映画通信シネマッシモ


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

ダークタワー

Dark Tower / [Blu-ray] [Import]
巨大な暗黒の塔(ダークタワー)、魔術を操る黒衣の男、拳銃使いの戦士らが現れる悪夢に毎日うなされる少年ジェイクは、その夢を周囲の大人に訴えるが信じてもらえない。ある日、夢に出てくる中間世界と呼ばれる異界の入り口が、時空を超えて現実世界につながっている場所を発見する。中間世界へと導かれたジェイクは、世界のバランスを維持するタワーの守護者であるガンスリンガーのローランドと、タワーを破壊しようとする黒衣の男ウォルターの死闘に巻き込まれていく…。

孤独な少年が迷い込んだ異世界で世界のバランスを維持するタワーを巡る争いに巻き込まれるダーク・ファンタジー「ダークタワー」。原作はスティーブン・キングがライフワークだと語る全7冊にも及ぶ大長編小説だ。もっとも映画は、原作を大胆に翻案していて、最後の戦士ガンスリンガーがダークタワーを目指す長い長い物語は、不思議な能力を持つ孤独な少年のストーリーに変わっている。少年の成長物語というほどの変化はないし、わずか95分の上映時間から分かる通り、物語は駆け足で通り過ぎて、ゆっくり余韻にひたる時間もなく、壮大な世界観も伝わらない。原作ファンは相当ご立腹のようだ。まぁ、キング原作の映画化は原作ファンが満足することなどほとんどないそうなので、ある意味、問題なしとも言える。

それはさておき、手軽でスタイリッシュなガンアクション・ムービーを見ると割り切れば、そこそこ楽しめる作品だ。日常から異世界へ迷い込み、世界の危機を救う。手垢のついたストーリーだが、「マトリックス」を例に出すまでもなく、多次元世界ものはやはり興味深い。タワーを守る使命を背負ったガンスリンガー役のイドリス・エルバの、切れ味鋭いアクションとカリスマ性、威厳に満ちた存在感が最大の魅力だ。
【50点】
(原題「THE DARK TOWER」)
(アメリカ/ニコライ・アーセル監督/イドリス・エルバ、マシュー・マコノヒー、トム・テイラー、他)
(深み度:★☆☆☆☆)


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エターナル



証券会社の支店長カン・ジェフンは、それなりに成功した人生を送ってきた。だが会社が不良債権事件を起こし、すべてを失ってしまう。韓国から失意のまま、オーストラリアに離れて暮らす妻スジンと息子のもとに向かったジェフンだったが、現地の男性と親しそうにする妻の姿を目にしショックを受ける。黙ってその場を離れたジェフンは、不良グループからお金をだまし取られて困っていた女子学生ジナを助け、家族の秘密を探りながら、それまでの人生をふり返っていく…。

家族の秘密を探るうちに思いがけない事実にたどり着く切ないラブサスペンス「エターナル」。英語習得も兼ねて妻子をオーストラリアへと送り出すという設定は、学歴社会の韓国らしい。また家族を愛しながらも家庭を顧みるヒマもないほど働いてきた男が人生を振り返るのも、競争社会でもまれながら生きる韓国の現状を表している。一瞬ですべてを失った主人公ジェフンは、身ひとつでオーストラリアを訪れ、妻子を影ながら見つめているが、ストーカーすれすれの彼の行為や、なぜ素直に妻に話しかけないのかという疑問は、終盤に明かされる。物語には衝撃的な仕掛けがあり、冒頭から感じる微妙な違和感も、その大きな仕掛けゆえなのだ。

ハリウッドでも活躍する国際派スターのイ・ビョンホンは、外国映画ではアクションを、自国の韓国映画では最近は好んで悪役のようなクセのある役柄を演じているが、本作ではとても静かで内向的な男を演じている。寂しさ、虚しさ、後悔や諦めに近い感情を視線だけで表現する静かな演技は、印象に残るものだ。物語の大きな秘密は、カンのいい映画ファンなら途中で予測がつくだろう。自分よりも家族の幸せを願っているのに、それを上手く表す術を知らない男の哀愁が切ない。壮大で美しいオーストラリア・ロケの映像が印象的だ。
【60点】
(原題「SINGLE RIDER」)
(韓国/イ・ジュヨン監督/イ・ビョンホン、コン・ヒョジン、アン・ソヒ、他)
(家族愛度:★★★★☆)

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リバーズ・エッジ

リバーズ・エッジ オリジナル復刻版
郊外の工業地帯の町。女子高生のハルナは、自由に生きていても、何事にも執着できず、息苦しさを感じていた。ある時、カレシの観音崎から執拗なイジメを受けているゲイの山田を助けたことがきっかけで、山田から「僕の宝物を見せてあげる」と誘われ、夜の河原にある死体を見る。同じく宝物として死体の存在を共有する摂食障害のモデル・こずえが現れ、3人は友情とは異なる歪んだ絆で親しくなっていく。一方で、ハルナと山田の距離が近くなるのを見て、暴力を加速させる観音崎、ハルナの友人なのに観音崎と身体の関係を続けるルミ、山田が同性愛者と知らずに思いを過激に募らせるカンナなど、若者たちのさまざまな感情が交錯していく…。

都市に生きる若者たちの不安をすくい取った異色の青春映画「リバーズ・エッジ」。原作は「ヘルタースケルター」など多くの代表作を持つ岡崎京子による人気同名コミックだ。時代背景は90年代だが、本作に描かれる漠然とした焦燥、欲望、衝動などは、不思議なほど現代の若者たちの心の揺らぎを照射している。時折挿入されるキャラクターのインタビューが90年代から現代へのメッセージに思えてくるほどだ。河原に放置された死体を見て、勇気や安心を感じる歪な感情は、死をまのあたりにしないと生を感じられないからだろうか。死体を共有することで繋がりを感じる彼らの心の隙間は、想像以上に深く暗い闇に思える。そしてその闇は、爆発寸前まで感情が膨らんだ若者たちをある悲劇へと導いていくのだ。

行定勲監督にとって初めての漫画原作ものだそう。この作品を選ぶとは、なかなかのセンスだ。暴力、いじめ、セックスなど、描かれる内容はハードだが、R15も辞さない演出は的確なものだ。俳優たちは皆、体当たりの演技で好演しているが、やはり若き演技派の二階堂ふみが群を抜く。物事にも人にも執着できず、空虚を抱えながらも、生きることを切望するハルナ。ハルナのインタビューが、キャッチコピーにある“平坦な戦場”で生き抜く不器用なヒロインの覚悟を物語っていた。
【70点】
(原題「リバーズ・エッジ」)
(日本/行定勲監督/二階堂ふみ、吉沢亮、上杉柊平、他)
(焦燥感度:★★★★☆)


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グレイテスト・ショーマン

グレイテスト・ショーマン(サウンドトラック)
19世紀半ばのアメリカ。興行師のP・T・バーナムは、妻と二人の娘を幸せにすることを願い、さまざまなことに挑戦し、失敗と成功を繰り返していた。差別や偏見の中で生きていたオンリーワンの個性を持つ人々を集めて今までにないショーをヒットさせた彼はついに大成功するが、裕福になっても上流社会から認めてもらえないことに不満を持ち、美貌のオペラ歌手ジェニー・リンドのアメリカ公演を成功させることで、一流のプロモーターとして名士の仲間入りを果たす。一方、上流階級出身の興行師で、バーナムの若き相棒フィリップは、団長をまかされ、何とかショーを成功させようと懸命に取り組んでいた。だが、彼らの行く手にはすべてを失いかけない危険が待ち構えていた…。

実在した興行師P・T・バーナムの半生を描くミュージカル「グレイテスト・ショーマン」。芝居や音楽が特権階級のものだった時代に大衆向けのショービジネスの原点を築いた興行師フィニアス・テイラー・バーナムは、サーカス形式や、興行列車での巡業というスタイルの発案・確立などで知られ、映画「地上最大のショウ」(1952年)のモデルとなった人物だ。一方で、ホラ男、山師という評判もある多面的な男でもある。実際、フリークスとしてひっそりと生きていた人々を表舞台に押し上げたサーカスは、彼らに活躍の場を与えたが、同時に見世物にしたのも事実で、今も評価が分かれるところだ。だが映画は難しいドラマは潔く排除し、家族思いで上昇志向の強い男のサクセス・ストーリーとして、スピーディに展開するとびきりゴージャスなミュージカルとして、誰もが楽しめるエンタテインメントに仕上がっている。

何しろ、冒頭からさく裂する歌とダンスの圧巻のパフォーマンスのすべてに目と耳が釘付けだ。多芸多才なエンターテイナーのヒュー・ジャックマンと、古巣のミュージカルで水を得た魚のように生き生きしているザック・エフロンの二人は、キレキレのダンスと見事な歌を披露。他の出演者たちのパフォーマンスも魅力にあふれている。表層的なドラマの軽さに不満を感じても、ここまで豪華な歌とダンスを見せられれば満足感は得られるはずだ。ずっとバーナムに否定的だった評論家が、階級や人種の壁を取り除いたバーナムの功績を静かに評価する場面は、大衆芸術の真価を語っていた。主題歌「This is me(これが私)」に本作のメッセージのすべてがつまっている。
【65点】
(原題「THE GREATEST SHOWMAN」)
(アメリカ/マイケル・グレイシー監督/ヒュー・ジャックマン、ミシェル・ウィリアムズ、ザック・エフロン、他)
(ゴージャス度:★★★★★)


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試写室だより 18.02月上旬

試写室だよりアカデミー賞を前にして、秀作、話題作のマスコミ試写、公開が続いて、最近とっても濃い映画ライフを送っております〜(←嬉しい悲鳴)。

通常、本国(概ねアメリカ)で公開前の作品のマスコミ試写では、セキュリティーが非常に厳しくなります。荷物チェックや、スマホ、タブレット、デジカメなど録音・録画機器の所持の確認、時にはそれらを預ける場合も。上映中、係員が前方に座って、不審な動きをしている不届きモノがいないか(汗)チェックするなど、厳重な環境で見ることになります。

そんな中、先日の某作品の試写では、スマホを預け、手荷物の検査までしたのに、なぜかボディチェック(専用の機械で頭から足元までスキャン)はなかったんですよね〜、なぜ、なぜ??ちらっと宣伝担当さんに聞いてみたら、本国の配給元が「別にいいよ」って言ったらしいんですが…(悩)。ここにきて、今さらながらセキュリティーの謎が深まっております (--;)

最近見た主な映画は以下。

「15時17分、パリ行き」「ペンタゴン・ペーパーズ」「ブラックパンサー」「リメンバー・ミー」「去年の冬、きみと別れ」「ちはやふる 結び」「曇天に笑う」などなど。

平昌(ピョンチャン)オリンピック、連日TV観戦しております。しかし、強烈に寒そうだなぁ、ピョンチャンって(苦笑)。冬季五輪の屋外競技は、天候に大きく左右されるので、選手の皆さんには、万全のコンディションで実力を発揮してほしいです。

ところで、フィギュアスケート女子のエフゲニア・メドベージェワって、ちょっとレイチェル・ワイズに似てますね。後輩のアリーナ・ザギトワはナタリー・ポートマンとアン・ハサウェイを足して2で割った感じ。2人とも美しい。もちろん演技も素晴らしい!強敵揃いだけど、頑張れ、ニッポン〜ッ!!


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ジュピターズ・ムーン



ハンガリー。医師のシュテルンは医療ミスによって病院を追われ、難民キャンプで働いている。彼は、遺族に渡す賠償金を稼ぎ、訴訟を取り下げてもらうことを狙っていて、難民から違法に金をもらってはキャンプから逃がしていた。そんな彼のところに、国境警備隊に銃撃され瀕死の重傷を負ったシリア人少年アリアンが運ばれてくる。銃撃のショックからか、アリアンには重力を操り浮遊する能力と、さらには傷を自力で治癒する力が備わっていた。そのことを知ったシュテルンは、金儲けに使えるとキャンプから彼を連れ出す。一方、無抵抗のアリアンを銃で撃った国境警備隊は、隠ぺいを図ろうと、二人を追跡するが…。

浮遊能力を持つシリア難民の少年と彼を利用し金儲けを企む医師との逃走劇を通して現代ヨーロッパの混沌を描いた異色エンタテインメント「ジュピターズ・ムーン」。不思議な力がなぜ少年に備わったかは明確に描かれないのでファンタジーではないし、難民問題やテロなどが登場するとはいえ社会派映画とも少し違う。アリアン自身、宙に浮くことに慣れておらず、ふんわりと浮き上がってはゆっくりと泳ぐように移動する。そんな浮かぶアリアンを見て、あるものは金儲けに利用し、あるものは銃を向け、あるものは天使を見たと祈りを捧げる。自由の象徴に思えるアリアンの浮遊だが、自分とは違う他者、とりわけ異質なものに対する寛容の心があるかと問われているような気がしてならない。

この作品で何よりも感じるのは、浮遊の陶酔感だ。CGをほとんど使わず実際に俳優をワイヤーで吊ったというカメラワークが斬新で美しい。劇中には、激しい銃撃戦やカーチェイスなどのアクションシーンもあって結構ハラハラさせられるのだが、少年を金儲けに利用しようとしていた医師がやがて彼を守るために命がけで戦うように、古都ブダペストの街中を一望できるほど高く舞い上がったアリアンが、醜い地上の現実から自由で美しい世界へと向かうことを願わずにはいられなくなる。ハンガリーの気鋭監督コルネル・ムンドルッツォは「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ)」でも人と人ならざるものの関係を描いたが、本作ではさらにそのエッセンスを純化させた。ファンタジックな社会派SFとして、忘れられない1本になりそうだ。
【75点】
(原題「JUPITOR'S MOON」)
(ハンガリー・独/コルネル・ムンドルッツォ監督/メラーブ・ニニッゼ、ジョンボル・イエゲル、ギェルギ・ツセルハルミ、他)
(映像美度:★★★★☆)


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今夜、ロマンス劇場で

今夜、ロマンス劇場で(オリジナル・サウンドトラック)
1960年代。映画監督を夢見る青年・健司は、1本の映画を見るために、映画館のロマンス劇場に通いつめていた。彼は古いモノクロ映画「お転婆姫と三獣士」に登場するお姫様・美雪に思いを寄せていたのだ。ある時、激しい落雷と共に、目の前に現れたのは、スクリーンの中の美雪その人。ただし彼女は白黒のまま。驚く健司は高飛車な彼女に振り回されながらも、次第にカラフルに変わる美雪への恋心を募らせていく。だが彼女にはある秘密があった…。

映画監督志望の青年とスクリーンの中から飛び出したお姫様とのファンタジックなラブストーリー「今夜、ロマンス劇場で」。出会うはずのなかった男女が出会い、奇跡の恋に落ちる。そんな物語を否定する気はないし、それこそが映画のロマンチシズムだとも思う。だが本作はあまりにも“どこかで見たことある”感が満載すぎて、どうにもノレない。スクリーンからキャラクターが飛び出すのは「カイロの紫のバラ」、白黒の世界からカラーの世界の変化は「カラー・オブ・ハート」。お姫様が身分を隠して過ごすのは「ローマの休日」だし、白地に刺繍のドレス姿は「麗しのサブリナ」と、オードリー・ヘプバーンのイメージをそのまま拝借。人のぬくもりに触れると消えてしまうという美雪の秘密と恋の顛末はあえて明かさないが、それも思い当たる作品があったりする。過去作へのオマージュと言われても、これではあまりに数が多すぎて、どうにもオリジナリティーが感じられず、困ってしまった。

とはいえ、見所がないわけではない。何しろ綾瀬はるかが魅力的だ。高飛車でお転婆なプリンセスは、50年代風のカラフルでクラシカルな衣装を次々に披露。その数、なんと25着である。美雪の心情に寄り添うように変わるファッションの25変化は本当に楽しい。古き良きノスタルジー、映画スターがスターらしかった時代(北村一輝が好演)、映画を愛するものだけに訪れる奇跡。そんな不思議ときらめきを素直に楽しむべき作品なのだろう。
【45点】
(原題「今夜、ロマンス劇場で」)
(日本/武内英樹監督/坂口健太郎、綾瀬はるか、本田翼、他)
(既視感度:★★★★★)


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ぼくの名前はズッキーニ

9歳の少年イカールは、母がつけてくれた“ズッキーニ”というニックネームを大切にしていた。だが不慮の事故で母が亡くなり、ズッキーニは同年代の子供たちが共同生活を送る孤児院・フォンテーヌ園で暮らすことになる。最初は周囲になじめずにいたズッキーニだが、心優しい問題児のシモンやちょっと大人びた少女カミーユらと親しくなり、次第に心を開いていく。園にいる子どもたちは同じような境遇で問題を抱えている子ばかりで、ズッキーニは彼らとかけがえのない友情を深めていくが。…。

フランス発のストップモーションアニメ「ぼくの名前はズッキーニ」。子どもたちの繊細な心理描写と、ティム・バートンの「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」を思わせるようなユニークなパペットのビジュアルが特徴的な、珠玉のアニメーションだ。現実社会の厳しさをしっかりと描いているが、行き場のない子どもたちとって孤児院が小さな癒しの場となっている点が興味深い。扶養手当欲しさにカミーユを引き取ろうとする叔母を子どもたちが出し抜くシークエンスは優れたサスペンスだし、それぞれ運命は違っても友情で結ばれた子どもたちの絆には、胸が熱くなる。

同じストップモーションアニメの「ウォレスとグルミット」の洗練や「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」の華麗さに比べると、技術的には劣っているし動きもぎこちない。だが本作はそれが欠点にならず、むしろ素朴で牧歌的な作風と物語とがフィットしているように感じた。少年の孤独、切なさ、不安。長い長い時間をかけて丁寧に作られるストップ・モーション・アニメがそれらを存分に表現している。どう生きていけばいいのか、希望を持っていいのか、友情は永遠か。まだ答えがみつからず迷いながら光の見える方向へと踏み出したズッキーニの姿が、いつまでも記憶に残る。アカデミー賞をはじめ、世界中の映画祭で絶賛されたのが納得の秀作アニメだ。
【70点】
(原題「LIFE AS A ZUCCHIN/MA VIE DE COURGETTE」)
(スイス・仏/クロード・バラス監督/(声)峯田和伸、麻生久美子、リリー・フランキー、他)
(ユニーク度:★★★★☆)


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悪女/AKUJO

The Villainess
幼い頃に父を殺された少女スクヒは、犯罪組織の殺し屋として育てられ、やがて育ての親ジュンサンに恋し結婚する。だがまもなくジュンサンが対立する組織によって殺される。スクヒはたった一人で復讐を実行するが、その後彼女は国家組織に身柄を拘束されてしまう。10年後の自由と引き換えに国家専属の暗殺者となったスクヒは、顔や名前を変え、ジュンサンの忘れ形見の娘と共に郊外のマンションに住み、第2の人生を送ることになる。そんな時、スクヒが国家の指令で出会った暗殺ターゲットは、あまりにも思いがけない人物だった…。

国家直属の最強の女殺し屋が愛と裏切りに翻弄される運命を描くバイオレンスアクション「悪女/AKUJO」。韓国のアクション映画はその激しさにいつも驚かされるが、本作のインパクトは、とりわけすさまじい。父を殺され裏社会の殺し屋として育ったヒロインは、まず冒頭7分にも及ぶ殺戮を繰り広げる。長回し風のカメラワークで「ハードコア」を思わせる一人称カメラは、なかなかヒロインを映さないじらしと共に、これは尋常な映画ではないという予感を漂わせた。ハイレベルなアクションは、一気に観客を物語に引きずり込んでいく。

物語は、スクヒをめぐって、愛憎や陰謀、意外な黒幕などが暗躍するドラマチックなものだ。ヒロインのキャラクター造形や背景は、「レオン」や「ニキータ」を思わせる点が多数ある。ただリュック・ベッソンをはるかに超えているのは、スタントマン出身のチョン・ビョンギル監督が、徹底的に“魅せるアクション”にこだわっていることだ。主演のキム・オクビンはアクションが未経験だったというが、彼女はテコンドーとハプキドーの黒帯保持者というから、もともと身体能力は高いのだろう。ドレスや下着などの美しく妖艶なコスプレで激しいアクションを披露する様には思わず見惚れた。無論、特濃の流血演出が得意の韓国映画、それだけでは終わらない。やがてスクヒはナイフや日本刀、斧を片手に暴走するバスに飛び移り、狂気の大乱闘を繰り広げる。いやはや、恐れ入った。資料によると、韓国映画界では“女性アクション映画は受けない”と言われているそうだが、どうやらそれは間違いだ。「ワンダーウーマン」「アトミック・ブロンド」、そして本作。女性アクション・ムービーの勢いが世界中で止まらない。
【70点】
(原題「AKNYEO/THE VILLAINESS」)
(韓国/チョン・ビョンギル監督/キム・オクビン、シン・ハギュン、ソンジュン、他)
(流血度:★★★★★)


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サニー/32

映画『サニー/32』オリジナル・サウンドトラック
冬の新潟のとある町。24歳の誕生日を迎えた中学校教師の赤理(あかり)は、突然、二人組の男に拉致・誘拐される。廃屋に彼女を監禁した柏原と小田は、赤理に「ずっと会いたかったよ、サニー」と呼び掛ける。男たちは赤理のことを、2003年にカッターナイフで同級生の首を切って殺害した当時11歳の少女だと思い込んでいた。特徴的な決めポーズから32(サニー)と名付けられた加害者少女を神聖化する柏原と小田は、赤理に好みのドレスを着せ、写真や動画をネットの掲示板にアップしていく。一方、赤理は何とか脱出しようと試みるのだが…。

所属するNGT48卒業を発表したアイドルで、きたりえこと北原里英が主演を務める「サニー/32」。未成年犯罪の殺人犯を神格化するカルト集団と、監禁された女性の物語だが、無論、アイドル映画ではない。何しろメガホンを取るのは「凶悪」などの白石和彌監督だ。共演にもピエール瀧、リリー・フランキー、門脇麦といった、クセモノの実力派が揃う。北原も極限まで追い込まれたのだろう、身体を張った演技で熱演している。

モデルとなったのは長崎県で2004年に起こった小学生による同級生殺害事件。本作では“もっともかわいい殺人犯”サニーを神格化し、それぞれの方法で偏愛する人々の暴走や狂気、その裏側の心の傷を描きつつ、衝撃的な事件の逃れられない“後遺症”を冷徹なまなざしで描いている。廃屋に加わる予想外の人々、訪れる流血と死、予測不能の展開は、人間の本性を露わにするものだ。同じように実在の事件をモチーフにしていても「凶悪」よりもより複雑な心理描写が盛り込まれているのは、登場人物の数だけサニーが存在するからだろう。これは14年目に動き出したダークで過酷な冒険物語だ。次第に正気を失う赤理を演じる北原の本気度がすごいが、登場した瞬間にストーリーを激震させる門脇麦に釘付けになる。
【65点】
(原題「サニー/32」)
(日本/白石和彌監督/北原里英、ピエール瀧、門脇麦、他)
(二転三転度:★★★★☆)


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