映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」「ユダヤ人を救った動物園」etc.

マイティ・ソー バトルロイヤル

Thor: Ragnarok
アベンジャーズの一員であるソーの前に、最強の敵“死の女神ヘラ”が現れる。美しく邪悪なヘラの圧倒的なパワーで、ソーは自慢の武器ムジョルニアを破壊され、宇宙の果てに弾き飛ばされてしまう。遠く離れた辺境の星で囚われの身となったソーは、この地を脱出するために、闘技場で盟友ハルクと対決するハメに。やがてソーは、ハルクや、弟で宿敵ロキらと即席チームを組み、ヘラに立ち向かうことになる…。

マーベルの人気ヒーローにしてアベンジャーズの一員のマイティ・ソーを主人公にしたシリーズ第3弾「マイティ・ソー バトルロイヤル」。今回は、アベンジャーズのメンバーですら持ち上げることさえできないソーのハンマー型の武器ムジョルニアをいともたやすく破壊する、桁違いのパワーを持つ死の女神ヘラが相手だ。いろいろと訳ありの最強の敵に挑むソーは、盟友ハルクや宇宙一の裏切者で弟のロキ、女戦士ヴァルキリーと即席チームの“リベンジャーズ”を結成して戦うことになるが、このヤバすぎる4人による噛み合わない会話の応酬が本作最大の魅力だ。

ケンカしながらも結局仲がいい(?)神兄弟のソーとロキの掛け合いは、兄弟漫才のよう。そもそもロキは宿敵で前作までケンカしてませんでしたっけ??とツッコミを入れるヒマさえないくらい笑わせてくれる。ハルクとソーにいたっては、筋肉同士のボケ同士で、これまた爆笑もの。ほとんど「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のノリなのだ。オスカー女優のケイト・ブランシェット演じるヘラの背景に北欧神話ならではの格調高さが垣間見えるものの、本作はあくまでもユーモアと遊び心に重きを置いている。最近シリアスに傾いていたマーベル映画を、怒涛のエンタメ路線で駆け抜けて見せたのは、ニュージーランド出身のタイカ・ワイティティ監督だ。思えば「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」の独特のユーモアは、映画ファンを大いに魅了したものだった。革命家コーグ役で出演もしている、この無名に近い俊英監督を起用したセンスが功を奏した快作である。
【75点】
(原題「THOR RAGNAROK」)
(アメリカ/タイカ・ワイティティ監督/クリス・ヘムズワース、トム・ヒドルストン、ケイト・ブランシェット、他)
(コミカル度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

女神の見えざる手

Miss Sloane [Blu-ray]
敏腕ロビイスト、エリザベス・スローンは、銃の所持を支持する仕事を断り、大手ロビー会社から、銃規制派の小さな会社に数人の部下を連れて移籍する。莫大な財力を誇る敵陣営に、卓越したアイデアと強気の決断力で立ち向かうエリザベスだったが、やがて彼女の赤裸々な私生活が露見し、さらには彼女の部下を巻き込んだ予想外の事件が発生。事態が悪化し、絶体絶命のピンチに陥ってしまう…。

政府や世論を影で動かす戦略のプロで天才ロビイストのヒロインの闘いを描く社会派サスペンス「女神の見えざる手」。ロビイストとは、特定の主張を有する個人または団体の利益を政治に反映させるために、 政党・議員・官僚などに働きかけることを専門とする人々のこと。主人公エリザベスは花形ロビイストで、真っ赤なルージュ、高級ブランドの服、ハイヒールといういでたちで、敵だけでなく味方さえも欺く戦略の天才だ。ワーカホリックで寝る時間も惜しんで働き、恋愛はエスコートサービスで合理的に済ませるという、あまりに好戦的なこのヒロインに共感するのが最初は難しいかもしれない。だが、したたかで巧妙な彼女の手段は時にダークでも、その信念は気高いことに気付いた時、エリザベスが“女神”に見えてくる。

演技派のジェシカ・チャステインが「ゼロ・ダーク・サーティ」よりさらにパワフルな女性を怪演に近い熱演で演じて魅力的だが、脇を固める役者もマーク・ストロング、ジョン・リスゴー等、渋いキャスティングなのがいい。「恋におちたシェイクスピア」などのジョン・マッデン監督の演出は、すこぶるテンポが良く、裏切りやどんでん返しを繰り返しながら、132分を一気に駆け抜け、飽きさせない。欲を言えば、先を読み、罠をしかけ、切り札を隠し持つエリザベス・スローンの、プライドとストレスでせめぎ合う心の内(うち)をもう少し見たかった気がする。銃規制法案というタイムリーな話題、聴聞会のシーンから過去を紐解く語り口の上手さ、政治の腐敗の内幕までも見せてくれる、良質な社会派ムービーだ。同時に、現実社会でこれほど銃乱射事件が頻発し犠牲者が出ても、アメリカが銃社会であり続ける複雑な事情が伝わってきてやるせない。
【70点】
(原題「MISS SLOANE」)
(アメリカ/ジョン・マッデン監督/ジェシカ・チャステイン、マーク・ストロング、ジョン・リスゴー、他)
(辛辣度:★★★★★)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

婚約者の友人

Frantz (Original Motion Picture Soundtrack)
1919年、戦争の傷跡に苦しむドイツ。アンナは、婚約者フランツをフランスとの戦いで失い、悲しみの中でフランツの両親と暮らしている。フランツの墓参りに行くと、墓の前で見知らぬ男が泣いていた。アドリアンと名乗るそのフランス人青年は、戦前にパリでフランツと知り合い友情を育んだという。フランツの両親やアンナはアドリアンに魅了され、彼と過ごすひと時に心を癒される。アンナがアドリアンに“婚約者の友人”以上の感情を抱いた時、アドリアンは自らの驚くべき正体と秘密を明かすのだった…。

第1次世界大戦後のドイツを舞台に、ヒロインが婚約者の友人を名乗る男の秘密を知るミステリアスなドラマ「婚約者の友人」。モーリス・ロスタンの戯曲をエルンスト・ルビッチ監督が1932年に「私の殺した男」として映画化したものを、フランソワ・オゾン監督が大胆にアレンジした作品だ。戦争によって傷ついたのは、ドイツもフランスも同じ。息子を亡くした父親はどちらの国でも同じ悲しみを抱えている。戦前にフランツの友人だったというアドリアンの存在は、憎み合っていても何も変わらないこと、戦争そのものが悪であることを訴えて、反戦のメッセージを色濃く伝えてくれる。だがそこには驚きの秘密があった。オゾン監督は、ヒロインの心の旅路を通して、死と嘘と真実の果てに、生きることの意味を見出していくのだ。

ノスタルジックで陰影が濃いモノクロ映像が端正で美しい。この白黒の世界が、時折、淡く柔らかい色彩を帯びるのが抒情的で、アンナやアドリアンの心の揺れと希望の感情に呼応していて、実に効果的である。秘密を告白しフランスへと戻ったアドリアンを追ってパリに向かったアンナが知るのは、思いもよらない真実だ。一人の青年の死を巡り、驚愕の嘘、心を癒す嘘、惑わせる真実、打ちのめす真実が次々に現れる展開は、美しいフーガを思わせる。死を描いたマネの絵画で「生きる気力が湧く」と言うアンナは、嘘も真実も受け止めて毅然と生きる覚悟を決めたのかもしれない。戦争と戦争の間に挟まれた不安な時代を背景に、嘘の功罪を描くオゾン流のミステリアスなメロドラマだ。アンナを演じるドイツ人女優パウラ・ベーアの、複雑で繊細な表情が心に残る。
【70点】
(原題「FRANTZ」)
(仏・独/フランソワ・オゾン監督/ピエール・ニネ、パウラ・ベーア、エルンスト・ストッツナー、他)
(抒情度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

試写室だより 17.10月下旬

試写室だより気のせいか(気のせいではない!)、毎週末に台風、来てません??!!選挙もあったし、秋は観光シーズンだし、イベントもたくさんあるのに(涙)。被害に遭われた方、お見舞い申し上げます…。

最近見た主な映画は以下。

「パーティーで女の子に話しかけるには」「ローガン・ラッキー」
「キングスマン ゴールデンサークル」「泥棒役者」
「8年越しの花嫁」「探偵はBARにいる3」などなど。

大ヒット公開中の「ブレードランナー 2049」。映画の舞台となる2049年は、前作から30年後という設定なので、その間にいろいろな出来事があったようです。本編を見ていると、あれ、これって何?と疑問に思うこともあるはず。

実は、公式サイトでは、3本の短編が公開されているので、ぜひそちらを鑑賞することをお勧めします。この3本、鑑賞前でも鑑賞後でも、楽しめるのがいいところ♪

●「2022:ブラックアウト」
劇中で語られる、重要な出来事、大規模停電事件のてん末を描く。

●「2036:ネクサス・ドーン」
謎の科学者ウォレスが目論んだ、レプリカント禁止法の廃止の内幕に迫る。

●「2048:ノーウェア・トゥ・ラン」
本編の冒頭でKが追うレプリカント・サッパーの居場所がなぜ分かったかを描く。

の3本。アニメーション作品の「2022:ブラックアウト」は、日本の渡辺信一郎監督(「カウボーイビバップ」「アニマトリックス」)によるもので、空白の30年の間に起こった大停電は、物語の重要なポイントなので、ぜひ見てほしいです〜(^o^)


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

先生! 、、、好きになってもいいですか?

映画「先生! 、、、好きになってもいいですか?」オリジナル・サウンドトラック
島田響は、初恋も未経験の内気な女子高生。ふとしたきっかけで、隣のクラスの担任で世界史の教師・伊藤と言葉を交わし、生まれて初めて恋心を抱く。ぶっきらぼうだが生徒思いの優しい教師の伊藤に思い切って自分の気持ちを伝えた響だったが、伊藤は教師と生徒という立場から、響の思いには答えられないと告げる。だが、響の純粋でまっすぐな思いは次第に伊藤の心を動かしていく…。

ぶっきらぼうな教師に初めて恋をしたピュアな高校生の恋を描く青春ラブストーリー「先生! 、、、好きになってもいいですか?」。原作は「高校デビュー」「青空エール」「俺物語!!」など、実写映画化作品が続く人気漫画家・河原和音のコミックだ。教師と生徒の恋というモチーフは、その立場の違いから、シリアスになる場合が多い。だが本作は、どろどろの展開ではなく、思いを伝えようとする響と、思いを封印しようとする伊藤の、揺れ動く気持ちに焦点を当てたのは好感が持てる。しかしあまりにも現実離れしたお話に、がっかりしたのも事実だ。

もしやこれはファンタジー?!と思うほど、ありえない場面やせりふが続くので、気恥ずかしくて微苦笑を禁じ得ない。特に後半の展開は雑すぎてファンタジーにすらなっていない。響に思いを寄せる藤岡君のエピソードは中途半端なままだし、「好きになっちゃいけない人なんていない」というせりふには思わずツッコミを入れそうになった。せめて、純粋でまっすぐな思いが人を傷つける意味だけでも、もう少し掘り下げてほしかった。それでも、現実には存在しないからこそ、こんなピュアな恋愛を信じたいと願う大人もいるのだろうか。女優を魅力的に撮ることで定評がある三木孝浩監督は、淡く柔らかな光の中に響役の広瀬すずを置いて、最高に可愛らしくスクリーンに焼きつけている。
【45点】
(原題「先生! 、、、好きになってもいいですか?」)
(日本/三木孝浩監督/生田斗真、広瀬すず、竜星涼、他)
(現実離れ度:★★★★★)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

彼女がその名を知らない鳥たち

映画「彼女がその名を知らない鳥たち」オリジナル・サウンドトラック
15歳年上の男・陣治と同居し、彼の少ない稼ぎに依存しながら、働きもせず怠惰に暮らす十和子は、8年前に残酷なやり方で自分を捨てた男・黒崎のことが忘れられずにいた。ある日、十和子は、黒崎の面影と重なる妻子持ちの男・水島と出会い、彼との情事に溺れるようになる。そんな中、突然やってきた警察から黒崎が行方不明になったと知らされる。どんなに罵倒されても十和子につくし続ける陣治が執拗に自分を付け回していることを知った十和子は、黒崎の失踪に陣治が関わっているのではないかと疑い始める…。

嫌悪感を抱く男に依存する身勝手な女と、異常なまでに彼女に執着する下品な男の歪んだ関係を描くミステリー仕立ての恋愛映画「彼女がその名を知らない鳥たち」。原作はイヤミスの小説家・沼田まほかるの人気小説だ。何しろ、共感度0パーセント、不快度100パーセントとのキャッチコピー通り、登場人物はろくでなしばかり。自分勝手で自堕落な暮らしを送る自己中女の十和子。不潔で卑屈でストーカー気質の中年男・陣治。身勝手で卑劣、時に暴力さえふるうゲスな男・黒崎に、不誠実で薄っぺらなクズ男・水島。十和子のせりふではないが、どいつもこいつも虫唾が走るヤツばかりだ。

徹底的に共感を拒むキャラクターたちが引き起こす事件には、もちろん意外なオチがある。これが案外読めてしまうので、ミステリーとしては少し弱い気がするが、自分勝手な十和子が欲望に忠実であることがひとつの鍵だ。そう思ってこのラストを思い返すと、この作品が、究極のラブストーリーだと思えてくる。白石和彌監督は「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」などの実録もので人間の醜い部分を容赦なくあぶり出したが、本作では、欠点を隠そうともしない人間臭い男女を通して愛の本質に迫っている。その気概に、蒼井優と阿部サダヲの2人が凄みのある演技で答えた。劇中では、十和子の心にふと紛れ込む幻想が、醜い現実をより一層際立たせるが、最後に登場する鳥の飛翔の美しさは、愛に飢えた人々に一筋の光を与えているかのようだった。
【70点】
(原題「彼女がその名を知らない鳥たち」)
(日本/白石和彌監督/蒼井優、阿部サダヲ、松坂桃李、他)
(共感度:☆☆☆☆☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

ブレードランナー 2049

Blade Runner 2049 (Original Motion Picture Soundtrack)
2049年、カリフォルニア。従順なレプリカント(人造人間)が労働力として製造され、人間社会と危うい共存関係を保っていた。旧型の違法レプリカントを追うLA市警のブレードランナー・Kは、レプリカント開発に力を注ぐウォレスの巨大な陰謀を知る。たどり着いたのは、かつて優秀なブレードランナーとして活躍しながら、ある女性レプリカントと共に忽然と姿を消し、30年間行方不明になっていたデッカードだった。だが、ウォレス社の陰謀の闇の鍵を握るデッカードには、命懸けで守り続けてきた秘密があった…。

レプリカントと捜査官ブレードランナーの戦いを描いたSF映画の金字塔「ブレードランナー」の35年ぶりの続編「ブレードランナー 2049」。ブレードランナーのKが目撃するのは、アイデンティティーを求めてさ迷うレプリカントの新たな進化だ。そこには、ある奇跡の存在があり、Kに、人間とレプリカントとの違いや、人間らしさとは何かという疑問を投げかけることになる。抑圧された職場で働き、貧困地区で、虐げられ、蔑まれながら生きるKというキャラクターが抱える深い孤独は、例えようもないほど悲しい。ハードボイルドな物語に流れる通奏低音は、我々は何のために生まれてきたのか?という根源的なテーマなのだ。

前作があまりに伝説的な作品なので、続編への不安は誰もが持つことだろうが、その心配は無用と断言する。今や巨匠の風格さえ漂うドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は、前作に敬意を払いつつ、進化・拡張したストーリーを作り上げた。レプリカントが心を持つという設定は、感情を持つ人工知能という形ですでに現実になっている。本作の素晴らしいところは、“作りもの”であるレプリカントの心や記憶が人間よりも人間らしいものだとしたら、“本物”である人間の人間らしさとはいったい何かという問いに収束していく点だ。Kとジョイの独創的なラブシーンや、守り抜いた秘密へとたどり着いたデッカードの表情を見れば、その答えの一つは愛だと思っても差し支えないだろう。一流のキャスト・スタッフ、哲学的で深淵なメッセージ、しびれるほど圧倒的な映像美と、驚愕と恍惚がせめぎあう2時間43分だ。文句無しの傑作である。
【95点】
(原題「BLADE RUNNER 2049」)
(アメリカ/ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督/ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、アナ・デ・アルマス、他)
(映像美度:★★★★★)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

ゲット・アウト

Get Out [Blu-ray] [Import]
NYで写真家として活躍している黒人男性クリスは、白人の恋人ローズの実家に招待される。だが、過剰なまでの歓待と、差別主義者ではないはずの家に黒人の使用人がいることに、クリスはかすかな違和感を覚えた。さらに、夜中に庭を猛スピードで走り去る管理人や、窓ガラスに映った自分を凝視する家政婦などに驚かされる。翌日、パーティーが催されるが、客は白人ばかり。ただ一人、若い黒人をみつけたクリスが、何気なく彼を撮影すると、フラッシュに驚いたその青年は鼻血を出しながら「出ていけ!」と叫ぶのだった。何かがおかしい。そう感じたクリスは、ローズと一緒に実家から出ようとするが…。

黒人青年が白人の恋人の実家で壮絶な恐怖体験をする異色ホラー映画「ゲット・アウト」。黒人青年が白人女性の恋人の実家を訪ねる展開は「招かれざる客」を思い出すが、この作品は異人種間の恋や融和、無理解を描くなどという“なまぬるい”話ではない。人種差別は、映画では何度も扱われた見慣れたモチーフだが、それをモダンホラーという切り口で描くなんて、誰も思いつかない離れ業だ。

黒人青年の失踪事件や、鹿が車で引かれる冒頭から、郊外の豪華なお屋敷の異様な住人たち、精神科医でもあるローズの母が施す催眠療法など、いちいち怪しい。それらがすべてが繋がってくる展開が見事で、荒唐無稽な設定なのに、思わず唸ってしまう。後半はホラー、サスペンス、アクションと怒涛の展開で、それが現実的に可能かどうかはさておき、恐ろしさと驚きは、文字通り衝撃的だ。ジョーダン・ピール監督は、コメディアン出身で、これが監督デビューだそう。緻密な脚本と高度なブラックユーモア、人種差別という社会派ネタをホラーサスペンスで料理するセンス、有名スターを使わないことでストーリーに常に注意を引き付けるテクニックなど、その手腕は驚くほど鮮やかだ。究極の恐怖の裏側と着地点に、今も根深い人種差別意識がしっかりと見てとれる。間違いなく拾い物の1本だ。
【85点】
(原題「GET OUT」)
(アメリカ/ジョーダン・ピール監督/ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ、ブラッドリー・ウィットフォード、他)
(新感覚ホラー度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き コトラ家族と世界のいいコたち



動物写真家の岩合光昭が、ネコ目線で世界各地の猫を撮影するNHKの人気テレビ番組の劇場版「劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き コトラ家族と世界のいいコたち」。津軽のリンゴ農園で暮らす“コトラとその家族”の姿を未公開映像を交えて紹介するパートと、番組で紹介した世界のネコのなかから、厳選した“いいコたち”の姿を映し出すパートで構成された動物ドキュメンタリーだ。

岩合光昭氏は、自身がライフワークとして40年以上もネコを撮り続けているというだけあって、ネコの自然な姿をとらえるのが実にうまい。人間のすぐ近くで暮らすネコの中にひそむ野生を大切にしているという撮影方法は自然との関わりが綿密で、この劇場版でもたっぷりと堪能できる。TV番組のための撮影時から、いつか劇場版を、との思いがあったそうで、大スクリーンに映えるネコの繊細な表情をとらえるアップの映像が多いのが印象的だ。さりげないが魅力的なシーンが多く、このワンカットを撮影するのに、どれほどの時間と労力を費やしたのかと感服する。

私自身が自他ともに認める猫好きなので、映画を見ているだけで幸福感にどっぷりと浸ってしまい、もはや映画レビューなど書ける精神状態ではないのだが(笑)、動物を擬人化したりせず、あくまでもネコの野性、習性、生命力を尊重しつつ、世界各国の飼い主の猫愛をも伝える手法は、正統派の動物ドキュメンタリーと言えよう。ナレーションの吉岡里帆の静かであたたかい声も大きな魅力だ。四季を通してネコたちと関わり、世界の街角で生きるネコたちの多彩な魅力に迫るこの作品は、ネコと同じ高さのカメラで、ネコが見ているであろう世界を疑似体験できるのが嬉しい。ネコ好きの心をとらえて離さない、珠玉の作品だ。
【65点】
(原題「劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き コトラ家族と世界のいいコたち」)
(日本/出演:岩合光昭、語り(ナレーション): 吉岡里帆、他)
(猫愛度:★★★★★)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

我は神なり



ダム建設のためにもうすぐ水没する田舎の小さな村に、粗暴なトラブルメーカーの中年男ミンチョルが久しぶりに戻ってくる。だがミンチョルの妻子を含む村人たちは皆、彼の不在中に建てられた教会に通い、若い牧師のソンを崇めていた。背後には、インチキ教団を率いる詐欺師ギョンソクがいて、これが、神の救いという甘言で、村人たちのなけなしの財産を狙う陰謀であることを見抜いたミンチョルは、ギョンソクの正体を村人に必死で教える。だが札付きのワルのミンチョルの言うことなど、村人も警察も耳を傾けず、ミンチョルは“悪魔に憑かれた男”の烙印を押されてしまう…。

信仰をテーマに、人間の善悪を追求する韓国発の社会派アニメーション「我は神なり」。ゾンビ映画「新感染」で日本でも知名度を上げたヨン・サンホ監督は、実はもともとアニメーション作家だ。アニメといってもファンタジックな設定など皆無で、本作は実写映画を想定してシナリオを書いたというだけあって、強烈にシビアな内容である。偽りの信仰、偽善と詐欺、暴力と性、格差など、あまりにも生々しい内容と、救いのない展開に言葉を失った。日頃の悪行ゆえに誰からも信じてもらえない主人公という設定はどこか寓話のようだが、人には言えない過去を持つ牧師の背景も複雑なもので、彼の迷いや苦悩が善悪の境をより曖昧にしている。生真面目な性格で大学進学を望んでいたミンチョルの娘の、壮絶な転落が物語るのは、真実から目を背けた者が払う代償だ。

ミンチョルの声を担当しているのは、日本映画への出演も相次ぎ、今最も注目されているヤン・イクチュン。韓国映画のアニメーションを見る機会は少ないが、少なくとも本作を見る限りは、情け容赦ないほど冷徹に現実を投影する作風のようだ。原題のサイビとは、THE FAKE(嘘、偽り)の意味。真実を語る悪人と、偽りを言う善人という構図は、人間は信じたいものしか信じない愚かな生き物だと言わんばかり。強烈なパンチ力を持った社会派アニメの怪作である。
【85点】
(原題「THE FAKE」)
(韓国/ヨン・サンホ監督/(声)ヤン・イクチュン、クォン・ヘヒョ、オ・ジョンセ、他)
(救い度:★☆☆☆☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
シネマッシモにようこそ
◇ シネマッシモについて ◇

このブログが気に入ったら、ポチッとクリックお願いします♪
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

映画レビュー用BRバナー
インフォメーション


映画ライター渡まち子が運営するセカンド・ブログ「映画の中に猫がいる」もよろしく!【猫目線】で語る映画評で、のんびり、まったり運営中です(笑)。 猫好きの方、映画好きの方、ぜひ遊びにきてください。相互リンクも募集中!
こちらからどうぞ!
おすすめ情報
作品検索はこちら
Google
WWW を検索
このブログ内を検索
コメント(承認済)
映画レビュー(長文)索引

    
    
    
    
    
    
    
  
    

A−Z
0−9
カテゴリ
お仕事受注
映画評やコラムの執筆、講演など、映画に関する仕事を承ります。連絡はメールでお気軽にどうぞ。

 メールはこちらから↓
cinemassimo555★jcom.home.ne.jp
(★を@に変更して下さい)

執筆やラジオ出演など、メールと電話で対応可能な場合は、全国から仕事を受注していますので、まずはお問合せください。
プロフィール
プロフィール more
◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
おすすめ情報
おすすめ情報

おすすめ情報

楽天市場
おすすめ情報

Archives
相互リンクについて
相互リンクについて

  ↑ 必ずお読みください。
タグクラウド
  • ライブドアブログ