映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ジャスティス・リーグ」「火花」「ギフテッド」「光」etc.

タイタス

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◆プチレビュー◆
時代交渉無視の衣装が冴える。ヌードも辞さない迫力のジェシカ・ラングが見事だ。

首は切る、手首は切り落とす、舌は切る、喉はかき切る、レイプ、子殺し、人肉食い…と、およそこの世の悪行三昧のほとんどを網羅する。残虐にして美しい映画の原作は、偉大なるウィリアム・シェークスピア。 世界一の文豪原作のこの残酷史劇は、あまりのむごたらしさに作者は別にいるのでは、とまで言われ、舞台で上演されることもめったにない作品である。原作は「タイタス・アンドロニカス」だ。

時代は古代ローマ。歴戦の名将タイタスは敵のゴート族の王族を捕虜にして凱旋する。勝利といっても、自分の25人の子供のうち、21人を戦いで亡くすという大きな犠牲を払ったものだった。タイタスは亡き息子たちの魂を鎮めるため、泣いて命乞いをする母のタモラ女王の懇願もかえりみず、ゴート族の王子の一人を生贄に捧げる。目の前で息子の王子を殺された女王は、「必ずやタイタス一族を皆殺しに!」と、復讐を胸に誓うのだった。生き延びたタモラの策略で、次々に血祭りに上げられるタイタスの子供たち。自らも片手を失い、手負いの獣のようなタイタスが最期に放ったタモラへの血も凍る復讐とは…。

映画というにはあまりにも舞台風だ。時代考証まったく無視のその演出は、古代ローマにおいて、皮のジャケット、ナチス風の演説、ビリヤードやムッソリーニ時代の建物など、ほとんどイメージビデオの様相を呈している。こんな大胆な映画でこそ、「炎のランナー」でオスカーを受賞したミレーナ・カノネロの衣装の腕が冴えるのは言うまでもない。残酷すぎる場面の数々も、まるで歌舞伎のように美しく描かれ、2時間40分を越える長編を堂々とまとめている。残酷シーンは苦手だが、豪華で濃厚な料理を味わった後のような気分は稀有なものだった。

根底をなすのは、父タイタスと母タモラの、それぞれ親としての子供への深い愛情が、むごたらしい暴力を生むという悲劇。現代とつながるようなプロローグとエピローグは演出の上手さを感じさせる。豪華キャストに目を奪われるが、ジョナサン・リース・マイヤースのドラ息子ぶりが印象的だ。

しかし…だ。ローマの知将、歴戦の英雄、皇帝の指名権さえ委ねられる賢者のタイタスが、人生の重大な岐路で2度も決定を誤るか?!そもそも、タモラの息子を生贄などにするからいけないんじゃないのか?!とつっこみを入れたくなるのは私だけではないはずだ。それとも、それほどの人物でも過ちを犯すという、シェークスピアの人間考察の深さだろうか。芸術とは残酷にして美しいもの。つくづく濃い作品だ。

□1999年 アメリカ映画 原題「TITUS」
□監督:ジュリー・テイモア
□主演:アンソニー・ホプキンス、ジェシカ・ラング、ジョナサン・リース・マイヤース、他

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太陽は、ぼくの瞳

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◆プチレビュー◆
グラサン姿のモハマド少年が何ともいとおしい。児童映画はイラン映画の得意とするところ。

最近、もっぱら注目のイラン映画。この作品はイラン映画らしい児童映画の佳作。欧米の作品に比べ、劇場でかかるアジア映画の本数は少ないが、映画「うなぎ」がカンヌ映画祭でグランプリを受賞したとき同時受賞をはたした「桜桃の味」のアッバス・キアロスタミ監督のおかげか、随分イラン映画も配給されるようになった。

物語の主人公はモハマドという名の盲目の少年。目は見えないけど、人一倍優しい心を持つ彼は手に触れるもの全てを慈しみ、光をなくした瞳の代わりに、心の目で物事をみつめながら純粋な心を失わずに生きていく。

学問にも秀でた彼は、なんとか周囲に溶け込み皆と同じように生きていこうと懸命に努力する。しかし、自分の再婚のことで頭がいっぱいの彼の父親は、モハマドを愛しながらも、彼の存在を疎ましく思い、いなかの母親のもとに預けるだけでなく、同じく盲目の大工のもとに無理に修行にやってしまう…。

自分が盲目なので誰からも愛されないのだと涙を流すモハマド少年。そんな孫と、身勝手な父親である息子の姿をただ黙ってみつめる祖母の姿。そして父親は自分の再婚話が壊れたとき、全てをモハマドのせいだと考え、急流の川に転落した我が子の死を無意識で願ってしまう。助けるのをためらう一瞬は、観る者の胸をしめつけられる。しかし、はっと我にかえりモハマドを助けるために川に飛び込む父親の姿。自分が間違っていた、どうか息子を返してくれと神に願いながら激しい川の流れに飲み込まれていく…。

イラン映画は内容に厳しい検閲があって、そのためか、児童映画が大半を占めている。この映画、自然描写が大変美しく、緑深い森、そこに白く流れるかすみ、花であふれる草原などまるで一枚の絵のような映像が溢れていた。少し湿った森の緑の描き方は、キング・オブ・アートシアターとうたわれた故アンドレイ・タルコフスキー監督の名作「ノスタルジア」を彷彿とさせる。

熱い紅茶を受け皿に少しずつうつして冷ましながら飲むなど、イランの珍しい生活習慣もおもしろい。野に咲く花を集めて、花びらを鍋で煮詰めて糸を染める場面の色彩も秀逸。悲しい結末のラストは、実は観客に希望を与えるような描かれ方で見終わったあともほっとする。出演者のほとんどがしろうとというこの映画。地味だけど味がある。

□1999年 イラン映画 原題「The Color of Paradise」
□監督:マジッド・マジディ
□出演:モフセン・ラマザーニ、ホセイン・マージゥーブ、サリム・フェイジィ、他

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小説家を見つけたら

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◆プチレビュー◆
渋いショーン・コネリーがはまり役。歳をとってもかっこいい俳優は案外少ない。

私のごひいき俳優のひとりにショーン.コネリーがいる。彼が主役を務めるのなら、やはり見なくては!こう思わせてくれる俳優は少ない。

物語の主人公は、貧しい生まれながら、文学の才能溢れる黒人少年。この少年がふとしたことから世間から身を隠すように生きる老小説家を“見つけて”しまったことから物語は始まる。最初は少年のことを疎ましく思っていた老小説家も彼の溢れる才能を目の当たりにするにつれ、押し殺してきた文学への情熱を取り戻し、少年の成長を助けるとともに、自分自身も、忘れかけていた”生きる喜び”を見出していく…。

よくある成長と再生の物語といってしまえばそれまでだけど、小説家ウィリアム・フォレスターに扮するS.コネリーがまさにはまり役。美しい音楽も手伝って、最後はいつしかじーんと感動してしまうのであった…。

いじわる教師役のF.M.エイブラハムは映画「アマデウス」でサリエリ役をやった名俳優。いつもこんな役で気の毒なものだ。「グッドウィル・ハンティング」の主役、マット・デイモンがラスト近くでちょい役で出演するのもご愛嬌。原題は「ファインディング・フォレスター」。フォレスター(小説家の名前)を見つけてしまう、の意味。

映画を見終わったあとはなんだか元気をもらった気分になって、明日もがんばろうと思ってしまう。こういう映画を観て、素直に感動する気持ちは忘れたくない。

□2002年 アメリカ映画 原題「FINDING FORRESTER」
□監督:ガス・ヴァン・サント
□出演:ショーン.コネリー、フォーリー・マーリー・エイブラハム、他

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バタフライ・エフェクト

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過去に戻る特殊能力を持つ主人公が、現在や未来を変えようと奔走するSFスリラー。カオス理論をうまくストーリーにからませている。

エヴァンは幼い頃から、時折り記憶を喪失する“ブラックアウト”を起こす少年。幼馴染みのケイリーのもとを去るとき、彼は「君を迎えに来る」と誓う。だが時は流れ、エヴァンとケリーはまったく別の道を歩むことに。成長したエヴァンはブラックアウトとは無縁の平穏な生活を送っていたが、ある時、自分が起こした出来事が原因でケイリーの人生を狂わせたことを知り愕然とする。エヴァンは自分が日記を読むと過去に戻れると知り、特定の過去に戻って運命を変えることを決意する。だが、さまざまな可能性を試すものの、運命を変えるたびに必ず他の誰かが不幸になるのだった…。

バタフライ・エフェクトとは、小さなが羽ばたくと、地球の裏側で台風や竜巻が起こることを意味する言葉。初期条件のわずかな違いが、将来の結果に大きな差を生み出すとする、カオス理論の一つだ。バタフライ効果とも呼ばれ、気候や自然変動に大きく影響を与える可能性があるとされている。主人公エヴァンの何気ない行いが、愛するケイリーの運命を狂わせたことを意味している。

自分とその周りの人々が、全員幸せになる人生を求め、戻るべき過去の時点と、その選択肢を模索する主人公が、最後に下す決断がとても切ない。もしもあの時こうしていれば。誰もが一度は考える運命を描くことで共感を呼ぶ。サプライズが連続する異色SFサスペンスだが、過去を変えようとする男の目的は、愛するものを救うこと。緻密なパズルのように組み立てられた物語は、ピュアで切ないラブ・ストーリーなのだ。

(出演:アシュトン・カッチャー、エイミー・スマート、エリック・ブレス、他)
(2003年/アメリカ/デヴィッド・エリス、J・マッキー・グルーバー監督/原題「THE BUTTERFLY EFFECT」)

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アザー・ファイナル

アザー・ファイナルアザー・ファイナル
2002年6月30日、世界中が日韓W杯の決勝を注目する中、同時刻にFIFAランキング最下位を決める全く別のファイナルの試合が行われていた。二つの国が試合を迎えるまでの軌跡を追ったドキュメンタリー。

カリブ海の火山国モントセラトと、ヒマラヤのブータン王国。両国とも試合に適さない気候だが、サッカーへの情熱は一流選手に劣らない。選手たちがサッカーを心から楽しむ姿が印象的。

2002年日韓W杯で予選落ちしたサッカー強国オランダから生まれた興味深い記録映画。清々しさや純粋さがサッカーという世界で最も愛されているスポーツの本来の姿を思い起こさせる。

(2002年/オランダ・日本/ヨハン・クレイマー監督/原題「THE OTHER FINAL: BHUTAN V.S. MONTSERRAT」)

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トラベラー

トラベラー/パンと裏通り
試合が見たい一心で、親を騙し、友を裏切り、お金をかき集めて、テヘランのスタジアムへ向かう少年。初めて見る大都市でのとまどいと興奮で、すっかり舞い上がってしまう…。

イラン人のサッカー好きはかなりのもの。スタジアム周辺にはダフ屋もたくさんいて、法外な値段をふっかける。少年がサッカーの試合を見る場面はほとんどなく、チケットを入手するまでのくだりがおもしろい。

スタジアムの観客は全て男性。仲間で使っていた小さなゴールネットまで売り飛ばす心意気が凄い。少年ははたして夢にまでみたイラン代表の試合を見ることができるのか?それは映画を見て確かめてほしい。

(1974年/イラン/アッバス・キアロスタミ監督/原題「Mossafer The Traveller」)

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ザ・カップ 夢のアンテナ

ザ・カップ?夢のアンテナ?
ヒマラヤの山麓の仏教寺院。そこには厳しい修行と悠久の時が流れているが、サッカーが大好きな少年修行僧たちは、村にアンテナを立ててなんとかTVでワールドカップを観戦しようとする。

サッカー好きの少年僧が着ている黄色のタンクトップには、手書きで“ロナウド”の文字。みんなで見るW杯は98年仏大会で、仏vs伊をはじめ白熱したホンモノの試合が登場する。何しろ山奥のTVなので画面は白黒。

イタズラな少年僧の真剣さが伝わってくるが、仏教寺院の高僧のイキな計らいで嬉しいラスト。本物の僧院に撮影機材を持ち込んでの秘境ヒマラヤ・オールロケ。出演者も実際に修行中の僧侶たちという貴重な映画でもある。

(1999年/ブータン・オーストラリア/ケンツェ・ノルブ製作/原題「Phorpa/The Cup」)

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ゴールキーパーの不安

ゴールキーパーの不安
ある試合でゴールキーパーはオフサイドもどきの微妙な判定のゴールを許してしまう。審判に抗議するも受け入れられずに退場処分に。憮然とした態度でフィールドを去るキーパーは、あてもなく街をさまよう…。

サッカーをする場面は冒頭だけ。街中をうろつくキーパーが、ナンパや殺人をする理由は“不安”だからか。確かにゴールキーパーはチームで唯一無二の、特別でデリケートなポジションではある。ナーバスになるのは当然?

ヴェンダースの初期の作品で、貴重な1本。映画制作当時は西ドイツサッカーの黄金期。それなのに、なぜこんなにネガティブな映画になってしまうのか。サッカー場面を期待して見ると拍子抜けするので注意。

(1972年/西ドイツ/ヴィム・ヴェンダース監督/独語原題「DIE ANGST DES TORMANNS BEIN ELFMERTER」)

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ミーン・マシーン

ミーン・マシーン
刑務所の中で、囚人チームと看守チームがサッカーで対決。元イングランド代表キャプテンで、名選手の主人公は八百長をもちかけられて苦悩するが…。

主演のヴィニー・ジョーンズは元プロ・サッカー選手の俳優という変り種。どうりでリフティングする姿はサマになっていた。実は「ロンゲスト・ヤード」というアメフト映画をサッカーに置き換えてリメイクしたのが本作。

娯楽作だが、刑務所という設定のためか、ラフ・プレーが多くイングランドのサッカー・スタイルが誤解されてしまいそうなのがちょっと心配。サッカーは格闘技だが、美しい技に溢れたスポーツであることも知ってほしい。

(2001年/イギリス・アメリカ/バリー・スコルニック監督/原題「MEAN MACHINE」)

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勝利への脱出

勝利への脱出
第二次世界大戦下のドイツ捕虜収容所で、独軍と、捕虜である連合軍のサッカーの試合が行われる。連合軍側はこれを機に脱出を試みるが…。

マイケル・ケインが元英国のサッカー選手、キーパーはシルベスター・スタローンというムチャな設定のサッカーものである。特筆すべきは連合軍側の選手の一人としてあのペレが出演していること。演技は学芸会並でも、サッカーの技は超一流だ。

勝つことへのこだわりにサッカーの母国イングランドの誇りが見える。ドイツサッカーのゲルマン魂もまた良し。サッカーファンには有名な作品だ。

(1980年/アメリカ/ジョン・ヒューストン監督/原題「Escape to Victory」)

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◆映画ライター、映画評論家
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◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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