映画通信シネマッシモ


映画通信シネマッシモは、2018年4月をもって、終了しました。

ブログ終了にあたり、たくさんのあたたかいコメントをお寄せいただき、本当にありがとうございました。
皆さまの映画ライフに少しでもお役に立てたならこれほど嬉しいことはありません。
長い間のご愛顧に心より感謝いたします。

ノー・マンズ・ランド

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◆プチレビュー◆
反戦映画として視点がすばらしい。白旗を振っても味方の軍にさえバカにされる、シャレにならない状況をどう打開する?!

1993年、対立するボスニアとセルビアの中間点の塹壕に、両軍の兵士が取り残される。敵対する兵士チキとニノ、そして負傷して身動きがとれないツェラの背の下には地雷が仕掛けられていた。武器を奪い合う緊迫した状況下で、時折心が通い合う瞬間も生まれるが…。塹壕を一歩出れば両軍からの攻撃が待っている。無力な国連軍、スクープを狙うマスコミ。何のために戦うのかという答えさえも知らない彼らを、一体誰がどうやって救うのか?!

戦争映画といっても、勇壮な戦闘シーンもなければ、銃弾の雨や瓦礫の山も出てこない。もちろん登場人物に国の命運をにぎるミッションなどあるはずもない。晴れた日には、のどかに鳥が鳴き青空が広がる緑の野原。そこに、セルビアとボスニアの両軍がにらみあう場所ノー・マンズ・ランド(中立地帯)がある。物語の大半はこの中立地帯の塹壕の中で進行し、シニカルな笑いと不条理さを呼び起こす。

ついこの間まで同じ国民として暮らしていたもの同士がいつのまにか憎みあう状況は、気が付けば隣合わせの人間と殺し合っていたという恐ろしくも耐え難い狂気に等しい。両国の兵士たちはプロの軍人などでは無論ないし、もし戦場ではなく街中で出会っていれば友達になったかもしれないのだ。

敵同士で運命共同体となってしまった彼らに出口は全く見えず、救助を待つ間にも事態は刻々と変わり混迷を極めていく。塹壕の中のユーモラスなやりとりで笑わせると同時に、彼らをとりまく状況も皮肉をこめて痛烈に描いていく。両軍の中間地点で起きた珍事件に慌てふためき、仲裁もできず役に立たない国連軍。事なかれ主義の官僚組織に、仏人兵士が憤りを覚えるものの、彼も結局、上官の命令に背いてまでの行動は起こせない。特に日本では国連は絶対的な価値観とも言えるので、この描写はかなりショッキングだ。国連軍への失望感だけでなく、スクープを狙って右往左往するマスコミも笑い飛ばし、戦争に関わるすべてを批判する。

“ご近所戦争”とも揶揄される旧ユーゴの泥沼の内紛。戦争という重いテーマを日常的に描くことで、ごく普通の人間が昨日までの友人を憎み殺し合う狂気を、存分に表現しており、この若い監督の力量を感じ、また強い思い入れが伝わってきた。ユーモアによってさらに緊迫感を高める演出も素晴らしい。

あらゆる戦争に対して異議を唱えるこの映画の脚本は、時間と場所と登場人物が限定されていることで舞台劇化も可能と思われるほど優れていて、完成度の高いもの。無駄な登場人物やお涙頂戴のサイドストーリーが、一切ないところがいい。のっぴきならない状況をどう収めてくれるのか?思いがけない方向に展開してしまった途端に響く銃声。見る者にとって、あまりにもやるせない結末の密度は、限りなく濃い。

泣ける映画ではないし、勧善懲悪を感じるわけでもない。「傍観することは加勢することと同じ」という劇中の印象的なセリフは、誰が悪いのかという責任追及や、誰が始めた戦争なのかという分析にかこつけて、結局は何もしない罪を世界中に問うもの。

地雷の上に寝転んで、そこからみえる青空はいったいどう見えるのだろうか。外交よりも暴力が優先されたときに戦争は起こる。周囲の思惑が食い違う時には、多少の犠牲を生んで当然というご都合主義をも生む。この映画では、誰一人勝者はいない。ラストに残る深すぎる余韻は、このところ観た戦争映画では突出した出来栄えで、観客は真実とともに取り残されてしまうことだろう。

□2001年 フランス・イタリア・ベルギー・イギリス・スロベニア合作映画
□監督:ダニス・タノヴィッチ
□出演:ブランコ・ジュリッチ、レネ・ビトラヤツ、フィリプ・ショヴァゴヴィッチ、他

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アイ・アム・サム

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◆プチレビュー◆
あまり似てない父娘だが、一緒にいるだけで幸せそう。実際はこんなに甘くない事は十分に承知だが、それでも二人を応援したくなる。

7歳の知能しか持たない知的障害者サムは、コーヒーショップで働きながら一人娘のルーシーを懸命に育てている。しかし、福祉局から親としての養育能力がないと判断され、ルーシーは施設で保護されることに。一緒に暮らしたい。ただそれだけを願うサムは、愛する娘を取り戻すため、裁判で闘うことを決意する…。

この映画は評価が分かれるだろう。批判的な意見が多いだろうことも簡単に想像がつく。知的障害、親子愛、無理やりひきさかれる展開に裁判と泣かせどころが満載なのも、見る人によってはあざといと感じるに違いない。父娘を演じる役者が上手すぎることも逆効果。物語を現実にあてはめると“こんなに上手くいくわけがない!”。

このテの映画の評価を分ける一番大きな要因は、観る人の映画に対するスタンスで、映画に現実を投影するか、夢を映し出すかの違い。同じ作品を観るのにも、そのときの自分の年齢や置かれた状況、社会情勢などによって全く感じ方が違ったりするし、当日の気持ちのコンディションにもよるところが大きい。

サムをとりまく人々はいい人ばかりだが、実は結構欠点もあり悩みを抱える普通の人。泣けることばかりが評判のこの作品の隠れたウリである笑いに気付かせてくれる。ミシェル・ファイファーのキレっぷりやサムの仲間の障害者グループのやりとりなど、遠慮せずに笑ってみよう。映画ネタも満載で、マニアックなファンサービスもある。ビートルズナンバーは全編に渡って重要な役割だ。

いつも一緒にいたいと純粋に願う親子と、仕事は出来るけど家庭内には問題がある女性弁護士、気のいい仲間に、これまた優しい里親。福祉局の言うことも筋が通っている。知的障害の親と人並み以上にしっかりした子供という設定で、なんとか成り立っているものの、この話は周囲の人の好意によって成立していることには変わりはない。いい人ばかりの登場人物に、実際の障害者の人生はこんなに甘くはないという声もあるはずだ。確かに知的障害を持つ親が親権を争うことが物語の軸になっていて、重すぎる設定であるだけに、そっちに目を奪われがち。でも、この映画の隠れたテーマはもっとシンプル。完全な親はいないし完全な子供もいないということ。こう考えると物語を観る目も変わってくるはずだ。

残念なのは、福祉局が一方的に悪者に描かれていること。できるだけ障害者も一般社会と関わりをという考え方があるからこそ、サムが周囲の人々の助けを借りながら生きていく“甘い結末”にも、好感が持てる。であれば、福祉局の役割も良い方向に向けることができたはず。自分の知能が父親を追い越してしまうのを恐れた娘が勉強を拒むのをみかねた福祉局が手をさしのべるのは、一般的には善行と映るし、そのほうが娘のためには幸せかも…と思った観客も多いはずだ。このあたりの脚本にもうひと工夫ほしかった。父娘を引き裂き対立するだけでなく、歩み寄る設定が展開できなかったのか。

サムとルーシーの父娘は、最後には社会の思いやりと周りの人の助けを素直に借りることで、観客が“こうであってほしい”と願う形そのままに生きていく。サムの真摯な愛情に、リタを初めとする周囲が自分の親子関係を見つめなおすのも、定番ながら好感がもてる展開。世の中の厳しさを十分すぎるほど知っている私たちは、この甘い結末と絵に描いたようなヒューマニズムの実在が難しいことをちゃんと知っている。超楽観的なハッピーエンドは、裏を返せば“こうはならない現代社会”への告発なのだ。だからこそ、このラストに満足して涙するのかもしれない。

□2001年 アメリカ映画 原題「I Am Sam」
□監督:ジェシー・ネルソン
□出演:ショーン・ペン、ミシェル・ファイファー、ダコタ・ファニング、他

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ワンス・アンド・フォーエバー

We Were Soldiers [DVD] [Import]We Were Soldiers [DVD] [Import]
◆プチレビュー◆
ベトナム戦争を美化するなどもってのほか。こういう作品は許せない!

1965年、米軍のハル・ムーア中佐率いる部隊は戦地イア・ドラン渓谷で北ベトナム軍に包囲される。それは泥沼化するベトナム戦争の始まりを告げる激戦だった。UPIの戦場カメラマン、ジョー・ギャロウェイは米軍に同行し、地獄のような戦いをカメラに収めるが、そこで敵軍のベトナム兵の思いをも知ることに。戦場で戦う男たちがいる一方で、残された家族も試練と戦っていた…。

21世紀最初の悲劇である9.11テロ事件。この大事件以来、アメリカ映画は確実に様変わりした。強いアメリカ、正義の国家が“悪”をやっつけるという構図が求められ、数多くの戦争映画が製作されたが、テロ以後の風潮のどさくさに紛れて、よりにもよってベトナム戦争を美化するとは…。

この映画の背景となる時代は1965年。つまりベトナム戦争が始まってまもない頃だというところがミソ。まだ、兵士も軍も国家も戦う意義を熱く感じていた時代なので、登場人物に、後のベトナム戦争ものに見られるような反戦気質や迷いはない。実際に400名の新兵を率いて戦ったハル・ムーア中佐と戦場カメラマンのジョー・ギャロウェイの共著によるノンフィクションはベストセラーとなり、兵士たちの人間性と家族愛を全面に打ち出した物語は、原作同様、映画館でも涙をさそうかもしれない。

兵士たちは頑張りました。敵もたいしたもんでした。留守を守る家族もりっぱでした。みんなみんなエラかった。この八方美人的展開はいったいナンだ?!完全に視点がぼやけてしまっては、せっかくリアルに描いた激しい戦闘シーンも活きてこない。

さらに、過酷な戦闘とは裏腹に、戦争と人間の狂気がまったく描かれていないのはなぜ?仕方がないので、兵士の家族の不安や、愛する人を失った悲しみに力点を置き、更には敵兵の家族までも範疇に入れて描く。「戦争と家族」を平行して描くやり方は、従来の戦争映画と一線を画すもので、その意欲は評価しよう。でもラストのセリフは、「国のために戦ったんじゃない。戦友たちのために戦ったのだ。」とくる。ならば、家族愛ではなく、兵士の友情を描くべきだろう。

メル・ギブソンの背後に見える“家族と国家と正義のために”というメッセージは、建国当時の時代ならとにかく、泥沼のベトナム戦争が背景だと、どうにもあざとい。敵も味方も家族を思う気持ちは同じと簡単に言うが、ベトナム戦争の最大の誤算はアジア人の価値観を理解できなかったことにある。ほとんど一方的にやってきて、結果的に大量虐殺と大規模生態系破壊を行って去っていったアメリカ人から「両国が共有した痛み」と言われても、ベトナム人が納得できるだろうか?

そんな矛盾だらけの物語の中でも印象的なエピソードと言えるのが、中佐の妻ジュリーが戦死した兵士の訃報を家族のもとに届ける場面。毎日、数が増える電報に、自分の夫のものがあるのではと怯えつつ、部下の命を預かって戦う中佐の妻である重圧と、夫の身を案じる不安で押しつぶされそうになりながら、死の配達を続ける姿には、さすがに目頭が熱くなった。

第一、第二次世界大戦、東西冷戦と、世界規模の戦争では負けなしのアメリカが、唯一黒星を喫したのがベトナム戦争。莫大な犠牲を伴って、その上敗北を味わった戦いを「意味のない戦争だったのでは?」と回顧するのが辛すぎるのは判るが、それでもその思いと折り合いをつけて「ディア・ハンター」や「地獄の黙示録」「プラトーン」などの力作を作ってきたではないか。それなのに、21世紀に突入して“負けはしたけどリッパに闘いました”じゃ、あまりにも非建設的だ。残念でならない。

□2002年 アメリカ映画 原題「We Were Soldiers」
□監督:ランダル・ウォレス
□出演:メル・ギブソン、バリー・ペッパー、マデリーン・ストウ、他

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バーバー

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◆プチレビュー◆
スタイリッシュなモノクロ映像。粒子も細かくソフトな画面で技術も高い。

1949年、北カリフォルニア。無口な床屋エドは漠然と人生に不満を抱いて暮している。ある男の持ち込んだ怪しげな儲け話に乗ったのも「何か」を変えたいと思ったから。早速妻の浮気相手に脅迫状を送り大金をせしめるが、思いもよらない事件が起こり、彼の運命は狂い始める…。

カラー映画が出始めた頃は、費用の問題で、低予算の映画は白黒と相場が決まっていたらしい。しかし現代においては、白黒映画はむしろ贅沢品。陰影に富んだスタイリッシュな映像はアート系の監督に好まれる。

この映画の主人公エドは、漠然とした不満を抱きながらも、来る日も来る日も髪を刈り続ける毎日を送っている。そんなエドがふと耳にした儲け話は、資金1万ドルで始めるドライ・クリーニングという、まったく新しい清潔産業。どう考えても怪しげな話なのに、エドがフラリと乗ってしまうのは、この時代のアメリカが高度成長期の真っ只中だったから。幸せさえもお金で買えると信じても不思議はない時代だった。エドの頭にぼんやりと浮かぶ明るい未来。「これでオレの人生が変わるかも…。」という希望的観測が、彼に妻の浮気相手への脅迫状を書かせる。それから先に起こる出来事は、時にはそんなバカな!と思うような偶然も手伝って、悲劇と喜劇が渾然一体の不条理で滑稽な犯罪劇へと昇華していく。とりたてて不幸なワケではないけれど、幸せも感じない平々凡々な小市民が持ったささやかな野心が、事態を悪い方へ悪い方へと導く。ギリシャ悲劇なみの運命の歯車で、主人公ががんじがらめになっていく様子は“さだめ”というしかない。

主人公エドの淡々とした独白で進む物語。まるで他人事のように事態を語る。詐欺に不倫に恐喝、複数の殺人、誤認逮捕や自殺、交通事故と、濃い要素がてんこもりなのに、いわゆる犯罪映画とは違う趣なのは、犯人探しではなく、犯人の人間像に重点をおいているから。犯人に“されてしまう”瞬間に漂う人々のあきらめのムードが、いかにも罪を隠し持って生きる小市民らしくて泣けてくる。人間の愚かしさや切なさが、ジワッと滲み出る世界に、人生の深淵を覗かせるコーエン兄弟の作品は、孤独と悲哀を知っている大人向け。皮肉なユーモアと乾いたタッチは、一市民の夢のはてと転落を冷淡で滑稽に描いている。

ゆるやかでセンチメンタルなベートーベンのピアノソナタ「悲愴」の調べにのって流れていく物語は、意識的にスローな映像が強調されている。小道具の質感が上手く表現されていて、ハラハラと舞い落ちる切った髪、ビシッとひびがはいるガラス、宙を飛ぶ車や空気中にフワ〜ッと拡がって消えるタバコの煙など、丁寧な描写が光る。テンポがスローになればなるほど、アイテムの描写が生理的で丁寧なほど、エドの心の空虚さと孤独が浮かび上がる。

人はときとして自分の分相応以上の夢を持つ。自分の実力を武器に良い方向に進めば、それは成功への道になるけれど、夢を買う手段がヤバい方法だと、途端に運命のしっぺがえしをくらうことに。平凡な人生を生きるものの一人としては、笑いごとではない。

平凡な床屋がささいな欲を持ったために辿る、皮肉な運命の悲喜劇を描く本作。ブラックな味わいが冴える悲劇と喜劇の合体に、人生の不可思議を見る。原題は“存在しなかった男”の意味だ。

□2001年 アメリカ映画 原題「The Man Who Wasn't There」
□監督:コーエン兄弟(ジョエル・イーサン)
□出演:ビリー・ボブ・ソーントン、フランシス・マクドーマンド、他

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少林サッカー

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◆プチレビュー◆
日韓W杯の年にぴったりの楽しい作品。おバカだが、おもしろい!

少林寺拳法を世界に広めることに情熱をかける青年シンは、かつての名サッカー選手ファンと出会い、その驚異的な脚力を生かして、サッカーを通じて少林拳を世に広めることを思いつく。シンは、かつて一緒に修行した仲間と共に、チームを結成し全国大会へ出場するが、そこには非情、かつ不死身のチームが待ち受けていた…。

少林寺拳法を世に広めるためにサッカーをするという不純な動機がまず、可笑しい。次に、少林拳とサッカーを組み合わせるという突飛な発想が斬新で、これまた笑える。この非現実を現実の映像にするのは、CGとワイヤーアクション。超人的なスピードで展開される非常識(!)なプレイの数々がスクリーン狭しと展開するのだ。そのくせ、冒頭のクレジットロールの部分は、高度なCGが当たり前のハイテク時代にいったいどこから探してきたのかと思うくらい平べったい稚拙なアニメで、それがまた妙に新鮮。映画を観る前から笑いがこみあげる。冒頭から、こんな形で観客をとりこにしてしまうとは。ブルース・リーを意識した音楽がまたイイ!

かつての名プレイヤーが罠により引退、不遇の日々を送るが、驚異的な脚力の青年とともに、少林拳法を取り入れた驚きのサッカーで、かつての仲間とともに、少林チームを結成。トーナメントを勝ち上がるが、サッカー界の黒幕率いる最強の敵デビルチームと対決する、というのが大筋。まんじゅう屋の女の子ムイは実は太極拳の使い手で、彼女とのほのかな恋のエピソードがちょっとしたスパイスとなってはいるものの、コテコテのギャグとともに進む話は、しろうとサンでも読める展開だ。何しろ試合の場面が凄いのと徹底した娯楽っぷりで、細かいことは無視して突き進む。

チャウ・シンチーが「ヘンな顔の人を集めるのに苦労した」というだけあって、登場人物のキャラクターがユニーク。どこからともなく流れるお経の中で、炎につつまれて覚醒し、瞳に燃えた炎のためか流れる雲がそうさせたのか、とんでもないプレーを次々に繰り広げる。彼らの荒唐無稽な技に思わず唖然。

今は、アイデアさえあればそれを全て形にできる時代。CGを駆使した妙技の数々は、有り得ないからこそ心底楽しい。ヴィッキー・チャオが披露する、太極拳式まんじゅう作りは抱腹絶倒だ。彼女が演じるムイは、最後は大変身するが、中国四千年のエステの技術に不可能はないようだ。

劇画チックな展開を思い切りデフォルメした映像の数々は、笑いを通り越して感動すら覚える。香港映画界の美人女優がなりふりかまわぬ姿で登場し、笑わせてくれた後はお待ちかねの少林チームとデビルチームの対決。子供でもわかる“悪いヤツ”役のデビルチームは、現代科学の粋を集めたトレーニングと筋肉増強剤で殆ど不死身。一人、また一人と倒れていく少林チームのメンバー。フィールドが血みどろの戦場と化し、少林チームが負けを覚悟したまさにそのとき、驚くべき人物がスタジアムに現れる。行けっ!少林チーム!ラストのカタルシスに向けて、炎のゴールを決めるのだぁ〜っ!

信じられないほどおバカなのに、胸のすくようなスポーツ・エンターティメント。香港映画ならではのベタな笑いも満載で、サッカーのルールなんか二の次三の次。ある意味、サッカーになってないおかげで、ルールを知らない人でも十分に楽しめるはずだ。熱いハートが勝利へ繋がる。夢と希望の超ド級エンターティメント。例え邪道といわれようと、お勧めしたい。こんなにハイレベルなコメディは、久しぶりだ。少林寺拳法とサッカーの融合?!香港発、空前絶後のスポーツ・コメディ。この痛快なサッカー映画で大いに笑おう!

□2001年 香港映画 原題「少林足球」
□監督:チャウ・シンチー
□出演:チャウ・シンチー、ヴィッキー・チャオ、カレン・モク、セシリア・チャン、他

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アリ

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◆プチレビュー◆
常に挑発的で、決して守りに入らないアリ。冒頭のブルースにシビレた。

1964年、22歳でボクシングヘビー級チャンピオンになったカシアス・クレイは、名前をモハメド・アリに改名。ボクサーとして通算61戦56勝37KO5敗という驚異的な数字とは裏腹に、彼の人生は、栄光と挫折そのものだった。イスラム教への改宗、ベトナム戦争への徴兵拒否、不当に剥奪されたボクサーの資格を取り戻すための裁判と、苦難の日々がアリを待ち受けるが、彼は常に闘い続ける…。

ボクシングというスポーツは映画になりやすいのか、昔から数多くのボクシング映画が作られてきた。この映画は過去最高と言ってもいい選手モハメド・アリが主人公。未だ存命の実在の人物、スポーツ界のカリスマを描くのは、さぞ難しいだろうと予想していたが、やはり、従来のボクシング映画とは一味違った伝記映画。極力ドラマ性を廃し、ドキュメンタリータッチに徹している。

映画が描くのは若干22歳で世界ヘビー級チャンピオンになった1964年から、王者ジョージ・フォアマンを破って復活を遂げる1974年の“キンシャサの奇跡”まで。この、時代的にもアリ個人的にも複雑な状況を、M.マン監督はクドクドと説明せずに、ごく簡単に描くからすごい。音楽はブルースが中心だが、このオープニングの上手さと音楽の良さで、ぐっと引き込まれる。

元来、ボクサーといえば寡黙な人物が多い中、アリは有言実行を遥かに越えて、大ボラ吹きと呼ばれるくらい口が達者。相手を挑発しながらボクサーとして不動の地位を築いていくが、ベトナム戦争徴兵拒否が、彼の運命を狂わせる。劇中でも「敵は政府だ。」とはっきり口にするが、宗教的な理由や正義感などではなく、一人の人間として「恨みのない人間を殺す理由はない。それに自分は自由に生きたいんだ。」というシンプルな思いからの言動に見えた。だからこそ、とことんこだわれたに違いない。独特のトークと恐れを知らない挑発的な言動は、いやでもリング内外での闘いを彼に強いた。

ウィル・スミスは身も心もアリになりきったと言うだけあって、見事な肉体改造。ヘビー級の選手にしては驚くほど身が軽いアリの軽やかなフットワークは“蝶のように舞い、蜂のように刺す”という言葉そのもので、音楽界出身で抜群のリズム感を持つ彼を起用したM.マン監督の眼力のすばらしさを実感。

ドキュメンタリータッチは観客におもねる部分がなく、サービス精神にも欠けるが、個人的には好きなスタイル。アリという人物を描くのにも適しているように思う。アリの人生と交差させて描かれる社会情勢は、マルコムXやキング牧師の暗殺、公民権運動の高まりや、人種差別問題、ベトナム戦争、ザイールの国家の思惑など様々。そのときアリは何を思っていたのか、観客自身に考えさせる。つきはなしたアプローチが逆に新鮮だ。

雨のなか行われたアフリカ、ザイール(旧ベルギー領コンゴ)のキンシャサの復活試合は、今なお語り継がれる名勝負で、単に王座奪回というだけでなく、決して信念を曲げなかった男の自分自身に対する闘いの決着の場だ。体力の衰えや不安と闘いながら望んだ勝負に答えが出たとき、空から慈雨が降り注ぐ。自分の信じる正義のために、時代や政府という巨大な敵と戦ってきたアリの生き方は、たとえ欠点はあっても、スポーツという枠を越えて人々に訴えかける何かがある。

伝説のボクサー、モハメド・アリが自らの信念を貫き通す姿を描く伝記映画。常に闘い続けた男アリ。モハメド・アリはイスラム語で“賞賛されるべき人”という意味だ。

□2001年 アメリカ映画 原題「ALI」
□監督:マイケル・マン
□出演:ウィル・スミス、ジョン・ボイド、他

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パニック・ルーム

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◆プチレビュー◆
フィンチャーならもうひとひねりほしかったか。それでも出来は悪くない。

NY。裕福な夫と離婚したメグは、娘サラと二人で大富豪が残した豪邸に引っ越してくる。しかし、越してきた当日に、富豪がこの屋敷に隠した財産目当てに3人の正体不明の男達が侵入。母娘はパニック・ルームと呼ばれる緊急避難用の部屋に身を隠す。しかし、犯人らの探すものは、この部屋にあった。屋敷内を破壊しながら、母娘を追い詰める犯人たち。ドアは内側からしか開かないが、出ると命の危険が。はたして母娘は敵を撃退できるのか…?

デビッド・フィンチャーと思うと何か物足りない。彼特有の不条理さや、きっとものすごい“何か”が用意されていると期待してしまうが、本作はサスペンスの王道を行くが如くの展開だ。そこがこの映画がいまひとつ物足りなく感じる理由なのか。

富豪の元住居に作られた緊急避難用の密室は、パニック・ルームと呼ばれる難攻不落のスペース。隠し財産目当てで3人の悪いヤツが屋敷に侵入してくるが、これが、なんともマヌケな泥棒で、ほとんど行き当りばったりの犯行に近い。この3人のキャラはくっきり描き分けられていて、メリハリがある。富豪の身内で財産分与に不満があるヤツ、借金を抱えてやむを得ず参加したパニック・ルームの設計者、飛び入りで参加した正体不明の男。飛び入り参加っていうのがそもそも疑問だが。

侵入者の目的の謎やパニック・ルームの中でいかに敵と攻防するかを描くかと思ったらそうでもない。出たり入ったり、時には中に入るメンバーが入れ替わったりしながら、極限状況下における心理戦を繰り広げる。10歳の娘サラは、実は糖尿病を患っていて、一定時間毎にインシュリン注射が必要な身体。緊迫感がある設定だが、この娘、反抗期なのか根っからクールな性格なのか、あくまで冷静だ。しかし、命がけで戦う母の姿を見ているうちにうっすらと母親メグに対する尊敬の念が芽生えたりする。

仲間割れや屋敷への訪問者等、お約束の演出を駆使して、物語は解決へと向かうのだが、ジョディ・フォスターの奮闘がすごい。彼女のがんばりがこの映画を救っていると言ってもいい。この時、ジョディは実際に妊娠中。実生活でも二児の母となったジョディ扮するメグは、まさに背水の陣で娘を守ろうと戦うのだ。その姿はほれぼれするほど原始的で、身の周りにある小道具を思いつく限り使って敵を撃退し外部と接触を試みる。知性と野性を感じさせる熱演だ。一方で、自分を捨てて若い女に走った夫と離婚した寂しさを、バスタブで声もなくすすり泣く無言の演技で表現する等、相変わらず繊細で奥深い演技も披露してやっぱりこの人は上手い。

フィンチャーの映像表現は、密室で場所が限られているものの健在で、雨が降りしきる夜の景色や、ダークな色合いの室内など、危機感を盛り上げる役目を果たしている。ピカイチの映像美はオープニングのタイトルで、NYの街のビルの外壁に浮かび上がるスタッフクレジットは、まるでそのまま広告のように見える。これほど洗練されたタイトル・バックは久しぶりに見た。

敵の侵入を防ぎ、身の安全を確保する部屋パニック・ルーム。アメリカでは、犯罪、テロ、誘拐等の暴力事件が起こるたびに、武装した人々が家に侵入した際に逃げ込む安全な場所を作る人が増えているそう。しかし、外部からの攻撃を完全に防ぐ場所は、自らの身を脅かす可能性もある諸刃の剣でもある。実際に、この映画の中で描かれるパニッ
ク・ルームも“完全な”密室ではない。閉鎖された家を舞台に侵入者と戦う映画は今までもあったけれど、そこには、絶対に安全な場所などなかった。今回はそれがあるけれど、所詮隠れていては解決しない。やっぱり出てきて闘わなくては!ということだ。それは「ホーム・アローン」の少年だって知っている。

□2002年 アメリカ映画 原題「PANIC ROOM」
□監督:デビッド・フィンチャー
□出演:ジョディ・フォスター、クリステン・スチュワート、フォレスト・ウィテカー、他

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ドリアンドリアン

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◆プチレビュー◆
果物の王様ドリアンは、割るのに一苦労。新感覚の女性映画だと思う。

香港で売春をしながら金稼ぎに専念する娘イェン。観光ビザで香港に入国した彼女は、大金を手に故郷の中国東北部へ戻る。彼女が金銭を必要とする理由は、離婚して自立するためだったが、いざそうなってみると進むべき道を見失い、迷ってしまう。そんなとき、香港で知り合った少女ファンから彼女宛に小包が届く。中には、強烈な匂いを放つ南国の果物ドリアンが入っていた…。

中国北部から香港に出稼ぎに来た女性イェン。それはもちろん貧しさ故のことで、商売も売春というから、なんだか不幸な女性、耐える姿を想像したくなるけれど、若干21歳のイェンには、そんなかげりは微塵もない。体を張って生きるとは、まさにこのことで、とにかくバイタリティ溢れる姿に圧倒された。商売のときは別として、色気もへったくれもない。住んでる部屋はきたないし、田舎出身の素朴さもない。お客に出身地を尋ねられるたび、上海、四川、湖南、地元よと、男たちを煙に巻く。“食べて、売る”動物なみの行動パターン。派手な化粧と露出度の高い服で、ボディガードのチンピラをひきつれて、路地を闊歩する。こんな風景が良く似合うのが猥雑な街、香港。人種も多様な地元住民は、皆、たくましい。前半は、南の土地香港でのイェンの割り切りとパワーに圧倒される。後半は一転して、雪が舞う中国東北部が舞台。

香港人と、返還に伴う悲喜劇を描き続けたチャン監督だが、この映画では、香港以外の場所からやってきて、街に寄生する人々を主役に据えたのが新しい。都市生活の現実と都会への憧れを、前後半で明確に対比させる。女性が主役なのも初めてだ。香港と大陸を舞台に、人生に迷い生き方を模索する若い女性を描く。今までにない、たくましく新しいヒロインの登場だが、女性映画らしくないところがミソだ。

対比するものは他にも沢山ある。夏の香港の騒々しい雑踏と中国北部の厳しく静かな冬。同じ大陸でも、北部からきたイェンと南からきたファン。主人公イェン本人の、香港での派手さと故郷での落着き。そして、とんでもない悪臭なのに、一度食べると忘れられないとろける甘さのドリアン。見た目も良くないドリアンの美味は、経験しないと解らない。主人公イェンのキャラクターを象徴し、彼女の人生も見た目と違うものであることを示す役割を持つドリアンは、この映画のもう一つの主役と言えるだろう。

前半のシンプルさに対し、後半、急に登場人物が増えるのがやや煩雑で、少し惜しい。イェンは、自分の希望と環境の中で、ベストな人生をおくるため、前向きに試行錯誤する自尊心の強いヒロインで、最後に道を選ぶ彼女の顔は吹っ切れている。稼ぐことより生きることの大切さ、難しさを、イェンと一緒に観客も味わうはずだ。夫、友人、家族、親戚など、しがらみを感じながらも、イェンが見出す新しい人生は、たとえ苦しくても、自分の心に忠実な道。見た目とは違う人生の奥深さに気付き、ひと回り成長したヒロインの姿が清々しい。周囲との触れ合いや心の成長の媒介になってくれたのは、地雷のようなドリアンだった。

□2000年 香港映画 原題「Durian Durian」
□監督:フルーツ・チャン
□出演:チン・ハイルー、マク・ワイファン、他

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エトワール

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◆プチレビュー◆
美しさの影に血と汗と涙がある見事な生き様。ダンサー達の姿に感動。

300年の歴史を誇るバレエ界の名門パリ・オペラ座に初めてカメラが入り、ダンサーたちの過酷な生存競争や血の滲むような努力の日々、華やかなステージの舞台裏を、丁寧に追う秀作ドキュメンタリー。世界最高峰のダンサーたちのインタビューも盛り込み、人生とバレエの狭間で揺れる心情と悩みを浮き彫りにしていく。

バレエというと一般の人にはなじみが薄い世界。しかも伝統と格式のオペラ座を舞台に描くこのドキュメンタリーは、日本で言うと、歌舞伎や相撲の舞台裏を映画にしたようなものだ。めったに目にふれることのないバックステージものと言ってもいい。

ダンサーたちの情熱と、人間味にあふれる姿をとらえている本作では、バレエそのものが人生という特異な世界に生きる人たちが主人公。その過酷な競争社会や自己管理は、想像を絶する。タイトルの「エトワール」とは、5階級に分かれたオペラ座のダンサーの最高位で、その地位を巡って、厳しい生存競争が繰り広げられる。エトワールを頂点に、プルミエ・ダンスール、スジェ、コリフェ、カドリーユで構成される階級社会。同僚のアクシデントは即自分のチャンス。閉鎖された世界に長い間一緒にいる人間関係。同じメンバー=ライバルという中で過ごすため、心からの友人などいない、本当は孤独なんだとつぶやくダンサーもいた。その一方で、14〜15才で入団し、定年が40〜45才、つまり30年近く同じ顔ぶれの中で生きていくこの小社会を、「友人であり、ライバルであり、家族でもある」と捉えるものもいる。

ダンサーの超人的な美技や華麗な舞台だけではなく、群舞のダンサーが汗まみれで踊る姿や、肩で息をし、「苦しい」と叫びながら舞台の袖に倒れこむ姿も映しだす。足のマメがつぶれて、抗生物質を飲みながらも晴れやかな笑顔で舞台に立つ。何が彼らをそこまでさせるのか?「バレエを愛するという表現では弱い。バレエを生きているの。」ここに答えがある。

世界中のバレエ・ダンサーたちの憧れの頂点を極めた天才たちが、ふとひとりの若者に戻る瞬間が興味深い。バレエへの熱い想いと冷めた視点が同居する。16年もエトワールを務めるマニュエル・ルグリは、「エトワールという言葉に特別の意味はない。僕の夢はただ踊るだけ」と話す。また、元エトワールで現バレエ教師のギレーヌ・テスマーは「ここに弱者の居場所はない。特殊で厳しい世界。」と言いきる。ダンサーたちが営むストイックな生活と自己管理は、バレエへの情熱と、競争、加齢、けがへの不安から。しかも、オペラ座の組織そのものが、このダンサーの不安や恐怖心をも組み込んだシステムになっているところが驚愕だ。

人間関係、栄光と挫折。ステージに立つその瞬間がダンサーたちの人生のハイライト。各シークエンスの最後には、画面を静止させ、同じ場面を写したキメの粗い白黒画面を挿入、そのシーンはドガの絵画を連想させる映像美で、目に焼きついた。

人間としての資質や力に限って言えば、人は平等ではない。だからこそ、競争という考え方も生まれてくるし、そこに美しさや達成感も見出せるのかもしれない。バレエ・ダンサーの真実を、温かく尊敬の眼差しを持って、しかし容赦なく映し出したこのドキュメンタリー。一つの道を極める人間の姿とは、なんと気高いものだろうか。エトワールとはフランス語で“星”の意味だ。

□2000年 フランス映画 原題「Tout pres des etoiles」
□監督:ニルス・タヴェルニエ
□出演:マニュエル・ルグリ、ニコラ・ル・リッシュ、モーリス・ベジャール、他

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アザーズ

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◆プチレビュー◆
見開いた青い目がこぼれ落ちそうなニコールの美貌が印象的。「シックス・センス」より公開が先だったら…、と悔やまれる。

1945年の英国。孤島の古い屋敷に住むグレースは、出征した夫の帰りを待ちわび、極度の光アレルギーの二人の子供と、閉め切った室内で孤独に暮らしている。ある日、働き口を求めて訪ねてきた3人の男女を召使として雇うが、その日を境に屋敷内では怪現象が起き始める…。

本作は久しぶりのゴシック・ホラー。このスタイルでは映画史上この人の右に出るものはないという巨匠アルフレッド・ヒッチコックの影響が深く見て取れる。映画全体を包む上品さ。流血や死体、暴力などを使わずとも、恐怖を表現することは可能なのだ。但し、ラストに全てが明白となる現実主義者ヒッチコックとは、一味違うテイストがあるのがアメナバール流。

最初にその“存在(アザーズ)”に気付くのは子供達。彼らが感じる何者かの存在を絵に描いて見せるが母親には信じてもらえない。ここで母親と子供たちの溝が少し描かれるが、これはラストの伏線でもある。

「シックス・センス」ばりのおちがあると言ったら、ネタばれになってしまいそうだが、この映画はさらにひとひねりしている。あとから聞いた裏話では、アメナバール監督は「シックス・センス」よりも前にこのシナリオを書いていたとか。先をこされて、さぞがっかりしただろう。

この映画、ホラーであると同時に観客をだますトリッキーな作品でもある。子供たちだけが感じる恐怖や夫の帰還、3人の召使が隠す屋敷内の墓、屋根裏にあるなぜか死んだ人の寝姿だけを集めた写真などは、エンディングで全て納得。映画の終盤で明かされる母親グレースの行動が衝撃的だ。あえて厳しいことを言わせてもらえば、子供を心から愛する母親が、なぜそういう行動に至ったかというその部分を、もっときちんと描いてほしかった。

子供達を深く愛していながら、それをうまく表現することができないグレース。題名の「アザーズ」がシンプルでとてもいい。他の何か、別の世界、人間には判らないエネルギーなど、いろいろな含みを感じさせてくれるタイトルだ。

□2001年 アメリカ・スペイン・フランス合作映画 原題「The Others」
□監督:アレハンドロ・アメナーバル
□出演:ニコール・キッドマン、クリストファー・エクルストン、他

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