映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
アメリカ映画「シェイプ・オブ・ウォーター」

ガールファイト

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◆プチレビュー◆
ミシェル・ロドリゲスの三白眼の目つきが最高!ガール・ムービーとして上出来だ。サンダンス映画祭グランプリ受賞。

退屈で無気力な毎日を送る少女、ダイアナ。全てに嫌気がさす彼女は、訳もなく攻撃的な態度をとってしまう自分をもてあましている。ある日彼女は、弟が通うボクシングジムを偶然訪れ、これこそ自分が打ち込むものだと直感して強引に入門、みるみる実力を発揮し、トーナメントで勝ち進んでいく。しかし、ジムの仲間エイドリアンと恋に落ちたダイアナは、彼とアマチュアボクシングの決勝戦で対戦することを知り思い悩む…。

冒頭やファイトシーンで流れるフラメンコのリズムに惹きつけられる。眼光鋭い不敵なツラ構えのダイアナを演じるミシェル・ロドリゲス。彼女のド迫力の三白眼は、いままでにない“こびないヒロイン”を、目つきだけで十分に現していて、この映画が彼女を魅せる映画だとひと目で気づく。

無気力な女の子が、ボクシングを通じて様々なことを学び、成長するストーリーは、女の子がボクシングという点を除けば、ありがちな青春映画。しかし、自らも実際にボクシングをやっていたというクサマ監督は、前代未聞のボクシングでの恋人対決という素材を、新鮮な恋物語にまとめた。

最初はただ怒りややるせなさをぶつけるだけだったダイアナのボクシングは、コーチの指導を受けるうちに自己鍛錬の大切さやトレーニングの質を学び、心も身体も明らかにたくましく変化していく。ロドリゲスも熱演で、演技はまだまだ荒削りだが、獣のような激しさの中に少女らしいナイーブな横顔をのぞかせる。計らずも恋人と戦わねばならなくなり、思い悩む二人。ダイアナとエイドリアンの試合は、いわば濃厚なラブシーンだ。

ラストは希望でもなく絶望でもない、非常に現実的な一面をみせる。ヒロインには恋もボクシングも、大人になっていく確かな原動力。10代の二人に将来の約束など必要ないし、お互いを認め合う姿が何よりも清々しい。残念なのは、家族、特に父親との確執が中途半端に終わっていることか。

この映画の特徴は、「試合に勝つ」ことに焦点がおかれていないこと。思春期というのは誰もが経験する独特な季節で、とまどいと行き場のないエネルギーをボクシングによって昇華させていくヒロインは、チャンピオンになりたいわけでもなく、闘魂そのものや誰かを倒すことがカタルシスなわけでもない。彼女は他の誰のためでもなく、自分自身のために戦っていて、それは社会に力強く踏み出すためのトレーニングなのだ。何かに夢中になったり、自分なりに成し遂げることで、人はこんなにも変わることができる。そうすることで、きっと日々の悩みなど砕け散っていくに違いない。

□2000年 アメリカ映画 原題「Girlfight」 
□監督:カリン・クサマ
□出演:ミシェル・ロドリゲス、サンティアゴ・ダグラス、他

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トゥームレイダー

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◆プチレビュー◆
モノトーンの服に身をつつむ強気モードのララ。映画的な中身は全くない。

ララ・クロフトは財宝探検家。ある日、失踪した父クロフト卿の不思議な時計を発見。その時計は時を支配する秘宝の手がかりだった。だが、邪悪な秘密結社のイルミナーティも世界を征服するために秘宝探索に乗り出していた。かくして、ララと宿敵のバトルが世界中を駆け巡る。果たして、ララは世界を救えるのか?

スーパーヒロインが大活躍の冒険物語。A.ジョリーは文句なくピッタリで、天賦の才と強烈なボディ、脅威の運動神経という三拍子そろったヒロインを演じて、それぞれ心の中に思い描く主人公がいるゲームファンをも、納得させた。彼女のフェロモンを十分すぎるほど楽しめるのが本作。

そもそもこの映画の原作は、記録的なヒットをとばす超メジャーな大人気ゲーム。世界で最も有名なゲームヒロインがララ・クロフトその人。ゲーマーには既に大まかな設定が把握できているというわけだ。おかげで物語の核になる人間関係の描写はほとんど手抜き状態。当然、話に深みなどあるはずもなく、ララが戦うのは、世界を救うという目的よりも、むしろ戦うことそのものが好きという印象。このあたりが実にゲームっぽい。

ゲーマーの楽しみは、どんなに不完全でも、自分でストーリーを作っていくこと。たとえそれが、実はクリエーターの作った話の流れを追うことだとしても。また、ゲームオーバーでもリトライできるという楽しみもある。いわば習得する喜びだ。一方、映画を見る観客は、完成されたストーリーを、十分に味わうことを期待する。それも、きちんと構築されたストーリーとキャスティング、映像と音楽、そしてセリフの深みまで総合した完成品でなくてはならない。もちろん、ゲーマーと映画鑑賞者の年齢層の違いもあるが、むしろ、メディアの質と求めるものの違いに気づくべき。要は、ゲームを映画化するという企画そのものに、無理があるのだ。これがゲームの実写化の壁でもあるし、逆に将来への期待とも言えるだろうか。

□2001年 アメリカ映画 原題「Tomb Raider」
□監督:サイモン・ウェスト
□出演:アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・ボイド、イアン・グレン、他

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シャドウ・オブ・ヴァンパイア

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◆プチレビュー◆
狂気が漂うW.デフォー。製作がニコラス・ケイジというのも話題。物語のアイデアが良かった。

1921年、監督ムルナウは映画「吸血鬼ノスフェラトゥ」に着手する。主演の吸血鬼役のマックス・シュレックは実は本物のヴァンパイアで、出演後の報酬として、主演女優の生き血を監督から約束されていた。しかし、映画にこだわるムルナウと、シュレックのわがままで撮影現場は混乱、スタッフも次々と犠牲になっていく…。果たして映画は完成するのか?

ヴァンパイア、つまり吸血鬼が出てくるからホラー映画と勘違いしそうだが、実はこの映画、ブラックな笑いがつまった業界もの。俳優が本物の吸血鬼だったというアイデアのおもしろさがポイントだ。監督が究極の凝り性なら、俳優は超わがまま、しかもヴァンパイア。監督のムルナウは傑作の吸血鬼映画を撮ろうと固く決意する。リアリティを追及するあまり、本物の吸血鬼を見つけてきて主役に据えるとは。一方、演技派の吸血鬼は、人間離れは仕方ないとしても、撮影中もわがまま放題だが思いがけず熱演する。

監督にとってワガママな俳優ほど扱いにくいものはない。しかし、彼ほどすばらしい役者はいないとなると作品のために我慢するのが映画人。このあたりの葛藤が可笑しい。凝り性監督と吸血鬼俳優の緊迫した攻防が続く中、次々にスタッフが血祭りに上げられる。監督の映画への執念がどういう形で実を結ぶかは見てのお楽しみだ。

無声映画は、今見るとなぜか新鮮。映像的にもなかなかおもしろいものがある。劇中で度々出てくる「アイリス」とは、主にサイレント時代に使われたもので、レンズの前に装着されたもうひとつの絞りのこと。これを開いたり閉じたりすることで、画面の転換を図る。この映画のもととなったドイツ映画「吸血鬼ノスフェラトゥ」は、1922年のサイレント映画で、今なお吸血鬼映画の傑作とされている。

恐怖と笑いを誘う異色のエンターティメント作品。デフォーの熱演をたっぷりと楽しもう。劇中劇からそのままクライマックスに突入。デフォーVSマルコビッチ、入魂のラストシーンが見ものだ。

□2000年 アメリカ映画 原題「Shadow of the Vampire」
□監督:E.エリアス・マーハイジ
□主演:ジョン・マルコビッチ、ウィレム・デフォー、他

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ブリジット・ジョーンズの日記

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◆プチレビュー◆
太ったままで幸せをつかむところがヨイ。ブリジットの愛読書がセルフヘルプ本というのもリアル。

ロンドンの出版社に勤める32歳の独身女性ブリジット。お堅い弁護士マークを紹介されるが、気が合わず険悪に。憧れの上司ダニエルと急接近するも、ダニエルは浮気性。よし!今年こそは、酒もタバコも止め、ダイエットに励み、恋人もみつけるぞ!との新年の誓いにも、すぐに迷いが…。みっともない所ばかり見られたはずのマークの好意的な言葉を聞いても、ダニエルのことも忘れられないし、さぁ、どうするブリジット…?!

イギリスの新聞「インディペンデント」に、ロンドンに住む30代独身女性ブリジット・ジョーンズの架空の日記がコラムとして連載、たちまち大反響。全世界で読まれた大ベストセラーとなった。赤裸々すぎる内容は、女性に対してまだ淡い夢を抱いている10代前半の少年たちが見たら、きっと幻滅するだろう。

なにしろこのブリジット、酒とタバコはガブ飲みするし、痩せると決心しても、その意思は薄氷のようにもろい。家の中を覗いてみると、脱ぎっぱなしの服はだらしなく散らかってるし、洗面台にはメーク用品が散乱、吸殻がこぼれ落ちそうな灰皿に、捨てればいいのに、妙なガラクタが散らばってる室内。二日酔いで寝起きのブリジットは、ズルっと脱いだショーツを足で器用に洗濯カゴへ。素敵な大人の女性とは程遠い人物で、ちっともヒロインらしくない。どこかに思い当たるフシがある?

しかし、ブリジットにはいじけたところが微塵もない。一種の天然ボケともいえる。ダイエットに失敗し、上司にフラれ、パジャマ姿で「オール・バイ・マイセルフ」を熱唱する合間に、時には落ち込むことはあっても、基本的にいつも前向き、ポジティブシンキングだ。深く考えないせいか、行動も早い。爆裂ぶりもすごいけど、立ち止まって引き返すくらいなら、暴走して転ぶ方を選ぶのだ。おおらかなところが見ていてうれしいし、つい応援したくなる。それに、新年に「今年こそは去年と違った自分になるんだ!」との決心は、誰もが経験あるのでは?つまり彼女は憎めないヤツなのだ。この人と一緒ならきっと心があったかくなる。その証拠に、ブリジットはとびきりイイ友達をもっている。落ち込んだ彼女を励まし、マズイ手料理だって食べてくれる愛すべき友人たちを。

30代、中年にさしかかる独身女性が自分を慰め希望を持つための映画、なんてうがった見方はダメ。ちっぽけなことで泣いたり笑ったりする私たちだ。人間は、幾つになっても他愛ない生き物なのだから。ラストのクレジットが流れる部分も楽しい。「ありのままの君が好き。」これ以上の褒め言葉がこの世にあろうか。見終わったあと、記憶に残るのは、ブリジットのはじける笑顔。ヒロインの天真爛漫さを楽しもう。

□2001年 アメリカ映画 原題「BRIDGET JONES's Diary」
□監督:シャロン・マグワイア
□出演:レニー・ゼルヴィガー、ヒュー・グラント、コリン・ファース、他

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魔王

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◆プチレビュー◆
名匠シュレンドルフの映画なのに公開スタイルが冷遇されたのが残念。地味だが深い作品だ。原題のogreとは、絵本の中の悪魔として親しまれているキャラクターで、人食い鬼の意味。ベネチア国際映画祭ユニセフ賞受賞。

フランス人孤児のアベルはいじめられっ子で、しかられ役の内向的な少年。大人になってもうまく人とつきあえず、子供と一緒にいる方が心地よい。そんなアベルは、少女の残酷な嘘のせいで、無実の罪で前線に送られる。ドイツ軍の捕虜となったアベルは、その素朴さがドイツ軍の高官に気に入られ、ゲーリング元帥の狩猟館の下働きに、更に幼年学校に移ってからは、未来のドイツ軍兵士となる少年の発掘係に任命される。彼はいつしか子供をさらう“鬼(ogre)”と呼ばれ、恐れられる存在に…。

ナチスドイツ、陰鬱なプロイセンの森、子供をさらう鬼、となんだか暗そうな要素が揃っているが、これは人間の善と悪の二面性を見事に描いた、寓話的で重厚なお伽噺。かつ骨太の文芸作でもある。ナチスドイツの高官ゲーリング元帥を滑稽な存在として描いているところが、フランスで青春時代を過ごしたシュレンドルフらしい。

アベルとは聖書に出てくる人物で、楽園を追放されたアダムとイブの間にできた子供の一人。兄弟カインによって命を絶たれる悲しい運命。残酷さと純真さを併せ持つアベルを演じるマルコビッチは、やはりスゴイ。彼なくしてこの映画は存在しないと監督に言わしめるのが納得。焦点が合っていないのに、そのくせ鋭いあの目つき。表情だけで物語る。子供の心を持つ大人というだけなら、ロビン・ウィリアムズでもOKだが、善と悪の二面性という複雑な役をやらせたら、現在マルコビッチの右に出る俳優はいない。幼い少女の嘘で、ある日突然無実の罪で逮捕されるシーンは、一見すると不条理な展開のように思えるが、アベルが将来犯すであろう罪をもしや彼女は知っているのか。少女はアベルを刑務所へ、そして戦争へと追いやるが、何が無垢で何が残酷なのかは映画ははっきりとは区別しない。ものごとの善悪を区別しないのと同じように。

捕虜のアベルが収容所をこっそりと抜け出してはくつろぐ小屋での、盲目の大鹿との交流のシーンは、幻想的で、特に心に残る。炎と音楽で荘厳に演出するナチスの訓練から、一転して燃え落ちる城。「運命は残酷だが、それでも、いつも僕の味方だ。」アベルの確信はラストでの彼の行動を暗示する。騎馬戦で始まる冒頭のシーンが、主人公の背負うさだめを物語る。運命に守られながら、アベルは凍った沼を進んでいく。

ナチス支配下の激動の時代を背景に、子供の心を持ったまま大人になってしまった男の宿命の旅を描く叙情詩「魔王」。アベルの進む先には光があると信じたい。

□1996年 フランス・ドイツ・イギリス合作映画 原題「The ogre」
□監督:フォルカー・シュレンドルフ
□出演:ジョン・マルコビッチ、アーミン・ミューラー・スタール、マリアンネ・ゼーグブレヒト、他

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コレリ大尉のマンドリン

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◆プチレビュー◆
陽気な男性と聡明な女性の恋はマンドリンの調べが味方。ちょっと楽天的すぎるか?

第2次世界大戦のさなかの1941年、ギリシャ。イタリア軍とドイツ軍の両方の占領下にある美しいケファロニア島に、音楽をこよなく愛するイタリア軍大尉アントニオ・コレリがやってくる。ギリシャ語の通訳もこなし、紳士的で陽気なコレリ。やがて、情熱的な島の娘ペラギアと恋に落ちる。しかし、戦況は急変、イタリア軍の撤退でドイツ軍との同盟も不確かなものに。時代の荒波の中で、本来は敵味方であるはずの2人の愛は、決断を迫られ、戦争の嵐は、国境を越えた愛と友情を引き裂き、彼らの人生を狂わせていく…。

音楽をこよなく愛し、マンドリンを背中にしょって島にやってくるコレリ大尉の陽気でのどかな占領軍は、島の人々に憎しみなどみじんも感じていない。ノーテンキな占領軍に、島民も毒気を抜かれ、敵味方であることをしばし忘れてしまうほど。無秩序なイタリア軍兵士をうっすらと軽蔑するドイツ軍将校との間にも友情が芽生え、あたかもひとときのバカンスのようだ。さらに、ペラギアを愛する想いが、コレリの音楽家としての才能をも開花させていく。

この映画で描くのは、ギリシャの孤島という閉鎖的な舞台で、ドイツ軍が、昨日までの同盟国のイタリア軍を惨殺したという、あまり知られていない史実。占領軍のイタリア人と敵のギリシャ人の間に、ほのかな友情が芽生える一方で、同盟国同士が目先の利害を巡って、殺しあう。この残酷で愚かしい場面には、人と人とが争う戦争には、実に様々な側面があるのだと考えさせられた。

人物描写も丁寧で何気なく描かれていて好感が持てる。島の医師であるペラギアの父は、娘が本当に愛するのは島の青年マンドラスではなく、敵であるイタリア人アントニオ・コレリであることを知り、密かに二人の恋を応援する。この父親医師が鋭いのは、まだ、コレリが現れる前から、娘とマンドラスの仲がうまくいかない事を見抜いているところだ。このことを感じているのはマンドラスの母親も同じ。ペラギアに好意は抱いているが、彼女がいずれ別の男に惹かれることを知っている。この母親役を演じるのがギリシャを代表する大女優イレーネ・パパス。久しぶりに見たが、存在感のある演技は健在だ。

戦争という人災にも、戦後、ケファロニア島を襲った大地震という天災にも、希望を失わず、強く前向きに生きる島の人々。どんな悲劇に見舞われようとも、明日も変わらず、海は美しく太陽はまばゆい。イタリアやギリシャのような長く尊い文化を持つ国民は、歴史のうねりの中で抗うことと身を任せることの両方の大切さを、先祖代々身につけている。だからこそ、ラストの幸せも静かにやってくるのだろうか。

□2001年 アメリカ映画 原題「CAPTAIN CORELLI'S MANDOLIN」
□監督:ジョン・マッデン
□出演:ニコラス・ケイジ、ペネロペ・クルス、クリスチャン・ベール、他

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ブロウ

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◆プチレビュー◆
70年代のカルチャーが満載。デップとペネロペとは、意外な組み合わせだ。

1970年代に麻薬売買でアメリカ裏社会に君臨した実在の男ジョージ・ユング。貧乏を嫌い、友人とカリフォルニアに移り住む。恋人バーバラの紹介で麻薬の小売業を始めた彼は、すぐに商売の才覚を発揮し、みるみる麻薬市場を牛耳るようになる。何度も逮捕されながらも、裏社会で上り詰めていくジョージ。しかし、その彼も、最初に愛した女性を癌で失い、仲間の裏切りや、両親との亀裂に悩む。運命的に結ばれた妻マーサや子供のため、必死で守ろうとした家庭も崩壊、ついには失墜していく…。

麻薬というダークな題材を通してはいるが、これはれっきとしたホームドラマだ。それもとびきり悲しい家庭劇。実在する伝説の麻薬王を描くというから、社会性や緊張感、メッセージ性やサスペンス風の物語を期待して観るとハズレる。この作品で描かれるジョージ・ユングは、70〜80年代の麻薬のほとんどが、彼を通して流れたと伝えられるのが嘘のような、ごく普通の人物。とりあえず、自分が扱う商品であるコカインのテイスティングはするものの、麻薬に溺れてボロボロになるわけではない。彼にとって麻薬は単なる商売品なのだ。

ほんの小遣い稼ぎのつもりでやり始めた麻薬売買が、70年代というドラッグ文化全盛の時代とぶつかり、大当たりしたおかげで大金を手にするジョージ。特に、映画の前半はノリのいいテンポで彼の栄光が描かれる。頂点まで上り詰めて、金や名誉や、愛までも手に入れた彼自身の本当の願いは、幼年時代の自分とは縁遠かった、温かい家庭を築くこと。彼に冷たい母親とは異なり、父親との愛情の絆は深く、それだけにやるせない。あんな家庭だけはイヤだと、なんとかがんばるジョージだが、うまくいかず、妻マーサとの溝は深まるばかり。愛する娘とも引き裂かれる。麻薬という間違った商売道具を選んだことが、誤りだと解っていても、もはやどうすることもできない男の苦悩とあきらめがじんわりと伝わってくる。

物語半ばでゴージャスに現れるジョージの愛妻マーサ。他人の婚約者だった彼女を奪って結婚したジョージとの、ややSMチックな夫婦生活が、おまけのようにチラッと登場するが、マーサとジョージの、人間としての絆の描き方が少し弱いのが残念。むしろ、女性キャラとしては、癌で失ってしまった、最初に愛した女性バーバラの影が残る。

40代にして懲役60年というから、ほとんど終身刑に近い刑を宣告されるジョージ。刑務所の中でむなしい日々を送る彼が、幻を見るラストシーンが素晴らしい。ハッピーエンドかと思って見ていたふやけた頭に、ガツンと一発くらうので要注意。おまけに最後には、実在のジョージの顔が登場して、悲壮感は倍増。ラストのテロップが、麻薬王ジョージ・ユングその人の人生を如実に物語る。

□2001年 アメリカ映画 原題「BLOW」
□監督:テッド・デミ
□出演:ジョニー・デップ、ペネロペ・クルス、レイ・リオッタ、他

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チアーズ!

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◆プチレビュー◆
健康的なお色気満載!単純に楽しいのがいい。

名門チアリーディング部トロスに所属する快活な少女トーランス。新キャプテンに使命され、大喜びの彼女だったが、着任早々、練習中の振り付けが前部長による他校の盗作だったことが判明。名誉挽回のため、トーランスは新しい振付で全国大会出場を目指す。

とにかく理屈ぬきに楽しい。ノーテンキといっても過言じゃないほど、元気なのだ。本物のチアリーダーたちが演じる、バク転や宙返りなど、高度な妙技が散りばめられ、健康的なお色気も満載。ストーリーはあえて説明するまでもなく、いたって単純で、高校生チアリーダーの奮闘を、笑いや熱気と共に描いていく。困難に立ちむかう主人公たちはどこまでも前向きで、少々のことではへこたれない。まさに青春映画の王道、魅力全開だ。

ミニスカートでチャラチャラと応援しているイメージのチアリーディングだが、体操の床運動のように高度な技術と、ダンスの素養やショーの要素を必要とする、れっきとした団体スポーツ競技。いつもニコニコのエアロビックスが実はハードな有酸素運動であるのと同様に、華麗で流れるようなシンクロが、実は筋肉と肺活量が勝負の競技であるように、チアリーディングという競技は、ハードで緻密なスポーツであることがよく解る。

ヒロインのキルステン・ダンストは、アンニュイなイメージが強かったが、元気でひたむきな高校生を演じさせると、本当にさわやかでかわいい。こんなに明るい役が似合うとは。ミスキャストのようで実はナイスキャスティング。このコは案外コメディもいけるかも。新しい魅力発見だ。

“トロス”の新主将に選ばれたトーランスは、連続優勝を狙おうと大ハリキリ。ところが、転校生ミッシーの報告で、チーム自慢の振り付けが、大会に出場したことのない黒人チーム“クローヴァーズ”のオリジナルを前主将が盗作したものだと判明。このままの振り付けでいくか、どうするか、チーム内で意見が分かれる。しかし、どこまでも明るく前向きな主人公に、盗作など許せるはずもなく、大会棄権ももってのほか。本番にはもちろん新しい振り付けで臨むのだ。たとえたった2週間しかなくっても!これが怖いもの知らずの10代の強みか?!

落ち込んで、立ち直り、旧BFから新BFに惚れ直し、チームメイトの裏切りに怒りながらも「あなたたちが必要なのよ。だって私たちチームでしょ」。コロコロと気持ちが変わる10代の女の子の特徴を良くつかんでいる。

高校のチアリーディング部の新キャプテンの奮闘を、元気いっぱいに描くキュートな青春映画。スカッと爽快、ハイテンションの青春ムービーは、観るだけで絶対に元気が出ること請け合いだ。ラストのタイトルロールのところも見所がいっぱいで楽しい。

□2000年 アメリカ映画 原題「BRING IT ON」
□監督:ペイトン・リード
□出演:キルステン・ダンスト、ジェシー・ブラッドフォード、他

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蝶の舌

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◆プチレビュー◆
すでに思い出の中にしか存在しない輝く夏の日々。切ない映画だ。

体の弱い8歳の少年モンチョ。恐る恐る初登校した小学校で彼が出会ったのは、優しく豊かな知識を持つ老教師グリゴリオ先生。モンチョの両親を始め、周囲から尊敬されるグレゴリオ先生に導かれ、教室や課外授業で訪れた森で様々なことを学んでいく。知識の吸収と共に、自然の営みや恋の芽生え、家族の絆を知るモンチョ。夏休みはどこまでも美しく楽しく、緩やかなリズムで大人への階段が続いていくはずだった。だが、時代はスペイン内戦勃発の激しい季節へと移り、モンチョ少年も否が応でもファシズムの嵐の中へとほうり込まれる。昨日まで信じていた価値観がもろくも崩れ、大人でも戸惑う時代。幼い少年が経験するには、あまりにも悲痛な出来事が起こってしまうのだった…。

美しい映像で綴る前半とは対照的に、後半は政治色が強い展開。軍事クーデターにより共和派の人々が次々に逮捕され、自分の身を守るために大切なことを見失っていく大衆の姿が、淡々と描かれる。「先生に服を作ってあげたことは黙っているのよ。」「でも、作ってあげたよ。先生も喜んでいた。」「ダメなの!それを言ってはいけないのよ。そんなことはなかったの!」この会話の意味を理解するには、あまりに幼すぎるモンチョ少年。

昨日まで慕っていた先生が共和派として逮捕され連行されるのを、石を投げて追う町の人々。そして周囲は遂にモンチョにも裏切りを強要する。「裏切り者!」「不信神者!」と叫ぶ人たちも明日は自分がどうなるのかも想像できない不透明な時代。その目に浮かぶのは不安と恐れか。同じ民族を2つに割る内戦は、こんなにも悲劇的なものかと思いしらされるシーンだ。

夏という季節は、輝く笑顔と同時にほろ苦い思い出を持つもの。他の季節が「やっと春が来た。」「冬将軍の訪れ」など主に始まりを感じさせるのとは違い、夏だけは終わりをも感じとることができる唯一の季節。「もう夏も終わりね。」とつぶやく時、胸に去来するのはどんな想いなのだろうか。思い出において、それは大人になるひとつのステップであることが多いものだが、このような歴史的悲劇に遭遇することで、幼年時代の終焉を唐突に迎えねばならないとは、なんと痛々しいことだろう。まるで身体の一部をもぎとられるような痛みと共に、モンチョ少年の夏は終わる。彼が最後に師に向かって叫ぶ言葉は、人間の絆とは、自由とは何かを考えさせられ、いつまでも余韻となって耳に残る。

グレゴリオ先生が口にする言葉はひとつひとつが平和へのメッセージだ。タイトルの「蝶の舌」は先生がモンチョに教えるエピソードで、物語全体の伏線となっている。内戦前夜、大人の世界をかいま見た幼い少年が経験する痛切な夏。スペイン内戦は映画や文学にもたびたび登場するが、やはりそれを経験した民族の立場から描くものには格段に重みがある。

□1999年 スペイン映画 原題「LA LENGUA DE LAS MARIPOSAS」
□監督:ホセ・ルイス・クエルダ
□出演:フェルナンド・フェルナン・ゴメス、マニュエル・ロサーノ、他

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ドリヴン

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◆プチレビュー◆
ゴールデン・ラズベリー賞ものの駄作と言われるが、けっこう楽しめるのはスタローンが脇に徹しているため。

ジミー・ブライは若き天才レーサー。有能だが情緒不安定な彼をみかねて、チームのオーナーは、自分の旧友でもあり、かつて花形レーサーだったジョー・タントを呼び戻し、ブライのコーチ役として復帰させる。ライバルや恋人を絡めながら、世界中を転戦する2人のそれぞれの成長とレーサーとしての戦いを描く。

とにかくスピード感が気持ちイイ。ノリのいい音楽も手伝って、時速400キロに迫るレーサーの視界を追体験できる映像は迫力満点。重さ1トンを超えるレースカーがスピンして宙に舞うド迫力のクラッシュシーン。真上から落下して大破するCG映像が見ものだ。シカゴの公道をレース並の猛スピードで突っ走る前代未聞のカーチェイス。観客はレーサーの目となるだけでなく、ドライバーの内面までにもひきずりこまれる。限界ギリギリのスリルをたっぷりと味わおう。

この映画、スタローン自身が脚本を書き、製作費集めにも奔走したそう。完成までに5年を要したという「ドリヴン」は、世代を越えた男たちの成長を、カーレースという豪華な世界で魅せてくれる。

アクション映画の王道を行くといっても過言ではないサクセスストーリー。起承転結をきっちり守る物語。読める展開。約束された結末。でもそれが妙に気持ちいい。スタローンも55歳、一人でがんばる主演よりも、もりたて役を楽しんでいる。それでいて、最後にはちゃんと彼の映画になってるところがスゴイ。

いろいろあっても悪い人物はいない映画だ。鼻っ柱の強い美人で、スタローンの元妻や、ジミーを裏切りそうな気配の兄さんも、最後には丸く収まる。もちろんベテランレーサーの心遣いのおかげで。こういう設定が甘く感じないのは、時速400キロで話が進むからか。ただ、スタローンの恋人役でスポーツジャーナリストの役の女優がちょっと地味なのがいただけないが。派手さをとことん追求して、見せ場も充分。結果はわかっているのに、ドキドキするクライマックスがたまらない。

モータースポーツというド派手な世界を背景に、物語の中でも外でも、ベテランと若手ががっぶりと四つに組むコラボレーション。幸いどちらかが土俵の外に投げ飛ばされることもない。「レースそのものを楽しめ。」とジミーを励まし、若いモンの恋の行方の心配もする、酸いも甘いもかみ分けたヤツ。アクションスターからの脱皮を目指すスタローンの一歩目はこの映画かも。1994年に事故死したブラジルの天才レーサー、アイルトン・セナに捧げるために、スタローンが製作、脚本、主演を兼ねた渾身の一作だ。

□2001年 アメリカ映画 原題「DRIVEN」
□監督:レニー・ハーリン
□出演:シルベスター・スタローン、キップ・パルデユー、エステラ・ウォーレン、他

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◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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