映画通信シネマッシモ


映画通信シネマッシモは、2018年4月をもって、終了しました。

ブログ終了にあたり、たくさんのあたたかいコメントをお寄せいただき、本当にありがとうございました。
皆さまの映画ライフに少しでもお役に立てたならこれほど嬉しいことはありません。
長い間のご愛顧に心より感謝いたします。

マイ・ビッグ・ファット・ウェディング

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◆プチビュー◆
大金をかけずともヒット作を生む、ハリウッドの裾野の広さに脱帽。「その男ゾルバ」のギリシャ人のバイタリティを思い出す。

30歳のイケてない独身女性トゥーラ・ポルトカラスはギリシャ系アメリカ人。両親の経営するレストランで働いているが、そこでハンサムなイアンに出会う。一念発起して、美しく変身、仕事も変えた成果か、めでたくイアンと結ばれ、結婚することに。だが、そこにはトゥーラの親族のギリシャ式難題が待ち構えていた…。

アメリカは多民族国家。様々な人種がひしめいて暮らしているが、ギリシャ系がこれほど脚光を浴びるとは。しかも、こんなにオモロイ民族とは!巨額の製作費と豪華スター競演ばかりが話題になる昨今、この映画は殆ど無名に近い俳優ばかり。口こみで人気が広がり、サプライズヒットに繋がったのは、やはり脚本のおもしろさだろう。

ダサいトゥーラが一気に変身するのが何しろ速い。一目惚れのせいとはいえ、美しくて聡明、積極的になる。意中のイアンともあっさり恋仲に。だったら、最初からそうしろよ!とツッコミたくなるが、ここまではいわばこの物語の前奏曲なのだ。本題である、ギリシャ人が非ギリシャ人と結婚する困難さを、カルチャーギャップを織り交ぜたギャグで笑わせながら描いていく。

映画界でギリシャ系といえば、エリア・カザンやジョン・カサデベスが有名だ。決して数は多くないが確実な足跡を残す実力派が揃っている。大家族で大食いでお祭り好きのギリシャ人。でも暖かくて憎めない民族であることが、コミカルに誇張した伝統から伺える。民族の結束は固く、祖国への誇りは人一倍。トゥーラの父のガスがこれを体現する人物で、全ての言葉はギリシャ起源とこじつけるのが可笑しい。何しろギリシャは西欧文明の生みの親のようなもの。お国自慢も世界規模だ。閑静な住宅街でも、ポルトカラス家の住居だけは、パルテノン神殿様式で浮きまくっている。

さえない女性の前に白馬の王子様が現れるという定番の物語だが、この幸せは男性側がひたすら歩み寄ることで成り立っている。これほど何事もこだわりがない人物というのも信じられないが、主演のニア・ヴァルダロスの実話が元になっているそうだ。通常ならば、宗教は最も大きな壁として立ちはだかるはずなのだが、ここではあっさりと改宗。簡単に“ギリシャ人になる”ところが、いかにもアメリカ的だ。どこまでも薄味のイアンとその家族。そもそも彼らは何系なんだ?!

邦題からは削られたグリーク(ギリシャ)という言葉。この最重要キーワードが抜け落ちたのはちょっと残念。しかし、これはたまたまギリシャ人を題材にしただけで、アングロサクソン系白人新教徒が多数のアメリカでの、少数派の奮闘物語と言える。積極的な自己アピールで幸せをゲットするヒロインと、頑固で騒々しいけれど愛情に満ちた家族のギリシャ式結婚狂想曲は、判り易さとハズレのないハッピーエンドがお約束。文化や生活習慣が違う人間との交流を、笑いと涙で描く快作なのだ。

□2002年 アメリカ映画  原題「MY BIG FAT GREEK WEDDING」
□監督:ジョエル・ズウィック
□出演:ニア・ヴァルダロス、マイケル・コンスタンティン、ジョン・コーベット、他

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シティ・オブ・ゴッド

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◆プチレビュー◆
時代と共に変わる音楽が効果的。出演俳優は実際にスラムに住む住人から募集し、子供達にテーマを与え即興で台詞を作っていくワークショップで製作されたのも興味深いことだ。イジメや動機なき犯罪などとは全く違う次元の世界に、圧倒される。

少年プスカペは“神の街”と呼ばれるリオのスラムに住んでいるが、いつか写真家になってこの街を出ることを夢見ている。60年代後半にモーテル襲撃事件を起こしたチンピラたちに取って代わって、リトル・ゼとベネの2人が一夜にして街を手中に収めたのが70年代。それは、堅気も子供も巻き込んだ、対抗勢力との仁義なき抗争の始まりだった…。

暴力、麻薬、殺人。極めて社会性の強い題材で、深刻かつ説教臭くなりそうなところを、スタイリッシュな映像でスピーディに活写する。神の街の少年たちの相当にヤバい現実は、同時にポップな日々なのだ。カーニバルとサッカーの国ブラジルの別の顔がここにある。逃げる鶏と追う子供、銃を片手にズラリと並ぶ悪党たちと向かいあうハメになるプスカペ。迫力のオープニングで一気に物語に引き込まれた。ドリブルで抜くか、一旦ボールを下げるか。かくして、陽気で残酷な試合の幕が開く。

立ち上がりはまだのどかな60年代。激しいプレーも時折見られるものの、神の街はなんとか均衡を保っていた。しかし、小競り合いのはずのモーテル襲撃事件が、多数の死者を出す歴史に残る惨劇となったことから、やむを得ず主力が移籍することに。70年代初め、街に舞い戻ったリトル・ゼとベネの二人のフォワードのカウンターアタックが見事に決まり、一日で街を支配下に収めると、一気に試合は動き出す。リスクの高い強盗から儲けが大きい麻薬へと戦術が変わり、銃撃戦も頻繁に。観客席にいるプスカペが、初めてカメラと写真の魅力を知った頃に前半終了の笛が鳴った。

審判の警察とも癒着する神の街ではクリーンな試合運びは難しい。幼い子供たちも、流血のプレーを見ながら育つせいか当たり前のように銃を手にし、いつでも試合に出られるようにベンチでひしめく有様だ。プスカペの淡い恋は、あっさりとラインを割るが、ハーフタイムは70年代半ばで、世界はラブ&ピースの時代。殺人が快感のリトル・ゼと違い、根は善人のベネがおしゃれや恋に目覚め、さっさと引退を決意。しかし、そこに一発の銃声が鳴り響き、無情にも後半戦に突入することになる。

70年代末、後半は開始早々、ラフプレーの応酬だ。家族を殺され、彼女をレイプされた堅気のマネが、相手チームに加わりいよいよ試合は佳境に。血で血を洗う激しいタックルの連続だが、交代で入ってきた選手ガキ軍団の思いがけないフェイントで試合は予想を越えた展開になる。新人のデビューはいつでもファンを驚かせるが、この天王山の試合を終わらせる力はない。延長戦か?再試合か?混迷し、更なる治安の悪化を招いた抗争で、シティ・オブ・ゴッドの凶暴な試合は今もまだ続いている。

プスカペの回想のモノローグで進む物語は、リズムとストップモーションを対比させた演出が魅力的だ。鮮やかな場面展開と斬新な映像は、個人技に優れた南米特有の自由なスタイル。底辺の暮しから抜け出して大スターが生まれるように、プスカペも今は、新聞社に出した決定的なスルーパスが通ったおかげで、写真家として成功している。スラムの終わらない凶行は悲劇だが、当事者の彼らにとって、暴力という非日常は、連綿と続く日常としてあっけらかんと流れ去るに過ぎないのだ。不敵で陽気な笑顔は極限状態を駆け抜けるパワーか。2時間10分の試合の中で次々に繰り出されるシュートは、平和ボケした頭には少々キツいかもしれない。

□2002年 ブラジル映画  ポルトガル語原題「CIDADE DE DEUS」
□監督:フェルナンド・メイレレス
□出演:アレシャンドレ・ロドリゲス、レアンドロ・フェルミノ・ダ・オラ、セウ・ジョルジ、他

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トーク・トゥ・ハー

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◆プチレビュー◆
外国語作品がアカデミー脚本賞を受賞したのは、仏映画の名作「男と女」以来の快挙だ。精神科医から何か問題があるのか尋ねられたベニグノが答える「少し孤独なだけです。」というセリフが泣ける。

バレリーナのアリシアと女闘牛士リディア。二人の女は共に事故で昏睡状態に陥り、病院のベッドに横たわっている。看護士のベニグノは献身的にアリシアを世話し常に語りかけるが、リディアに付き添うジャーナリストのマルコはただ途方にくれて涙するばかり。二人の男の間には、いつしか友情が芽生えるのだが…。

P.アルモドバル監督を、スペインの鬼才から世界の名監督へと飛躍させたのは、名作「オール・アバウト・マイ・マザー」。初期の頃の尖がった作品に比べると、随分と一般受けするマルい映画だったせいか世界中から大絶賛され、ある意味、頂点を極めたが、本作ではさらにアーティスティックな要素も加えて観客の五感を刺激する。モジャモジャ髪の彼の頭の中には、悪趣味と無垢な個性が仲良く同居しているのだ。

事故で脳死状態の女たちを愛し続ける二人の姿は、哀しくてちょっぴりグロテスク。過去と現在を交差させながら物語は進むが、ベニグノの愛情はストーカー行為と紙一重だし、嘆き悲しむマルコにいたっては、眠り続けるリディアからいきなりフラれてしまう始末だ。ペドロお得意の、美しくて繊細、でもどこかヘンな愛の世界。奇妙な友情を育む男たちの言動も、状況はかなり悲壮なのに滑稽だったりする。

冒頭とラストを見事につなぐのは、ドイツ出身の前衛舞踏家ピナ・パウシュの舞台。ブラジルのトップミュージシャン、ガエターノ・ヴェローゾの歌もいい。実に小道具が洒落ていて、気が付いたらまんまとアルモドバルの術中にハマッてしまっていた。アリシアのバレエ教師を演じるジェラルディン・チャップリンの存在感も抜群だ。

無償の愛が思わぬ結果をもたらし、新しい運命の接点を用意する。一途な愛は奇跡を生むが、同時にそれはモラルと法に触れることに。このジレンマを、劇中劇のエロティックな無声映画「縮みゆく恋人」のユーモアが和らげる。観客の価値観を覆し、男女のコミュニケーションのあり方を問いながら、その代償まで啓示するのだ。

悲劇か。盲信か。それとも究極の愛なのか。映画を見て確かめてもらうしかないが、この物語がいくつかの実話をヒントに作られたということを知ってほしい。科学や医学では説明できない事柄が、愛から生まれるのだとすれば、それはやはり奇跡と呼ぶにふさわしいだろう。孤独な心が泣きながら語りかける。それがアルモドバル流の、“愛すること”だ。

□2002年 スペイン映画  原題「TALK TO HER」
□監督:ペドロ・アルモドバル
□出演:レオノール・ワトリング、ハビエル・カマラ、ダリオ・グランディネッティ、他

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チャーリーズ・エンジェル フルスロットル

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◆プチレビュー◆
チャーリーとエンジェル達のつなぎ役を演じるボスレーは前回のB.マーレーからB.マックに交代。兄弟という設定で、兄が白人で弟が黒人という設定にあきれるが、家庭環境が複雑と思うしかない。音楽は結構レトロで凝ってるけど、21世紀のこのご時世に、MCハマーを聴かされるとは思わなかった。B.ウィリスのカメオ出演が笑える。

ナタリー、ディラン、アレックスの女性探偵3人組はモンゴルでテロ組織に拉致されたアメリカの政府要人を救出。だが、国家機密にアクセスできる指輪を奪われてしまう。指輪奪還のため動き出した彼女たちの前には、意外な人物が現われる。さらに、エンジェルの一人、ディランの過去が事件にからんでいた…。

70年代の人気TVシリーズを映画化した前作は、一応、状況説明と抑制らしきものがあったが、今回は続編ということで“皆さん、ご承知ですよね!”のノリ。冒頭から飛ばしまくり、まさにフルスロットル(全開)状態だ。話は支離滅裂で、バカバカしさも全開なら、楽しさも全開。評価する側には、こういう映画が一番困る。

女の子の夢をかなえるこのシリーズは、エンタメ映画の王道をCG片手に爆走中だ。決して姿を見せない謎のボス、チャーリーの探偵事務所には、常に魅力的な3人の女性スタッフがいて、それがチャーリーズ・エンジェル。時代とともに世代交代し、本作では過去の伝説のエンジェルが対照的な形で登場する。

例によって、ド派手で過激なアクションがてんこもり。そんなバカな…の連続だが、フルスロットルなのだから仕方がない。意味不明のお色気シーンや、何の脈絡もなく始まるダンスシーン、カメオ出演や過去の映画のパロディ、下ネタギャグも前作に比べてパワーアップだ。露出度過多で着せ替え人形のように変わるコスプレもお約束通り。製作も兼ねるD.バリモアの老けメイクも楽しめて、まさにサービス満載だ。

デミ・ムーア演じる最強にして伝説のエンジェル、マディソンが今回の敵役。過去の一度のミスが彼女のプライドを傷つけ、天使から悪魔へと変貌してしまうというわけだ。久しぶりの映画出演となるデミはハマリ役で、気合いと大金をつぎ込んだ肉体改造はお見事。下着姿に毛皮をはおって悪企みをする姿は、現役エンジェルたちに負けてないからご立派だ。顔はさすがに老けたが、再起をかける決意が全身にみなぎる。しかし、この映画で、この役で、再起していいのか?!とも思うが…。

ツッコミどころが多すぎて、どこから手をつけていいのか分らない映画なのだ。終盤にいけばいくほど話が混乱し、細かい所は全く判らず、映像だけが暴走している。しかし、もとより「チャリ・エン」にリアリティなど誰も求めていない。仲良し3人組の女の子がじゃれあう痛快アクション・ムービーは、理屈抜きに楽しくて健康的だ。本名不詳の監督McGはCMやミュージクビデオ出身。どうりでストーリー性は無視して、突っ走る。ある意味、映画になっていないが、お祭り騒ぎも、これくらいハジけてくれると清々しいというものである。シリーズ第3弾を心から待っているゾ!

□2003年 アメリカ映画  原題「CHARLIE'S ANGELS FULL THROTTLE」
□監督:McG
□出演:キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リュー、他

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ブルークラッシュ

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◆プチレビュー◆
かつてはサーフィン映画といえば「ビッグ・ウェンズデー」だったが、遂に女の子バージョンの誕生だ!最近のアクション映画でサーフィンがしばしば取り入れられているのことにも注目。

サーファー達の聖地ハワイ・オアフ島ノース・ショア。ホテルでバイトをしながらサーフィン漬けの毎日を送るアン・マリーは、子供の頃から天才サーファーと言われながら、かつての事故がトラウマとなり、思い切りのいいライディングが出来なくなってしまっている。親友たちの励ましでサーフィン大会の最高峰“パイプ・ライン・マスターズ”に出場し、10メートル以上の高波に挑む決意をするのだが…。

夏にふさわしい爽やか映画がやってきた。出演俳優たちが比較的無名なのは、この映画は波とサーフィンそのものが主役だから。また、ロコガールたちのリアルな生活もきちんと描かれていて、初めて本格的に女性サーファーを描いた作品といえる。

主人公のアン・マリーは毎日サーフィンに明け暮れているが、その日暮らしに近いホテルの客室係のバイト生活から抜け出すためにも、プロのサーファーを目指している女の子。実力はあるのだが、昔の事故がいつも頭をよぎってしまう。反抗期の妹に手を焼いたり、偶然にサーフィンのコーチをすることになったアメフト選手に恋して華やかなデートを経験したりで迷いも多く、サーフィンへの情熱が時には薄れがちだ。

スポ根映画にしては、根性の部分がチョイと足りないが、そういうときに助けてくれるのが友達だ。アン・マリーの実力を信じて疑わない親友たちの必死の励ましで大会出場までこぎつける。ヒロインの親友エデンを演じるのはM.ロドリゲス。見た目だけ見ると、三白眼の彼女の方が実力も根性もありそうなのだが、ケイト・ボスワースも悪くない。実際、撮影前には何週間も練習を積んで現場に現れ、肉体的にも精神的にもガッツのあるところをみせた根性の持ち主なのだ。

ストーリーは青春スポーツ映画の定番通りで、やや甘い。しかし、気合の入った水中撮影は、CGや水槽での映像はいっさいなしのホンモノだ。プロの女性サーファーがスタントを務め、何人かは自身の役ですばらしいライディングを披露。それらを観るだけでも映画を鑑賞する価値がある。もちろん、アン・マリーが夢を叶えるため、自己に打ち勝つために、波に挑むシーンは抜群の快感だ。恐怖感すら覚える高波に乗りチューブのトンネルを抜けると、そこにはリアルで洒落た勝利が待っている。観客も彼女と共にサーフィンの疑似体験。気分はすっかり天才サーファーだ。

劇中では、太ったオヤジや、犬、よちよち歩きの子供までが楽しそうに波乗りをしている。今、世界中で流行っているスノーボードやスケートボードなどのエクストリーム・スポーツの全ての原点がサーフィン。見た目の派手さとは裏腹に、プロの世界では非常にタフで危険なスポーツであることも知っておこう。

画面から水しぶきが飛び出し、ハワイの風と潮の匂いがしそうなこの映画。スポーツ映画としての新味はないが、決してチャラチャラした軽い作品ではない。ド迫力と爽快感を存分に味わうためにも、ぜひ劇場の大画面でどうぞ。

□2002年 アメリカ映画  原題「BLUE CRUSH」
□監督:ジョン・ストックウェル
□出演:ケイト・ボスワース、ミシェル・ロドリゲス、マシュー・ディビス、他

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メラニーは行く!

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◆プチレビュー◆
突き抜けた爽快感は少なめ。アメリカでは誇張した南部人気質がウケたらしいが、日本人には伝わりにくい。キャンディス・バーゲンが嫌味な悪役を演じて上手いが、かつての知性派女優の面影はいずこ。

NYのカリスマデザイナー、メラニーはショーが大成功したその夜に、市長の息子で大富豪の恋人からプロポーズされる。幸福の頂点にいるかのようなメラニーだが、ひとつ問題が。実は彼女は故郷のアラバマで高校時代に結婚しており、離婚が成立していないのだ。幸せをこの手につかむため、また過去ときっちり決別するために、故郷のアラバマに乗り込むメラニーだったが…。

宣伝コピーによると、ワガママで自己チュウ女だけど自分の幸せのために一生懸命なヒロインの姿に、女性共感度100%、男性不満度100%とある。でも、本当に女性に共感してもらっているのか、このヒロインは。離婚届けにサインさせるために爆走する姿は笑えても、彼女がNYで認められるまでの頑張りは劇中では全く描かれない。これでは観客はメラニーを応援する下ごしらえが出来ない。

彼女にとって故郷アラバマは忘れ去りたいドンくさい田舎町。メラニー自慢のハイセンスなNYファッションもド田舎では浮きまくるばかり。さっさとケリをつけてNYに戻りたいのに、戸籍上の夫はのらりくらりと離婚をはぐらかすので、いやでも長逗留することになるが、その間に彼女の気持ちにも変化が表れ、夫の真の姿を知ることになる。彼女にバカにされまくった町の人たちが、なぜかどこまでもメラニーに優しいのも納得いかない。昔のメラニーはよほどの人格者だったのか?!

原題の「スウィート・ホーム・アラバマ」が示す通り、やっぱり故郷が一番だという結論は明白だ。どこのサヤに収まるのかも見えている。しかし、一見ぐうたら男で田舎者の夫ジェイクと、都会人でリッチな市長の息子アンドリューの両方共が、本気でメラニーを愛しているし、同じくらいイイ人なのだから、彼女にとってどちらが本当に幸せなのかは判断がつきかねる。コメディで、キャラにメリハリがないのはいかがなものか。

先が見えるストーリーと中途半端な人物設定で、スベりそうになるのを救っているのは、ひとえにヒロインを演じるR.ウィザースプーンの魅力だ。この映画、彼女で持っていると言ってもいい。自分の幸せめざして暴走気味の主人公を嫌味なく演じられるのは、彼女の庶民的で清潔感のある持ち味のおかげ。表情が豊かなのも好感度大だ。結婚式を阻止する方法は、昔から「花嫁をさらう」もしくは「花嫁が逃げる」のどちらかが定番だが、慌てて登場する弁護士のひと言は、なかなかウケた。

痛快ラブ・ストーリーで笑える場面も満載だが、落ち着いて考えると、使い古されたパターンの映画だった。メラニーが本音で生きるニュー・ヒロインならば、あっと驚く第三の道を選んで観客をびっくりさせてほしかったのに。まぁ、冒頭とラストを結びつける気の利いたオチに免じて、許すとするか。

□2002年 アメリカ映画  原題「SWEET HOME ALABAMA」
□監督:アンディ・テナント
□出演:リース・ウィザースプーン、ジョシュ・ルーカス、パトリック・デンプシー、他

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北京ヴァイオリン

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◆プチレビュー◆
演奏は、劇中にも登場する、気鋭の中国人ヴァイオリニストのリー・チュアンユンが担当している。演奏はどれも素晴らしく思わず涙ぐんだ。

一組の父子が田舎から北京に出てくる。母親の形見のヴァイオリンを弾く少年チュンに天賦の才能があると知った父リウは、なんとか彼を世に出そうと、コンクール出場のために北京に移り住むことにしたのだ。しかし、大都会の音楽界では金がモノをいい、その上、少年は今まで経験したことのない競争社会にさらされて、とまどってしまう…。

ハリウッドに進出した「キリング・ミー・ソフトリー」で思いっきり官能映画を撮ってみたら、ズッコケてしまったカイコー監督。中国では禁じられている激しい性描写も、いざやってみたら案外つまらなかったのか、はたまた、やっぱり故郷はいいと思ったのか、久しぶりに中国で作った映画は、大作の印象が強いカイコー監督にしては可愛らしい小品の感動作だ。やっぱり故国が舞台の映画には“らしさ”がある。

田舎の人は純朴で都会人の心は汚れている。基本的にこの構図の上に成り立つ物語だが、大都会で金がモノを言うのは本当のようだ。劇中にも金銭のやりとりの描写が多い。息子の才能を信じて、著名な教授の個人指導を仰ぐため、身を粉にして働く父親と、少年らしく時々女性への関心も見せながら、ヴァイオリンに精進する息子。実はこの親子には出生の秘密が隠されている。お人よしの父親役のリウ・ペイチーは「秋菊の物語」等の名優で、繊細な演技を見せるが、息子チュン役の少年は音楽学校の生徒で演技経験は無いため、心理描写に物足りなさを感じるのが気になるところだ。

全編を豪華絢爛なクラシックの名曲で飾り、ときにはポップスやジャズも使う。それぞれにキャラクターや場面に合わせた効果的な用い方で感心するが、印象的なのは、監督自身が演じているユイ教授に合わせて流れる曲だ。富も名声も得てクラシック界に君臨する彼のバックには、プッチーニのオペラ「トゥーランドット」で華やかさを演出。一方、その彼自身が音楽を志した最初のきっかけとなる思い出を語る時には、ヴィヴァルディの「四季」が流れ、自分も昔は音楽そのものに憧れていたという遠い想いが溢れ、郷愁を誘う。

数々の苦労を乗り越え、成功は目の前までやってくる。セオリー通りの展開かと思いきや、意外な形のラストで驚かされた。凍てつく北京駅でのチュンの渾身の演奏は、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ニ長調。難易度も高くドラマチックな名曲で観客の胸を熱くすることは間違いない。さらに、この駅での演奏と平行して、父子の秘められた過去がモノクロームの映像で語られ、感動は頂点に達する。明るいハイタッチも結論ではなく、今後の展開は観客の解釈に委ねます、と言うことだ。

カイコー監督は文革の嵐を経験し、物質的豊かさの大切さと虚しさの両方を知っている。ただでさえ人間関係が希薄な今の世の中で、こんなに濃密な親子関係が存在するのだろうか?と疑問に思いつつも、親子に係る人々が金品以上の価値観を教えられ、少しずつ変わっていくのが嬉しい。現代中国の功利主義を批判しながら、音楽という最強の武器で観客を感動させる。メロドラマと判っていながら、やっぱり泣かされてしまった。

□2002年 中国映画 英語原題「Together」
□監督:チェン・カイコー
□出演:タン・ユン、リウ・ペイチー、ワン・チーウェン、他

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アニマトリックス

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◆プチレビュー◆
脚本が素晴らしい「ワールド・レコード」が一番のお気に入り。アニメでしか不可能だった描写を、実写で可能にしてしまった「マトリックス」シリーズは、やっぱり凄い。

短編アニメ集「アニマトリックス」は全9話構成のオムニバス作品だ。「マトリックス」のサイド・ストーリーとも言える物語で、マトリックス3部作にからむ重要なエピソードも収録。人工知能が作り出したマトリックスという仮想現実世界の実情や、そこに住む様々なキャラクターを、独自の視点とユニークな方法で掘り下げていく。

「マト・リロ」を見に行かれる人は多いと思うが、劇中で“あれ?前作にこんなのあったっけ?”と思う部分がいくつかあるはずだ。その疑問は、この「アニマトリックス」を見れば殆どが解決する

全9話からなるエピソードは、絵柄は全て異なる作風で好みが分かれるだろうし、脚本にもかなり優劣があり、一貫性は殆どない。だが、これはこれでおもしろかったりするのだ。ウォシャウスキー兄弟は、日本のアニメに多大な影響を受けたという。日本とハリウッドのクリエーターのコラボレーションが、こういう形で実現するのも、興味深いことだ。改めて感じたが、日本の技術水準は2Dも3Dも非常に高く、もちろん脚本も凄い。いいぞ!ジャパニーズ・アニメーション!

短くも濃い物語のオンパレードだが、8話は2Dで作成。ざっと解説してみよう。
「セカンド・ルネッサンス パート1&2」は、マトリックスの誕生の背景を説明。「キッズ・ストーリー」は、自力で目覚める少年が主人公で、本編とも関連がある。「プログラム」は、シュミレーションの訓練を和のテイストでけれん味たっぷりに描くもの。「ワールド・レコード」は、思わぬ瞬間にマトリックスの存在に気付いてしまった男の末路のエピソードで出色の出来栄えだ。「ビヨンド」はマトリックスのバグ空間のゆがみの存在を描き、「ディテクティブ・ストーリー」はハード・ボイルドタッチの物語で“鏡の国のアリス”が伏線。ラストの「マトリキュレーテッド」は、さしずめ機械の再構築への試みといったところ。マトリックス誕生に2話を費やし、このシリーズの背景が非常に明快になっている。多彩なエピソードの中で、ネオやトリニティー、エージェント・スミス達にひょっこり出会える嬉しい驚きもある。

第1話にして唯一の3Dアニメは「ファイナル・フライト・オブ・ザ・オシリス」。これは「マト・リロ」の冒頭に続く非常に重要なエピソードだ。技術的にも高水準で約11分のフル3DCGアニメーションだが、最初のカンフー・アクションが、ちょっとエロチックで楽しい。りりしい黒人のサディアスと東洋系美女ジュエの日本刀での格闘を中断するのは、危険を警告するベル。地上や仮想空間で活動しているのは、ネオたちだけではなく、オシリス号もまたゲリラ活動で闘っている。ジュエはマトリックスに命懸けで侵入し、人類最後の都市ザイオンへ警告メッセージを投函。はたしてメッセージは届くのか?オシリス号のクルーたちの命は?「マト・リロ」はこの答えから始まるのである。これを事前にきちんと公開しないというのはどうなのよ?!

「マト・リロ」の鑑賞前に前作を見るのも良いが、このビデオ(DVD)を見る方がよほど予習・復習としては効果的。「リローデッド」「レボリューションズ」の前には必ず見るべし!だ。そうすれば、「リローデッド」の華麗な映像に見とれている観客の前に、あまりに唐突にやってくるラストにもきっと耐えられる。

□2003年 アメリカ映画  原題「ANIMATRIX」
□監督:アンディー・ジョーンズ(「ファイナル・ファンタジー」)、前田真宏、川尻義昭、小池健、渡辺信一郎、森本晃司、ピーター・チョン

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少女の髪どめ

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◆プチレビュー◆
イランでは雨が降るのは春の訪れ。だが季節感が伝わりにくいのが惜しい。イスラムの価値観なのか、道端に座る靴屋の爺さんさえ哲学的。「あなたは誰と暮らしているの?」との問いに「孤独な男の隣にはいつも神がおられる。」などと深いことを言う。

建設現場で働く17歳のイラン人の若者ラティフ。ある日、不法で働く同僚のアフガン人が怪我をしたため、その息子ラーマトが代わりにやってくる。しかし、ひ弱なラーマトは力仕事が出来ず、親方の命令でラティフがやっていた軽作業と交代するが、楽な仕事を奪われたラティフは不満。おまけにラーマトの入れるお茶や配膳の手際がいいので労働者達に好評なのもおもしろくない。何かとラーマトにやつあたりするラティフだが、ある日、彼はラーマトが実は女の子だということを偶然に知る…。

季節は冬、舞台は建設現場、セリフも極端に少ない。どうみても地味な設定なのに、見終ればまるで一篇の詩のような趣の作品なのだ。検閲が厳しいために児童映画が多く作られるイラン映画にしては珍しく、淡いラブ・ストーリー。もちろん、プラトニックだが、仕事に文句ばかり言い喧嘩っ早い乱暴者だったラティフの心に、無償の愛情を芽生えさせるほどの効力を持つのだから、なかなかの“情熱の恋”なのだ。

建設現場ではモグリで働くアフガン難民が大勢いる。現場の親方は彼らに同情的で、役人からかばいながら働かせてやっている。実際にイランには300万人近いアフガン難民が存在すると言う。過酷な労働条件や生活描写も現実に近いのだろう。わがままで乱暴者だった若者ラティフも、アフガン難民が暮らすキャンプをその目で見て、自分よりも不幸な境遇の人々の存在を肌で知る。更に、想いを寄せる少女が、凍てつく冬の川で腰まで水につかり大人に混じって作業する姿に、ただ涙するしかない。

殺風景な映像の中で効果的に用いられるのは、風だ。工事現場を吹き抜ける風にのってかすかに聞こえる歌声に導かれ、微かに揺れるカーテンの隙間から偶然見てしまったのは、鏡に映るラーマトの姿。ひ弱な少年だと思っていたその子は、長い髪をとかす女の子だった。ラーマトには最初から最後までセリフは全くない。声を出せば女の子だと判ってしまうからだが、アフガン難民が自らを語る手段と機会を持たないことをも象徴している。表情やしぐさだけの演出にも、監督の心がこもっている。

ラーマトの正体を知ったラティフが、その瞬間からどんな犠牲を払っても彼女を守ろうと決心するのは、出来すぎた話かもしれない。だが、驚きは瞬時に恋に変わり、家族を養うために男のふりまでする、けなげな“彼女”を守り抜く決意となる。愛を知ることで、人はここまで劇的に変わるものなのだ。自分の1年分の給料も身分証明書も全て投げ出す。結局はその事が、少女との別れにつながってしまうのが哀しい。

原題の「バラン」とはラーマトの本名で、ペルシャ語で“雨”の意味。戦渦のアフガニスタンに帰る一家を見送るラティフ。ラティフの顔を見つめた少女は少し笑ったような気がしたが、その直後、アフガン女性が身につけるブルカを深く被ってしまう。ブルカの網目から見る少女の瞳は、感謝と誇りに満ちていた。残された足跡に雨が降り注ぐラストは、辛い別れの場面なのに温かさが漂い、何とも忘れ難い。

□2001年 イラン映画  原題「BARAN」
□監督:マジッド・マジディ
□出演:ホセイン・アベディニ、モハマド・アミル・ナジ、ザーラ・バーナ、他

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8Mile

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◆プチレビュー◆
過激な言動ゆえに、実母や妻等から多くの訴訟を起こされ、逮捕歴もあるエミネム。そんな人物にもオスカーが渡る時代になった。日本ではPG-12指定だが、アメリカではR指定作品。ヒップホップファンでなくても楽しめると思う。

デトロイトに住む“ラビット”ことジミーは、底辺の生活を送りながらも、音楽をやろうと悩んでいる。思いつくままにリリック(歌詞)を書き綴り、週末に行われるラップ・バトルでの勝利を目指すが…。

自動車産業の繁栄と没落の両方を経験した街ミシガン州デトロイト。“8マイル・ロード”とは、ここに実在するストリートだ。都市と郊外、更に黒人と白人の居住区を分ける境界線でもある8マイルを通過することは、最低の生活を抜け出して夢に一歩近づくことと同義。無傷でこの線を越えることは誰にも出来ない。

アイドル歌手の映画デビュー作と聞くと、お気楽なサクセス・ストーリーを連想するが、本作はまったくその枠を超えている。貧困と倦怠感が蔓延し、それゆえに若者たちのエネルギーが行き場がないままくすぶる様子を、C.ハンソン監督はリアルでダーティに描き出した。切れのある映像が繊細な主人公の内面を映し出す。ボロきれのようになりながら、ラップで自己表現するジミーの姿は、見ていて切ない。

黒人が大半を占めるラップ・ミュージック・シーンで、白人であることへのコンプレックスを抱えるジミー。その日暮らしの母親との葛藤、音楽への希望と不安、信じていた友情が偽りと知り、恋人の裏切りをその目で見る。さらにライバルからの暴力を受け、身も心も傷ついたジミーは、様々に交錯する想いを胸にラップ・バトルのステージに上がる。果たして彼を待つのは、観客の喝采か、罵声か。

地下クラブでのラップ・バトルは最大の見所だ。エミネム自身も若き日に参加していたというこのラップ・トーナメントは、スポーツのように勝敗が決まり、いかにもアメリカ的で興味深い。リズムにのりながら、社会情勢、皮肉やユーモアを瞬時に韻を踏んで言葉にし、相手に挑む。ラップ・バトルとは、実はかなり知的な戦争ではないか。相当に汚い言葉が飛び交うが、実際に俗語や現地情報に通じていれば、よりそのスキルを楽しめただろうに、そこが残念だ。

音楽映画、青春映画。どのジャンルにも収まらない不思議な魅力。重厚な迫真性は社会派ドラマのようでもある。映画のラストで、ジミーは大スターになるわけでも、華やかなフラッシュライトを浴びるわけでもないが、彼がドープ(最高の)・ラッパーであることは誰もが知っている。主人公が迷いを振り切り、心の中の“8マイル”を自力で突き抜ける瞬間を、鮮やかに切り取ってみせた。

□2002年 アメリカ映画  原題「8 Mile」
□監督:カーティス・ハンソン
□出演:エミネム、キム・ベイシンガー、ブリタニー・マーフィ、他

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