映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「アトミック・ブロンド」「バリー・シール」「あゝ、荒野 後篇」「我は神なり」etc.

僕のワンダフル・ライフ

A Dog's Purpose (Blu-ray + DVD + Digital HD)
少年イーサンに命を救われたゴールデンレトリバーの子犬ベイリーは、飼い主となったイーサンを慕い、いつも一緒にいて強い絆を育んでいた。だが犬の寿命は人間より短く、やがて別れの時がやってくる。イーサンより先に旅立ったベイリーだったが、ベイリーはイーサンに再会したい一心で、犬種や性別を変えて、生まれ変わりを繰り返すことになる…。

飼い主と固い絆で結ばれた犬が何度も生まれ変わって再会しようと奮闘するファンタジー・ドラマ「僕のワンダフル・ライフ」。原作は、W・ブルース・キャメロンのベストセラー小説「野良犬トビーの愛すべき転生」で、監督は「HACHI 約束の犬」や「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」など、ドッグ・ムービーの秀作を作ってきた名匠ラッセ・ハルストレムだ。犬のベイリーが最愛の飼い主イーサンとの再会を目指すのは「イーサンを幸せにする」ため。これだけでも泣けるのだが、本作はただの動物ものファンタジーではない。イーサンが味わう、家庭や恋、将来の夢などでの苦い挫折を通してみれば、ままならぬ人生の複雑さが見えてくるし、50年間で3度輪廻転生を繰り返す犬の目を通して、アメリカ現代史の移り変わりをも見ることができるのだ。そんな深みがある作品だが、語り口はあくまでも軽やかで、嫌味のない感動作に仕上がっている。

ゴールデンレトリバー、シェパード、コーギーと、生まれ変わる度に、犬種や性別が変わるが、中身は愛すべき忠犬ベイリーのまま。複数のエピソードで語られる涙と笑いのストーリーは、犬好きの心をガッツリとらえて離さないだろう。いや、猫派の私(注:基本的に動物好きです)でも、涙腺決壊状態だったのだから、可愛らしい犬たちの名演技に誰もが魅了されるはずだ。ベイリーの声を担当するのは「アナと雪の女王」でオラフを演じたジョシュ・ギャッド。ちょっぴりおしゃべりが過ぎる気がするが、イーサンに会いたいベイリーの一途な思いを感情豊かに演じて素晴らしい。時に親友として喜びを分かち合い、時に悲しみや孤独を癒し、時には恋のお手伝いも。無償の愛を捧げる犬が人間の最良の友と言われる理由がよく分かる佳作だ。
【70点】
(原題「A DOG’S PURPOSE」)
(アメリカ/ラッセ・ハルストレム監督/ブリット・ロバートソン、K・J・アパ、ジョン・オーティス、他)
(ファンタジー度:★★★★★)
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試写室だより 17.09月下旬

試写室だより最近、知人から、クコの実(乾燥タイプ)をいただきました。
杏仁豆腐の上にチョコンと乗ってる、あの赤い実です〜。
ちょっとクセがあるけど、なかなか美味しいし、ヨーグルトやコーンフレークに入れて食べてます。

クコの実は、美容にいいとか、老化防止に効果的とかいろいろ言われていて、最近、海外セレブの間でも人気のスーパーフルーツなんですが、説明書によると、これ、眼にいいんだそうです(眼精疲労など)。初めて知った!さらにクコの実は別名ゴジベリーって言うんですって。これまた初めて知った!

仕事柄、毎日、映画漬けで、さらにパソコンやスマホをほぼ1日中観てるので、眼の疲れは、自慢じゃないですが、ハンパないです(汗)。今まで、ブルーベリーなどのサプリメントを愛飲してたんですが、しばらくクコの実で頑張ってみようと思います〜。

最近見た主な映画は以下。

「アトミック・ブロンド」「ザ・サークル」「バリー・シール」
「クボ」「ギフテッド」「あゝ、荒野」「恋と嘘」「花筐」
「斉木楠雄のΨ難」「彼女がその名を知らない鳥たち」
などなど。

「君の名は。」がハリウッドで映画化されるとのこと。これって、スゴイことです!
もっとも、ハリウッドが権利を買ったといっても、実現となると難航するのが現実。
いい例が「AKIRA」の実写化で、何度も話題になったものの、結局いまだに実現せず。監督候補も、有名どころが何人も取りざたされ、もはや都市伝説のような話になってます (;^_^A

「君の名は。」には、日本的な要素もあるし、どう“料理されるか”が心配なような楽しみのような…。ともあれ、さすがはモンスター級の大ヒットアニメ。その広がりは世界規模のようですね(^o^)


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ドリーム

「ドリーム」オリジナル・サウンドトラック
1960年代初頭、アメリカは、国内では人種問題、対外的には東西冷戦で揺れていた。ソ連との熾烈な宇宙開発競争が繰り広げられる中、ヴァージニア州ハンプトンのNASAラングレー研究所では、優秀な黒人女性たちが、理不尽な差別や格差に耐えながら、計算手として働いていた。天才的な数学の才能を持つキャサリンは、黒人女性として初めて宇宙特別研究本部に配属されるが、白人ばかりの職場の雰囲気は冷たく、そのビルには有色人種用のトイレもなかった。一方、管理職を目指すドロシー、エンジニアを志すメアリーらも、数々の困難の中でひたむきに夢を追い続けていた…。

NASAで宇宙開発に携わった黒人女性たちの功績を実話をもとに描く「ドリーム」。マーキュリー有人飛行計画と言えば「ライトスタッフ」がすぐに思い浮かぶが、本作で描くのは、その計画を支えたのが、ずば抜けた才能を持った黒人女性たちだったという知られざる事実だ。時は1960年代。NASAで働くキャサリン、ドロシー、メアリーの3人の黒人女性は、人種差別と女性蔑視という2つの差別と戦わねばならなかった。こう説明するとシリアスな社会派ドラマに思えるが、本作はあくまでも明るくポジティブな作風で。見れば元気をもらえる痛快エンタテインメント・ムービーなのである。1960年代当時の明るいファッションやポップな音楽が、これまたチャーミングだ。

トイレやコーヒーポットまで非白人用と区別する愚行は、コミカルな描写で笑いを誘い、同僚や上司の嫌がらせには、知性とウィットで対抗する。時に愚痴ったりあきらめかけたりもするが、そんな時の助けは、友情や家族の支え、新しい恋のときめきだ。何よりも彼女たちが本来持つ、明るい性格やあたたかい人間性が、周囲や社会、ひいては時代を動かしたのだと思えてならない。タラジ・P・ヘンソンを筆頭に、俳優陣は皆、好演だが、キャサリンの誠実な恋人を演じるマハーシャラ・アリの柔らかな雰囲気が特に印象的で、オスカーを獲得した「ムーンライト」とはまた違った魅力を発見できる。本作は、いくつもの“最初の扉”を開けたアフリカ系アメリカ人の女性たちのチャレンジを痛快なエピソードでテンポ良く描いてみせた快作だ。人種差別や性差別は今も社会にはびこり、アメリカが今までになく不安な時代を迎えている今だからこそ、彼女たちの知的な勇気がより輝いて見える。
【80点】
(原題「HIDDEN FIGURES」)
(アメリカ/セオドア・メルフィ監督/タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ、他)
(歴史秘話度:★★★★★)
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パッション・フラメンコ



現代フラメンコ界最高のダンサー、サラ・バラス。革新的な舞台演出やパフォーマンスで絶賛される彼女が、フラメンコの巨匠たちに捧げる新作公演「ボセス フラメンコ組曲」の初演までの3週間と、フランス、メキシコ、アメリカ、日本、母国スペインを回る世界ツアーに密着し、フラメンコへの情熱と、家族を愛する一人の女性としての姿に迫っていく…。

スペイン出身で、現代最高峰のフラメンコダンサー、サラ・バラスを追ったドキュメンタリー「パッション・フラメンコ」。サラが率いる舞踏団の新作は、フラメンコ界の巨匠6人に捧げる舞台だ。6人のマエストロは、パコ・デ・ルシア、アントニオ・ガデス、カルメン・アマジャ、カマロン・デ・ラ・イスラ、エンリケ・モレンテ、モライート・チーコ。ギタリスト、ダンサー、歌手である彼らは皆、故人だが、中にはサラと親交があった巨匠もいる。サラ自身、天才肌の上に努力家で、既存のルールを打ち破るチャレンジャーでもあり、6人の巨匠たちと共通する部分が非常に多い。

短い期間で新作を仕上げるまでのプロセスはもちろん、サラの素晴らしすぎるダンス、彼女と一緒に舞台を作り上げるメンバーのパフォーマンスに、たっぷり酔いしれることができる。驚いたのは、サラがプロのダンサーとして覚醒した原点ともいえる場所が、日本だということ。それから、一度は子どもを持つことをあきらめかけたのに、幸いなことに母となったサラの母性も印象的だ。天才ダンサーであると同時に、母であり妻でり、何よりも女性である。さらに、若くして自分の舞踏団を率い、男性が躍ることが通例だったジャンルのダンスにも挑戦するなど、男社会で一流の仕事を続けてきた“キャリアウーマン”でもあるのだ。高い目標をかかげ、リスクを恐れず、絶えず努力を惜しまない女性サラ。フラメンコに興味がある人はその超絶技巧のダンスをたっぷり楽しむことができるし、フラメンコに詳しくない人も、彼女の情熱的な生きざまに魅了されるだろう。本作に興味を持ったら、併せてカルロス・サウラ監督の「フラメンコ・フラメンコ」「イベリア 魂のフラメンコ」もぜひ観てほしい。
【60点】
(原題「SARA BARAS. TODAS LAS VOCES」)
(スペイン/ラファ・モレス、ペペ・アンドレウ監督/サラ・バラス、ホセ・セラーノ、ティム・リース、他)
(女性映画度:★★★★☆)
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プラネタリウム

1930年代。アメリカ人スピュリチュアリストである姉妹、ローラとケイトは、降霊術ツアーでヨーロッパを訪れ金を稼いでいた。美しく聡明な姉ローラはショーを仕切る野心家で、霊感が強く純粋な妹ケイトは自分の世界に閉じこもる内気な少女だ。この美貌の姉妹の才能に魅了された映画プロデューサーのコルベンは、世界初となる心霊映画の撮影を持ちかける。華やかな都パリを訪れた姉妹は、映画製作に挑むが、上手く演じられないケイトに対し、ローラは女優としての才能を発揮し始める。一方、男女の区別なく火遊びを楽しむコルベンは霊感があるのはケイトだけだと見抜き、有害な電磁波を使う実験に挑んだ。信頼関係で結ばれているコルベンとケイトを目の当たりにして、ローラは激しく嫉妬するのだが…。

心霊術師の美人姉妹が、一人の映画プロデューサーとの出会いから運命を狂わせていく様を描くミステリアスなドラマ「プラネタリウム」。物語はフィクションだが、キャラクターにはモデルがいて、実在したスピリチュアリズムの先駆者、フォックス三姉妹と、フランスにトーキーを導入した伝説の映画プロデューサー、ベルナール・ナタンからインスピレーションを得たという。一見華麗に見える1930年代は戦争の足音が聞こえる不穏な時代だ。そこに、美貌の姉妹が繰り広げる神秘的な死者との交霊や、ユダヤ人映画プロデューサーの悲劇的な運命などが複雑にからみあい、物語はミステリアスで幻想的な色合いを帯びている。

上昇志向が強く野心家の姉ローラは女優になってスクリーンにその姿を焼き付け、霊感が強い妹ケイトは危険な実験によって自ら死へと近づいてしまう。姉妹の運命を狂わせるのはユダヤ人の映画プロデューサーのコルベンだが、彼もまた反ユダヤの風潮の中、組織的中傷の犠牲になっていく。愛憎が混在するこの3人が疑似家族のような関係になる展開は興味深い。姉妹の心霊術は本物か、偽物か。信じると見える霊の存在は、昼には見えないが夜になると見える星のように、あるいは、明るいと見えないが暗くなると見える映画のように、見えない世界を見せる、儚い願いなのかもしれない。ナタリー・ポートマンは「ブラック・スワン」を彷彿とさせる知性と狂気が入り混じった迫力の演技を見せ、リリー=ローズ・デップは、ピュアな少女を初々しく好演しつつ、しっかり存在感を示している。決して分かりやすい作品ではないが、才色兼備のレベッカ・ズロトヴスキ監督の非凡なセンスが感じられる独創的な映画だ。
【65点】
(原題「PLANETARIUM」)
(仏・ベルギー/レベッカ・ズロトヴスキ監督/ナタリー・ポートマン、リリー=ローズ・デップ、ルイ・ガレル、他)
(疑似家族度:★★★★☆)
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ユリゴコロ

ユリゴコロ (双葉文庫)
カフェを営む亮介の平穏な日常は、父が余命宣告され、さらに婚約者の千絵が失踪するという事態で、突如崩れ去ってしまう。失意の亮介は、父が住む実家で“ユリゴコロ”と書かれたノートを発見。そこには、人間の死でしか、生きていくための拠りどころを感じられない殺人者・美紗子の告白の物語がつづられていた。繰り返される殺人、友人の自殺、自分を心から愛してくれる男性・洋介との出会い…。これは創作か、事実か。誰が何のために書いたのか。なぜ自分はこれほどまでにこのノートに惹きつけられるのか。そんな時、亮介のもとに、千絵とかつて同僚だったという女性が、千絵の伝言を持って現れる…。

人間が死ぬ瞬間を見ることを唯一の心の拠りどころとして殺人を繰り返す女の壮絶な人生を描くミステリー「ユリゴコロ」。原作は沼田まほかるの同名小説で、いわゆる“イヤミス(読後にいやな気分になるミステリー)”と呼ばれるジャンルだ。映画は、亮介が読む手記の中の過去の物語と、亮介と父、失踪した婚約者・千絵らの現在のパートが交錯しながら、進んでいく。

殺人でしか心が満たされないという設定上、かなり凄惨な描写が登場するが、同じく死に取りつかれた美紗子の友人・みつ子のリストカットといった、殺人とは少し違う流血場面も相当に生々しい。ミステリーなので詳細は明かさないが、ノートに引きこまれる前半が心をザワつかせる異様なサスペンスなのに対し、後半は一気にラブストーリーに傾き、トーンダウンする感は否めない。さらに終盤には衝撃の事実が用意されているが、これが、あまりに偶然に頼る設定なのが、気になった。とはいえ、終始、暗い情念を感じさせるヒロイン役の吉高由里子は熱演だし、心に深い傷を抱えながら美紗子を愛し抜く洋介を演じる松山ケンイチもいい。サイコ・スリラーから純愛ラブストーリー、そして家族愛のドラマへ。テイストの変化がこの作品の個性だろう。
【60点】
(原題「ユリゴコロ」)
(日本/熊澤尚人監督/吉高由里子、松坂桃李、松山ケンイチ、他)
(流血度:★★★★☆)
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チェイサー



シングルマザーのカーラは、いつも訪れている公園で一瞬だけ目を離したすきに、4歳の息子フランキーを何者かに連れ去られてしまう。車で必死で追いかけるが、犯人は誰かわからず、まともに取り合ってくれない警察は当てにならなかった。息子を絶対に取り返すと誓ったカーラは、たった一人でフランキーを探し出し、取り戻そうと決意する…。

アメリカで社会問題になっている児童誘拐を題材にしたアクション・スリラー「チェイサー」。子どもを誘拐された親がどんな犠牲を払っても我が子を取り戻すというストーリーは「96時間」に似ているが、本作の母親カーラは、元凄腕スパイや元CIA特殊工作員などではない、平凡なウェイトレスなのだ。だが我が子を愛する気持ちと絶対に取り戻すという強い決意は「96時間」の最強の父親に勝るとも劣らない。息子を乗せた犯人の車を自分の車でひたすら追いかけるだけという展開は、一見メリハリがないように思えるが、次から次へとトラブルが巻き起こり、一瞬も目が離せなくなる。このテの追跡劇では必須の小道具のスマホを使わせない設定が、なかなか新鮮で、まさに身一つでの戦いだ。

オスカー女優でボンドガールも務め、ゴールデンラズベリー賞も受賞するという変幻自在(?)の美女ハル・ベリーも50歳を超えてさすがに老けたが、それでもほぼノーメイク、鬼の形相でも、やっぱり美しく、狭い車内での一人芝居に近い演技も迫力たっぷりだ。犯人はいったい何のためにカーラの息子を奪ったのか。その理由は、終盤に明かされる。アメリカでは18歳未満の児童誘拐事件は、年間約80万人、1日当たり2000人超ともいわれているそう。ヒロインの受難は、誰にでも起こりうる身近な出来事なのだということを知れば、アメリカの闇ともいえるその恐怖はリアルなものになる。カーラが地元の警察で、沢山の行方不明になった子どもの顔写真を見て絶望の表情を浮かべた後に、愛する息子を守るためには自分が動くしかないと決意する一瞬に、母の強さを見た。
【65点】
(原題「KIDNAP」)
(アメリカ/ルイス・プリエト監督/ハル・ベリー、リュー・テンプル、セイジ・コレア、他)
(母は強し!度:★★★★★)
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ナミヤ雑貨店の奇蹟

「ナミヤ雑貨店の奇蹟」オリジナル・サウンドトラック
2012年。少年時代を養護施設で過ごした敦也、翔太、幸平の幼馴染3人は、ある理由から悪事を働き、逃げる途中に廃屋のナミヤ雑貨店に身を隠す。そこは、かつて悩み相談を請け負っていて、郵便受けに投げ込まれた手紙に店主が真剣に答えてくれることで知られていた。すでに店は廃屋になっているが、その晩、敦也らは店に32年前に書かれた手紙が届けられたことに気付く。その郵便受けは1980年につながっていたのだ。3人は戸惑いながらも、当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書きはじめる。やがて手紙のやりとりから雑貨店と3人との意外な共通点が見えてくる…。

現在と過去が手紙を通してつながっていく時空を超えたファンタジー「ナミヤ雑貨店の奇蹟」。原作は、人気ミステリー作家・東野圭吾の小説だ。不思議な郵便受けに投函される手紙を通して現在と過去がつながるファンタジーというと、ハリウッドでもリメイクされた韓国映画のラブストーリー「イルマーレ」がすぐに思い浮かぶが、本作は恋愛要素はほとんどなく、複数のエピソードによって過去と現在が次々につながる、人間ドラマだ。ミュージシャン志望の青年、金持ちの愛人になろうとする若い女性らの悩みに答える形で、雑貨店店主と、敦也らを含む、施設の人々の人生が交錯する。やがて、それぞれが手紙に書かれた答えから自分の生き方を導き出した末に、あたたかい奇蹟が訪れる。

キーとなるのは、山下達郎の主題歌「REBORN」。この歌の歌詞が映画のストーリーとメッセージに絶妙にフィットした演出が上手い。大分県豊後高田市でロケした、昭和の香りの街並もノスタルジックだ。虚実がミックスする物語は、無論、ご都合主義も多いのだが、廣木隆一監督の演出は概ね自然体だ。ただ人気アイドルの山田涼介の顔のアップがやたらと多いのは少々気になる。一方で、重要な役を演じる子役の鈴木梨央ちゃんの好演(名演と呼びたい)が光っていた。登場人物は、2012年も1980年も、共に人生の岐路で迷う人々だ。そんな彼らの背中をそっと押すのが店主役の名優・西田敏行。“白い手紙”という最高難易度の相談に店主がくれた答えが、すべての人々の希望に思えた。泣ける話というより、ほっこりする話として楽しんでほしい。
【60点】
(原題「ナミヤ雑貨店の奇蹟」)
(日本/廣木隆一監督/山田涼介、西田敏行、尾野真千子、他)
(泣ける度:★★☆☆☆)
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スクランブル



頭脳派の兄アンドリューとメカニック担当の弟ギャレットのフォスター兄弟は、高級クラシックカー専門の強盗団だ。ある日、世界に2台しかない1937年型ブガッティを強奪するが、持ち主が残忍なマフィアのモリエールだったため、二人は囚われてしまう。兄弟は、自分たちの命と引き換えに、モリエールと敵対するマフィアのクレンプが所有する1962年型フェラーリ250GTOを盗んでみせると提案。わずか1週間の猶予しかない大仕事に、アンドリューの恋人で凄腕ハッカーのステファニーをはじめ、天才的な女スリ、爆発のスペシャリストらで、急きょ、寄せ集めのチームを組むことに。モリエールの親戚や、インターポールの捜査官らが入り乱れる中、クレンプに計画を知られてしまう。兄弟は崖っぷちに立たされるが…。

高級クラシックカー専門の強盗団が仕掛ける名車強奪作戦を描くクライム・アクション「スクランブル」。内容は、カー・アクションというよりも、巧妙な犯罪映画にして、大どんでん返しを用意したクライム・エンタテインメントだ。とはいえ、このテの映画のお約束“高級車と美女で目の保養”を忠実に守り、物語はあくまでも軽いノリ。犯罪劇もどこかのんびりとコミカルである。高級車を強奪するに当たっての兄弟の美学は、誰も思いつかないような驚愕の手口で完璧に盗んでみせること。もっとも、最初のブガッティ強奪では、あっさりとモリエールに捕まってしまうので、そのモットーが発揮されるのは次のフェラーリ強奪計画という筋書きである。

兄アンドリューを演じるのは「ワイルド・スピード ICE BREAK」にも出演しているスコット・イーストウッド。ルックスも父クリント・イーストウッドに似ているがアクションが得意なのも父親譲りのようで、ほとんどのシーンをスタントなしで熱演している。犯罪アクションとしては平凡な出来栄えだが、劇中に登場する高級クラシックカーの数々は、ポルシェ、BMW、アルファロメオ、ジャガーなどなど、マニア垂涎のものばかり。物語の発端となる車、1937年型ブガッティと1962年型フェラーリはさすがにレプリカだが、その他は、ほとんどが実際のコレクターが好意的に貸し出してくれたものだそう。車に詳しい人はもちろん、そうでない人も、走る芸術品とまで言われる名車を眺めれば、しばしの至福というものだ。
【60点】
(原題「OVER DRIVE」)
(仏・米/アントニオ・ネグレ監督/スコット・イーストウッド、フレディ・ソープ、、他)
(名車勢ぞろい度:★★★★★)
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あさひなぐ

あさひなぐ 公式映画原作本 弱き者の武道 (ビッグコミックススペシャル)
二ツ坂高校に入学した東島旭は、偶然出会ったなぎなた部の真春の強さに憧れ、運動音痴ながら入部を決める。“練習は楽”という誘い文句とは真逆の、過酷な練習に耐えながら、同じ1年生の将子やさくら、先輩で、圧倒的な実力者の真春らと共に、インターハイの全国大会を目指すことに。やがてインターハイ予選を迎えるが、ダークホースのライバル校に敗れてしまう。3年生が引退し、新しくなったなぎなた部は、山奥の尼寺での地獄の合宿を経て、ひと回り成長するが、思いがけない出来事によって部員の心はバラバラになってしまう…。

なぎなたに打ち込む女子高生たちの成長と友情を描く青春ストーリー「あさひなぐ」。原作はこざき亜衣による人気コミックだ。部活動を通してティーンエイジャーの成長と友情を描く内容はテッパンなのだが、何しろ、なぎなたというスポーツが、そのビジュアルも含めて大変興味深く描かれている。日本の伝統的な武器及び競技を指すなぎなたは、江戸時代に武家に嫁ぐ女性の護身用として用いられていたそう。そういう歴史のため、女性競技者が圧倒的に多いが、今は男性競技者も増え、世界選手権も開かれているのだそうだ。劇中に登場する、なぎなたの技や基本動作はとても美しく、迫力がある。

なぎなたというスポーツが、1対1でありながら、チームで競うスタイルであることから、同じ部活動ものの映画「ちはやふる」で描かれた競技かるたの戦法やテクニックとどこか共通するものを感じる。その熱気や魅力、個人の力とチームの力のバランスやジレンマもまた、よく似ている。実際、へたれで運動音痴の旭は、ゼロからはじめたなぎなたの虜になって自分自身の殻を破り、エース格の真春は、チームの一人として戦う意味を学んでいくのだ。部員それぞれのキャラも個性的で楽しい。人気アイドルグループ、乃木坂46のメンバーが出演する、いわゆるアイドル映画ではあるが、素材の面白さや、できるだけ代役を使わずに頑張ったというなぎなたシーンの迫力、随所に散りばめられたコミカルな演出のおかげで、意外なほど楽しめるスポ根青春映画に仕上がっている。
【65点】
(原題「あさひなぐ」)
(日本/英勉監督/西野七瀬、白石麻衣、西野七瀬、他)
(成長度:★★★☆☆)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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