映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
英・仏合作映画「パディントン2」

ドリヴン

ドリヴン [DVD]ドリヴン [DVD]
◆プチレビュー◆
ゴールデン・ラズベリー賞ものの駄作と言われるが、けっこう楽しめるのはスタローンが脇に徹しているため。

ジミー・ブライは若き天才レーサー。有能だが情緒不安定な彼をみかねて、チームのオーナーは、自分の旧友でもあり、かつて花形レーサーだったジョー・タントを呼び戻し、ブライのコーチ役として復帰させる。ライバルや恋人を絡めながら、世界中を転戦する2人のそれぞれの成長とレーサーとしての戦いを描く。

とにかくスピード感が気持ちイイ。ノリのいい音楽も手伝って、時速400キロに迫るレーサーの視界を追体験できる映像は迫力満点。重さ1トンを超えるレースカーがスピンして宙に舞うド迫力のクラッシュシーン。真上から落下して大破するCG映像が見ものだ。シカゴの公道をレース並の猛スピードで突っ走る前代未聞のカーチェイス。観客はレーサーの目となるだけでなく、ドライバーの内面までにもひきずりこまれる。限界ギリギリのスリルをたっぷりと味わおう。

この映画、スタローン自身が脚本を書き、製作費集めにも奔走したそう。完成までに5年を要したという「ドリヴン」は、世代を越えた男たちの成長を、カーレースという豪華な世界で魅せてくれる。

アクション映画の王道を行くといっても過言ではないサクセスストーリー。起承転結をきっちり守る物語。読める展開。約束された結末。でもそれが妙に気持ちいい。スタローンも55歳、一人でがんばる主演よりも、もりたて役を楽しんでいる。それでいて、最後にはちゃんと彼の映画になってるところがスゴイ。

いろいろあっても悪い人物はいない映画だ。鼻っ柱の強い美人で、スタローンの元妻や、ジミーを裏切りそうな気配の兄さんも、最後には丸く収まる。もちろんベテランレーサーの心遣いのおかげで。こういう設定が甘く感じないのは、時速400キロで話が進むからか。ただ、スタローンの恋人役でスポーツジャーナリストの役の女優がちょっと地味なのがいただけないが。派手さをとことん追求して、見せ場も充分。結果はわかっているのに、ドキドキするクライマックスがたまらない。

モータースポーツというド派手な世界を背景に、物語の中でも外でも、ベテランと若手ががっぶりと四つに組むコラボレーション。幸いどちらかが土俵の外に投げ飛ばされることもない。「レースそのものを楽しめ。」とジミーを励まし、若いモンの恋の行方の心配もする、酸いも甘いもかみ分けたヤツ。アクションスターからの脱皮を目指すスタローンの一歩目はこの映画かも。1994年に事故死したブラジルの天才レーサー、アイルトン・セナに捧げるために、スタローンが製作、脚本、主演を兼ねた渾身の一作だ。

□2001年 アメリカ映画 原題「DRIVEN」
□監督:レニー・ハーリン
□出演:シルベスター・スタローン、キップ・パルデユー、エステラ・ウォーレン、他

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ファンタジア

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ミッキーマウスが指揮者兼魔術師となり、8つの時代を、クラシックの名曲にのせて描くアニメーションの傑作。

“音の魔術師”レオポルド・ストコフスキーが指揮するフィラデルフィア管弦楽団の演奏によって描かれるのは、まったくストーリーのない音楽的映像表現。セリフもわずかな解説をのぞいては用いられない。目的は、クラシック音楽の印象をアニメーションで表すという野心的なものだ。制作日数3年、1000人以上のスタッフ、原画は100万枚以上。奇抜なアイデア、チャレンジ精神、芸術性と、すべてのおいて突出している。

最初は実写でオーケストラと指揮者が登場し演奏がスタートする。使われる楽曲は、「トッカータとフーガ」「くるみ割り人形」「魔法使いの弟子」「田園」「春の祭典」「時の踊り」「禿山の一夜」「アベマリア」。

この、音楽の映像化への挑戦は、実験的でありながら、商業的にも大きな成功を収めた点が特筆だ。革新的なアニメーションはこの映画を抜きにしては語れない。しかも、この超大作が作られたのが第二次世界大戦中だというから、つくづくアメリカの国力と映画芸術の底力を感じてしまう。現代のアニメーションを語る上で、絶対に落とせない作品。それが「ファンタジア」なのだ。

(製作:ウォルト・ディズニー)
(1940年/アメリカ/監督/原題「Fantasia」)

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王は踊る

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◆プチレビュー◆
全身に金粉を塗って踊るルイ14世。皮膚呼吸が心配?!歴史ものは欧州映画に限る。

陽王と呼ばれた若き日のルイ14世は、政治の実権を母親に握られていた。当時の貴族の必須の教養であるダンスを通して人々の崇拝を獲得するルイ。同性愛者の音楽家リュリは、そんな王を心から愛し、権力と愛を得るため、自分の人生の全てを注ぎ込む…。

華麗な時代絵巻の中、権力者に捧げた人生の悲哀を描いた本作は、本物のベルサイユ宮殿で行われたという撮影を始め、音楽、踊り、衣装は、全てこだわりの美しさで目をみはる。バロック・ダンスは解読された舞踏譜によって忠実に再現されたもの。コルビオ監督は歌舞音曲をテーマとしたコスチュームものが得意で、「カストラート」に続き、絢爛豪華な世界を描いている。また楽曲の演奏技法も、古楽として見所(聴き所?)が多い。

希薄な家族愛のせいか、ややナルシスト気味に芸術を愛するルイ14世が物語の核となる。一方、リュリには、音楽という芸術を生業にしながらも、他人を基準に生きるしかなかった人間の悲哀を強く感じる。最初は無力でも、宮廷内の権力闘争の中で政治の実権を握り、真の指導者となっていく王と、最後まで王を基準に自分の人生を歩むリュリ。妻を傷つけ、友を裏切ってまで捧げ続けた愛は、きまぐれな権力者の前では存在しないに等しい。

イメージ戦略のためか「王と音楽家の禁断の愛」などと宣伝されているが、これはこっけいな片思いに過ぎない。最初から王に愛などないのだ。そのことに気付かずに、音楽という「ひ弱」な武器で太陽に接したリュリは、はたから見れば、政治的センスの乏しい愚か者にしか見えない。

これに対してチェッキー・カリョ演じる劇作家モリエールは、リュリの策略に落ちながらも最期まで自分の演劇に対するスジを通した。人を心底笑わせるその才覚は、危険分子といえども王を魅了してやまない。舞台で血を吐きながら息絶える姿は、妥協せずに戦った芸術家そのもの。リュリと始めた、喜劇、音楽、踊りを合体させたコメディ・バレは画期的な舞台芸術で、「町人貴族」「タルチェフ」などの傑作を生む。言葉という強い武器がモリエールの才能と世相に味方した。音楽家リュリの名前は知らなくても、劇作家モリエールの名はたいていの人が知っている。芸術家としてどちらが高みにいたかは歴史が証明してる。

虚実を巧みに織り交ぜながら、歴史の中の秘められた出来事を大胆に美しく映像化するジェラール・コルビオは、自分の得意分野を持つ職人的監督で、ますます期待。きっとこれからもおもしろい解釈で歴史をひもといてくれそうだ。

□2000年 ドイツ・フランス・ベルギー合作映画 原題「Le Roi danse」
□監督:ジェラール・コルビオ
□出演:ブノア・マジメル、ボリス・テラル、チェッキー・カリョ、他

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スウィッチ

Switch (1991) スウィッチ(字幕)
◆プチレビュー◆
男時代の癖が抜けないE.バーキンの演技が見もの。入れ替わりもののコメディとして良くできている。

女性にさんざんひどい事をしてきたスティーブが、恋人達に殺される。あの世の入り口で神様に直談判し、戻りたいと訴えるスティーブ。生き返るために神様たちがスティーブに与えた課題は、彼に真実の愛を捧げる女性を探すこと。但し、スティーブは女になってこの世に戻されたから、さあ大変。果たして、女の「彼」を本当に愛する女性とは…?

この話、多少つじつまは合わなくても、とにかく楽しい。とりわけ、中身は男のセクシーな美女アマンダを演じるエレン・バーキンのにわか女ぶりが笑える。徹底した男性優位主義者のスティーブが、この世に戻って、自分を殺した恋人のマーゴからいろいろ「女のやり方」を教えてもらうものの、とにかく難しい。自分の身体を眺めながら「ナカナカだな」とニンマリしつつも、ハイヒールでよろよろし、下着のボディスーツの脱ぎ方も判らない。商談ではパンツ丸出しで膝を組み、レズの女性からせまられて失神し、自分に色目を使う通行人をはりたおす。中身は男のアマンダが、通りがかったナイスバディの美女をみて、男性時代の親友のサムに思わずつぶやく。「見ろよ、あのオッパイ。一発ヤリたいと思わないか?」このセリフに心では頷きながら、あきれるサム。「それが、女のセリフか?!」おまけにサムとは、うっかり一夜を共にしてしまう始末。

コメディの世界では、中身が入れ替わるストーリーは結構あって、楽しいものが多く、私は密かに「入れ替わりモノ」と呼んでいる。ここでこのテの映画の特徴を、5W1H風にまとめてみよう。

まず、いつ。これは、ある日突然と相場は決まってる。次に、どこで。こちらはたいてい、大都会。そりゃ、田舎でこんなことが起こっちゃパニックだ。街中ならめだたないし、少々突飛なことが起こっても誰も驚かない。では、誰が。この荒業ができる人物といえば、力量からいって、神サマか悪魔しかいない。魔法使いもOKか。お次は誰に。映画の主人公に決まっている。最後は、何をするか。これにはさまざまなバリエーションが用意されていて、子供が大人になったり、息子とパパが入れ替わったり、犬が人間になったりして、笑わせてくれる。最近では、女性の声が聞こえるようになるという変り種もあった。

では、なぜこの「スウィッチ」がおもしろいかというと、多くの映画ではうやむやにされていることが、この作品では非常にはっきりしてるのだ。つまり、どうしてこーゆーことになったのか?男が女になってしまう事には、女を弄びバカにしてきたスティーブに下された罰という明白な理由がちゃーんとある。おまけに女性から愛されなければ元に戻れないという規則もあり、さらには、女にされてしまうというペナルティ付き。

「スウィッチ」には実に上手いオチもある。女のアマンダを心から愛する女性もきっちりと現れる。もちろん同性愛者じゃない。男性の心理も女性の気持ちも分かるようになったスティーブは、立派な天国の住民になれるのは間違いなし。あぁ、よかった。これで神様たちもご満悦。めでたし、めでたしのハッピーエンドはコメディのお約束なのだ。

□1991年 アメリカ映画 原題「Switch」
□監督:ブレイク・エドワーズ
□出演:エレン・バーキン、他

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A.I.

A.I. [DVD]A.I. [DVD]
◆プチレビュー◆
この映画、結局はピノキオじゃないか?!まばたきをいっさいしない演技のオズメントは凄い。原題の「A.I」とは、Artificial Intelligence 人工知能の略。

近未来のアメリカ。子供を亡くし、失意の夫婦のもとに、限りなく人間に近い少年ロボット、ディビッドがやってくる。彼は愛をインプットされた、意思を持つ子供のロボットだ。母親モニカは、そんな彼を心の底から愛することができない。ある日、医学の進歩で奇跡的に息子が蘇り、ディビッドは不要の存在に。本当の人間になれば、ママに愛してもらえる。途中で知り合ったラブ・ロボットのジゴロ・ジョーと一緒に、廃墟となったNYをさまようディビッド。自分を人間に変えてくれるブルー・フェアリーを探す旅に出るが…。

謎に包まれた話題作が遂にベールを脱ぐ!とさんざん気を持たせておいて、こうくるか?!マザコンの「ピノキオ」を映画化するのに極秘はないだろう。観始めてすぐに解った。数年前の凡作SF「アンドリュー」と同じではないか。

ロボットが意思を持ち、愛されたいと願う。この発想自体は決して悪くない。むしろ美しいとも言える。近未来SFというジャンルで人が思いつくことは、しょせん似たり寄ったりだし、同じようなストーリーが生まれるのもしかたがないこと。問題はそれを映像化するタイミングだ。

時がたてば発想の新しさは失われる。ここに近未来SFの難しさがある。意思を持つロボットが主役の「A.I.」を観ても、これといった新鮮味を感じない原因はここだ。SF映画の重要な要素のひとつは「斬新さ」なのだから。愛情をインプットというアイデアも安直すぎる。ママへの愛だけじゃすまされないでしょう、この世の中は。母親モニカの気持ちの掘り下げ方も何とも中途半端。「愛」の定義がますます曖昧になっている今だからこそ、きちんと描かなくてはいけない部分だったのでは?

2時間26分はそもそも長すぎる。海底に沈んで祈り続けるところで終わってくれれば、まだ“余韻”を感じたかもしれないが、“それから2000年…”とたった1行ですませる強引すぎる展開には、あきれてものが言えない。愛は2000年の時を越えるというのは、こういう越え方だったのか。氷河期後のストーリーを見つつ、頭に浮かぶ二文字は「蛇足」。ラスト30分は「お願いだから早く終わって」と祈る気持ちでいっぱいだ。感情移入できない映画を観るのは、なんとゆううつなことよ…。しかし、ハーレイ・ジョエル・オズメント少年は本当に上手い!限りなく人間に近い少年ロボットを演じる彼には、貫禄さえ感じた。

キューブリック本人のコメントがぜひ聞きたい。これでいいのか!スタンリー?!

□2001年 アメリカ映画 原題「A.I」
□監督:スティーブン・スピルバーグ
□出演:ハーレイ・ジョエル・オズメント、ジュード・ロウ、他

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夕陽のガンマン

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◆プチレビュー◆
レオーネ監督の早世が本当に悲しい。けれん味あふれる演出が最高だ。

人命が軽視される所では、時には殺人が金になった。そこで賞金稼ぎが生まれた。物語はこんな乾いた口調で始まる。2人の凄腕のガンマンが共通の敵に狙いを定める。その首に高額の賞金がかかった殺人犯インディオ。捕獲は生死を問わず。賞金稼ぎの一人は初老の元軍人で、モーティマー大佐。カロライナ随一のガンマンで、身なりもきちんとした紳士。彼がインディオを狙うのには別の理由がある。もうひとりは、新顔の賞金稼ぎで、現在荒稼ぎ中。目にも止まらぬ早撃ち。この2人が、時には協力し、時には騙しあいながら、インディオとその手下を追いつめる。自分の仲間までも騙して殺しながら悪事を重ねるインディオが、時折うつろな目で思い出すのは、大切にしている時計の裏側にそっと隠した写真の美しい女性。「その時計、大事にしてるが、何か訳でもあるのか?」インディオと手下の首にかけられた賞金を山分けする算段の2人の賞金稼ぎは、徐々に目的に近づくが、やがてインディオにその計画をみやぶられることに。人を殺すときの約束として、時計のオルゴールを鳴らすインディオ。その音色が鳴り止んだとき、2人は万事休すと思われたが…。

この映画、音楽が実に効果的だ。妙に記憶に残る、いかにも西部劇風で単純なメロディー。時にはバロック調の旋律も劇的に響く。さらには哀愁をおびたオルゴールの音色も混じる。「海の上のピアニスト」などで女性ファンの涙を絞り、美しい旋律を生み出す映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネが音楽を担当しているのだ。

190センチを越える長身のクリント・イーストウッドが若い。帽子にポンチョ、無精ひげにくわえタバコと、その後の彼のイメージを決定づける姿で現れる。クールなのにちょっと軽みのある演技が実にいい。

女っ気がほとんどないこの映画で唯一出てくるのはインディオがうつろな瞳で思い出す若い女性。この美しい人が物語のカギを握る。「俺の名はモーティマーだ!」と叫ぶ初老のガンマン。驚くインディオ。2人が大切に持つ、裏側に写真のあるオルゴール付きの時計で、敵のインディオは実は家族同然であることがラストで判る。

敵役インディオですら、この瞬間を待っていたかのようなラストの決闘シーンは、たまらない緊張感が走る。夕陽のガンマンは男の美学だ。「駅馬車」「真昼の決闘」「シェーン」を世界三大西部劇と位置付ける私も、プラスアルファの番外編としてこの「夕陽のガンマン」をランクインさせている。通常、マカロニ・ウェスタンは、西部劇の中でも低く見られていて、バンバン!と銃をぶっぱなし、殺した人数の多さが映画のヒットに比例するなどと言われている。しかし本作は何かが違うのだ。確かに人は沢山死ぬけれど、叙情性があるのが特徴か。特にラストは印象的。

登場人物がヒーロー然としてないところがイイ感じだ。クリント・イーストウッド扮するガンマンには名前すらない。マカロニ・ウェスタンとは日本での名称で、アメリカではスパゲッティ・ウェスタンというそうだ。

□1965年 イタリア映画 英語原題「For a few dollars more」
□監督:セルジオ・レオーネ
□出演:クリント・イーストウッド、リー・バン・クリーフ、ジャン・マリア・ボロンテ、他

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彼女を見ればわかること

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◆プチレビュー◆
盲目の妹役のC・ディアスは、繊細な演技で新境地開拓。見直した。

第1話 キーナー医師の場合:痴呆症の母を持ち精神的に束縛された女医のキーナーは、満たされない心をタロット占いに託す。
第2話 レベッカへの贈り物:銀行の支店長のレベッカは不倫関係にある男性の子供を妊娠。年齢的に最後のチャンスだが、相手の遣いはなく一人で悩む。
第3話 ローズのための誰か:主婦ローズは、親離れしていく息子に寂しさを感じる。そんな時、隣家に越してきた容姿に欠点のある男性に思いを募らせる。
第4話 おやすみリリー、クリスティーン:占い師のクリスティーンは同性愛者。恋人は死の病に冒され日に日に弱っていく。彼女は愛する人とのいずれ来る永遠の別れに向き合えない。
第5話 キャシーを待つ恋:盲目の妹と暮らす刑事キャシー。知人の自殺を妹に話す。活発な妹の心の奥の悲しみを知ることに。

物語はひとつひとつが独立したオムニバス形式だが、少しずつ重なり合う部分があり、キャリア、経済的にも満足しているかに見える彼女たちのそれぞれに抱える問題が交差する。彼女たちが愛を求める本当の自分に気づく過程が丁寧に描かれていく。様々な年代の現代女性の孤独や悲しみが繊細な演出にのせて、静かに、しかし絶妙に展開。

第1話に登場するグレン・クローズの圧倒的な存在感、第2話のホリー・ハンターもやはり上手い。3話と4話は実はちょっと中だるみの感があるが、第5話のすばらしいできばえが、3話と4話で少し下がったテンションをいっきに引き上げてくれる。盲目の妹キャロルを演じるキャメロン・ディアスが実にイイ。容姿に自信を持ち、勝気で活発なキャロルは、わがままばかり。恋人と夜遊びして帰ってくると、どこに行ったのと心配する姉に「(地味な)姉さんには無縁の場所よ」と笑う。そんな彼女も、彼女の恋人である父親を奪われまいとする少女の辛らつな言葉に深く傷つく。キャロルもやはり、心の奥底に深い悲しみを秘めているのだ。

愛に悩み、孤独をかみしめる5人の女性。痛みから逃げずに、自分の人生と正直に向き合う姿が考えさせられる。カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ受賞。サンダンス・NHK国際映像作家賞受賞。人は誰もが脇役でありながら主人公。介護、不倫、隣人関係、同性愛など、山積みの問題を抱えながら、日々生きていく。複雑で繊細な人生の転機に、新たな出会いや別れがある。年齢を重ねるほど、変化を受け入れる時には勇気が必要。どうやら人生をこなしていくにはかなりの体力と覚悟がいるみたいだ。“彼女”とは、私たちのことかもしれない。

□1999年 アメリカ映画 原題「Things You Can Tell Jsut By Looking At Her」
□監督:ロドリゴ・ガルシア
□出演:グレン・クローズ、ホリー・ハンター、キャシー・ベイカー、他

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シーズンチケット

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◆プチレビュー◆
悪ガキ、ジェリーとスーエルが魅力的。悲しくも可笑しい、そして心あたたまる佳作。

舞台はイングランドのとある町。15歳のジェリーと17歳のスーエルは学校にも行かず、悪さばかりをして毎日を過ごしている。貧しくつらい現実を生きる2人の夢は、ごひいきの地元サッカーチームの試合をいつでも生で観戦することができるシーズンチケットを手に入れること。一人500ポンドとかなり高額なこのチケットをなんとか手に入れるため、悪知恵をしぼりながらがんばる2人。だが、もう少しで目標金額に達成というところで家族に暴力を振るうジェリーの父親からお金を盗まれる。愕然とする二人は遂に銀行強盗に及ぶが…。

主役の2人の少年、頭のきれる15歳のジェリーと太っちょでお人よしの17歳スーエルのコンビが最高だ。映画のカギとなるシーズンチケットは年間を通して席が確保されるもので、商業的な理由による買占めが多い。値段もさることながら、コネがなくては入手困難なので確実にサッカーが観戦できる以上にステイタスとしても重要。劇中でジェリーは、このチケットを持つことで手に入れることができるものは「敬意」ときっぱり言い切る。

ジェリーの家庭は、暴力を振るう父親を避けて、姉と母とで転居を繰り返している。学校の勉強より、社会での適応性に優れたジェリーは、ろくに学校にも行っていないが頭が良く、家族を愛していて、それが逆に切ない。ちょっと頭の弱いスーエルは、これまたボケかけたおじいちゃんと2人暮らし。両親の顔は覚えていない。現実はつらいことばかりだけど、あこがれのシーズンチケットのためにメゲずにがんばる2人が好感が持てる。稼ぎ方にはやや問題ありだとしても。

喜劇と悲劇の混在するストーリーの中で、ジェリーが語る初めてのサッカー観戦のエピソードが心に残る。それはとても寒い日で、父さんと2人で初めて試合を見た。父さんは自分のコートで僕の体をくるんでくれて、暖かで幸せだった。ハーフタイムに買ってくれた紅茶には、砂糖が2つとたっぷりのミルクが入っていて、あれこそ世界一の紅茶だ…。父親との美しい思い出など持たないはずのジェリーが噛みしめるように語るこの思い出の真実は、実に切なく胸に響く。

2人が応援するチームはイングランドに実在するニューキャッスルユナイテッドというチーム。アラン・シアラーという同チームのスター選手が本人の役で出演している。ヨーロッパや南米のサッカーに対する尋常ではない入れ込みようを理解してみると、この映画をもっと楽しむことができるはずだ。ライバルチームへの異常なまでの敵対心がこの映画でもおもしろく描かれていてジェリーとスーエルもそのあたりの掟には忠実だ。

せっかく貯めた貯金を盗まれ、何もかもうまくいかず、思い余って銀行強盗。もちろん捕まっておなわになるのだけれど、この二人、最後にはちゃーんとあこがれの「チケット」を入手する。そこは誰もがうらやむとびきりの席。ミルクたっぷりでアツアツの紅茶だってある。さて、どうやって?それは見てのお楽しみ。涙と笑いの中にもリアルな現実が浮きぼりにされていて、実は考えさせられる。

□2000年 イギリス映画 原題「The Season Ticket」
□監督:マーク・ハーマン
□出演:クリス・ベアッティ、グレッグ・マクレーン、他

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初恋のきた道

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◆プチレビュー◆
チャン・ツィイーの魅力全開。ロング・ランも納得の秀作。ベルリン映画祭銀熊賞受賞。

華北の美しい村に都会で働く青年が帰ってくる。父の訃報を聞いて帰郷してみると、年老いた母は伝統の葬儀をすると言って周囲を困らせている。病院から故郷の村までの長い道を、人を雇って、父を背負って帰ると頑なに言っているのだ。その様子を見ながら、息子は自由恋愛が珍しかった当時の父と母の恋物語を思い出していた…。都会からやってきた青年教師に恋した18歳の少女。その恋心は手作りの料理とともにやがて彼のもとに届く。だが、時代の波「文革」が押し寄せ、二人は離れ離れに。少女は町へと続く一本道で、来る日も来る日も愛する人を待ち続ける…。

中国とアメリカの合作である本作は、中国映画の伝統である詩的な物語で、愛と家族がテーマ。美しい四季を背景に、純粋無垢な少女の初恋が瑞々しく描かれる。春の訪れや黄金色の麦畑、丘陵に続く一本道、厳しい吹雪の冬さえも、1枚の絵のように美しい。

「愛と感動」のアメリカ映画を見慣れた私たちにとって、初恋を実らせるという、いわばビギナーズラックのような出来事を描く映画には、普通は多少の困難がつきもの。しかしこの映画にはそれはない。村では初めてという二人の自由恋愛を、村人が妨害するかと思えば、そんなことは誰もしない。では親が反対するかと思えば、最初はディの老いた母が心配はするものの、実は娘の恋の成就を心から願っている。ライバルの存在なども、むろんない。時代の荒波の文革で、村を離れる青年を追うディの姿は涙を誘うものの、二人の本格的な恋の成就の説明は字幕のみで、それもあっさり1〜2行。こうして見ると何故あんなに泣かされてしまった映画なのか不思議なほどだ。

ロングランの人気と、観た人にしかわからないな感動の理由は、ズバリ、この映画のシンプルさにある。親しみやすいメロディーと、初恋に全力投球で取り組む少女の一途な思いだけを武器に、この映画は進むのだ。むろん自然描写の美しさはあるが、相手の青年を描くことさえ最小限に抑え、ひたすらディだけを描く。これがいいのだ。だからこそ、最後の葬儀の場面が胸に響く。小さなエピソードを丁寧に描くことで、観るものを徐々に引き込んでいく。監督の確かな手腕を感じた。

ディの作る料理がクローズアップされていたけれど、むしろ、印象に残るのはディの着る赤やピンクの服とヘアピン。モノが溢れる日本の女の子なら、もらったら逆に怒りそうなくらい安っぽい赤のヘアピンを誇らしげに髪に飾り、似合うと折り紙つきの赤のチャイニーズ風はんてんでおしゃれする可憐なヒロイン。

現在をモノクロ、過去をカラーという、通常とは逆の手法をとって綴られるストーリー。美しい思い出を持つ人のみに許される色彩表現だろう。青い小花の碗だけが恋人たちの気持ちを知っている。一本の道から生まれ、40年後に同じその道をたどって帰る二人の変らぬ想い。この感動の震源地は中国だ。

□2000年 中国映画 原題「我的父親母親」
□監督:チャン・イーモウ
□出演:チャン・ツィイー、他

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クイルズ

クイルズ (特別編) [DVD]クイルズ (特別編) [DVD]
◆プチレビュー◆
見る前はミスキャストだと思ったが、ラッジュはなかなか色っぽい。太めのケイトはサドに翻弄されるエロい場面が上手かった。

精神病院と監獄でその人生の大半をすごした作家、マルキ・ド・サド。サディズムの語源となったこの反骨精神に溢れた男の晩年を描く。その退廃的で卑猥な内容から、発禁処分を受けながら、権力に屈することなく挑発的な作品を世に送り出す。禁じられれば禁じられるほど、書くことへの執念が燃える。周囲の人間を少しずつ虜(とりこ)にしていくサド侯爵。だが、遂に彼を監視する目的で、精神病院の責任者が新たに送り込まれ、彼は窮地にたたされる。サドの書くことへの執念は、はたしてどのような結末を迎えるのか?

これだけ主役、脇役ともに芸達者が揃う映画も久しぶりだ。特にジェフリー・ラッシュはすごい。本当は、ちょっとミスキャストかなと思っていたのだ、観る前は。退廃的で猥褻なサド侯爵を演じるなら、もうちょっとツヤのあるタイプの俳優の方がいいのでは?ラッシュは上手いが、色気が足りない感じがするし。しかし、観てみたら、イイんだな、これが!あの鬼気迫る感じはまさにラッシュならでは。色気も意外とあったりするのだ。

ペンと紙を奪われ、書くことを禁じられたサドはまずは、ワインと鶏肉の骨を使ってシーツに書く。それも禁じられれば、自らの指を傷つけ、その血で自分の衣服に書く。衣服を奪われれば、獄中の狂人と小間使いのマドレーヌを使って口伝えで文章を伝える。そして、それが原因で恐ろしい事件が起き、拷問の末、遂に地下牢に全裸でつながれれば、自らの排泄物で壁に書く。まさにすさまじいまでの情念なのだ。18〜19世紀に言論の自由を謳うのは、かくも命がけのことだったのだ。

サドの言動に戸惑いながらも、彼に惹かれずにはいられない若き神父は、ミイラとりがミイラになってしまうのだけど、この、徐々にサドを理解して傾倒していく様子が少し弱かったか。マルキ・ド・サドを心のどこかで理解しながら、愛するマドレーヌが非業の死をとげて、悲しみと怒りですさまじい行動をとり、遂には発狂。彼がこうなるプロセスをもう少しじわじわと描くことができれば、ラストがもっと効果的だったはずだ。

サディズムの定義は、他者に苦痛を与えることで性的な快感を得ること、だそう。その生涯で27年以上も牢獄暮らしをした、サド侯爵の本名はドナシアン・アルフォンス・フランソワ・ド・サド。代表作は「ジュスティーヌ」「ソドムの百二十日」など。「ソドム」は後にイタリアの鬼才パゾリーニによって映画化されたが、まことにすさまじい作品だった。

美徳を知りたければ、まず悪徳を知ることだとはサドの名言。言論の自由がこの作品の最大のテーマだが、かなり挑発的で見応えのある映画だ。

□2000年 アメリカ映画 原題「QUILLS」
□監督:フィリップ・カウフマン
□出演:ジェフリー・ラッシュ、ホアキン・フェニックス、ケイト・ウィンスレット、他

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映画評やコラムの執筆、講演など、映画に関する仕事を承ります。連絡はメールでお気軽にどうぞ。

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執筆やラジオ出演など、メールと電話で対応可能な場合は、全国から仕事を受注していますので、まずはお問合せください。
プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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