いもので1月も今日でおしまい。
今年も残すところ、あと11ヶ月です〜 (;^_^A
地球温暖化への激しい懐疑心で、どうにかなりそうな寒さの中、試写室までの道のりが寒すぎてつらい…(涙)。インターネットに、氷結した滝で滝登りを楽しむツワモノの写真が出ていて、驚愕!キミはバーフバリなのか?!(あ、バーフバリが登った滝は凍ってなかったけど…笑)

最近見た主な映画は以下。

「悪女」「ビッグ・シック」「グレイテスト・ショーマン」「ビガイルド」
「ぼくの名前はズッキーニ」「坂道のアポロン」「レオン」などなど。

1月はお正月休みの関係で試写が少なかったので、見逃して、ずっと気になっていた映画「彷徨える河」をDVDでやっと見ることができました。

コロンビア初のアカデミー賞外国語映画賞ノミネートのこの作品は(映画そのものは、コロンビア・ベネズエラ・アルゼンチン合作作品です)、アマゾンの奥地を舞台に失われつつある文明と精神性を先住民の視点から描くもの。監督は世界の映画祭で注目されている俊英シーロ・ゲーラで、彼の長編第3作となります。

全編モノクロ(ラストに一瞬カラーになります)で、先住民族の呪術師である主人公を演じる俳優をはじめ、ほとんどの出演者は知らない役者ばかりでしたが、非常に新鮮な映画体験でした。ジャングルの奥地に足を踏み入れてそこに飲み込まれていくように進むストーリーは、例えばヘルツォークの「アギーレ」「フィッツカラルド」やコッポラの「地獄の黙示録」などがあるんですが、それらはすべて欧米視点。つまり自然界に土足で足を踏み入れる者の側から見たもので、そういう意味ではこの「彷徨える河」は、まったくスタンスが異なります。

決して分かりやすい作品ではないし、派手さもない。それでもどうしようもなく惹かれてしまう何かがある。そんな映画を見たいと思ったら、この映画のことを思い出してほしいと思います (^o^)

彷徨える河 [Blu-ray]
ヤン・ベイヴート
ポニーキャニオン
2017-08-02

←2015年カンヌ国際映画祭監督週間で最高賞受賞作!



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殺人者の記憶法

殺人者の記憶法 (新しい韓国の文学)
元連続殺人鬼の男ビョンスはアルツハイマーを患いながらも、娘と二人で穏やかに暮らしていた。ある日、偶然出会った男テジュの異様な雰囲気を感じ取り、彼もまた自分と同じ殺人鬼であることを直感する。ビョンスは警察にそれを通報するが、テジュは実は警察官で、誰もビョンスの言うことを信じようとしない。ビョンスは自らテジュの凶行を阻止しようとするが、ビョンスはアルツハイマーによる記憶の喪失に苦しめられる。そんな中、新たな連続殺人事件が発生するが…。

アルツハイマーを患う元連続殺人鬼が新たな殺人鬼と死闘を繰り広げる様を描く異色サスペンス「殺人者の記憶法」。物語は、殺人鬼VS殺人鬼のバトルの構図だが、主人公ビョンスは年老いてアルツハイマー、一方、敵のテジュは若い警察官。あまりに分が悪い戦いだ。何よりもビョンスは自らの記憶の混濁と戦わねばならない。メモを取り、録音し、昨日の自分の行動をたどる様は「メメント」さながらだが、記憶を整理していく過程で、なぜビョンスが殺人を繰り返してきたかという謎や、ビョンスの罪悪感、アイデンティティーに一人娘への愛情など、単純な善悪では割り切れない思いや心理が絡み合う。複雑なのに、それを見事に整理した脚本が巧みだ。

韓国映画のサスペンスは人気のジャンルだが、特に地方の田舎町の閉塞的な空気や土着性、古い慣習などの独特のムードを活かした作品に優れたものが多く、本作もまたそんな系譜につながる1本だ。人殺しを習慣とする二人の殺人者の対決は、周囲を情け容赦なく巻き込みながら、予想外の展開へとなだれこむ。なりきり型の演技派俳優ソル・ギョングが10kg以上減量して作り上げた老いとやつれっぷりがすさまじく、演技に凄みを増している。体重を14kg増やしてテジュを演じたキム・ナムギルの、爬虫類のような薄気味悪さも好対照だ。見終わってみれば、猟奇殺人のサスペンスでありながら、秀逸な人間ドラマを見たことに気付かされる。竹林の場面など、思わずハッとさせられる美しい映像も見所だ。
【80点】
(原題「MEMOIR OF A MURDERER」)
(韓国/ウォン・シニョン監督/ソル・ギョング、キム・ナムギル、ソリョン、他)
(役作り度:★★★★★)


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祈りの幕が下りる時

映画「祈りの幕が下りる時」オリジナル・サウンドトラック
東京葛飾区のアパートで女性が殺害される事件が発生し、現場のアパートの住人・越川睦夫が行方不明になる。松宮ら警視庁捜査一課の刑事たちが事件を調べるが捜査は難航。やがて捜査線上に、被害者の女性と学生時代に同級生だった舞台演出家の浅居博美の存在が浮上するが、彼女には完璧なアリバイがあった。そんな中、松宮は近くで発見された身元不明の焼死体との関連性を疑う。さらに日本橋を囲む12の橋の名が記された遺留品に注目した松宮は、そのことを先輩刑事で従兄弟の加賀恭一郎に知らせると加賀は激しく動揺する。それは、かつて孤独死した加賀の母とつながるものだった…。

類まれな推理力で難事件を解決する刑事・加賀恭一郎を主人公にした「新参者」シリーズの完結編「祈りの幕が下りる時」。謎めいた殺人事件の容疑者である美しい女性演出家の過去を調べると、加賀の亡き母の失踪という最大の謎へつながり、あまりにも悲しく切ないドラマが浮かび上がる。東野圭吾の人気ミステリーシリーズである「新参者」の主人公・加賀は、事件をただ解決するだけでなく、事件によって心が傷ついた人たちに寄り添い傷を癒そうとする。そのことがこのシリーズを重厚なドラマにしているが、今回の事件は加賀自身の過去に深くかかわっていて、彼は自分自身の葛藤、不和だった父や失踪した母ら、家族の真相と向き合うことになるのだ。

ミステリーなので詳細は明かせないが、加賀の心の旅路ともいえる物語は完結編にふさわしい内容だ。クールで冷静な今までの加賀ではなく、人間味、とりわけ家族のわだかまりと再生へとつながっていく展開は「マザコンだからな」と自虐する加賀でなくても、心を揺さぶられるはず。映画がはじまってから加賀が登場するまでずいぶん待たされること、松嶋菜々子扮する演出家の事件と加賀の母の失踪事件のつながりがサクサクと紐解かれていくことなど、不満はあるが、二組の親子には共に究極の親子愛が。やはり、このシリーズの完結編は、悲しみや哀切を背負った犯罪を解決してきた加賀自身を癒すものでなければならない。さて名物のたい焼きだが、果たして加賀は食べることができるのか?! ファンなら気になるその“難事件の答え”は映画を見て確かめてほしい。
【60点】
(原題「祈りの幕が下りる時」)
(日本/福澤克雄監督/阿部寛、松嶋菜々子、溝端淳平、他)
(親子愛度:★★★★★)


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ザ・リング/リバース

ザ・リング リバース
“見た者は必ず7日後に死ぬ”と言われる呪いのビデオを恋人ホルトの身代わりになって見てしまったジュリアは、呪いを断ち切るため、ホルトと協力しながら、呪いのルーツを調べ始める。やがて彼らはわずかな手がかりを頼りに一人の少女にたどりつくが、それを機にさらなる恐怖に引きずり込まれていく…。

ジャパニーズ・ホラーの金字塔「リング」シリーズのハリウッド版「ザ・リング/リバース」は、ハリウッドリメイク版としては第3弾となる。呪いのビデオはパソコンに取り込まれファイルデータになっているなど、現代的な味付けはなされているが、基本的には日本版と同じだ。サマラの生い立ちは貞子に近くなっているし、7日間のタイムリミットまでに呪いを解こうと奮闘するという設定もオリジナルに忠実なものである。

鈴木光司原作の小説「リング」の刊行は1991年、日本映画「リング」が公開されたのは1998年だから、映画ファンはかれこれ20年近くこの呪いのビデオに付き合っていることになる。日本では「貞子3D」や「貞子VS伽椰子」など、もはやイベント化してきた感があるが、そんな中、本作は原点回帰を目指したというだけあって、キワモノ感は薄く、むしろ日本版に敬意を表す作りだ。ただその分、見慣れたものを見ているイメージがあり恐怖感が乏しくなったのは残念。とはいえ“誰かに見せることによって呪いから逃れる”というプロットは、国内外を問わずリメイク、リブートされ続ける本シリーズの本質と重なる。まさに“呪いは終わらない”のだ。
【50点】
(原題「RINGS」)
(アメリカ/F・ハビエル・グティエレス監督/マチルダ・ルッツ、アレックス・ロー、エイミー・ティーガーデン、他)
(恐さ度:★★☆☆☆)


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ロング,ロングバケーション

Das Leuchten der Erinnerung
元文学教師でアルツハイマーの夫ジョンと末期がんの妻エラは半世紀を一緒に過ごしたおしどり夫婦。ある日二人は、心配性の子どもたちに黙って、ボストンの自宅からキャンピングカーに乗って南へ向かって旅に出る。70歳を超えた今、人生最後の旅の目的地は、ジョンが大好きな作家ヘミングウェイの家があるフロリダのキーウェストだ。旅の途中では、記憶があいまいなジョンがエラを置き去りにしたり、ナイフを持った若者に脅されたり、ウィスキー片手にスライド写真を見て家族の楽しい思い出をふり返ったり…とさまざまな出来事が。ハプニングとトラブルの連続の末についにキーウェストに到着した二人だったが…。

長年連れ添った老夫婦の人生最後の旅を描くロードムービー「ロング,ロングバケーション」。原作はアメリカ人作家マイケル・ザドゥリアンの小説「旅の終わりに」だ。本作は、イタリアの名匠パオロ・ヴィルズィ監督が初めてアメリカを舞台に作った英語作品となる。笑いあり、涙ありの旅は単なる観光旅行ではない。共に歩んだ人生を振り返り、最後の瞬間から目を背けずにゴールを目指す旅路である。高齢化社会、介護などのシリアスな問題も描かれるが、ヘレン・ミレンとドナルド・サザーランドの二人の名優にかかると、ユーモアと美しさをにじませて、思わず二人の演技に見入ってしまう。特に、ジョンの記憶の衰えにいらだち、そんな自分のいらだちを後悔するなど、繊細な心理描写を見せるエラ役のヘレン・ミレンの演技はパーフェクトと言うしかない。

認知症のジョンはエラが今も初恋の相手と会っていると思い込み、エラは数十年前のジョンの浮気を知って怒り心頭!だったり。なんだかんだ言っても夫婦には確かな愛の歴史があり、強く結ばれているのだ。ついにたどり着いた約束の地での“選択”は、賛否両論だろうが、決して悲しくも愚かでもないと思えれば、その時観客はこの映画の幸福な“共犯者”になるだろう。イタリア映画界を代表する名カメラマン、ルカ・ビガッツィによる映像が、ロードムービー特有の心地よい光と風を運んでくれた。
【65点】
(原題「THE LEISURE SEEKER」)
(イタリア/パオロ・ヴィルズィ監督/ヘレン・ミレン、ドナルド・サザーランド、ジャネル・モロニー、他)
(終活度:★★★★★)


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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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