映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「アトミック・ブロンド」「バリー・シール」「あゝ、荒野 後篇」「我は神なり」etc.

西遊記2 妖怪の逆襲

Journey to the West: The Demons Strike Back [Blu-ray]
妖怪ハンターの三蔵法師は、病を押して、孫悟空、猪八戒、沙悟浄とともに天竺に向け旅をしていた。道中、孫悟空が、美女に化けては人間を喰らう蜘蛛女たちを退治したが、三蔵法師は孫悟空の手荒いやり方を非難。理不尽さに腹を立てた孫悟空が、三蔵法師を始末しようとチャンスをうかがう中、一行は比丘国へ到着する。比丘国の王は、常軌を逸した気分屋で、三蔵法師は、子どものようなこの王の機嫌を損ねてしまう。困った三蔵法師は孫悟空に助けを求めるが、状況は悪化するばかりで窮地に陥ってしまう…。

アクションファンタジー「西遊記 はじまりのはじまり」の続編「西遊記2 妖怪の逆襲」。続編とはいうものの、キャストはほぼ入れ替わっていて、前作から引き続き登場するのはスー・チーくらいだ。前作で監督したチャウ・シンチーは、続編は作らないというのがモットーだそうで、本作では監督はせず製作にまわっている。とはいえ、メガホンを取るのはシンチーの恩師で、香港のスピルバーグの異名をとる大御所のツイ・ハーク監督なので、それなりの豪華さはあるのだ。「人魚姫」のリン・ユンを起用するなど、女性キャラにも華やかさがある。ただ、肝心の映画の中身の方がさっぱりいただけない。

「西遊記 はじまりのはじまり」は相当にブッ飛んだ内容だったが、それまでの西遊記のイメージをブチ壊す設定は本作でも健在なのだ。だが、笑いという点では、最初から最後までスベりまくりで、まったくノレない。ストーリーも、仲間割れしては妖怪退治の繰り返しで単調すぎる。アクションだけは何とか見せ場を作っていて、美女蜘蛛女とのバトルや、クライマックスに、孫悟空が、映画では有名なあるキャラにも似た“大変身”を見せるなど、ヴィジュアル面はにぎやかだ。だが、西遊記特有のシンプルな楽しさが感じられないのはいかがなものか。ほとんどやけっぱちにしか見えないエンドロールの後が一番面白いのだから、あまりにやるせない。続編と思わず、単独の作品と思えば、かろうじて納得できる映画だった。
【45点】
(原題「JOURNEY TO THE WEST: THE DEMONS STRIKE BACK」)
(中国/ツイ・ハーク監督/クリス・ウー、ケニー・リン、スー・チー、他)
(続編度:★☆☆☆☆)
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ハイジ アルプスの物語

Heidi
ハイジは、アルプスの大自然の中で、頑固だが優しい祖父のアルムおんじと暮らしていた。ある日、ハイジは、足が悪く身体が弱いため車椅子生活を送る大富豪のお嬢様クララの話し相手として、大都会フランクフルトに行くことになる。明るく素直なハイジの励ましもあってクララは次第に元気になっていき、ハイジとは固い友情で結ばれていった。一方でハイジは、祖父が待つアルプスの山の暮らしが恋しくなる…。

世界中で愛されているヨハンナ・シュピリの児童文学を実写映画化した「ハイジ アルプスの物語」。日本では、名作アニメ「アルプスの少女ハイジ」があまりにも有名だが、実は過去に何度も実写映画化されている。今回は本国スイスでの実写化で、アルプスの雄大な大自然の描写がとりわけ素晴らしいのが特徴だ。ジブリアニメが50話以上の回に分けて、それぞれのエピソードを詳細に描いたのに対し、本作は、原点に回帰した“ダイジェスト版ハイジ”として手堅い作りである。

何と言っても素朴で元気なハイジがとても魅力的なのだ。ポスターで見た時は普通の少女に見えるが、スクリーンの中でイキイキと動く姿にたちまち魅了された。名優ブルーノ・ガンツが演じるおんじもイメージにぴったりである。少し意外なのは、悪ガキすぎるペーターと、美人すぎるロッテンマイヤーさんだろうか。アルプスの暮らしは、もはや憧れを通り越してファンタジーに近いが、それでも現代人に、大自然への畏敬の気持ちを思い起こさせる。おなじみの白パンのエピソードもいいが、ゼーゼマン家の召使のセバスチャンのさりげない優しさがいい。そして、クライマックスには、クララに起こる奇跡が待っていて、分かっているのに目頭が熱くなる。何しろ原作は不朽の名作。奇をてらわず、原作に忠実に映画化した本作は、人が本来持つ優しさや善意を全力で肯定するものだ。大人も子供も、素直に共感できる作品に仕上がっている。
【65点】
(原題「HEIDI」)
(スイス・独/アラン・グスポーナー監督/アヌーク・シュテフェン、ブルーノ・ガンツ、イザベル・オットマン、他)
(原点回帰度:★★★★★)
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奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール

「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」オリジナル・サウンドトラック
雑誌編集者コーロキは、“力まないカッコいい大人”奥田民生を崇拝する33歳。おしゃれライフスタイル雑誌編集部に異動になり、慣れない高度な会話に四苦八苦しながらも仕事に励んでいた。そんな時、仕事で出会ったファッションプレスの美女・あかりにひとめぼれする。コーロキは彼女に釣り合う男になろうと必死になるが、空回りばかり。天然で自由奔放なあかりに振り回され続けるコーロキは、いつしか身も心もズタボロになっていく…。

奥田民生に憧れる雑誌編集者が男を狂わせる美女に翻弄され、もがき苦しむ様を描くラブ・コメディー「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」。原作は、漫画家でコラムニストの渋谷直角の人気コミックだ。「モテキ」の大根仁監督の作品は、なぜか雑誌や漫画、写真誌などの編集部を舞台にしたものが多いが、本作もしかり。おしゃれで流行に敏感、ポップな感性やサブカルへの知識など、イマドキ感を散りばめて華やかだが、基本的には、ダメ男の成長物語というテッパンのストーリーだ。うだつのあがらない編集者は、男を翻弄するファム・ファタールに恋したことで自分を見失い、恋愛の地獄を見ることになる。

男たちは、愚かで常軌を逸し、女たちはしたたかでキュートという構図は、確かに面白い。恋愛の歓喜と地獄が人を成長させるというのも、真理だろう。だが、そもそも狂わせガールことあかりは、水原希子でいいのか?!とちょっと首をかしげるのは、私だけ? 好みの問題? 確かにエロくて可愛い小悪魔なのだけれど…。演技力、天然キャラ、コメディーセンスと、すべてにおいて、天才コラムニストを演じる安藤サクラの存在感の方が何倍も強烈だった。奥田民生の楽曲が全編にわたって効果的に流れ、歌詞はなるほど深い。だが、コーロキの奥田民生愛が感じられず、長い長いタイトルも含めて、すべてが表層的な作品になってしまったのが残念だ。
【45点】
(原題「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」)
(日本/大根仁監督/妻夫木聡、水原希子、新井浩文、他)
(ボーイ・ミーツ・ガール度:★★★★★)
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あさがくるまえに

フランス北西部の都市ル・アーヴル。夜明け前に友人とサーフィンに出掛けたシモンが交通事故に遭う。知らせを受けて病院に駆け付けた両親は、息子が脳死と判定されたことを告げられる。動揺する両親は、医師から移植を待つ患者のために臓器の提供を求められ、激しい戸惑いを隠せない。だが臓器移植が可能な時間は限られていた。その頃、パリでは心臓疾患患者のクレールが臓器提供を待っていたが、もう若くはない彼女は、他人の命と引き換えに延命することの意味を自問自答していた。そんな時、担当医からドナーが見つかったという連絡が入る…。

心臓移植をめぐって葛藤する人々の24時間を描いた人間ドラマ「あさがくるまえに」。原作は、メイリス・ド・ケランガルのベストセラー小説だ。脳死と判定された息子の臓器提供の選択を迫られる両親、生きるには心臓移植しか選択肢がないのに移植をためらう中年女性、限られた時間の中で奔走する移植コーディネーターなど、複数の人間が思い悩む様を描く群像劇だが、同時に心臓という真の主人公を軸とした、骨太な生と死のドラマでもある。映画は、心臓を提供する側、受ける側、それぞれの家族の思いを丁寧にすくい取りつつ、繊細な映像でみずみずしさを醸し出す。それでいて、医療現場や手術の描写は異様なほどリアルなのだ。観客は、この不思議なバランスの中にある感動に、心を奪われてしまうだろう。

女性監督のカテル・キレヴェレは、本作で、愛する人の死後、残された者たちが、どうやって生へアプローチするかを描いている。視点は常に生者の側だが、そこには逝ってしまったシモンへの愛情が確かに横たわっているのだ。夜明け前の青い空気の中、少年が海に向かう冒頭の場面は、悲しいほどポエティックで、見終われば、寄せては返す波の先にある生命の源のような海が、深い意味を帯びる。俳優たちは皆好演だが、移植コーディネーターのトマを演じるタハール・ラヒムがとりわけ素晴らしい。約束通りシモンに波の音を聞かせたトマが、夜明けの道をバイクで走る場面は、美しく忘れがたい。トマは医療現場で働くスタッフだが、物語の中では、死者と生者をつなく天使のような存在なのだ。キレヴェレ監督の作品を見るのは、本作が初めてなのだが、その才能は疑う余地はない。医療ものや社会派ドラマに傾かず、あくまでも一人一人の心情に寄り添うポートレイト的な手法と、卓越した映像センスが、この映画を高いレベルに引き上げている。
【85点】
(原題「REPARER LES VIVANTS」)
(仏・ベルギー/カテル・キレヴェレ監督/タハール・ラヒム、エマニュエル・セニエ、アンヌ・ドルヴァル、他)
(再生度:★★★★★)
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オン・ザ・ミルキー・ロード



隣国との終わりなき戦争が繰り広げられる東欧の某国。コスタは、毎日、ロバに乗って、銃弾をかいくぐりながら、前線の兵士たちにミルクを届けていた。ある時、コスタは、ローマからセルビア人の父を捜しに来て戦争に巻き込まれたという絶世の美女と出会い、互いに一目で惹かれあう。だが彼女は村の英雄ジャガの花嫁になることが決まっていた。そんな中、かつて彼女を激しく愛した多国籍軍の将校が送り込んだ特殊部隊によって、村は襲撃され、愛すべき村人は皆殺しに。偶然村を離れていて助かったコスタは、花嫁を連れて決死の逃避行を繰り広げるが…。

ミルク運びの男と美しい花嫁の愛の逃避行とその顛末を描く奇想天外な物語「オン・ザ・ミルキー・ロード」。世界三大映画祭を制した鬼才エミール・クストリッツァ監督は、過去にも時折、俳優として名演技をみせてきたが、自分の監督作品に主演するのは、今回が初めてだ。約9年ぶりとなる新作は、いかにもクストリッツァ監督らしい、にぎやかな作品で、のどかで平和な暮らしと残酷な戦争とが隣り合わせのドタバタ喜劇が、沢山の動物たちを交えて、繰り広げられる。人間も動物も、戦争も平和も、生も死も、すべてがゴッタ煮。スパイスは、おなじみのバルカン・サウンドの陽気な音楽。沸騰した鍋からあふれんばかりの大暴走のラブストーリーが展開する。これぞクストリッツァ・ワールドだ。

ストーリーの先読みが不能なほど物語はカオス状態なのだが、悲劇的な内戦を経験した旧ユーゴ出身のクストリッツァがたどり着く結末は、人間の愚かさや戦争の悲惨を容赦なく突きつける、破壊的な描写だった。それでもこれは、紛れもなく愛の寓話である。美貌のモニカ・ベルッチ演じるワケありの花嫁も、壮絶な過去を持つコスタも、もう若くはない。だが共に地獄を見てきたからこそ、彼らの愛の逃避行は、この上なくピュアだ。劇中、象徴的に描かれる蛇やハヤブサ、花嫁が難民キャンプで繰り返し見る旧ソ連映画「鶴は翔んでゆく」、ラストに登場する、黙々と石を運ぶ僧侶。すべてが平和への祈りに通じている。
【70点】
(原題「ON THE MILKY ROAD」)
(セルビア・英・米/エミール・クストリッツァ監督/エミール・クストリッツァ、モニカ・ベルッチ、ミキ・マノイロヴィッチ、他)
(カオス度:★★★★★)
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エイリアン:コヴェナント

Alien: Covenant [Blu-ray](Import)
コールドスリープ中の男女2,000人を乗せた宇宙船コヴェナント号は、滅びゆく地球を飛び立ち、移住先の惑星オリエガ−6を目指していた。だが予期せぬ大事故で船体に甚大なダメージを受けた上、船長をはじめ乗組員の数十人が命を落とす事態に。船長の妻ダニエルズら、生き残った乗組員たちと最新型アンドロイドのウォルターが懸命に修復作業を行っている時、謎の電波を受信する。小型船で調査に向かった先は、移住先より近く、地球によく似た環境の神秘的な惑星だった。なぜか生き物の姿がまったく見当たらないその星で、乗組員が次々に体調異変を起こす中、凶暴な未知の生命体に遭遇したダニエルズたちは、絶体絶命の危機に瀕する。そこに現れたのは、ウォルターの前世代に当たるアンドロイドのデヴィッドだった…。

SFホラーの金字塔「エイリアン」シリーズの原点となる「エイリアン:コヴェナント」。リドリー・スコット監督の前作「プロメテウス」の続編で、エイリアン誕生の衝撃的な秘密が明かされる。ヴィジュアルは期待通りの素晴らしさで、幻想的な大自然が広がる楽園のような惑星の造形と、そこで繰り広げられるB級ホラーさながらのグロテスクな流血の惨劇というギャップに震えてしまう。エイリアンの誕生秘話に、人型アンドロイドの持つ知性や意志をからめたストーリーが、同監督の傑作SF「ブレードランナー」とも共通するモチーフなのが興味深い。映画の大きな特徴として、監督や俳優の、過去の他作品が色濃く影を落とすという興味深い事実を改めて認識させられた。

何の情報もない怪しい惑星に、部下が制止したにも関わらず、嬉々として足を踏み入れる新船長の愚行が、その後の長い長い惨劇の原点とは、情けない気がするが、ともあれ、エイリアン誕生のその理由をしっかりと知ることになるのはシリーズを見てきたファンとしては嬉しい。だが「プロメテウス」未見の観客にはわからない部分も多いので、少々不親切な作品でもある。クライマックスのどんでん返しは、予想通りのものだったが、それでもその衝撃とショックは破壊的だ。キャサリン・ウォーターストーンがタンクトップ姿でリプリーばりの雄姿を見せて好演しているが、そもそも「エイリアン」は戦う女性キャラがウリだったはず。それなのに、このシリーズが、いつのまにか、マイケル・ファスベンダーの映画になってしまっていることに、ちょっと苦笑いしてしまった。人間VSエイリアン、人間VSアンドロイド、さらにはアンドロイドVSアンドロイドまでも。この戦いに終わりはないと、ため息が出た。
【70点】
(原題「ALIEN: COVENANT」)
(アメリカ/リドリー・スコット監督/キャサリン・ウォーターストーン、マイケル・ファスベンダー、ジェームズ・フランコ、他)
(流血度:★★★★★)
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試写室だより 17.09月上旬

試写室だより今週末は3連休。それなのに、大型台風直撃の予報です  (T△T)
現時点では、日本列島縦断のコースをたどりそう(しかし、予報はコロコロ変わる…)。皆さん、天気予報をマメにチェックして十分に気を付けましょうね。

最近見た主な映画は以下。

「アナベル」「ルージュの手紙」「プラハのモーツァルト」
「エルネスト」「ユリゴコロ」「ミックス」「ラストレシピ」
などなど。

クリストファー・ノーラン監督の大作「ダンケルク」が好調です。
戦争映画なので、女性はちょっと敬遠するかもしれませんが、実はこの作品には、若き兵士の役で、人気アイドルグループ、ワン・ダイレクションのハリー・スタイルズが出演しています。本作が本格的俳優デビューで、なかなかの好演なのですが、何しろ名優が山ほどいるし、畳みかけるような戦闘で“個が埋没する”ストーリーのため、思ったより目立ちませんが… (;^_^A でも記念すべき俳優デビュー作が、いわゆるアイドル映画ではなかったことは、きっとこの先の彼の役者人生に影響を及ぼすはず。今後、俳優として活動するかどうかは未定だそうですが、とりあえず期待!といったところですね。


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三里塚のイカロス



1960年代、千葉県成田市三里塚地区。巨大国際空港建設のため突然立ち退きを要求された人々が、空港建設に反対して立ち上がった。主に農民たちが主導したその闘争には、武装した若者たちが全国から参加し、抵抗運動は激化していった。当時の闘争の責任者、農民運動家、地元農家の若者と結婚した女性らの証言をもとに、三里塚闘争とは何だったのか、あの時代とは何だったのかを検証していく…。

成田国際空港建設に反対した三里塚闘争に参加した農民たちと彼らに賛同した若者たちの生き様を描くドキュメンタリー「三里塚のイカロス」。同じ三里塚闘争を扱った記録映画「三里塚に生きる」(2014)の姉妹編である。「三里塚に生きる」が農民を描いたのに対し、本作では、農民たちを支持して共闘した若者たちにスポットを当てている。土地を暴力的に収奪した国家権力に対峙した農民を助けることで、若者たちは革命の拠点となった三里塚から、社会変革を成し遂げられると信じたのだ。

政治の季節は去り、本気で世界を変えられると信じた熱気は、今はもうない。成田国際空港も、規制の事実となり、現代の若者たちはサンリヅカの地から、楽しそうに海外旅行に出かけていく。この映画は、あの時代を生きた人々、とりわけ、今まで語りたくても語ることができなかった思いや事実を抱えてその後の人生を歩んできた人々の、集合写真のような役割を果たしている。特に、農民支援に入った農家の若者と結婚し、その土地に根をはった女性たちや、用地買収を担当した元空港公団職員らの言葉が聞けるのは、貴重だ。農民と若者たちは、単純な勝ち負けでは語れない歴史を共有したのである。本作は、三里塚闘争に身を投じた若者たちを、太陽に近づきすぎて墜落したイカロスに例えている。イカロスは墜落したかもしれないが、確かに飛翔した。そのことを覚えておきたい。
【60点】
(原題「三里塚のイカロス」)
(日本/代島治彦監督/加瀬勉、岸宏一、秋葉恵美子、他)
(時代検証度:★★★★☆)
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あしたは最高のはじまり

南仏できままに暮らすプレイボーイのサミュエル。彼の前に、かつて関係を持った女性クリスティンが生後数ヶ月の娘グロリアを連れて突然現れる。グロリアが実の娘と聞きサミュエルが驚いている間にクリスティンは赤ん坊を置いていなくなってしまい、サミュエルはクリスティンを探しだすためロンドンへ。しかし英語ができない彼はクリスティンをみつけられず、異国で途方にくれているところを、偶然出会ったゲイの敏腕プロデューサー、ベルニーから助けられる。映画のスタントマンとして働き出したサミュエルは、グロリアとベルニーといつしか本当の家族のような絆で結ばれていった。だが8年がたったある日、突如クリスティンが彼らの前に現れる…。

遊び人のシングルファーザーが子育てに奮闘する姿を描くハートウォーミング・ストーリー「あしたは最高のはじまり」。大ヒット映画「最強のふたり」で一躍スターになり、今やハリウッド大作からもひっぱりだこの国際派スターとなったオマール・シーは、ちょっといいかげんだけど明るく前向きなキャラクターが本当に良く似合う。お気楽に過ごしていた遊び人が、突然父親になることで、責任ある大人に変わる成長物語は、ゲイの友人と共に“男手ふたつ”での子育てがユニークだ。風変わりな父娘の絆は強く、成長したグロリアとサミュエルは“最強の”相棒となる。

納得できないのは、母親クリスティンの行動だ。情緒不安定とはいえ、娘を押し付けたり奪ったりでは、あまりに自分勝手で、生みの母である彼女に共感しようがない。ストーリーには、ちょっとご都合主義の展開も。だが、それらすべてを吹っ飛ばしてくれるのが、オマール・シーのはじけるような笑顔と、グロリア役の新人子役グロリア・コルストンのこれまた輝く笑顔である。母親のことをずっと世界を飛び回る凄腕スパイと信じてきたグロリア。後半にはやるせない決断が、そして終盤には思いもよらない悲劇が待ち受ける。少々風変わりな父娘の生き方に、親も子も不完全なのが当たり前、一緒に成長していくものなのだと教えられた。本作の原案は、日本未公開のメキシコ映画で、世界5ヶ国でリメイクが決定しているそう。常識破りの子育てと魅力的な父娘の絆の物語は、国境を越えて人々を魅了したようだ。
【60点】
(原題「DEMAIN TOUT COMMENCE」)
(フランス/ユーゴ・ジェラン監督/オマール・シー、クレマンス・ポエジー、アントワーヌ・ベルトラン、他)
(相棒度:★★★★★)
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ナインイレヴン 運命を分けた日



2001年9月11日、ワールドトレードセンターのエレベーターには、ウォール街で成功した実業家のジェフリーと離婚調停中の妻イヴ、バイクメッセンジャーのマイケル、恋人に別れを告げに来たティナ、そしてビルの保全技術者のエディの5人が居合わせる。だが突如、ビルに飛行機が激突し、エレベーターは北棟の38階辺りで停止。閉じ込められた5人は、外部との唯一の通信手段であるインターコムのオペレーターのメッツィーに励まされながら、なんとかエレベーターから脱出し生き延びる方法を探るが…。

2001年に起きたアメリカ同時多発テロ事件をビルの内部に閉じ込めらた人々の視点から描く社会派ドラマ「ナインイレヴン 運命を分けた日」。同時多発テロ下の実話から生まれた舞台『エレベーター』を映画化したものだ。様々な境遇の5人の男女は、狭い密室で互いのことを語り合い、人種や経済格差を超えて、ただ生き延びることだけを目標に力を合わせる。エレベーターの中は、そのままアメリカ社会の縮図になり、そこでなすべきことは何かと問いかけているかのようだ。

心が離れてしまったジェフリーとイヴの夫婦は互いに歩み寄り、不毛な恋愛を清算すると決めたティナは情緒不安定ながら初めて生きる意欲に燃える。マイケルやエディも、愛する家族のために、こんなところで死ぬわけにはいかないのだ。恐怖と戦いながら葛藤する5人の心理ドラマとしては良くできている。だが映画は見るからに低予算だし、ほとんどがエレベーターの中の会話劇なので、やや緩慢な印象は否めない。それでも16年前の衝撃的な悲劇を、今、改めて描くのは、互いに助け合い、団結して危機を乗り越える人々の姿を見せることで、分断の危機に瀕した母国アメリカのあるべき姿を伝えたいからである。NY出身のキャスト、スタッフが多く結集しているが、中でも、ゴシップまみれのお騒がせ俳優チャーリー・シーンが久しぶりに好演しているのが見所だ。
【65点】
(原題「9/11」)
(アメリカ/マルティン・ギギ監督/チャーリー・シーン、ジーナ・ガーション、ウーピー・ゴールドバーグ、他)
(一致団結度:★★★★★)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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