映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
アメリカ映画「シェイプ・オブ・ウォーター」

デトロイト

Detroit
1967年の夏。アメリカ・ミシガン州デトロイトで大規模な暴動が発生する。その2日目の夜、ミシガン州兵隊の集結地付近で銃声の通報があり、デトロイト警察やミシガン陸軍州兵、地元警備隊らは、アルジェ・モーテルの別館に乗り込んだ。しかし差別主義者の白人警官クラウスら何人かの警官が捜査手順を無視し、モーテルの宿泊客たちを脅しながら不当で暴力的な強制尋問を始める…。

米史上最大級の暴動と言われるデトロイト暴動を一晩の出来事に絞って描く戦慄の実録サスペンス「デトロイト」。数日間続いた暴動の概要は教科書などで知られているが、本作が描くのは歴史の闇に埋もれた暴挙“アルジェ・モーテル事件”だ。暴力的な白人警官たちが、ホテルに居合わせた黒人男性6人と白人女性2人の若者たちを、おぞましい方法で尋問する様はまるで悪夢のようだが、観客もまた、この惨劇の渦に放り込まれ、彼らと同じ恐怖を体験することになる。宿泊客の1人でR&Bボーカル・グループ「ザ・ドラマティックス」のリードシンガーのラリー、白人警官クラウス、民間警備員ディスミュークスの3人の視点で事件が語られるが、とりわけ、差別主義者の警官クラウスの言動とその後の裁判の行く末には、激しい怒りがこみあげる。

実話に基づく本作の時代背景は60年代。だがこれが過去の話ではなく、まるで現代の出来事のように思えるのは、手持ちカメラによる臨場感たっぷりの映像もさることながら、差別や偏見がいまだに蔓延している事実があるからだ。さらに言えば、キャスリン・ビグロー監督が今まで描いてきたような米軍爆弾処理班兵士やCIA分析官といった特殊な職業の人物の活躍ではなく、普通の市民と身近にいる警官の間に起こる理不尽な暴力を見せつけるからである。極限状態の中で感情や暴力が激化する様や、判断力を見失う心理、誰かを痛めつけることで優位に立とうとする愚行。これらは誰の身にも起こりうる恐怖なのだ。アルジェ・モーテルは取り壊されて今はもう存在しない。だがデトロイト暴動の火種は本当に消滅したのか。骨太な社会派映画で現代社会に警告を発してきたビグロー監督の真摯な問いかけが聞こえるようだ。
【70点】
(原題「DETROIT」)
(アメリカ/キャスリン・ビグロー監督/ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、ジャック・レイナー、他)
(臨場感度:★★★★★)


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日本人の受賞に期待!

コラム第90回アカデミー賞のノミネート、発表されました。

日本関係ということでいうと、まずメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされた辻一弘さん。作品はゲイリー・オールドマンが英国の政治家チャーチルを熱演する「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」です。ゲイリー・オールドマンとはわからないような高度な特殊メイクは、辻さんのハイレベルな仕事だったんですね〜。

辻一弘さんは、過去にも2度ノミネート経験がある実力派。最近では、映画界から離れて、アート業界で仕事をされていたようですが、ゲイリー・オールドマン直々のオファーで今回特殊メイクを担当したとか。悲願のオスカー受賞なるか?! 応援しましょう。

それからもう一人日本人のノミネートがあって、こちらは短編アニメ賞の候補。桑畑かほるさんが共同監督を務めた「ネガティブ・スペース(原題)」が選出されました。こちらも期待!です。

最も注目される作品賞のノミネートは、以下の9作品。

「シェイプ・オブ・ウォーター」「スリー・ビルボード」
「レディ・バード」「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」
「ダンケルク」「ゲット・アウト」
「ファントム・スレッド」「君の名前で僕を呼んで」
「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」

最多ノミネート作品は「シェイプ・オブ・ウォーター」の13部門。「ダンケルク」の8部門が次に続きます。

ちょっと予想外だったのは、ポール・トーマス・アンダーソン監督、「ファントム・スレッド」が6部門ノミネートと大健闘したこと。主演のダニエル・デイ=ルイスが今作をもって俳優業引退を表明したことでも話題です。

昨年から映画業界を賑わせているセクハラスキャンダルの影響で、ノミネートの顔ぶれに変化がみられたのも興味深いところ。受賞結果にも影響がでるのかどうか、注目です。

第90回アカデミー賞授賞式は日本時間3月5日。楽しみに待ちましょう!


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レディ・ガイ

Assignment/ [Blu-ray] [Import]
凄腕の殺し屋フランク・キッチンは、マフィアとの銃撃戦の最中に意識を失ってしまう。見知らぬ安ホテルのベッドで目覚めると、フランクは男から女へ性転換手術を施されていた。ベッドの脇に置かれたテープレコーダーを再生すると、自分は手術をした医者で、手術はフランクへの復讐なのだという見知らぬ女の声が。怒りに震えながらも、フランクは大切な“モノ”を奪った女医を見つけ出し制裁を加えるため、銃と色気を武器に女殺し屋となって復讐に立ち上がる…。

組織に裏切られ狂気の女医から性転換で女にされてしまった殺し屋の復讐を描く異色のアクション「レディ・ガイ」。性別が入れ替わるという設定の映画は過去にも、日本映画「転校生」や、大ヒットしたアニメ「君の名は。」がある。米映画にも「スウィッチ/素敵な彼女?」という佳作があるなど、ひそかに人気のジャンルなのだが、その入れ替わりには、不思議な力が働いているというものがほとんど。だが本作は、性転換手術というから、現実的なのだ。体は女でも心は男のまま。“モノ”は取られたが、俺を女にしたヤツらのタマ(命)は取る!…というワケで壮絶な復讐劇がスタートする。キワモノでギャグすれすれのストーリーだが、リベンジの理由が妙に説得力があるのも事実だ。

見所は何と言っても、男っぽさが魅力の二人の女優だろう。男前女優ことミシェル・ロドリゲスが、術前・術後の両方を一人で演じるが、男女共にフルヌードまで披露し、気合が入った女優魂を見せてくれる。一方、もう一人の女傑女優シガニー・ウィーバーは、狂気の天才外科医に扮して貫禄たっぷりだ。メガホンを取るのは男の世界を描き続けてきたウォルター・ヒル監督。初の女性主人公が性転換された殺し屋とは、恐れ入ったが、こういうヒネッた形でもハードボイルドなテイストは貫いている。復讐のプロセスが無駄に複雑だったり、アクションが控えめだったりと、不満はある。また一部ではトランジェンダー蔑視との批判の声もあったとか。だが、効果的に挿入される劇画のグラフィックノベル風の演出を見れば、これが荒唐無稽な愛すべきB級映画だと分かる。目くじらを立てるのはヤボというもの。狂ったマッド・ドクターのラストシーンに、ゾクッとした。
【65点】
(原題「THE ASSIGNMENT」)
(仏・カナダ・米/ウォルター・ヒル監督/ミシェル・ロドリゲス、シガニー・ウィーバー、トニー・シャルーブ、他)
(珍作度:★★★★★)


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ガーディアンズ



冷戦下のソ連。違法な遺伝子操作で生み出された特殊能力を持つ兵士による、超人部隊が作られようとしていた。しかし、名声を求める科学者のクラトフが裏切り研究所を爆破、超人たちも忽然と姿を消してしまう。50年後、自分も超人となったクラトフがロシアの崩壊を画策。その時、世を捨てて生きてきた4人の超人たちが再び集められる。クラトフを倒し、自らのアイデンティティーを取り戻そうと“ガーディアンズ”という名のチームを結成し戦うことを決意する4人だったが…。

ロシア発のSFアクション大作「ガーディアンズ」は、全編これ、マーベルのスーパーヒーローものと見紛う作りだ(パクリとも言う)。特殊能力を持つスーパーソルジャーを作り軍事利用するという計画は、ドイツ、ソ連、アメリカなど大国には実在したとか。そんな怪しげな裏歴史を思うとロシア版「X-MEN」、あるいはロシア版「アベンジャーズ」のような本作も、何やらちょっぴり現実味を帯びる(ような気がする)。メンバーは、獣人化した天才科学者アルスス、念動力で鉱物を操る怪力の賢者レア、超音速を誇る剣の達人ハン、擬態化能力を持つ美女戦士クセニアの4人だ。

カザフスタン出身のハンがアジア系の顔立ちだったり、シベリア出身のアルススが変身する獣が熊だったりと、随所にロシアらしさが盛り込まれている。超人チームの一人は必ず、動物、植物、炎などの非・人間系なのはお約束だが、獣に変身しても、金属の爪を持つウルヴァリンになるわけではなく、単なる普通の熊(ただの熊でも十分に強いのは分かっているが…)なので「それでいいのか?!」と心の中で大いに突っ込んだ。「自分の中の熊の部分が…」と真剣に悩む姿も何やら笑える。ド派手だが何となくあか抜けないVFXも、飛躍するストーリーも、ギャグすれすれの超人能力も、すべて珍味。だがそれでも、いや、だからこそ予想外に楽しめたのも事実だ。意味深なラストを見ると、もしかして続編があるのか?!いろいろと期待と不安が入り混じるロシア発のSFアクションだ。亜流で片付けるには、ちょっと惜しい。
【60点】
(原題「ZASHCHITNIKI/THE GUARDIANS」)
(ロシア/サリク・アンドレアシアン監督/アントン・パンプーシュニー、サンジャル・マディ、セバスティアン・シサク、他)
(珍作度:★★★★☆)


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ルイの9番目の人生

ルイの九番目の命 (ソフトバンク文庫)
ルイは生まれてから毎年、命にかかわるような危険な事故に遭い続けている。9歳の誕生日、彼は崖から海に転落し、奇跡的に命をとりとめたものの、こん睡状態に陥ってしまう。ルイを目覚めさせようと、担当医のパスカルはあらゆる手を尽くすが、ルイの病状は変わらなかった。一方で、ルイの父親ピーターが行方不明になり、母親ナタリーには警告文が届く。パスカル自身も悪夢にうなされ不可解な出来事が続くようになる。すべての事情を知るルイが眠り続ける中、パスカルはかつてルイのセラピーを担当した精神科医ペレーズを訪ねるが、次第に衝撃的な事実が明らかになる…。

9年間で9度死にかけた少年の秘密を描くサスペンス「ルイの9番目の人生」。原作はリズ・ジェンセンによるベストセラーで、人間の心に宿る闇を描く小説だ。全身骨折、感電、食中毒などなど、毎年遭う事故は死に直結する危険なものばかり。そんな数奇な運命の少年ルイの精神世界と、こん睡状態のルイを見守る大人たちの現実世界が交錯しながら物語は進んでいく。悪意を持つ何者かの仕業か。でもいったい誰が? もしやこの世のものではない力が働いているのか。 それはいったい何? ルイを特別な子として溺愛する母親が引用するのは「猫には9つの命がある」という言葉。すでに8つの命を使ってしまったルイは、最後の命をつなぎとめるために、夢の中で奮闘中というわけだ。

担当医と美貌の母親との恋が意外な方向へと向かう中、事故多発少年ルイの秘密にも思いもよらない展開が。荒唐無稽な物語が、真相を露わにするとき、立ち上ってくるのは、人間は根源的に愛されたいと願う生きものなのだという事実だ。悲しみと諦観に満ちた美少年ルイが選んだその道は、納得できないかもしれないし、ご都合主義とも思えるラストに首をかしげる人もいるだろう。それでも、海や水族館、ルイの夢の中の深海など、繰り返し描かれる水のモチーフとゆっくりと海に沈んでいくような感覚は、決して不快ではない。メガホンをとったのは、フランス出身でホラー映画の旗手、アレクサンドル・アジャ監督。本作は流血描写の代わりに、シュールでファンタジックな要素が組み込まれているが、見終わると、ゾクッとする怖さも。それは、子どもの心の中の傷みに気付かない身勝手な大人への警告なのかもしれない。
【65点】
(原題「THE NINTH LIFE OF LOUIS DRAX」)
(カナダ・英/アレクサンドル・アジャ監督/ジェイミー・ドーナン、サラ・ガドン、アーロン・ポール、他)
(ダーク・ファンタジー度:★★★★☆)


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嘘を愛する女

嘘を愛する女
キャリアウーマンの川原由加利は、研修医の恋人・小出桔平と付き合っている。同棲5年目のある日、約束の場所に現れなかった桔平が、くも膜下出血で倒れ、こん睡状態になったと聞き病院に駆けつけるが、警察から、桔平の運転免許証、医師免許証は偽造で、名前も職業も偽っていたことを知らされる。ショックを受けた由加利は、私立探偵・海原を雇い、桔平のことを調べてもらうが、やがて桔平が執筆中だった小説が見つかり、そこから瀬戸内のどこかに桔平の故郷があると判明。由加利は海原と共に桔平の秘密を追っていくが…。

新しい才能の発掘を目指してスタートした第1回「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM」でグランプリに輝いた企画を映画化したミステリアスなラブストーリー「嘘を愛する女」。愛する人は、いったい何者なのか?という謎を追う本作は、すべてが嘘だった恋人の素性を探るプロセスで、ヒロインが変化していく物語だ。ゴスロリ美少女や、執筆途中の小説、瀬戸内の島の灯台などがヒントになる。世話好きで優しい桔平を演じるのが、人気急上昇中の高橋一生。この人の、どこか影のあるたたずまいや、笑顔の中に悲しみを秘めたような表情が、役柄にとてもあっている。

物語はミステリー仕立てなので、詳細は明かせないが、前半がサスペンスフルで緊張感があるのに、後半(特に終盤)は、トーンダウンしてしまうのが残念。桔平の抱える秘密はなるほど悲劇ではあるが、問題は、由加利と桔平の同棲の始まりの不自然さや、大人同士が5年も一緒に暮らしていて何も気づかないとは…という疑問など、設定にリアリティを欠き、共感できないことだろう。実在の事件にインスピレーションを得たといっても、どうにも感情移入できなかったのは事実。タイトルの“嘘を愛する”危険な運命というニュアンスも少し違う気がする。謎めいた疑惑で始まるが、着地点は少々拍子抜けしてしまった。長澤まさみ演じる由加利と、吉田鋼太郎扮する探偵のバディ・ムービーとして楽しむと、意外な味わいがあるかもしれない。
【50点】
(原題「嘘を愛する女」)
(日本/中江和仁監督/長澤まさみ、高橋一生、吉田鋼太郎、他)
(ラブストーリー度:★★★☆☆)


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パディントン2

Paddington 2
南米・ペルーのジャングルからやって来たクマのパディントンは、ロンドンのウィンザー・ガーデンでブラウン家の家族の一員として、幸せに暮している。もうすぐ大好きなルーシーおばさんの100歳の誕生日なのでプレゼントを探していたパディントンは、骨董品屋ですてきな飛び出す絵本を見つける。高価なその絵本を購入するために慣れないアルバイトを始めるが失敗ばかり。それでも頑張っていたある日、絵本が何者かによって盗まれ、パディントンはなんと容疑者として逮捕されてしまう。パディントンは自分の無実を証明するため、ブラウン家の人々と事件の真相を追うが…。

紳士すぎるクマのパディントンの活躍を描く人気作の続編「パディントン2」。今回は飛び出す絵本に隠された秘密を巡って落ち目の俳優が仕組んだ罠で無実の罪に!だが心配ご無用。礼儀正しく親切なパディントンの愛すべき“もふもふパワー”が見事に事件を解決していく。前回のヒットを受け、この続編は大幅にスケールアップしていて、大都会ロンドンを舞台に、カーチェイスや走行中の列車上での移動など、アクションすべてが躍動的でパワフルだ。もちろん前作同様、心がほっこりするエピソードも多数。中でも刑務所で最凶の囚人ナックルズ(名優ブレンダン・グリーソンが妙演)と友情を育む様は、微笑ましい。悪役なのにどこか憎めないヒュー・グラントの存在も効いているし、パディントンが飛び出す絵本に入り込む夢のシーンなど、カラフルでファンタジックな映像にも心が躍る。

赤い帽子と青いダッフルコートのパディントンはもちろん今回も最高にキュートだが、移民や多様性をテーマにした前作同様、この続編にも大切なメッセージが隠されている。それは相互理解だ。偏見を持たず寛容の心を持つことの難しさを痛感する昨今だからこそ、純粋なパディントンと、彼を家族として受け入れたブラウン一家との家族の絆、心優しい囚人仲間の友情が胸を打つ。苦さと甘さが溶け合うマーマレードように、豊潤な香りがするハッピーな作品だ。
【70点】
(原題「PADDINGTON 2」)
(英・仏/ポール・キング監督/ヒュー・グラント、ブレンダン・グリーソン、(声)ベン・ウィショー、他)
(ほっこり度:★★★★★)


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ジオストーム

Geostorm - O.S.T.
近未来。天候を制御する宇宙ステーションが開発され、地球の大規模自然災害は過去のものとなっていた。ところが運用開始から2年後、宇宙ステーションがウイルス感染して大暴走を始め、各地で同時多発的な異常気象・ジオストームが発生。宇宙ステーションの開発者ジェイクと、何かとジェイクと対立してきた弟マックスは、地球と人類の滅亡の危機を食い止めるため、立ち上がる…。

地球の天候を制御する気象宇宙ステーションがウィルス感染により暴走するパニック・アクション大作「ジオストーム」。映画の中の地球破壊のレベルはどんどん増し、ついに宇宙規模の大ぶち壊し大会へと到達したか…と思わずため息がでるディザスター・ムービーだが、パニックをひたすら詰め込んだ進化形だと割り切れば、なかなか楽しめる作品だ。中東の砂漠は氷結、ムンバイでは巨大竜巻、東京には激しい雹が降り注ぐ。リオの浜辺では常夏のはずの海が氷り、ドバイではすべてを飲み込む大洪水…と、もはや天変地異の品評会のような映像の連打に、しばし唖然。宇宙ステーション暴走の裏側には、政治的な陰謀があったり、わだかまりを抱えた兄弟のドラマが一応盛り込まれてはいるもの、何といってもド派手なVFX映像こそが見所なので、何も考えずひたすらスペクタクルに身を委ねるのが、正しいお作法だ。

天才科学技術者がジェラルド・バトラーというところで思わず吹き出しそうになるが、実はこのマッチョなスコットランド人俳優は、役者になる前は弁護士だったのだから、隠れ知性派なのである。人は見かけによらないという言葉は、ストーリーの中でも再確認することになる。落とした卵が瞬時に目玉焼きになるほどの高温地熱の香港の道路に平気で人が立ってることも、「アルマゲドン」や「カリフォルニア・ダウン」、秀作「ゼロ・グラビティ」まで総動員した既視感満載の映像にも、決してツッコんではいけない。この凶暴なディザスター映画、ひょっとして監督は“破壊大好き”ローランド・エメリッヒなのか?!と思ったら、当たらずとも遠からず。エメリッヒの相棒的存在のディーン・デヴリンだった。長編監督デビュー作でこれだけ大暴れしたら、次はどうするの? …というのは余計な心配か。
【55点】
(原題「GEOSTORM」)
(アメリカ/ディーン・デヴリン監督/ジェラルド・バトラー、ジム・スタージェス、アビー・コーニッシュ、他)
(厄災てんこもり度:★★★★★)


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映画とファッション・デザイナー

コラム映画で、衣装が重要な役割を果たすのは周知の事実。今回は、映画とは切っても切れない関係の“衣”、特にファッション・デザイナーの話を少し。

ファッション・デザイナーのドキュメンタリー映画は定期的に作られる人気のジャンルで、2000年代以降で、ちょっと思い出しただけでも、こんな感じの作品があります。

「アルマーニ」(2000)
「ファッションを創る作る男 カール・ラガーフェルド」(2007)
「イヴ・サンローラン」(2010)

現在公開されているドイツ・ベルギー合作映画「ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男」は、ベルギー出身の世界的ファッションデザイナー、ドリス・ヴァン・ノッテンを追ったドキュメンタリー。今も存命・現役の天才デザイナーへの遠慮からか、ドキュメンタリーとしての作りは平たんで、私には、さほど刺激的な作品とは思えなかったのですが、何しろ、今まで一切の密着取材を断ってきたドリスの、創作プロセスや、私生活までカメラに収めているのだから、ファンには必見の作品と言えるでしょう。映像は、ドリスの作品同様、カラフルでとても美しく、見ているだけでうっとり。中でも、創作に多大なインスピレーションを与えているという、邸宅の美しい庭をドリス自ら案内していくれるのは貴重な映像です。

ちなみにファッション業界を描いた劇映画では、パリ・コレを舞台にした群像劇「プレタポルテ」(1994)、有名ファッション誌の舞台裏をコミカルに活写した「プラダを着た悪魔」(2006)などが有名です。最近の作品では、美を競うファッションモデルの狂気を描いた異色作「ネオン・デーモン」(2016)あたりもおすすめでしょうか。

また、トム・フォードのように一流のファッション・デザイナーが、「シングルマン」「ノクターナル・アニマルズ」などの秀作を作って、映画監督としても本業に勝るとも劣らない腕前を見せる例も。

やっぱりファッションと映画は不可分の関係。どうやら、天は二物(以上?)を与えたようです。


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5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生

Mein Blind Date mit dem Leben: Als Blinder unter Sehenden. Eine wahre Geschichte
ドイツ人の母とスリランカ人の父の間に生まれたサリヤ、通称サリーは、学校を卒業後、立派なホテルマンになることを夢見ていた。だが突然、先天性の視力を失う病気に襲われる。手術後に何とか保てたのは、健常者の5パーセントほどの視力だった。周囲からは障害者の学校への転入を勧められるが、夢をあきらめたくないサリーは、何とか学校を卒業。視覚に障害がある事実を隠してホテルに願書を提出したサリーは、ミュンヘンの5つ星一流ホテルから研修生としてチャンスを得る。母、姉、友人のマックスら、周囲に助けられながら、サリーの、ありえない挑戦と想像を超えた困難の日々が始まった…。

視力の95パーセントを失った青年が、一流ホテルで働く夢を実現させるために大芝居を打って奮闘する姿を描く「5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生」。いくらなんでもありえない!と思ってしまうが、なんとこのお話は実話だ。モデルになったのはベーチェット病を患ったサリヤ・カハヴァッテ。絶望的に困難な状況でも、失わなかった超ポジティブで圧倒的な意志の強さに、ただただ驚いてしまう。見えてないのに見えるふりをするのは確かに“嘘”かもしれないが、サリーのそれは、夢をあきらめないための“武器”になった。

見えるもののほとんどがぼやけた光の集合体という状況で、いったいどうやってホテルマンのスキルを磨くのか? 接客やテーブルセッティング、厨房や客室業務など、山ほどの疑問に、物語は驚きの方法で答えてくれる。上手くいきすぎ? もちろんそれはそうなのだが、懸命に頑張るサリーには強力な助っ人たちがついていた。シリアスな描写ばかりではなく、見えないからこそのエピソードは、時にはクスリと笑える楽しいものも。サリーがストレスのあまりドラッグに手を出すことや、サリーの父の失踪など、中途半端なエピソードが少々気になるが、何しろこの奇跡的な実話は、挫折しながらも決して夢をあきめなかった青年の挑戦を通して、幸せの意味を教えてくれる奮闘記。結果を知っているのに、最終試験の場面はやっぱりドキドキし、ラストのサリーの選択には拍手を送りたくなる。サリーの障害は、私たちの誰もが大なり小なり持つ欠点の象徴だ。ちょっとくらいの困難でヘコんでいる場合じゃない!人懐こい笑顔が魅力の主演のコスティア・ウルマンの好演が心に残る。
【60点】
(原題「MEIN BLIND DATE MIT DEM LEBEN/MY BLIND DATE WITH LIFE」)
(ドイツ/マルク・ローテムント監督/コスティア・ウルマン、ヤコブ・マッチェンツ、アンナ・マリア・ミューエ、他)
(ハートフル度:★★★★☆)


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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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