映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ジャッキー」「ムーンライト」「はじまりへの旅」etc.

オスカー、決まりました 2017

ひとりごと2017年度 第89回アカデミー賞が、日本時間の2/27に決定しました。
主要部門の受賞結果は以下。

作品賞:「ムーンライト」
監督賞:デイミアン・チャゼル「ラ・ラ・ランド」

主演男優賞:ケイシー・アフレック「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
主演女優賞:エマ・ストーン「ラ・ラ・ランド」
助演男優賞:マハーシャラ・アリ「ムーンライト」
助演女優賞:ヴィオラ・デイビス「フェンス」

外国語映画賞:「セールスマン」(イラン)
長編アニメーション賞:「ズートピア」
長編ドキュメンタリー賞:「O.J.:メイド・イン・アメリカ(原題)」←上映時間7時間!!

作品賞は、今年は8作品がノミネート。
そんな中、最優秀作品賞を受賞したのは、「ムーンライト」。

日本関係では、ジブリが製作した長編アニメーション賞に「レッド・タートル」がノミネートされましたが、残念ながら受賞はなりませんでした。受賞したのは「ズートピア」。やっぱりディズニー強し!です。

大本命の「ラ・ラ・ランド」は、美術賞、撮影賞、作曲賞、主題歌賞(City of Stars)、監督賞、主演女優賞の6部門受賞。見事な結果でした。デイミアン・チャゼル監督は32歳で、最年少受賞です!

人種問題や反トランプのスピーチなど、さまざまな懸念が予想されたオスカーでしたが、作品賞を間違えて発表してしまうという、ビックリ仰天の事態が起こりました。マジですか?!前代未聞!「ラ・ラ・ランド」関係者には、あまりにも可哀そう。…色々な意味で、何が起きるのかわからないのがアカデミー賞。あ〜、びっくりした!!

アカデミー賞は映画界最大の祭典。
作品はこれから順次日本でも公開されます。楽しみに待ちましょう!
いかがでしょうか。順当?サプライズ?ぜひ感想をどうぞ。


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素晴らしきかな、人生

Collateral Beauty - O.S.T.
ニューヨークでの広告代理店を経営するハワードは、最愛の娘を亡くして以来、深い喪失感から仕事もプライベートもままならない。やがて会社の業績も悪化し、ハワードの同僚たちも気が気ではない。そんな時、ハワードの前に3人の奇妙な舞台俳優たちが現れた。年齢も性別も異なる3人は、ハワードに次々に謎めいた言葉を投げかける。そんな3人との出会いでハワードの人生は少しずつ変化していくが…。

愛するものを失って絶望した男が、愛、死、時間などの抽象概念を演じる3人の舞台俳優たちとの交流によって再生していくヒューマン・ドラマ「素晴らしきかな、人生」。愛する娘の死で、心が壊れてしまったハワードを心配する仲間は、ハワードのことはもちろん、傾き続ける会社の心配もしている。そんな彼らが思いついた突拍子もない秘策が、ハワードを救うべく動き始める…というハートウォーミングなストーリーだ。主演のウィル・スミスをはじめ、オスカー俳優、ノミネート俳優たちが大挙して出演するなど、名優たちの競演が贅沢である。舞台となる大都会ニューヨークのおしゃれな風物も見所だ。傷ついた主人公の再生は、無論、いい話である。ハワードが何度も通うセラピーの主催者の女性との顛末にも感動するだろう。ただ、ハワードを救うプランが、あまりにも手が込んでいる上に、展開が都合が良すぎて、正直、引いてしまった。「プラダを着た悪魔」で鮮やかな手腕をみせたデヴィッド・フランケル監督だけに、笑いも感動も中途半端な出来栄えではがっかりさせられる。ちなみにジェームズ・スチュワート主演の名作クリスマス映画とはまったく関係ないので、ご注意を。…というか、本作にこの邦題って、どういうセンスなの?!何と言ってもこれだけの豪華キャストを集めておきながら、凡庸なお涙頂戴映画に成り下がったのが、あまりに惜しい。
【45点】
(原題「COLLATERAL BEAUTY」)
(アメリカ/デヴィッド・フランケル監督/ウィル・スミス、ケイト・ウィンスレット、ヘレン・ミレン、他)
(豪華キャスト度:★★★★★)
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彼らが本気で編むときは、

彼らが本気で編むときは、
母親と二人で暮らしている11歳のトモは、母親が家出したため、いつものように叔父のマキオのもとへ向かう。以前と違うのは、マキオは介護施設で働くリンコという美しい恋人と暮らしていたことだった。リンコは元男性でトランスジェンダー。最初は驚いたトモだったが、リンコの優しさ、美味しい手料理、母親からは得られなかった家族団らんの時間に安らぎに覚え、母親以上の愛情を注いでくれるリンコに、とまどいながらも心を開いていく。トモ、マキオ、リンコの3人の奇妙な共同生活が始まった…。

母親に育児放棄された少女が、叔父、叔父のトランスジェンダーの恋人と疑似家族となり成長していく異色の家族ドラマ「彼らが本気で編むときは、」。荻上直子監督といえば「かもめ食堂」や「めがね」など、スローライフ、癒し系のイメージが強いが、本作は、LGBT、育児放棄、法律も含めた偏見や差別といった、ハードな題材を扱っている。だが決して大上段に構えたり、声高に問題提起したりはしていない。作品全体のトーンや映像の色調は今まで通りソフトだし、美味しそうな食事やナチュラルなセリフなども健在。極論に走らないスタンスでマイノリティの現状を描いている点が素晴らしい。リンコは手術によって女性の身体を手に入れてはいるが、戸籍は男性のまま。そのため様々な壁にぶつかるが、それを至近距離で見るトモの感情が、とまどいから理解、共感へと変化していくプロセスが、非常に説得力がある。映画には、いくつかの家族が登場し、彼らはそれぞれ違う形で、互いへの愛情を何とか形にしようともがいているようにみえる。そこから見えてくるのは、家族を形作るスタイルは、もはや血縁だけに依るものではないという現状だ。“ヒロイン”リンコを演じた生田斗真(「土竜の唄 香港狂騒曲」でも女装を披露!)の見た目や所作の美しさもさることながら、悲しい過去を内包した複雑な心情をにじませた穏やかな演技に魅了される。他の出演者も皆、好演だ。LGBTという言葉はかなり一般的になってきたが、社会に本当に受け入れられるまでにはまだまだ時間がかかる。多様性や他者との違いを尊重することで実現する平和を願わずにはいられない。
【80点】
(原題「彼らが本気で編むときは、」)
(日本/荻上直子監督/生田斗真、桐谷健太、柿原りんか、他)
(意欲作度:★★★★★)
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トリプルX:再起動

トリプルX:再起動
エクストリーム・スポーツ界のカリスマ、ザンダー・ケイジは、世間から身を隠して生きていたが、再び政府の極秘エージェントとして呼び戻される。今回の任務は、制御不能になった軍事兵器“パンドラの箱”を奪回すること。命知らずの仲間たちを集めて新しい最強チーム・トリプルXを結成し、世界壊滅の陰謀に立ち向かう。だが、彼らの前に最強の敵ジャンが現れる…。

エクストリーム・スポーツのカリスマが腕利きシークレットエージェントとして活躍するスパイ・アクションシリーズの新作「トリプルX:再起動」。「ワイルド・スピード」が代表作のヴィン・ディーゼルの単独主演作が「トリプルX」なのだが、この新作は前作から10年以上もたっているので、もはや記憶も薄れかけていた。だが世界を揺るがす陰謀をムチャぶりで解決してしまうやんちゃなストーリーを見ると、一気に記憶が蘇る。とはいえ、本作は過去作を見てなくても大丈夫な作りなのでご安心を。もちろん「ワイスピ」と区別がつかないノリでもOKである。トリプルXとは主人公のザンダーの別名だったが、この最新作では、常識の枠からはみ出してムチャをやってのけるアウトローたちすべてを指す言葉と解釈していいだろう。アクションは笑いが出るほどやりすぎ感満載で、かなり楽しめる。水上スキー付のバイクで巨大チューブの中をサーフィンなんて、もはやギャグの域だ。中国からは武術の達人のドニー・イェン、タイからムエタイの使い手のトニー・ジャー、ボリウッドから美女ディーピカ・パーデュコーンが参加するなど、昨今のハリウッド大作の流れと同様、アジア重視が見て取れる。主演のヴィン・ディーゼル、格好だけはつけているが、肝心のアクションに切れ味がないのがご愛敬ではあるが…。それでも見ている間はしっかりと楽しめ、見終わればすっきりと忘れられる、そんな本作が憎めない。特別ゲストでサッカー界のスーパースターのネイマールが本人役で出演するなど、無駄に豪華な演出もすてき!だ。このお祭り騒ぎのアクション大作、実は女性の活躍度が高く、誰もが美しくカッコイイということを、付け加えておきたい。
【60点】
(原題「xXx: RETURN OF XANDER CAGE」)
(アメリカ/D・J・カルーソー監督/ヴィン・ディーゼル、ニーナ・ドブレフ、サミュエル・L・ジャクソン、他)
(型破り度:★★★★☆)
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ラ・ラ・ランド

ラ・ラ・ランド-オリジナル・サウンドトラック
夢追い人が集まる街ロサンゼルス。女優の卵のミアは映画スタジオのカフェで働きながらオーディションを受けているが落とされてばかり。一方、場末のバーで、ピアノを弾いているセバスチャンは、いつか自分の店を持ち、思う存分大好きなジャズを演奏したいと願っていた。そんな二人が偶然出会い恋に落ちる。互いの夢を応援し合いながら一緒に暮らし始めるが、セバスチャンが生活のために加入したバンドが売れたことから、二人はすれ違いはじめ、溝が出来ていく…。

女優の卵と売れないピアニストの恋の顛末を華麗な歌とダンスで描くミュージカル「ラ・ラ・ランド」。往年のハリウッド製ミュージカルへのオマージュをふんだんに取り入れながら、いつの時代も変わらない、夢を追う若者たちの揺れ動く心情を組み合わせる。一見クラシックなスタイルに思えるが、「セッション」で緊張感あふれる音楽ドラマを作り上げた俊英デイミアン・チャゼル監督は、そこに21世紀ならではの息吹を吹き込んだ。仕事へのこだわりと妥協、キャリアや野心とが、恋愛の幸福や不安と共にせめぎ合う物語は、非常に現代的である。ストーリーはとてもシンプルで、いわゆるボーイ・ミーツ・ガールもの。同時に、映画や芸能界の舞台裏を描くバックステージものでもある。アーティストとして自分の夢を追うべきか、あるいは現実と妥協すべきか。仕事の浮き沈みが同じタイミングならば、ミアとセバスチャンがすれ違うこともなかっただろうに。運命のいたずらに翻弄される二人の姿に、ふと「シェルブールの雨傘」が重なって見えたりもする。出会いから恋の喜びを歌い上げる前半は、ダイナミックでエモーショナルな魅力にあふれ、流麗な映像に目を奪われる。だが圧巻はやはりラストの15分だ。人生の“もしも…”が怒涛の歌とダンスで表現され、感動と興奮は頂点に達するだろう。これこそ観る者を幸せにする映像マジックと呼ぶべき映画の力だ。主演のエマ・ストーンとライアン・ゴズリングの見事な演技と、歌と踊りにも魅了される。懐かしいのに新しい、新たなミュージカル映画の傑作の誕生だ。
【95点】
(原題「LA LA LAND」)
(アメリカ/デイミアン・チャゼル監督/ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、J・K・シモンズ、他)
(映像マジック度:★★★★★)
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トッド・ソロンズの子犬物語

Wiener-Dog [Blu-ray]
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アメリカ中を彷徨うことになる一匹の可愛いダックスフンド。まず病弱な子どもがいる一家に引き取られるが、あまりにも問題を起こすため、たちまち別の人の手に渡る。崖っぷちの映画学校講師兼脚本家、大人になっても自分探しを続ける女性、偏屈な老女。ダックスフンドは、そんな問題山積みの冴えない飼い主たちの間を渡り歩くことになる…。

アメリカ中を旅する一匹のダックスフンドを通して愚かで残忍な人間の本質を浮き彫りにするオムニバス形式の異色作「トッド・ソロンズの子犬物語」。ほのぼのとした邦題がついているが、何しろ監督がヘンテコな映画ばかり作ってはファンを熱狂させているインディーズ映画の雄トッド・ソロンズだ。当然、動物で癒される話などではない。ダックスフンドはいわば神の視点で、しょうもない人間のしょうもない人生をオフビートな笑いでスケッチしていく。思い出すのは孤高の巨匠ロベール・ブレッソンが、ロバの一生を通して人間の本質や原罪を描いた名作「バルタザールどこへ行く」である。むろんブレッソンの持つ崇高さは、ソロンズ風味のブラックな笑いに還元されてはいるが。名優たちが暴言を吐きまくるエピソードはどれも味わい深いが、ラストに登場するエレン・バースティン扮する老女が、過去の“もしかしたらこうだったかもしれない”自分に出会うシーンは、幻想的な優しさに満ちていた。そんなしんみり感を、唐突でぶっ飛ぶ残酷シークエンスで締めくくり、ドン引きさせる。この露悪趣味がたまらない!何といっても一番シビれたのは、わずか88分の上映時間に挿入されたインターミッションである。緑の大地を、吹雪の山裾を、時には都会の喧騒の中を、スタスタと横切る足の短いダックスフンドの後ろには、西部劇風のメロディーが高らかに流れ、受難の旅を物語る。あぁ、このセンスに爆笑必至。忘れられない1本になりそうだ。
【70点】
(原題「WIENER-DOG」)
(アメリカ/トッド・ソロンズ監督/ダニー・デヴィート、エレン・バースティン、ジュリー・デルピー、他)
(ユニーク度:★★★★★)
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海は燃えている イタリア最南端の小さな島

イタリア最南端部に位置するランペドゥーサ島は、北アフリカに近い小さな島だ。そこに暮らす12歳のサムエレ少年は、友だちと手作りのパチンコで遊んだり、漁師である父から教えてもらって船酔いを克服する練習をしたり、毎日平和に暮らしている。一方、ランペドゥーサ島は、ヨーロッパへ密航する難民や移民たちの玄関口となっていた。カメラは、島の人々のごくありふれた日常と、命がけで海を渡る難民の実態、ひっきりなしに到着する難民船の救援活動を、静かに映し出していく…。

ヨーロッパへ密航する難民到達の最前線であるイタリア最南端の小島、ランペドゥーサ島を舞台にしたドキュメンタリー「海は燃えている イタリア最南端の小さな島」。今でこそ、難民や移民問題が世界中で大々的に叫ばれているが、地中海のシチリア島南方、アフリカに近いランペドゥーサ島は、何十年も前から中東やアフリカからの難民が毎日のように押し寄せ、彼らを救助する活動が日常的に行われている。一方で、5500人の島民が静かに生活する素朴な暮らしもそこにある。映画は12歳のサムエレ少年の視点で描かれているが、本作ではサムエレ少年と難民が接触することはない。というより、難民たちは救助されるとすぐに収容センターのようなところに送られるので、島民との接触はほとんどないのだ。難民救助の現場に据えられたカメラは、容赦ない現実を映し出すが、彼らを診察するバルトロ医師が、多くの命が日々失われることに葛藤する姿が象徴的である。監督のジャンフランコ・ロージは「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」でベネチア映画祭金獅子賞受賞の実力派で、本作では、第66回ベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞している。救援活動を行うイタリア海軍の船に乗船し撮影することを許されるほど、現場で働く人々や島民、さらには難民とも信頼関係を築いたロージ監督は、タイムリーな政治的問題を全面に押し出さない。淡々と現実を映しながら、その映像は、原初的な力強さを持つ島の自然や、慎ましい島民の暮らし、悲劇と憔悴の中でも生命力を失わない難民たちの表情を、美しくポエティックにとらえている。テロップ、ナレーションなどで詳細に語らないので決して分かりやすい作品ではないが、映像の力で勝負する21世紀のネオリアリズモだ。
【80点】
(原題「FUOCOAMMARE/FIRE AT SEA」)
(伊・仏/ジャンフランコ・ロージ監督/サムエレ・プチッロ、マティアス・クチーナ、サムエレ・カルアーナ、他)
(映像美度:★★★★☆)
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ナイスガイズ!

The Nice Guys (OST)
1970年代のロサンゼルス。13歳の娘ホリーを抱えるシングルファーザーで、酒浸りの情けない私立探偵マーチは、口より先に手が出る、腕っ節の強い示談屋ヒーリーに強引に相棒にされ、失踪した少女を探すことに。簡単な事件のはずだったが、二人は、ある映画に関する連続不審死事件にたどり着き、さらには、巨大な利権をめぐる、国家規模の陰謀へと巻き込まれてしまう。マーチとヒーリーは、次々に現れる殺し屋の襲撃をかわしながら、事件の真相に迫っていくが…。

ハチャメチャな探偵コンビが陰謀に巻き込まれるコメディタッチのバディ・ムービー「ナイスガイズ!」。70年代が舞台ということで、設定といい音楽といい、激しくレトロなのだが、ヘタレと乱暴者のコンビは、アクションもギャグもノリノリ(悪ノリと呼ぶべきか)で、70年代の懐かしさを醸し出すいきのいい活劇に仕上がった。前半はとにかく笑わせ、後半はまったく別モノに見えた事件がからみあう、ちょっとユルめのハードボイルドへ。ポルノ女優の怪死、排ガス規制訴訟、政府高官へとつながり、巨大な陰謀へと発展していく。監督のシェーン・ブラックは、監督作は多くはないが、脚本家としてはベテランの人だ。「リーサル・ウェポン」の脚本家で、凸凹コンビが活躍するオフビートなサスペンスアクションの「キスキス、バンバン」の監督と聞けば、バディ・ムービーが上手いのも納得である。情けないシングルファーザーの探偵を演じるライアン・ゴズリングは、今、一番旬な俳優だが、本作ではコメディ・センスも見せてくれた。対して、役作りか、はたまた素なのかは不明だが、そのでっぷりと膨張した体形が“くまモン”化しているオスカー俳優のラッセル・クロウもまた、乱暴者の無免許探偵を巧みに演じている。だが本作で一番魅力的なのは、マーチの娘ホリーをキュートに演じるアンガリー・ライスだろう。度胸があって機転がきく13歳は、車の運転までこなしながら、時には頼りない父親の相棒となり、時には母親のような妻のような包容力さえ感じさせる。そんなしっかりもののホリーの存在が、ダメダメの負け犬の大人たちに、人間として一番大切な優しさを教えるのだ。ちなみにアンガリー・ライスは「スパイダーマン」の新作にも出演予定。要注目のニューヒロインである。
【60点】
(原題「THE NICE GUYS」)
(アメリカ/シェーン・ブラック監督/ラッセル・クロウ、ライアン・ゴズリング、アンガーリー・ライス、他)
(レトロ度:★★★★☆)
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雨の日は会えない、晴れた日は君を想う



エリート銀行員ディヴィスは、富も社会的地位も手に入れ何不自由ない人生を送っていた。だがいつも通り仕事へ向かう朝、突然事故に遭い、妻が他界してしまう。ところがディヴィスは妻が死んだというのに、涙どころか悲しみの感情も感じない。自分はいったいどうしてしまったのか。彼は義父であり会社のボスでもあるフィルのある言葉をきっかけに、パソコンや冷蔵庫、会社のトイレまで、身近なものを次々に壊し始める…。

妻を亡くしたのに悲しみを感じない男が、自分の周りのものを破壊することで再生への道を探る人間ドラマ「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」。妻の死を悲しめない男という設定は西川美和監督の「永い言い訳」とよく似ている。だが、本作の主人公ディヴィスは、それまで無自覚だっただけに自分自身の空虚さを自覚した時のショックは計り知れない。人間性を取り戻すための行為が、物理的な破壊というのもまた興味深い。破壊行為は、義父の「心の修理も車の修理と同じこと。まず解体し隅々まで点検して組み立て直すんだ」との言葉がきっかけだ。一方で、シングルマザーとその問題児の息子との出会いからも、少しずつ人生を取り戻していくことになる。「ナイトクローラー」以降、狂気をはらんだ人物を演じて抜群の上手さを見せるジェイク・ギレンホールが、本作でも、ひたすらモノを“ぶっ壊す”ことで、同時に自分の心を一度壊して再構築する現代人を怪演している。風変わりな邦題は、どこかふんわりとした詩のような雰囲気だが、原題はストレートに“破壊、解体”の意味。主人公が次々にモノを破壊しいったいこの男はどうなってしまうのか…と心配になるのと同様、この物語がどう決着するのかがなかなか読めないので、ある意味、スリリングだ。そして、今まで知らなかった事実を知ってはじめて感じた妻への思いや、自分がいったい何を求めているのかが、ラストに明かされるとき、自己修復という“旅”が終わる。味わいのある作品だが、内容が伝わりにくい邦題がちょっと惜しい。
【65点】
(原題「DEMOLITON」)
(アメリカ/ジャン=マルク・ヴァレ監督/ディヴィス: ジェイク・ギレンホール、ナオミ・ワッツ、クリス・クーパー、他)
(再生度:★★★★★)
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一週間フレンズ。

映画ノベライズ 一週間フレンズ。
高校2年の祐樹は、初めて出会った日から心惹かれていた同級生・香織に、勇気を振り絞って「友達になってください」と声をかける。だが香織は、頑なにそれを拒む。実は彼女には、友達のことを1週間で忘れてしまうという記憶障害があったのだ。それでも香織のそばにいたいと願う祐樹は、毎週月曜日、香織の記憶がリセットされるたびに会いに行く。やがて二人は交換日記を始め、少しずつ距離を縮めていくが、ある日、香織の過去を知る中学時代の同級生・九条が転入してくる…。

一週間で友達の記憶を失くしてしまう女子高生と、そんな彼女をひたむきに思い続ける男子高生の恋愛や友情を描く青春ストーリー「一週間フレンズ。」。原作は葉月抹茶によるベストセラーコミックで、アニメ化もされている人気作だ。一週間で友達のことだけを忘れる記憶障害という、都合がいいのか悪いのか判別できない、困った病気は、通常ならばありえない設定だが、脳や記憶というのは非常に複雑で、強いストレスや衝撃によってさまざまな現象が起こるらしいので、絶対にないとは言い切れない。まぁ、そこにツッコみはじめると先に進めなくなるので、ひとまず脇に置くとして、そんな記憶障害を持つ美少女・香織を好きになった祐樹が望むのが、友達という関係なのが何とももどかしい。告白したり、つきあったりを望む恋愛感情なのが普通じゃないのか? なぜ友達? もちろん祐樹の思いは友情以上なのは本人も周囲も、香織だってわかっているのに。この物語がかけがえのない友達をテーマにしているのはわかるが、どうにもすっきりしない。結末は映画を見てもらうとして、登場するキャラクターに共感するのは難しいだろう。切なくひたむき、という言葉は本作にぴったりのフレーズだが、この切なさやひたむきさが不毛に思える自分が、あまりに“大人になりすぎたのか”と不安を煽られた。川口春奈、山崎賢人と旬な若手俳優を起用しているだけに、残念な作品である。
【45点】
(原題「一週間フレンズ。」)
(日本/村上正典監督/川口春奈、山崎賢人、上杉柊平、他)
(リアリティ度:★☆☆☆☆)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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