映画通信シネマッシモ


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐

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◆プチレビュー◆
やっぱりSWは映画のお祭り!タイトルが映し出されただけでワクワクする。自分の能力が認められる場を求めてシスの元へ走るアナキン。サラリーマン社会でいうところの「転職」だが、職場選びを誤った。

クローン大戦末期。ジェダイの騎士アナキンは、パドメと極秘結婚、子供の誕生を待っていた。一方で、共和国最高議長バルバティーンを分離主義者同盟の誘拐から救出したりと活躍するが、ジェダイ評議会から正統に評価されず、不満を募らせる…。

全6作の3作目をもってシリーズが完結するのは、非常に異質なことだ。アナキンが闇黒面(ダークサイド)に堕ち、ダースベイダーになるという、誰もが知っているストーリーは、なんの意外性もなく予想通り描かれる。だが、子供だましのチャンバラSFと“大人の”ファンから小ばかにされたこの映画のスピリットは、終わってみれば、崇高なオペラの世界に近いもの。徹底した悲劇性は最終章にふさわしい。

選ばれし者であるにもかかわらず、闇黒面(ダークサイド)の魅力に強く惹かれるアナキン。矛盾したキャラクターの主人公は、映画史上で最も魅力的な悪のヒーローになった。自らの不完全さ、愛するものへの執着、師との葛藤。全ては悲劇のパズルのピースとなってゆく。

素晴らしすぎる映像と迫力のバトルに心ゆくまで酔いしれよう。冒頭から大音響で響く耳慣れたメロディ。“昔、昔、銀河で…”の語り。遠近法で流れ去る文字。これら全てに胸が躍る。偉大なシリーズの完結をその目で見届けてほしい。

□2005年 アメリカ映画
□監督:ジョージ・ルーカス
□出演:ヘイデン・クリステンセン、ユアン・マクレガー、ナタリー・ポートマン、他

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マラソン

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◆プチレビュー◆
どこか「フォレスト・ガンプ」を思わせるキャラクターが魅力的だ。映画に盛り込まれた、自閉症についての正しい知識も貴重。

チョウォンは見た目は20歳の青年だが、子供の頃から抱える障害の自閉症のため、5歳の子供ほどの知能しか持っていない。シマウマとチョコパイが大好きな彼は、毎日せいいっぱい生きている。そんな彼の表情が、走っているときだけは、特別に明るくいきいきとしていることに気付いた母親は、彼に本格的なコーチをつけて、フル・マラソンに挑戦させようとするが…。

フル・マラソンを完走することは、精神的にも肉体的にも、簡単なことではない。ペース配分やコースの研究、他のランナーとのかけひきなど、健常者でも困難なことに知的障害を抱えながら挑戦し、見事にやり遂げた青年がいた。この物語は、韓国で実際に起こった出来事をもとに作られている。

自閉症の主人公と彼を支える母の愛。お涙ちょうだい風の話が見えたと思ったら大間違い。実はこの映画の一番の売りは、ユーモアなのだ。なまけモノのコーチととぼけた味のチョウォンのやりとりは、まるでボケとツッコミ漫才。韓国の母親らしい強気で情が深いおかあさんとチョウォンの、どこかズレた会話もいい。一方で、家庭に居場所がなくなった父親や、障害を持つ子につきっきりになる母親のせいで、寂しい思いをする弟の感情の揺れもさりげなく描いて、神経が細やかだ。そんな家族のさまざまな思いをにじませて、遂にマラソン大会のスタートを告げる笛が吹かれる。

チュンチョンの国際マラソン大会を実際に撮影した映像は、クライマックスにふさわしく素晴らしい出来栄え。握っていた母親の手をゆっくりと離れ、走り出すチョウォンの姿に、観客の誰もが彼の応援団になってしまう。勝ち負けよりも大事なものを教えてくれる主人公の走りっぷり。見終われば、まさに草原を走るシマウマの気分だ。

□2005年 韓国映画
□監督:チョン・ユンチョル
□出演:チョ・スンウ、キム・ミスク、イ・ギヨン、他

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オープン・ウォーター

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◆プチレビュー◆
スキューバ・ダイビングをやる人は、トラウマになりそうなので見ない方がいい。本物のサメは調教(しつけ?)されてても、怖い!

スーザンとダニエル夫妻はようやく取れたバカンスでカリブの海へやってきた。二人はダイビングツアーに出かけ、楽しい時を過ごす。満足して海面へあがってきた時、全員ボートに乗ったと数え間違えたスタッフのせいで、二人は海に取り残さていた。いつかは助けがくると信じていた二人だったのだが…。

単純ミスは人間なら誰もが経験する。しかし、この映画で起こるミスはまさに命取りだ。見渡す限り陸は見えず、叫んでも誰にも届かない。さらにそこには無数のサメがいる。冗談じゃないゾ!と思ったが、何とこれに似た事故は世界各地で起こっているそうだ。怖い。怖すぎる。

79分というごく短い上映時間からもわかるように、アイデア勝負のショック・ムービーだ。映画の9割は夫婦二人の会話で構成されている。最初は気楽に考えていた二人が、次第にイラだち互いを責め、夫婦の間の溝が浮き彫りになる様子が実に上手い。予算の都合とはいえ、本物のサメを使って撮影したという裏話を聞くと、俳優の恐怖の表情も、どうりで迫真モノだった。淡々としたラストがまた怖い。

豊潤な資金のハリウッド映画の対極にあるような低予算作品だが、資金がないことを逆手にとった、知恵と度胸と驚きの作品だ。サンダンス映画祭で大絶賛されたのが頷ける。新しい才能に出会った嬉しさを感じるのは、こんな映画を見た時だ。

□2004年 アメリカ映画 原題「Open Water」
□監督:クリス・ケンティス
□出演:ブランチャード・ライアン、ダニエル・トラヴィス、ソウル・スタイン、他

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ザ・リング2

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◆プチレビュー◆
全体的に何をするにも速過ぎるのが、日本人には違和感がある。井戸をよじ登るサマラの動きがあまりにも軽快で力強いので笑いが出そうで困った。

忌まわしい事件から逃れるように、レイチェルと息子のエイダンはオレゴン州の海辺の町アストリアにやってくる。しかし呪いは終わっていなかった。町で怪事件が発生し、少年が異様に顔をゆがめて死にいたった。奇妙な気配、まとわりつく水、隠された秘密。ビデオテープに込められたサマラの呪いから逃れることが出来るのか…。

自慢じゃないが、私は相当な怖がりである。ホラー映画はいつもビクビクもので、人目さえなければ、手で目を覆って指の間から見たいくらいなのだ。その臆病モンの私でさえも、この映画はまったく怖くない。これは相当に問題ありではなかろうか。母子愛の話と言えば聞こえはいいが、ホラー映画の気概はどこにも見られない。

今回は続編ながら米国オリジナル・ストーリーというのが売り。主人公の母子と呪いの元凶のサマラは同じだ。だが、映画を見たかぎり、物語を米国に持って行ったあげく続編を作る意味があったとは思えない。ビデオテープが破棄されたので今度は息子に取り付くという設定は、もはや「リング」とは別のものだ。日本独特の湿度や、恐怖がじわじわとくる時間感覚が全く消されてしまっていては、この物語の怖さの本質には迫れない。唯一のとりえは、本作の映像的な特徴である水の描写。バスタブから逆に吹き上げて部屋を満たす水は、CG技術もすばらしく、非常に美しかった。

「キャリー」で一世を風靡したシシー・スペイセクが、鍵を握る人物として登場するが、この無駄に豪華なキャストがなおさら作品の質の低さを強調し、寒々しいばかりだ。「リング」をはじめて見た時の怖さは今でも忘れない。日本版は非常に秀逸な映画だったが、この米国版の続編で、世界が認めるジャパニーズ・ホラーにケチがついたような後味の悪さが残ってしまった。

□2005年 アメリカ映画 原題「The Ring 2」
□監督:中田秀夫
□出演:ナオミ・ワッツ、デイビット・ドーフマン、シシー・スペイセク、他

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電車男

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◆プチレビュー◆
期待ゼロだったので喜びもひとしお。まさに大穴的な作品だ。エルメスが優しすぎるのが気になるが、そこは年上の女性の余裕と解釈しよう。

女性に無縁のアキバ系ヲタク青年が、電車の中で酔っ払いに絡まれる美女エルメスを助けたことから恋に落ちる。何しろおくての彼は、思い余ってインターネットの掲示板サイトの友人たちに助けを求めた。こうして電車男と呼ばれる青年と、顔が見えない彼の応援団の奮闘が始まるのだが…。

ネットがらみの出来事といえば、ひきこもりや犯罪など暗い事件ばかり。しかし、ネットからもこんな“イイ話”が生まれるのだ。モテない男の妄想と一蹴するなかれ。実話をもとにしたこの映画は、もちろん美しい部分だけをすくいとっているのだろうが、映画として楽しく巧みに構成されている。

イマドキ珍しいくらい純情なヲタク青年と、まるで聖母マリアのごとく優しいエルメス。仲間の助けを借りながらの不器用な恋愛は、見ていて微笑ましい。ネットの住人たちの応援は、その情報量や鋭い意見も含めて最強だ。2ちゃんねるの名無しさんと言えば、辛らつで罵詈雑言の名手だが、味方するときのパワーはすごい。やる時はヤルのだ。彼を応援するチャット仲間たちも、本当は様々な問題を抱えてネットに安らぎや逃げ場を求めているのだが、電車男の純情は周囲の人々をも徐々に変えていく。

電車男の恋の応援団のそれぞれの反応は、分割画面を上手く使ったメリハリがある楽しい演出で飽きさせない。題材がネットなので、絵文字や専門用語も頻繁に登場するが、なじみがない観客にも楽しさは十分に伝わるから心配無用だ。この脚本の一番の上手さは電車男と彼の応援団たちが最後まで顔をあわせないところ。バーチャルの世界で見つけた勇気が、それぞれの現実世界の扉を開く瞬間が最高に清々しい。

□2005年 日本映画
□監督:村上正典
□出演:山田孝之、中谷美紀、大杉漣、他

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コーヒー&シガレッツ

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◆プチレビュー◆
まさに“おしゃれな映画”と形容したい。11編の中では「カリフォルニアのどこかで」と「いとこ同士」がお気に入り。

11本のオムニバス作品の共通のテーマは、タバコとコーヒー(時には紅茶)とさりげないおしゃべり。どこか居心地悪そうなロベルトとスティーブン。双子は変な店員に付きまとわれる。禁煙を破る勝手な説を唱えるイギーとトム。「問題なし」の押し問答や、ヘンテコな共鳴体の実験、カフェでバイト中のビル・マーレイ…。クセがあって、どこかかみ合わない会話が、多くの男女によってカフェで淡々と繰り返される。

モノクロ映像でつづる11編は“物語”と呼ぶのもためらわれるような、何気ないひとこまだ。特にオチがあるわけでもなく、教訓めいた含みがあるわけでもない。だが、これがオムニバスの名手のジム・ジャームッシュの手にかかると、何ともイイ感じにまとまってしまうから不思議。まったり、ゆったり、リラックス。カフェインとニコチン並みに、病みつきになる。

日本公開は05年だが、これらの作品はジャームッシュが18年かけて少しずつ撮り貯めていたもの。サイド・ワークとしてコツコツと築いてきた愛しい作品たちだ。中には世界の有名映画祭での受賞作もあり、短いながらにジャームッシュの美意識と実力が反映されている。ケイト・ブランシェットやアルフレッド・モリーナなど、出演俳優も豪華で、その俳優たちのほとんどが本人の役をやっているのが妙に笑える。

無関係なようでいて、11本がちょっとずつ係わりをもっていることや、過去の作品にも目配せしていることに、ファンならきっと気付くだろう。明確なストーリーらしきものがないので、時には退屈するかも。だが、このグルーヴ感がジャームッシュ独特の空気なのだ。人に勧めるのは難しい。でも自分さえこの映画の素晴らしさを堪能できればそれでいい。そんな身勝手な気持ちになるほど、最高に気に入っている。

□2004年 アメリカ映画  原題「Coffee & Cigarettes」
□監督:ジム・ジャームッシュ
□出演:ロベルト・ベニーニ、ケイト・ブランシェット、ビル・マーレイ、他

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ミリオンダラー・ベイビー

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◆プチレビュー◆
イーストウッドの作風は、レオーネ監督と組んだ影響が大きい。「ローハイド」などの“アメリカ的”な俳優が、複雑な魅力の映画を作るところがおもしろい。

LAでさびれたボクシング・ジムを経営するフランキーは、腕はいいが頑固な老トレーナー。ジムには、雑用係で片目の元ボクサーのスクラップもいる。ある日、フランキーの元に31歳のマギーがボクシングのトレーニングを受けたいと訪ねてくる。女は教えないと冷たくはねのけたフランキーだったがマギーはあきらめなかった…。

この映画は、ボクシングを題材としているが、決してスポ根や勝利を追及する物語ではない。極限状態での本当の愛情の意味を観客に問う映画なのだ。世の中の物事や人間を、白黒をつける如く、善と悪にくっきりと分けることはできないことをイーストウッドはよく知っている。

物語のテーマは、老境の孤独な男と、同じくひとりぼっちの女性ボクサーとの深い信頼関係。繊細な愛情がにじみ出る演出で、見事のひと言につきるが、それは、父娘のようなフランキーとマギーを陰で見守るM.フリーマンの存在が胸を打つからだ。カトリックの価値観、アイリッシュの誇り、不人情な家族。劇中には色々な要素が詰まっている。

試合で連勝するマギーに想像を絶する試練が降りかかり、映画はラスト30分でまったく別の物語に変化する。主人公が出した答えには賛否が分かれるだろうが、深い感動は観客が皆、共有するものだ。本当に愛する者の願いのために自ら十字架を背負った人間を、冒頭から控えめに流れるピアノの旋律が優しく包む。慈愛に満ちた傑作だ。

□2004年 アメリカ映画  原題「Million Dollar Baby」
□監督:クリント・イーストウッド
□出演:クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン、他

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クローサー

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◆プチレビュー◆
クローサー(接近)は原題通りで内容にも合っているが、香港映画で同名のものがあるので、せめて副題がほしかった。私が男性なら絶対にジュリア・ロバーツよりもナタリー・ポートマンを選ぶ。

ロンドン。小説家志望の新聞記者ダンは、交通事故でケガをしたアリスを助ける。NYでストリッパーをしていたいう彼女とダンはすぐさま恋に落ちた。1年後、処女小説の出版を控えたダンは、女性写真家のアンナに一目惚れ。アンナもまた、ダンに惹かれるが、彼女はダンの悪ふざけで出会った医師のラリーと結婚。それぞれの交錯した愛には、運命的な出会いと分かれが用意されていた…。

この話は、もともと舞台劇。舞台劇の映画化にあたっていつも感じるのは、時間の経過がわかりにくいということだ。この物語でも実は3〜4年の間の出来事が描かれているのだが、凝縮された演出のおかげか、ごく短い間のように感じてしまう。だが、さすがは元が舞台劇だけあって、練りに練ったセリフは鋭いものばかり。もっとも、凝ったセリフと複雑な人間関係の割には、物語そのものの抑揚は低めだ。

主な登場人物は4人。役者は皆上手い。J.ロウとJ.ロバーツが人気の点では格が上のように感じるが、ずば抜けて素晴らしいのは、ストリッパーという汚れ役を体当たりで演じたN.ポートマン。ヌードこそないが、かなり刺激的なポーズやきわどいセリフもあって「レオン」の子役や「スター・ウォーズ」のアミダラのイメージを完全に叩き壊す。この映画は彼女の女優人生のターニング・ポイントになりそうだ。

恋愛に関してかなり自由になったはずの現代においても、人は愛する者が自分以外の人間と関係するのを好まない。肉体的にも精神的にも、たとえどんな“正当な”理由があろうとも。登場人物は皆、お互いを騙しあい、傷つけあう。観客は、彼らの誰かに感情移入するのは難しいだろう。身勝手な言い分や、品性のなさを、おもしろがるか、軽蔑するかのどちらかだ。私の場合、後者だが、なぜか映画を見終わって嫌悪感はなかった。主人公を好きになることはないのに、作品は愛おしい。不思議な魅力の映画である。

□2004年 アメリカ映画  原題「Closer」
□監督:マイク・ニコルズ
□出演:ジュード・ロウ、クライブ・オーエン、ジュリア・ロバーツ、ナタリー・ポートマン、他

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キングダム・オブ・ヘブン

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◆プチレビュー◆
「ロード・オブ・ザ・リング」のような麗しい姿を期待したオーリーファンには、終始ヒゲ面のむさくるしい様子が納得できないかも。仮面をつけた王を演じるのはエドワード・ノートン。顔は見せずに演技力だけで勝負するところがすごい。

12世紀のフランス。実の父が騎士ゴッドフリーであることを知った鍛冶屋のバリアンは、聖地エルサレムへ戦いの旅に出る。イスラム勢力との争いで危機に瀕した都エルサレムで、王女シビラと恋に落ちるバリアン。やがて内部の反乱者の出現や、聡明な王の死で、バリアンは壮絶な戦いへと身を投じることになる…。

オーリー(オーランド・ブルームの愛称)様初主演作である本作は、彼をヒーローとして持ち上げつつ、監督のリドリー・スコットの力も十分に見せる歴史戦争スペクタクル。映像にこだわる監督だけに戦闘場面の描写は巧みで、激しさと美しさが混じり合った見応えのあるシーンが満載だ。

そもそも十字軍とは、ヨーロッパのキリスト教国が聖戦と称して聖地エルサレムを奪還するために繰り返した遠征のこと。宗教上の対立は現在までも混迷し、平和は未だに築かれていない。だが、僅かな時期とはいえ、キリスト教勢力とイスラム教勢力の双方の王が、共存を試みた時代があったことは驚きだ。

オーランド扮するバリアンは庶民でありながら、エルサレムを守る英雄として成長する。鍛冶屋というのは、当時の最先端技術を有する職業。戦争にも応用できる知識のおかげでラストの篭城戦でバリアンは様々な奇策を編み出すことが出来るわけだ。もっとも一介の庶民が唐突に民を守る指揮官に変貌したり、王女とのとってつけたような恋愛など、映画として不自然な描写もある。階級を超える生き方に目覚めるには時代が少し早すぎる気がするが、エルサレムというカオス(混沌)がそれを許すのか。

リーアム・ニーソンやジェレミー・アイアンズなど実力派俳優が脇を固めて、重厚な歴史大作になったが、今なおきな臭い地域の現状や世界情勢を考えると、皮肉な戦争映画にも見える。指導者になる人間が、平和を目指す名君でも、好戦的な悪漢でも、歴史のうねりの中で結局は戦いに巻き込まれてしまう運命の悲しさが描かれている。

□2005年 アメリカ映画  原題「Kingdom of Heaven」
□監督:リドリー・スコット
□出演:オーランド・ブルーム、エヴァ・グリーン、リーアム・ニーソン、他

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バッド・エデュケーション

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◆プチレビュー◆
アルモドバルの半自伝的ドラマだが、巨匠となった今、このタイミングで本作を打ち出すセンスがすごい。女装のガエルが、なぜか「プリティ・ウーマン」の娼婦時代のジュリア・ロバーツに見えてしまって困った。

若くして成功した映画監督エンリケの前に、彼の旧友イグナシオだと名乗る青年が脚本を持って現われる。イグナシオは、エンリケが神学校に通う幼い頃、禁断の愛を交わした親友だ。引き裂かれた幼い愛を思い出すエンリケだが、何かが違う。彼は本当にイグナシオなのか…。

同性愛がメディアに多く描かれ、市民権を得た今日でも、偏見は未だ残る。それでも英国の耽美的な美青年を用いた同性愛映画などは、日本でも相当な人気を博した。しかし、このテーマがラテン諸国、特にアルモドバルの手にかかると、全く趣の異なったものになる。こってりと濃厚な禁断の愛は、なんと神学校を舞台に生まれるのだ。

ガエル・ガルシア・ベルナルはアルモドバル映画は初出演。これにアルモドバル常連のフェレ・マルチネスを組み合わせる。神学校で神父が生徒を愛し、生徒同士もまた愛情を持つという、教会から上映禁止をくらいそうな設定だ。しかも題名は“悪い教育”。カトリックの歪んだ教育を告発するような内容に見えるが、実際はその手の社会性はほとんど見えない。教会擁護はもちろんないが、この映画は、自分たちがこうなったのは教会のせいだというような単純な構造ではない。

イグナシオを名のる青年が書いた脚本に基づいた映画が劇中劇として進行し、物語はミステリー仕立てで進んでいく。本当のイグナシオは誰なのか。遠い寄宿学校時代の事件の真相は何だったのか。次第に明かされていく真実。薄々それを知りながら、事態を見つめ映画を作り続けるエンリケは好奇心に溢れる映画人そのものだ。アルモドバルは、半自伝的だというこの物語に善悪の区別をつけてはいない。登場人物は、快楽と恥辱にまみれながらも皆タフで魅力的だ。

今や世界的な巨匠になってしまった異才アルモドバル。インディーズの魂を持続しながら、メジャーな存在になった稀有な映像作家だ。今回はいつも以上に赤裸々で極彩色の映像に満ちている。彼の作品は、おしゃれなのか悪趣味なのか、きわどいところが魅力。実際は究極の美意識の上に成り立つ第一級のアートなのだ。本作の内容は過激だが、すこぶる美しい作品である。

□2004年 スペイン映画  スペイン語原題「La Mala Educacion」
□監督:ペドロ・アルモドバル
□出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、フェレ・マルチネス、ハビエル・カマラ、他

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