映画通信シネマッシモ


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

シーズンチケット

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◆プチレビュー◆
悪ガキ、ジェリーとスーエルが魅力的。悲しくも可笑しい、そして心あたたまる佳作。

舞台はイングランドのとある町。15歳のジェリーと17歳のスーエルは学校にも行かず、悪さばかりをして毎日を過ごしている。貧しくつらい現実を生きる2人の夢は、ごひいきの地元サッカーチームの試合をいつでも生で観戦することができるシーズンチケットを手に入れること。一人500ポンドとかなり高額なこのチケットをなんとか手に入れるため、悪知恵をしぼりながらがんばる2人。だが、もう少しで目標金額に達成というところで家族に暴力を振るうジェリーの父親からお金を盗まれる。愕然とする二人は遂に銀行強盗に及ぶが…。

主役の2人の少年、頭のきれる15歳のジェリーと太っちょでお人よしの17歳スーエルのコンビが最高だ。映画のカギとなるシーズンチケットは年間を通して席が確保されるもので、商業的な理由による買占めが多い。値段もさることながら、コネがなくては入手困難なので確実にサッカーが観戦できる以上にステイタスとしても重要。劇中でジェリーは、このチケットを持つことで手に入れることができるものは「敬意」ときっぱり言い切る。

ジェリーの家庭は、暴力を振るう父親を避けて、姉と母とで転居を繰り返している。学校の勉強より、社会での適応性に優れたジェリーは、ろくに学校にも行っていないが頭が良く、家族を愛していて、それが逆に切ない。ちょっと頭の弱いスーエルは、これまたボケかけたおじいちゃんと2人暮らし。両親の顔は覚えていない。現実はつらいことばかりだけど、あこがれのシーズンチケットのためにメゲずにがんばる2人が好感が持てる。稼ぎ方にはやや問題ありだとしても。

喜劇と悲劇の混在するストーリーの中で、ジェリーが語る初めてのサッカー観戦のエピソードが心に残る。それはとても寒い日で、父さんと2人で初めて試合を見た。父さんは自分のコートで僕の体をくるんでくれて、暖かで幸せだった。ハーフタイムに買ってくれた紅茶には、砂糖が2つとたっぷりのミルクが入っていて、あれこそ世界一の紅茶だ…。父親との美しい思い出など持たないはずのジェリーが噛みしめるように語るこの思い出の真実は、実に切なく胸に響く。

2人が応援するチームはイングランドに実在するニューキャッスルユナイテッドというチーム。アラン・シアラーという同チームのスター選手が本人の役で出演している。ヨーロッパや南米のサッカーに対する尋常ではない入れ込みようを理解してみると、この映画をもっと楽しむことができるはずだ。ライバルチームへの異常なまでの敵対心がこの映画でもおもしろく描かれていてジェリーとスーエルもそのあたりの掟には忠実だ。

せっかく貯めた貯金を盗まれ、何もかもうまくいかず、思い余って銀行強盗。もちろん捕まっておなわになるのだけれど、この二人、最後にはちゃーんとあこがれの「チケット」を入手する。そこは誰もがうらやむとびきりの席。ミルクたっぷりでアツアツの紅茶だってある。さて、どうやって?それは見てのお楽しみ。涙と笑いの中にもリアルな現実が浮きぼりにされていて、実は考えさせられる。

□2000年 イギリス映画 原題「The Season Ticket」
□監督:マーク・ハーマン
□出演:クリス・ベアッティ、グレッグ・マクレーン、他

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初恋のきた道

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◆プチレビュー◆
チャン・ツィイーの魅力全開。ロング・ランも納得の秀作。ベルリン映画祭銀熊賞受賞。

華北の美しい村に都会で働く青年が帰ってくる。父の訃報を聞いて帰郷してみると、年老いた母は伝統の葬儀をすると言って周囲を困らせている。病院から故郷の村までの長い道を、人を雇って、父を背負って帰ると頑なに言っているのだ。その様子を見ながら、息子は自由恋愛が珍しかった当時の父と母の恋物語を思い出していた…。都会からやってきた青年教師に恋した18歳の少女。その恋心は手作りの料理とともにやがて彼のもとに届く。だが、時代の波「文革」が押し寄せ、二人は離れ離れに。少女は町へと続く一本道で、来る日も来る日も愛する人を待ち続ける…。

中国とアメリカの合作である本作は、中国映画の伝統である詩的な物語で、愛と家族がテーマ。美しい四季を背景に、純粋無垢な少女の初恋が瑞々しく描かれる。春の訪れや黄金色の麦畑、丘陵に続く一本道、厳しい吹雪の冬さえも、1枚の絵のように美しい。

「愛と感動」のアメリカ映画を見慣れた私たちにとって、初恋を実らせるという、いわばビギナーズラックのような出来事を描く映画には、普通は多少の困難がつきもの。しかしこの映画にはそれはない。村では初めてという二人の自由恋愛を、村人が妨害するかと思えば、そんなことは誰もしない。では親が反対するかと思えば、最初はディの老いた母が心配はするものの、実は娘の恋の成就を心から願っている。ライバルの存在なども、むろんない。時代の荒波の文革で、村を離れる青年を追うディの姿は涙を誘うものの、二人の本格的な恋の成就の説明は字幕のみで、それもあっさり1〜2行。こうして見ると何故あんなに泣かされてしまった映画なのか不思議なほどだ。

ロングランの人気と、観た人にしかわからないな感動の理由は、ズバリ、この映画のシンプルさにある。親しみやすいメロディーと、初恋に全力投球で取り組む少女の一途な思いだけを武器に、この映画は進むのだ。むろん自然描写の美しさはあるが、相手の青年を描くことさえ最小限に抑え、ひたすらディだけを描く。これがいいのだ。だからこそ、最後の葬儀の場面が胸に響く。小さなエピソードを丁寧に描くことで、観るものを徐々に引き込んでいく。監督の確かな手腕を感じた。

ディの作る料理がクローズアップされていたけれど、むしろ、印象に残るのはディの着る赤やピンクの服とヘアピン。モノが溢れる日本の女の子なら、もらったら逆に怒りそうなくらい安っぽい赤のヘアピンを誇らしげに髪に飾り、似合うと折り紙つきの赤のチャイニーズ風はんてんでおしゃれする可憐なヒロイン。

現在をモノクロ、過去をカラーという、通常とは逆の手法をとって綴られるストーリー。美しい思い出を持つ人のみに許される色彩表現だろう。青い小花の碗だけが恋人たちの気持ちを知っている。一本の道から生まれ、40年後に同じその道をたどって帰る二人の変らぬ想い。この感動の震源地は中国だ。

□2000年 中国映画 原題「我的父親母親」
□監督:チャン・イーモウ
□出演:チャン・ツィイー、他

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クイルズ

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◆プチレビュー◆
見る前はミスキャストだと思ったが、ラッジュはなかなか色っぽい。太めのケイトはサドに翻弄されるエロい場面が上手かった。

精神病院と監獄でその人生の大半をすごした作家、マルキ・ド・サド。サディズムの語源となったこの反骨精神に溢れた男の晩年を描く。その退廃的で卑猥な内容から、発禁処分を受けながら、権力に屈することなく挑発的な作品を世に送り出す。禁じられれば禁じられるほど、書くことへの執念が燃える。周囲の人間を少しずつ虜(とりこ)にしていくサド侯爵。だが、遂に彼を監視する目的で、精神病院の責任者が新たに送り込まれ、彼は窮地にたたされる。サドの書くことへの執念は、はたしてどのような結末を迎えるのか?

これだけ主役、脇役ともに芸達者が揃う映画も久しぶりだ。特にジェフリー・ラッシュはすごい。本当は、ちょっとミスキャストかなと思っていたのだ、観る前は。退廃的で猥褻なサド侯爵を演じるなら、もうちょっとツヤのあるタイプの俳優の方がいいのでは?ラッシュは上手いが、色気が足りない感じがするし。しかし、観てみたら、イイんだな、これが!あの鬼気迫る感じはまさにラッシュならでは。色気も意外とあったりするのだ。

ペンと紙を奪われ、書くことを禁じられたサドはまずは、ワインと鶏肉の骨を使ってシーツに書く。それも禁じられれば、自らの指を傷つけ、その血で自分の衣服に書く。衣服を奪われれば、獄中の狂人と小間使いのマドレーヌを使って口伝えで文章を伝える。そして、それが原因で恐ろしい事件が起き、拷問の末、遂に地下牢に全裸でつながれれば、自らの排泄物で壁に書く。まさにすさまじいまでの情念なのだ。18〜19世紀に言論の自由を謳うのは、かくも命がけのことだったのだ。

サドの言動に戸惑いながらも、彼に惹かれずにはいられない若き神父は、ミイラとりがミイラになってしまうのだけど、この、徐々にサドを理解して傾倒していく様子が少し弱かったか。マルキ・ド・サドを心のどこかで理解しながら、愛するマドレーヌが非業の死をとげて、悲しみと怒りですさまじい行動をとり、遂には発狂。彼がこうなるプロセスをもう少しじわじわと描くことができれば、ラストがもっと効果的だったはずだ。

サディズムの定義は、他者に苦痛を与えることで性的な快感を得ること、だそう。その生涯で27年以上も牢獄暮らしをした、サド侯爵の本名はドナシアン・アルフォンス・フランソワ・ド・サド。代表作は「ジュスティーヌ」「ソドムの百二十日」など。「ソドム」は後にイタリアの鬼才パゾリーニによって映画化されたが、まことにすさまじい作品だった。

美徳を知りたければ、まず悪徳を知ることだとはサドの名言。言論の自由がこの作品の最大のテーマだが、かなり挑発的で見応えのある映画だ。

□2000年 アメリカ映画 原題「QUILLS」
□監督:フィリップ・カウフマン
□出演:ジェフリー・ラッシュ、ホアキン・フェニックス、ケイト・ウィンスレット、他

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ダンサー・イン・ザ・ダーク

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◆プチレビュー◆
空想にふける夢の中のセルマは現実を見ていない。パルムドール受賞は理解できない。

チェコ移民のセルマは視力を失うという遺伝性の病気を抱えている。同じ病を受け継ぐ息子にだけは手術を受けさせたいと懸命に働くが、そんな彼女を次々と不幸が襲う。純粋で周りからも愛されるセルマ。母として息子の幸せだけを願う日々。だが、信頼していた隣人の思いがけない裏切りが。そして、ついに誰も望んでいない悲劇が起こる…。

カンヌ映画祭のグランプリであるパルムドール賞と主役のビョークが主演女優賞を受賞。全世界で涙の嵐、感動のロードショーと絶賛されていた本作だが、正直言って大いに疑問符。カンヌに妙に対抗意識を燃やすアカデミー賞は、確か外国語映画賞5作品にもノミネートしなかった。

そもそもミュージカル仕立というのがとっぴな発想だ。てんこもりの不幸と歌と踊りというアンバランスさが売りなのか。アンニュイな美人女優C・ドヌーブがミュージカルというのも結びつかないが、思えば「シェルブールの雨傘」の女優だった。早死にした実姉フランソワーズ・ドルレアックと共演の「ロシュフォールの恋人たち」っていう珍作ミュージカルまである。

だいたい、病気を受け継いだ息子に失明することを知らせると精神的な打撃を受けて、それがショックになると言うが、母親が殺人でおなわになったあげく、死刑になるということの方がよほど病にさわるんじゃないのか?!しかも概ね無実とくれば。かたくなに秘密を守ることの良し悪しの区別もつかず、空想にふけるセルマの熱演を見れば見るほど、冷めていく。あぁ、この2時間余りの長いこと…。

しかし、映画を観る前から自然と耳にしたビョークが歌う「I've seen it all」はとても良い。特に「もう見るべきものは何もない」という歌詞をストーリーを知ってかみしめると、いっそうビョークの熱唱が伝わってくる。殆ど視力をなくしたセルマがキャシーと一緒に映画館でミュージカルを見るシーンも印象的だ。ドヌーブが言葉と指で画面を伝える場面は心に残った。どんな映画にも必ずひとつ、ふたつはいいところがあるものだ。

□2000年 デンマーク映画 原題「Dancer In The Dark」
□監督:ラース・フォン・トリアー
□出演:ビョーク、カトリーヌ・ドヌーブ、ジャン・マルク・ボワール、他

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エル・スール/南

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◆プチレビュー◆
南への郷愁が痛いほど伝わる静かな秀作「エル・スール/南」。スペイン内戦の歴史を知ると、深い作品だと判るだろう。

近頃のスペイン映画といえば、ペドロ・アルモドバル監督が有名で、アントニオ・バンデラスやペネロペ・クルスの人気も手伝ってちょっとしたラテンブームともいえる。そんな情熱の国スペインで、静かで美しい作品を作るのがヴィクトル・エリセ監督だ。但し、10年に一度しか作品を撮らない、極めて寡作な映像作家だが。

1950年代のスペインが舞台。エストレリャは目覚めてすぐに理解した。枕の下に振り子を残した父は、もう二度と帰らないのだと。少女エストレリャにとって、父は、振り子で水脈をいいあてたりする神秘的で未知の存在だった。底知れぬ存在である父を慕う幼い日々。しかしそんなエストレリャも次第に成長し、家庭以外での父の一面に触れる。その存在が遠のくのを感じるエストレリャ。スペイン内乱での、いわれのない投獄生活。故郷を捨てたいきさつ。父の心に母以外の女性が住んでいることも感じ取る。そんな父に無言の抗議をするも、自らの悩みの深さを同じく沈黙で返す父。そしてもう二度と父に会うことはないと知ったとき、その父の故郷である南へと旅立つ決心をする。

大学で政治学を選考していたというこの監督のみならず、スペインの知識人の心にはスペイン内乱は深い傷跡を残している。この作品でもフランコ軍事政権によって家族とも決裂し、愛する人とも別れなければならなかった父親の苦悩が描かれている。陰影に富んだ室内の描き方は、暗い画面の中から人物が浮かび上がるカラバッジオの絵画を彷彿とさせる映像だ。ラテン諸国の原色のイメージとはほど遠いシブい色彩の画面と静かな物語に心がなごむ。手のひらにのせたコインの枚数で水脈の深さを知る場面は父娘の絆を感じさせ、成長したエストレリャが父と二人で最後の昼食をとる場面は印象深いものだった。

オレンジの実る南部への郷愁が繊細なタッチで描かれる。ラストで祖母の住む南へと向かう主人公の姿に自らをダブらせ、旅立つ気持ちになるのは私だけだろうか。

□1983年 スペイン映画 原題「EL SUR」
□監督:ヴィクトル・エリセ
□出演:オメロ・アントヌッティ、他


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エル・スール@ぴあ映画生活

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エンゼル・ハート

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ミッキー・ローク演じる私立探偵が恐ろしい事件に巻き込まれる異色のオカルト・スリラー。

1955年のNY・ブルックリン。しがない私立探偵ハリーは、ルイス・サイファーと名乗る謎めいた紳士から、高額の依頼を受ける。それは戦前の人気歌手で失踪したジョニー・フェイバリットを探す仕事だった。ハリーは調査を進め、南部のニューオリンズに向かうが、事件を調べる彼の周辺で次々に凄惨な殺人事件が起こる…。

主人公ハリーに人探しを依頼する紳士ルイス・サイファーは、つづりからルシファー、つまり悪魔という設定だ。名優ロバート・デ・ニーロ扮するこのサイファーがハリーと待ち合わせるカフェで食べるのが、。ゆで卵に塩をかけながら、サイファーは「ある宗教では、卵は魂の象徴と言われているんだよ」と言いながら、白く長い爪をした手で卵をつかみ、がぶりとかぶりつく。ハリーの魂を悪魔が狙っているという比喩で、卵という身近で日常的な食べ物が、極めて不気味に描かれている。

原作は“悪魔のバイブル”と称されたウィリアム・ヒョーツバッグの禁断の小説「堕ちる天使」。あまりに衝撃的な内容なので、アメリカでは廃刊運動まで起こったといういわくつきの書だ。最初はハードボイルドタッチのサスペンスのようにスタートするが、悪魔との契約、ブードゥー教の不気味な儀式、猟奇的な殺害方法と、次第に驚愕のオカルト映画へと変貌する物語展開が面白い。公開当時は2トンもの牛の血が天井から降る壮絶なクライマックスが話題になった。アラン・パーカー監督らしいスタイリッシュな映像が魅力で、50年代のアメリカの空気や、南部ニューオリンズのうだるようなの風景と共に、繰り返し描かれる、黒いベールをかぶった謎の人物や、エレベーターの描写が非常に効果的だ。

(出演:ミッキー・ローク ロバート・デ・ニーロ、シャーロット・ランプリング、他)
(1987年/アメリカ/アラン・パーカー監督/原題「Angel Heart」)

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シベリアの理髪師

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◆プチレビュー◆
ジュリア・オーモンドはなぜかモテモテの役が多い。この映画では彼女の魅力が十分に生かされている。

ロシアという国の壮大さは、計り知れないものがあり、ちっぽけな島国である日本に住む我々の創造を遥かに超える。それは旧ソ連が崩壊し、数多い国に分裂した今も変わることはない。そんなロシアの帝政時代を背景に描く壮大で繊細な映画が本作。

時は1905年。モーツァルトを悪く言うのを許せず、息苦しいマスクを付け続ける青年。なぜ、そこまでこだわるのか?物語は回想形式で始まる。とある使命を受けてモスクワへ向かうアメリカ人女性ジェーンと士官学校候補生のアンドレイは汽車の中で偶然出会い、アンドレイはジェーンに一目で恋をしてしまう。しかし、アンドレイの上官のラドロフ将軍もジェーンに恋したことから、物語は複雑に。オペラのフィガロの結婚に添うような展開だ。ジェーンの明るくさっぱりとした性格は皆をとりこにするが、次第に、森林伐採の機械の開発費用を得るためにアメリカから呼ばれた彼女の暗い過去が見え隠れする…。

最初はコミカルな展開だが、ストーリーが終盤になるにつれ、スリリングに、そして悲劇的になっていく。たわむれの恋はやがて真実に。初めての愛に気付くジェーン。アンドレイのひたむきな思いはいつしか悲劇を呼び起こし、最後に明かされるジェーンの秘密。はたして、シベリアの地での二人の再会は…。

ロシアを舞台に壮大なスケールで描くラブロマンス。オペラをモチーフに使い、帝政時代の華麗な衣装も見ものだ。仕官学校生たちの美しい友情。春祭りの高揚。冬の広大なロシアの圧倒的な大自然。

本作品で自ら皇帝役で出演している監督のニキータ・ミハルコフは、現代ロシアを代表する監督で、世界中の数々の賞を受賞している。自らも裕福で芸術を愛する環境で育った彼は、帝政時代を好んで描き、優雅で格調高い映画作りが特徴。彼の作品には、ロシアとロシア人への愛情が溢れていて、この作品でも、酔って馬鹿騒ぎをしたり、身の破滅と知りながら暴力に走ったり、無実の人間を有無を言わさずシベリア送りにする残酷な権力等、ロシア人の欠点を多く描くが、それでも欠点だらけのロシアを愛し、そのロシアは最終的には強くさえあると密かに訴えているようだ。その証拠に、この粗野なロシアは、打算で生きるアメリカ女に純粋な恋を選び取らせる力を持っているではないか。

どこまでも広く厳しいタイガの自然が美しい。そこで生きるロシア人のたくましさ。このタフネスが日本人にあるだろうか?

□1999年 ロシア、フランス、イタリア、チェコ合作 原題「The Barber of Siberia」
□監督:ニキータ・ミハルコフ
□主演:ジュリア・オーモンド、オレグ・メンシコフ、他

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望郷

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◆プチレビュー◆
古典中の古典。ラストシーンは映画史上に残るもの。映画好きなら見てないと恥ですゾ。

アフリカはアルジェの、迷路のような街カスバ。この一角に逃げ込めば決して捕らえられることはない。パリで犯罪を犯して今はカスバの王となっているペペ・ル・モコは、警察がどんなに躍起になってもカスバから出なければ捕らえられることはないと知っていた。ある時、パリの観光団がカスバを訪れ、その中に際立って美しい女性ギャビーを発見する。まさしくパリの女のギャビーもこの異郷の地のフランス人のボスに強烈な魅力を覚え、二人の間に情熱が燃えた。警察はこのときとばかり、ペペの情婦の嫉妬をあおり、ギャビーの愛人をたきつけてペペをカスバの外へおびきだす。逆上するペペ・ル・モコ。ギャビーを失うことは彼の心の中のパリを失うことを意味する。危険を承知でカスバの石段を踏み出すペペ。逮捕されるのを知りながら。愛人とともにフランスへ戻る汽船の甲板で灼熱の恋に燃えたカスバの街をみつめるギャビー。彼女にとってはしょせんあの恋も吹き抜ける風にすぎない。警察の罠に落ちたペペ・ル・モコが鉄格子越しにギャビーの名を叫ぶ。だが、同じ瞬間、頭上の煙突が吠える。驚いて耳をふさぐギャビー。ペペの叫びは空しく断ち切られた。そしてペペは…

邦題の名タイトルとして知られるこの映画は、戦前のフランス映画の傑作。モノクロ(戦前なので当り前だが)の陰影ある画面が効果的だ。映画史上の古典なだけあって、名セリフ、名シーンにあふれ、ペペがギャビーを抱きしめて言う「メトロの匂いがする」は有名。パリから逃れてこの異郷の街に住むジャン・ギャバンは、海の向こうのパリを思ってメトロの匂いが懐かしいと呟く。ギャビーを追ってカスバの階段を駆け下りるシーンは幻想的で美しい。鉄格子越しにギャバンが絶叫するラストはあまりにも有名で、映画史に残る名ラストシーンと言われている。

技巧派ジュリアン・デュヴィヴィエ監督は、なぜか本国フランスでの人気はいまひとつで、むしろ日本で熱心な支持者が多いことで知られている。「望郷」はロマンスとスリルを巧みに盛り込んだ展開が見事。もはや古典なので語り尽くされているが、やはり長い映画史の中で残っていくのは頷ける。映画のお勉強のためにも是非。

□1937年 フランス映画 原題「Pepe le Moko」
□監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ
□主演:ジャン・ギャバン、ミレーユ・バラン、他

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母の眠り

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◆プチレビュー◆
あまり好きなタイプの作品じゃないのに泣かされた。やっぱり名女優メリルのせい?

エレンの母の死には、謎があった。検事に証言をするエレンの疲れた表情から映画は始まる。NYでジャーナリストとして多忙な日々を送るエレンは、末期ガンに倒れた母の看病のために、仕方なく帰郷。美人で頭もよく、仕事にも野心的なエレンにとって、大学教授で作家の父は常に偉大な存在だが、母は平凡な専業主婦、小さな町の婦人会がつきあいの全てという、軽い嫌悪さえ感じる存在だ。にわか主婦業と慣れぬ介護に四苦八苦して暮らす日々。都会から取り残される焦燥感。そんな娘の姿を静かに見つめる母。最初は全てに不満だったエレンだが、やがて平凡な専業主婦に見えた母の生き方を改めて見直すことに。母が今まで、報われることのない家事労働を、ただ愛する家族のために行ってきたことに初めて気付く自分。あこがれだった父の身勝手。その父も母を失うことを思って苦しんでいる。父を非難する娘に対して、結婚とは、夫婦とは何かを訴える母。その言葉は、幸せになるには、ないものねだりではなく今を愛せばよいのだと告げていた…。

街のクリスマスツリーは、婦人クラブの一員として母も飾付けに参加したもので、母の人生のささやかな栄光の輝き。そして皆、知っているのだ。これが家族で迎える最後のクリスマスになるということを。遂に衰弱しきった母は、この苦しみに耐えられないと訴える…。

家族という身近なテーマを扱いながら、ストーリーを奥深いものにしているのは、やはりメリル・ストリープの上手さだろう。冒頭で「オズの魔法使い」の仮装で登場するのには正直驚いたが、たとえ、こんなナリをしていても貫禄があるのは大女優ならでは。豊かな愛で家族を包む母親の優しさと繊細さを演じて、本作でアカデミー賞にノミネートされている。

理想通りではないけれど、それら全てを受け入れて新しい人生の一歩を踏み出すエレンの成長がうれしい。家族、親子、夫婦、そして介護など、テーマ的にも見所あり。こういう映画はちょっと苦手なのだが、意外にも良くできた作品だ。

タイトルは、劇中の字幕では“わが心の真実”と訳されていた。

□1998年アメリカ映画 原題「One True Thing」
□監督:カール・フランクリン
□出演:メリル・ストリープ、レニー・ゼルウィガー、ウィリアム・ハート、他

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ギター弾きの恋

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◆プチレビュー◆
派手な衣装と軽みのある演技が絶妙のショーン・ペン。アレン映画は古き良き時代を背景にすると好感度が上がる。

実在の、そして自分の好きな人物を描くのは難しい。たいていの場合、その人物に思い入れがありすぎて、監督のひとりよがりに走ってしまいがちだが、この作品はそのあたりを逆にうまく利用している。実話とフィクション、逸話や噂話にいたるまで、ユーモアあふれるストーリーに仕立てている。ウッディ・アレン監督の記念すべき30作目だ。

1930年代、ジャズ黄金期のアメリカ。身勝手で派手好きなエメット・レイは、「世界で2番目」を自称する天才ギタリスト。ギターの才能は天才的だけど、飲んだくれで、女遊びが大好き、演奏をすっぽかすのは毎度のこと。自由なアーティストを気取って自堕落な生活をおくっている。そんな彼がふと知り合った口のきけない純真な女性ハッティ。横暴なエメットに献身的につくす彼女に、やがて心をひかれ、一緒に暮らすようになる。しかし、束縛を嫌い、気ままな生活を求めるエメットはハッティを捨て、上流階級出身の女性ブランチと衝動的に結婚。が、共通点は派手な服の趣味だけという、二人の結婚生活はやがて破局を迎え、再びエメットはもとの気まぐれな暮らしに逆戻りする。虚ろな日々で思い出すのは、ハッティの笑顔。もしや自分は大切なものを失ってしまったのかと、気づくのだが…。

冒頭からジプシージャズが流れ、テンポ良くストーリーが進むのが心地よい。ウッディ・アレン特有の洪水のようなセリフの多さがないのは、音楽がもうひとつの主役であることと、ハッティが口がきけないという設定のせいだろう。役柄上セリフはなく、その分、表情やしぐさだけで、感情を見事に表すサマンサ・モートンは、実は英国の演技派女優で、ショーン・ペンと並んで、この作品でアカデミー賞にノミネートされていた。ウッデイ・アレンは1930年代がお気に入りのようで古き良き時代を背景に描く彼の作品は面白いものが多い。

笑えるシーンもたくさんあるけど、ラストは切ない。才能に溢れていても、社会的には不器用な男と純真な心をもった女との恋の行違いを、ジャズの音色にのせて描くこの映画。約1時間半でさらりと終わるのもいい感じだ。

身勝手な男と、彼につくす女の献身的な姿。なくしてしまって初めて気付く大切な愛。ん?このパターンどこかで…。あぁ、往年のイタリア映画の名作「道」と同じか!頭が弱く純真なジェルソミーナを道端におきざりにし、数年後、彼女の死を知って、自分の孤独に、浜辺でむせび泣くザンパノの姿。このパターン、人生の定番なのだ。後悔は先に立たず。今を大切に生きよう。

□1999年アメリカ映画 原題「Sweet and Lowdown」
□監督:ウッディ・アレン
□主演:ショーン・ペン、サマンサ・モートン、ユマ・サーマン、他

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