映画通信シネマッシモ


映画通信シネマッシモは、2018年4月をもって、終了しました。

ブログ終了にあたり、たくさんのあたたかいコメントをお寄せいただき、本当にありがとうございました。
皆さまの映画ライフに少しでもお役に立てたならこれほど嬉しいことはありません。
長い間のご愛顧に心より感謝いたします。

ゴッド・アンド・モンスター

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◆プチレビュー◆
イアン・マッケラン入魂の演技に注目。この作品は掘り出しモノだ。

99年アカデミー賞脚色賞を含む世界の数々の賞を受賞しながら、当時日本では劇場公開も行われず、ビデオリリースのみ。いわくつきの映画となるとますます観たくなるのが常だ。

戦前のハリウッド黄金期に、フランケンシュタイン映画によって一躍人気監督となり、頂点を極めながらも、同性愛者であるために映画界を追われたジェームズ・ホエール。ハリウッドの伝説の監督の最期の日々を描く。

映画界から謎の引退を遂げた名監督ジェームズ・ホエール。彼は老いと病に直面し、日に日に悪化する精神錯乱に怯えて暮らす。正気を失う前に、誰か自分を抹殺してくれと心に願いながら。謎めいた隠遁生活を送るこの老人の庭師として、ある日、若い青年が雇われる。彼こそが自分の苦悩に終止符を打つ男。どうか自分を解放してくれと、友情と同性愛と死への期待感をもって彼を挑発し、この庭師の男に自分の過去を打ち明け始める…。

最初は結構ユーモラスな場面も多く、隠居中でボケ気味のゲイのじいさんと、若くてマッチョなピチピチ兄ちゃんとのラブストーリーかと思っていると、これが実は違うのだ。エキセントリックなホエールの苦悩の日々がフラッシュバックで巧みに描かれ、庭師の青年ならずともジワジワと監督に心が吸い寄せられる。見終われば、これは孤独な芸術家の挫折と複雑な愛を描いた純度の高い感動作なのだと理解した。

主人公のホエールは常に過去に縛られ、昔を嫌悪する。ゲイであり、祖国イギリスを追われた過去、映画監督として栄光を掴んでいた過去。現在の自分の存在はいったい何のためか?自分の人生の価値は何か?と苦悩する姿が痛々しい。死への恐怖と、過去の栄光と挫折が胸に去来し、心の傷に苦しむ孤独な魂。どうか彼に救いの手を、と願ってやまぬ気持ちが湧き上がる。

ハリウッドメジャーの大作のような、わかりやすい感動はない。しかし、ジェームズ・ホエールという謎の多い実在の映画監督を、実話とフィクションを交えて、映画として上手く仕上げている。ラストは、悲しいようなほっとしたような、実に淋しくせつない空気が漂う。

監督役の、イギリスの名優イアン・マッケランは自らゲイであると宣言し、カミングアウトした後の出演だった。彼のユーモアと狂気が、観る者に訴えかけて、素晴らしい。この役は彼しかいない。アカデミー主演男優賞にノミネートされたのも納得だ。かつて静岡ではファンの署名運動により1日だけの劇場公開も実現したという、知る人ぞ知る幻の傑作が本作だ。

□1998年 アメリカ映画 原題「GODS AND MONSTERS」
□監督:ビル・コンドン
□出演:イアン・マッケラン、ブレンダン・フレイザー、他

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ゴッド・アンド・モンスター@ぴあ映画生活

山の郵便配達

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◆プチレビュー◆
緑のシャワーのような映像。ひとつひとつのセリフに泣かされた。原題は「あの山、あの人、あの犬」の意味。

80年代初頭の中国。現代でも交通手段のない険しい山岳地帯で手紙を配達する一人の年老いた郵便配達人。今、息子に仕事を引き継ぐために、初めて父子二人の旅に出る…。

緑濃い美しい大自然を背景に、素朴だが、味わい深い物語が展開する。寡黙な父の仕事への誇り、村人に信頼された父の姿。留守がちな父に心の隔たりを感じていた息子は旅を通して父の真の姿を知る…。

心温まるエピソードと思い出が交差するストーリーが胸にせまる。盲目の老婆のために手紙を書き、孫から来たと嘘をついて読み聞かせる父。足を悪くした父を気遣い、冷たい川で父を背負う息子。少数民族の美しい娘への淡い恋心。愛犬とともに歩む旅は次第に父子の溝を埋めていくのだった。

飾らない暮らしは、かつて日本にもあった懐かしい風景だ。家族の絆と手紙に込められた想い。それらが美しい映像に映し出され、観る者の心に深い感動を呼び起こす。郵便配達に同行するシェパード犬“次男坊”が愛らしく、まことにいい味を出していたのも好感度が高い理由だ。

“父さん、もう行かなきゃ”“次男坊、聞いたか?あいつ初めて父さんって呼んだよ”このセリフに、どっと涙。“何キロ歩いても誰にも会わない。仙人は退屈だろうね”“空を飛んだりするし、仙人は退屈なんてしないさ”。こんなシブいセリフは滅多に聞けない。

この1作に胸を熱くする。久しぶりに出会ったそんな映画だ。並み居るライバルを押しのけて中国のアカデミー賞の金鶏賞を受賞した傑作。

□1999年中国映画 原題「那山 那人 那狗」
□監督:フォ・ジェンチイ
□出演:トン・ルゥジュン、リィウ・イェ、ジャオ・シィウリ、他

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イレイザーヘッド

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◆プチレビュー◆
すごいインパクト!さすがはカルト・ムービーだ。おまけに完全版とは。イレイザーヘッドとは消しゴム付き鉛筆のこと

5年の歳月をかけて自主製作したという、奇才D・リンチの長編デビュー第1作は噂通りの内容だ。この作品でリンチが世界で一躍注目されたというのも納得。

モノクロの画面に繰り広げられる、グロテスクな世界。最初の10分はまったくセリフはなく、何かが起こりそうな不気味な気配でスタートする。舞台はフィラデルフィアの工業地帯。印刷工のヘンリーは恋人のメアリーが生んだ奇怪な赤ん坊の世話のために彼女と結婚することに。しかし、その子供の影響でヘンリーの周囲に不気味な変化が起こり始める。

悪夢か、妄想か。終始流れる不可思議な音楽の中、次第に現実と妄想の区別がつかなくなっていくヘンリーはもはやノイローゼ状態だ。ヘンリーの妄想の中で、頬の腫れた女性が頭から降ってくる精子のような物体を足で無常にも踏み潰し、“天国では全てがうまくいく…”と天使のような表情で歌う。黙示録のごとく唐突にやってくる不条理なラスト。ヘンリーは解放されたのか?それとも悪夢にひきずりこまれたのか?

最初はちょっとルイス・ブニュエル風の風変わりな世界だ。調理されたチキンが踊りだすのはコメディか?子供ができた、結婚せねば、と鼻血を出しながら決意するか?奇妙な風貌の未熟児のようなの生き物はSFか?!

独特の世界観を持つD・リンチ監督は、平凡な日常の裏側に潜む不条理な狂気を描かせると右に出るものない。もはや、ひとつのジャンルを確立している。「イレイザーヘッド」は一部に熱狂的なファンをもつカルトムービーで、ここまでキレてくれると逆にすがすがしいという意見さえある。狂気の世界を堪能するにはもってこいだ。

□オリジナル1976年、完全版1993年、アメリカ映画 原題「ERASERHEAD」
□監督:デビッド・リンチ
□出演:ジャック・ナンス、他

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季節の中で

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◆プチレビュー◆
絵画的映像と、ベトナムの民族衣装、アオザイが美しい。主演のハーベイ・カイテルが総指揮、サンダンス映画祭グランプリ、観客賞を受賞。

いくつかの物語が交差する。舞台はベトナムのホーチミン(旧サイゴン)。蓮の花を摘む仕事をする少女と心に傷をおった裕福な老詩人とのふれあいと別れ。ふと知り合った美しい娼婦に恋するシクロ(人力タクシー)の運転手。片隅で生きるストリートチルドレン。現地女性との間に生まれた娘を探す元アメリカ兵。それぞれの人生がすれ違い、美しい季節は流れていく。

4ヶ月に渡る撮影は全てベトナムロケ。画面からは現地の熱さと湿度を感じさせ、映像の美しさには目を見張る。いわゆる群像劇といえるこの作品。これといった大事件もおこらず、物語は淡々と進む。アメリカ映画にありがちな派手な演出やBGMもほとんどなく、登場人物それぞれの人生が、めぐる季節の中で静かに描かれていく。原題のスリー・シーズンズ(3つの季節)とは、雨季と乾季しかないこのベトナムの、“希望”というもうひとつの季節。

早朝にハスの花を摘み、街に売りに行く少女のエピソードがいい。彼女の、決して豊かとはいえない生活とはうらはらにまっすぐで自分の気持ちに正直に生きる姿が胸を打つ。彼女は、絶望に沈む老人の心を動かし、最期を彼に一筋の光を与える。

蓮の花の美しさが心に残る。「泥の中で美しい花をつける蓮はベトナム人そのもの。迫害や戦争に耐えて立ち直り、輝いている。自分の映画では何らかの形で蓮の花を描いていきたい。」とは、監督の談。劇中で歌われる歌の歌詞でも“蓮の花ほど美しいものはない。白い花と緑の葉。泥の中で育っても泥の臭いがしない。”と歌っている。

元米兵に扮したハーベイ・カイテルが画面をひきしめる。飾らずに自分らしく生きる大切さを学びたい。幻想的で美しい花をちりばめたような画面が随所に繊細な演出を感じさせ、心に残る癒しの作品だ。

□1998年 アメリカ映画 原題「THREE SEASONS」
□監督:トニー・ブイ
□出演:ハーベイ・カイテル、他

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トラフィック

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◆プチレビュー◆
オスカー受賞のベニチオ・デル・トロは今後に注目。全員が主役の重みを持つ群像劇だ。

映画は、アメリカの裏社会に根深く浸透する麻薬社会の実態に迫る、かなり硬派な社会派ドラマ。3つの異なったストーリーが同時進行する手法は、ドキュメンタリータッチとでもいいたくなるほど、迫真のもの。アメリカとメキシコを結ぶ巨大な麻薬コネクション“トラフィック”をめぐって、様々な陰謀に満ちた事件が繰り広げられ、じわじわと暴かれていくその闇の実態。問題の根深さに、全ての楽観的な意見を否定するほどアメリカの病んだ部分がうきぼりにされていく様は映画ならではの迫力だ。

個人の力や思いなど無力に近いアメリカの麻薬経済の実態。3つのストーリーが微妙にからみあい、ストーリー展開のうまさをきわだたせる。キャサリン・ゼダ・ジョーンズ扮するヘレナが妊婦という設定を生かして自分の生活と家族を守るためならどんなことでも辞さない女の強さを演じて力強い。彼女がこんなに上手い女優だったとは。夫のM・ダグラスと共演とはいえ、同じ場面には一度も登場しない。

メキシコの警官ハビエル・ロドリゲスに扮する、ベニチオ・デル・トロの上手さと圧倒的な存在感には参った。このラテン系古谷一行殿がオスカーをとるのは納得としても、彼が助演男優賞なら、いったいこの映画の主演は誰だ?全ての役者が主演といいたくなるような秀逸な映画ということか。

しかし、でも、作品賞を逃した理由も理解した。アメリカ人は勧善懲悪が好きだが、この映画はそうじゃない。完全無敵のヒーローは存在せず、誰もが弱い部分を持っている。麻薬戦争はこれからも続くし、家庭内の奥深くまで浸透してアメリカ社会の闇の部分として生き続けるだろう。どんなに正義に燃えた人物がひとつの組織を叩き潰したとしても…。証人のルイスが発する言葉が如実にそれを示していた。「おまえたちは敗戦を認めずに穴にたてこもっていた日本兵と同じだ。麻薬戦争は、とっくにおまえたちの負けなんだよ。」

国家としての働きの前に自分の大切な家族を守りたい…。家庭、仕事、政治、全てに大きな影を投げかける麻薬問題。夜の公園で子供達が野球に興じる姿を見つめるベニチオ・デル・トロが見せる表情には、安堵とも不安とも見て取れる複雑な思いがあった。

メキシコの乾いた砂埃を感じさせる映像。胸にずっしりとした余韻を残し、観客に何かを決めつける見方は決してしない。それは現実を鋭くえぐる上質なリアリティだ。

□2000年 アメリカ映画 原題「TRAFFIK」
□監督:スティーブン・ソダーバーグ
□出演:マイケル・ダグラス、ベニチオ・デル・トロ、キャサリン・ゼダ・ジョーンズ、他

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タイタス

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◆プチレビュー◆
時代交渉無視の衣装が冴える。ヌードも辞さない迫力のジェシカ・ラングが見事だ。

首は切る、手首は切り落とす、舌は切る、喉はかき切る、レイプ、子殺し、人肉食い…と、およそこの世の悪行三昧のほとんどを網羅する。残虐にして美しい映画の原作は、偉大なるウィリアム・シェークスピア。 世界一の文豪原作のこの残酷史劇は、あまりのむごたらしさに作者は別にいるのでは、とまで言われ、舞台で上演されることもめったにない作品である。原作は「タイタス・アンドロニカス」だ。

時代は古代ローマ。歴戦の名将タイタスは敵のゴート族の王族を捕虜にして凱旋する。勝利といっても、自分の25人の子供のうち、21人を戦いで亡くすという大きな犠牲を払ったものだった。タイタスは亡き息子たちの魂を鎮めるため、泣いて命乞いをする母のタモラ女王の懇願もかえりみず、ゴート族の王子の一人を生贄に捧げる。目の前で息子の王子を殺された女王は、「必ずやタイタス一族を皆殺しに!」と、復讐を胸に誓うのだった。生き延びたタモラの策略で、次々に血祭りに上げられるタイタスの子供たち。自らも片手を失い、手負いの獣のようなタイタスが最期に放ったタモラへの血も凍る復讐とは…。

映画というにはあまりにも舞台風だ。時代考証まったく無視のその演出は、古代ローマにおいて、皮のジャケット、ナチス風の演説、ビリヤードやムッソリーニ時代の建物など、ほとんどイメージビデオの様相を呈している。こんな大胆な映画でこそ、「炎のランナー」でオスカーを受賞したミレーナ・カノネロの衣装の腕が冴えるのは言うまでもない。残酷すぎる場面の数々も、まるで歌舞伎のように美しく描かれ、2時間40分を越える長編を堂々とまとめている。残酷シーンは苦手だが、豪華で濃厚な料理を味わった後のような気分は稀有なものだった。

根底をなすのは、父タイタスと母タモラの、それぞれ親としての子供への深い愛情が、むごたらしい暴力を生むという悲劇。現代とつながるようなプロローグとエピローグは演出の上手さを感じさせる。豪華キャストに目を奪われるが、ジョナサン・リース・マイヤースのドラ息子ぶりが印象的だ。

しかし…だ。ローマの知将、歴戦の英雄、皇帝の指名権さえ委ねられる賢者のタイタスが、人生の重大な岐路で2度も決定を誤るか?!そもそも、タモラの息子を生贄などにするからいけないんじゃないのか?!とつっこみを入れたくなるのは私だけではないはずだ。それとも、それほどの人物でも過ちを犯すという、シェークスピアの人間考察の深さだろうか。芸術とは残酷にして美しいもの。つくづく濃い作品だ。

□1999年 アメリカ映画 原題「TITUS」
□監督:ジュリー・テイモア
□主演:アンソニー・ホプキンス、ジェシカ・ラング、ジョナサン・リース・マイヤース、他

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太陽は、ぼくの瞳

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◆プチレビュー◆
グラサン姿のモハマド少年が何ともいとおしい。児童映画はイラン映画の得意とするところ。

最近、もっぱら注目のイラン映画。この作品はイラン映画らしい児童映画の佳作。欧米の作品に比べ、劇場でかかるアジア映画の本数は少ないが、映画「うなぎ」がカンヌ映画祭でグランプリを受賞したとき同時受賞をはたした「桜桃の味」のアッバス・キアロスタミ監督のおかげか、随分イラン映画も配給されるようになった。

物語の主人公はモハマドという名の盲目の少年。目は見えないけど、人一倍優しい心を持つ彼は手に触れるもの全てを慈しみ、光をなくした瞳の代わりに、心の目で物事をみつめながら純粋な心を失わずに生きていく。

学問にも秀でた彼は、なんとか周囲に溶け込み皆と同じように生きていこうと懸命に努力する。しかし、自分の再婚のことで頭がいっぱいの彼の父親は、モハマドを愛しながらも、彼の存在を疎ましく思い、いなかの母親のもとに預けるだけでなく、同じく盲目の大工のもとに無理に修行にやってしまう…。

自分が盲目なので誰からも愛されないのだと涙を流すモハマド少年。そんな孫と、身勝手な父親である息子の姿をただ黙ってみつめる祖母の姿。そして父親は自分の再婚話が壊れたとき、全てをモハマドのせいだと考え、急流の川に転落した我が子の死を無意識で願ってしまう。助けるのをためらう一瞬は、観る者の胸をしめつけられる。しかし、はっと我にかえりモハマドを助けるために川に飛び込む父親の姿。自分が間違っていた、どうか息子を返してくれと神に願いながら激しい川の流れに飲み込まれていく…。

イラン映画は内容に厳しい検閲があって、そのためか、児童映画が大半を占めている。この映画、自然描写が大変美しく、緑深い森、そこに白く流れるかすみ、花であふれる草原などまるで一枚の絵のような映像が溢れていた。少し湿った森の緑の描き方は、キング・オブ・アートシアターとうたわれた故アンドレイ・タルコフスキー監督の名作「ノスタルジア」を彷彿とさせる。

熱い紅茶を受け皿に少しずつうつして冷ましながら飲むなど、イランの珍しい生活習慣もおもしろい。野に咲く花を集めて、花びらを鍋で煮詰めて糸を染める場面の色彩も秀逸。悲しい結末のラストは、実は観客に希望を与えるような描かれ方で見終わったあともほっとする。出演者のほとんどがしろうとというこの映画。地味だけど味がある。

□1999年 イラン映画 原題「The Color of Paradise」
□監督:マジッド・マジディ
□出演:モフセン・ラマザーニ、ホセイン・マージゥーブ、サリム・フェイジィ、他

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小説家を見つけたら

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◆プチレビュー◆
渋いショーン・コネリーがはまり役。歳をとってもかっこいい俳優は案外少ない。

私のごひいき俳優のひとりにショーン.コネリーがいる。彼が主役を務めるのなら、やはり見なくては!こう思わせてくれる俳優は少ない。

物語の主人公は、貧しい生まれながら、文学の才能溢れる黒人少年。この少年がふとしたことから世間から身を隠すように生きる老小説家を“見つけて”しまったことから物語は始まる。最初は少年のことを疎ましく思っていた老小説家も彼の溢れる才能を目の当たりにするにつれ、押し殺してきた文学への情熱を取り戻し、少年の成長を助けるとともに、自分自身も、忘れかけていた”生きる喜び”を見出していく…。

よくある成長と再生の物語といってしまえばそれまでだけど、小説家ウィリアム・フォレスターに扮するS.コネリーがまさにはまり役。美しい音楽も手伝って、最後はいつしかじーんと感動してしまうのであった…。

いじわる教師役のF.M.エイブラハムは映画「アマデウス」でサリエリ役をやった名俳優。いつもこんな役で気の毒なものだ。「グッドウィル・ハンティング」の主役、マット・デイモンがラスト近くでちょい役で出演するのもご愛嬌。原題は「ファインディング・フォレスター」。フォレスター(小説家の名前)を見つけてしまう、の意味。

映画を見終わったあとはなんだか元気をもらった気分になって、明日もがんばろうと思ってしまう。こういう映画を観て、素直に感動する気持ちは忘れたくない。

□2002年 アメリカ映画 原題「FINDING FORRESTER」
□監督:ガス・ヴァン・サント
□出演:ショーン.コネリー、フォーリー・マーリー・エイブラハム、他

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バタフライ・エフェクト

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過去に戻る特殊能力を持つ主人公が、現在や未来を変えようと奔走するSFスリラー。カオス理論をうまくストーリーにからませている。

エヴァンは幼い頃から、時折り記憶を喪失する“ブラックアウト”を起こす少年。幼馴染みのケイリーのもとを去るとき、彼は「君を迎えに来る」と誓う。だが時は流れ、エヴァンとケリーはまったく別の道を歩むことに。成長したエヴァンはブラックアウトとは無縁の平穏な生活を送っていたが、ある時、自分が起こした出来事が原因でケイリーの人生を狂わせたことを知り愕然とする。エヴァンは自分が日記を読むと過去に戻れると知り、特定の過去に戻って運命を変えることを決意する。だが、さまざまな可能性を試すものの、運命を変えるたびに必ず他の誰かが不幸になるのだった…。

バタフライ・エフェクトとは、小さなが羽ばたくと、地球の裏側で台風や竜巻が起こることを意味する言葉。初期条件のわずかな違いが、将来の結果に大きな差を生み出すとする、カオス理論の一つだ。バタフライ効果とも呼ばれ、気候や自然変動に大きく影響を与える可能性があるとされている。主人公エヴァンの何気ない行いが、愛するケイリーの運命を狂わせたことを意味している。

自分とその周りの人々が、全員幸せになる人生を求め、戻るべき過去の時点と、その選択肢を模索する主人公が、最後に下す決断がとても切ない。もしもあの時こうしていれば。誰もが一度は考える運命を描くことで共感を呼ぶ。サプライズが連続する異色SFサスペンスだが、過去を変えようとする男の目的は、愛するものを救うこと。緻密なパズルのように組み立てられた物語は、ピュアで切ないラブ・ストーリーなのだ。

(出演:アシュトン・カッチャー、エイミー・スマート、エリック・ブレス、他)
(2003年/アメリカ/デヴィッド・エリス、J・マッキー・グルーバー監督/原題「THE BUTTERFLY EFFECT」)

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アザー・ファイナル

アザー・ファイナルアザー・ファイナル
2002年6月30日、世界中が日韓W杯の決勝を注目する中、同時刻にFIFAランキング最下位を決める全く別のファイナルの試合が行われていた。二つの国が試合を迎えるまでの軌跡を追ったドキュメンタリー。

カリブ海の火山国モントセラトと、ヒマラヤのブータン王国。両国とも試合に適さない気候だが、サッカーへの情熱は一流選手に劣らない。選手たちがサッカーを心から楽しむ姿が印象的。

2002年日韓W杯で予選落ちしたサッカー強国オランダから生まれた興味深い記録映画。清々しさや純粋さがサッカーという世界で最も愛されているスポーツの本来の姿を思い起こさせる。

(2002年/オランダ・日本/ヨハン・クレイマー監督/原題「THE OTHER FINAL: BHUTAN V.S. MONTSERRAT」)

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