映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「アトミック・ブロンド」「バリー・シール」「あゝ、荒野 後篇」「我は神なり」etc.

三度目の殺人

三度目の殺人【映画ノベライズ】 (宝島社文庫)
勝つことにだわる弁護士・重盛は、同僚に頼まれてやむを得ず、30年前にも殺人の前科がある三隅の弁護を担当する。三隅は解雇された工場の社長を殺害し、死体に火をつけた容疑で起訴されていた。犯行を自供している三隅の死刑は確実なのだが、重盛はなんとか無期懲役に持ち込もうと調査を開始する。だが三隅は会うたびに供述を変え、動機も希薄だった。やがて三隅と、被害者の娘・咲江との接点や咲江の衝撃の告白が明るみに出て、それまでとは異なる事実が浮かび上がってくる…。

勝利にこだわる弁護士が殺人犯との交流で新たな真相にからめとられていく法廷心理サスペンス「三度目の殺人」。ホームドラマのイメージが強い是枝裕和監督だが、本作は、見るものを翻弄するミステリアスな心理サスペンスである。裁判で勝つためには、必ずしも真実や正義は必要ないというのが主人公・重盛のモットーだが、三隅の二転三転する供述に惑わされ、初めて真実が知りたいと切望する。重盛の心の変化はそのまま観客にも伝わるが、物語は単純な謎解きにはなっていない。残酷な殺人、咲江のおぞましい告白、“空っぽの器”であるはずの三隅の底なしの闇は、自信に満ちていた重盛を内部から崩壊させ、真相から遠ざかる。終始、寒々しいトーンの緊迫した映像が、往年のフィルムノワールのようなムードを醸し出しているのも効果的だ。

真相がつかめないまま物語が進んでいき、タイトルの意味さえも、観客に委ねられるこの作品は、ある種の実験映画かもしれない。ただそれでもなお、物語に引きこまれるのは、役者陣の名演に依るところが大きい。特に、福山雅治と所広司の二人が、接見室で向き合うシーンは迫力がある。ガラスで隔てられた二人が、時に探り合い、時に騙し合い、静かなバトルで対峙する様は、大きな見所だ。映画は、人が人を裁くことの意味を問うが、崩壊した家庭と不条理がまかり通る社会が、裁きと真実を遠ざけているような気がしてならない。重苦しい空気に覆われた物語の中で、重盛と三隅の故郷である北海道の雪景色が、一筋の明かりのようにまぶしかった。
【70点】
(原題「三度目の殺人」)
(日本/是枝裕和監督/福山雅治、役所広司、広瀬すず、他)
(藪の中度:★★★★☆)
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散歩する侵略者

映画『散歩する侵略者』オリジナル・サウンドトラック
数日間、行方不明になっていた鳴海の夫・真治が、突然帰ってきた。不仲だった真治が別人のように優しくなり、どこか以前と違う様子に、鳴海はとまどいを覚えるが、その後、真治は毎日散歩に出かけ、鳴海にガイドになってくれと、謎の提案をする。一方、町ではある一家の惨殺事件が起こり奇妙な出来事が頻発。事件を取材していたジャーナリストの桜井は、謎の若者に出会い行動を共にするうちに、ある事実に気付く…。

謎の侵略者によって日常が破壊されていく様子を描くSFスリラー「散歩する侵略者」。劇作家・前川知大による劇団イキウメの人気舞台を映画化したもので、国内外で高い評価を得る黒沢清監督の新作だ。侵略型SFには、何度もリメイクされている古典SF「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」(1956)があり、本作はまさに黒沢清版“ボディ・スナッチャー”という趣である。50年代に多く作られた米国映画のSF特有の不穏な空気は、目に見えない何かの気配を常に感じさせ、つかみどころがない黒沢ホラーの恐怖とも共通するものだ。

エイリアンたちは侵略のプロセスとして、身体を乗っ取るだけでなく、家族、仕事、所有などの人間の行動原理のベースとなる“概念”を奪っていく。この設定が新鮮で、興味深い。概念を奪われた人間は、不思議なほど解放され、自由になるというのは、現代社会への痛烈な皮肉に思える。鳴海と真治(の形をしたエイリアン)の夫婦の物語がラブストーリーならば、ジャーナリスト桜井と謎の若者の暴走は、奇妙な友情物語と言えようか。本作はSFという大枠を借りながら、ラブストーリー、ブラック・コメディー、サスペンス、ホラー、アクションと、さまざまなジャンルをクロスオーバーしたジャンルレス映画なのだ。のどかな地方都市を散歩する侵略者は、ゆっくりと、でも確実に世界を崩壊させていく。それでもなお、人間たちは、愛する人と一緒にいたいと願っている。絶望を描くかに見えて、今までにない“前向き”なメッセージを感じさせる内容に、黒沢清監督の新たな挑戦を感じる作品だった。
【75点】
(原題「散歩する侵略者」)
(日本/黒沢清監督/松田龍平、長澤まさみ、長谷川博己、他)
(ジャンルレス度:★★★★★)
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ダンケルク

DUNKIRK
1940年、英仏連合軍の兵士40万人が、ドイツ軍によってドーバー海峡に面したフランス北端の港町ダンケルクに追い詰められる。背後は海。陸も空も敵が迫っていた。若き兵士トミーとその仲間らはそれでも生き抜くことをあきらめてはいない。一方で、母国イギリスでは海を隔てた対岸の仲間の救出に、民間船までもが動員されることになり、船長のドーソンらは危険を顧みずダンケルクへと向かう。英空軍のパイロットのファリアもまた、圧倒的に形勢不利な状況の中、出撃。こうして、命懸けの救出作戦が始まった…。

第2次世界大戦中に約40万人もの兵士を救った史上最大の救出作戦を描く戦争スペクタクル「ダンケルク」。斬新な世界観で観客を魅了してきた俊英クリストファー・ノーラン監督が初めて実話の映画化に挑んだ力作だ。ダンケルクの撤退は、過去にも何度か映画化されていて、民間人が命がけで兵士を助けたということもあり、美談として語り継がれている。結果が分かっているスタンダードな史実だが、ノーラン監督の手にかかると、驚くほどの緊迫感で迫りくる戦争叙事詩となる。映画を見る観客は、そのまま曇天のダンケルクの戦場へと放り込まれ、すさまじい映像体験に圧倒されるはずだ。

ノーラン監督らしい演出は、時間と場所をシャッフルして描いたことだろう。陸・海・空の3つのパートに分かれているが、構成は極めて緻密だ。一見、3パートは同時進行しているように見えるが、ダンケルクの浜辺の陸上は1週間、民間船がダンケルクへと向かう海は1日、戦闘機が舞う空の戦いは1時間の出来事なのだ。その3つが最後には同じ瞬間に向かって収束していくストーリー展開は、見事というしかない。圧倒的な迫力の映像や、トム・ハーディやキリアン・マーフィ、ケネス・ブラナーら、名優たちの競演も素晴らしい。同時に、兵士のPTSD(心的外傷後ストレス障害)や仲間同士の諍いなどの極限状態のドラマも織り交ぜている。そんな中、マーク・ライランス演じる民間船の船長と息子の、毅然とした行動には心を打たれた。一致団結して戦った名もない人々の自己犠牲と勇気のおかげで、今の私たちがある。メッセージが明白だからこそ、華々しい勝利の戦いではなく、生き残りをかけた大撤退が、胸に迫ってくるのだ。くどくどと説明などせず映像で勝負する潔い演出で、上映時間はキリリと短い106分。無駄なシーンは何一つない。圧巻の臨場感を体験するためにも、ぜひ大スクリーンで見てほしい。
【90点】
(原題「DUNKIRK」)
(米・英・仏・オランダ/クリストファー・ノーラン監督/トム・ハーディ、キリアン・マーフィ、ケネス・ブラナー、他)
(愛国心度:★★★★☆)
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犬映画、猫映画、動物映画

コラム映画では「子どもと動物にはかなわない」とよく言われるんですが、まったく同感です。特に、動物好きの私としては、動物ものの映画にはめっぽうヨワくて(笑)。動物が名演技を披露する映画には、どうしても点が甘くなってしまうのです。やれやれ…(;^_^A

先日、試写で見た「僕たちのワンダフルライフ」(9/29公開)では、涙腺決壊寸前で困りました。映画は、大好きな飼い主の少年にもう一度会いたい一心で、何度も生まれ変わりを繰り返す犬の物語。監督は名匠ラッセ・ハルストレム監督で、「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」「HACHI 約束の犬」など、犬とは縁が深い監督です。犬好きの方は、ぜひどうぞ♪

猫派の方には、公開中(全国順次公開)の英映画「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」がおすすめ。「エル ELLE」に登場する黒猫はちょっと意味深でミステリアス。他の動物では「ハイジ アルプスの物語」のヤギが、ほのぼのムードでいい味出してます (^^)b

今、世の中は空前の猫ブームなので、映画にはよく猫が登場しているんですが、犬も静かに奮闘中。何しろカンヌ国際映画祭には、パルム・ドッグ賞という、優秀な演技を披露した犬に贈られる賞まであるんです。ちなみに現在公開中の「パターソン」に登場するイングリッシュ・ブルドッグのネリー(劇中でマーヴィンという名の犬を熱演)も受賞者ですが、惜しくも受賞前に亡くなってしまいました(涙)。

カンヌでは猫に贈られる賞はない現在、やっぱり映画では犬が猫を一歩リードしているということでしょうか。猫は、基本的に演技などしない、マイペースな動物なので無理ないか…。それでも作ってほしいなぁ、パルム・キャット賞。自他ともに認める猫派の私のつぶやきでした(←けっこうマジです)。

オズの魔法使 [Blu-ray]
ジュディ・ガーランド
ワーナー・ホーム・ビデオ
2010-07-14
←登場するのはテリア犬のトト。
自然な演技でダントツに評価が高い名優犬です。


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パターソン

Paterson (Blu-ray + Digital HD)
ニュージャージー州パターソン。街と同じ名前のバスの運転手、パターソンは、毎日を規則正しいリズムで暮らしていた。早朝、隣で眠っている妻ローラにキスをし、朝食を食べて出勤、業務をこなして帰宅する。妻と夕食を取り、愛犬マーヴィンと夜の散歩。馴染みのバーに立ち寄り一杯だけ飲んで帰宅した後は、妻の横で眠りにつく。そんな変わり映えのしない日々の中、パターソンは秘密のノートに、心に浮かぶ詩を書き留めていく…。

バスの運転手で詩人である主人公の一週間を淡々としたタッチで描く「パターソン」。市井の人々の、平凡な日常を丁寧に描く作風は、NYインディーズ映画の雄と呼ばれるジム・ジャームッシュ監督の初期の作品群にとてもよく似ている。バスの運転手のパターソンが作る詩は、どれも身の回りの物事を描写する静かな作品ばかりだ。映画で描かれる1週間には、内向的なパターソンの心を少しだけざわつかせる“事件”が起こったりはするが、外交的で活発な妻ローラのあたたかい励ましもあり、パターソンは詩作に励むことができる。バスの窓から見える風景や車内の乗客のとりとめのない会話、無邪気な狂気を感じさせるローラへの変わらぬ愛。そんな日常に目を凝らし、耳を澄ますパターソンは、毎日は1日として同じ日はないことを知っている。そのことがワーキングクラスの彼をアーティストにしているのだ。

繰り返し登場する双子、バーの常連客の痴話喧嘩、ローラのモノトーンへのこだわりなど、どうでもいいけれど愛おしいディテールは、日常からインスピレーションを得るパターソンの詩の得がたい味わいの糧なのだろう。ハリウッド大作からインディーズ作品まで神出鬼没のアダム・ドライバーの独特のたたずまいが素晴らしい。終盤に登場する日本の詩人役の永瀬正敏の存在感もまた印象的だ。この穏やかな映画は、平凡な日常の美しさと奥深さをつかめたなら、人生はきっと豊かなものになると教えてくれる。イングリッシュ・ブルドッグの名演と、まったりと流れる音楽が隠れた魅力だ。
【70点】
(原題「PATERSON」)
(アメリカ/ジム・ジャームッシュ監督/アダム・ドライヴァー、ゴルシフテ・ファラハニ、永瀬正敏、他)
(原点回帰度:★★★★★)
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二度めの夏、二度と会えない君

二度めの夏、二度と会えない君 feat.Primember(TYPE-C/DVD付き)
自分のバンドを作り文化祭で歌うことを夢見る高校3年生の森山燐は、篠原智が通う青葉北高に転校してくる。彼女の情熱に共感した智は、一緒にバンドを組み、ライブを成功させる。しかし燐は重い病を抱えており、智たちと最高の時間を過ごした後に倒れてしまう。燐が亡くなる直前に、自分の思いを告白した智だったが、そのことで彼女を激しく動揺させてしまう。もしやり直せるなら…。そう思ったある日、智は燐と出会った半年前にタイムリープしていた…。

不治の病を患う転校生と彼女に思いを寄せる男子高校生の青春ラブストーリー「二度めの夏、二度と会えない君」。原作は赤城大空による同名のライトノベルだ。タイムリープものはタイムスリップ映画のサブジャンルとして人気があり、「バタフライ・エフェクト」や「恋はデジャ・ブ」「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」など、なかなかの佳作が揃っている。中でも青春ものとは相性が良く「時をかける少女」や「サマータイムマシン・ブルース」、最近では「君の名は。」「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」などがあり、どれも“もしもあの時…だったら”というほろ苦い思いを描いた作品群だ。本作もまたそんな青春のみずみずしさ、切なさをテーマにしている。

燐に告白したことですべてを台無しにしたと深く後悔する智は、不思議な力で彼女と出会った半年前にタイムリープし、燐が笑顔のままその一生を終えられるよう、今度は絶対に彼女に“告白しない”と心に決める。同じ夏、同じライブ、同じ恋。それでも微妙に違う二度めの夏。タイムリープという設定はファンタジーなのだが、かけがえのない青春のはかなさと愛おしさは本物なのだ。ストーリーは、よく言えば素直、悪く言えばご都合主義だし、村上虹郎以外の若手俳優は演技もほぼ素人。だがそれらすべてを払拭するのが、ガールズバンド「たんこぶちん」のMADOKAこと吉田円佳の素晴らしい歌声である。音楽の力が映画を輝かせていた。
【60点】
(原題「二度めの夏、二度と会えない君」)
(日本/中西健二監督/村上虹郎、吉田円佳、加藤玲奈、他)
(音楽映画度:★★★★☆)
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ギミー・デンジャー

ギミー・デンジャー~ストーリー・オブ・ザ・ストゥージズ
1967年にミシガン州で結成されたロックバンド、ザ・ストゥージズ。イギー・ポップら4名で結成されたバンドは、過激なライブ・パフォーマンスと、ジャンルをクロスオーバーした実験的な音楽でロック・シーンをけん引した。だが74年、様々な問題をはらみ、バンドは自然消滅する。監督のジム・ジャームッシュは、メンバーと、彼らに本当に近しい関係者のみに取材を行い、イギーを中心に当事者たちの言葉によって、華々しくも混乱に満ちたストゥージズの歴史を振り返っていく…。

伝説的バンド、ストゥージズの真実を描く音楽ドキュメンタリー「ギミー・デンジャー」。ロック界のカリスマ、イギー・ポップが属したストゥージズは、実に興味深いバンドだ。ステージ・ダイブなどの過激なパフォーマンスと、サイケやフリー・ジャズなど、多くの異なる要素を融合させた実験的サウンドは、当時は受け入れられず、評論家からは、下品で退廃的と叩かれる。しかし、その型にはまらない音楽は、後に多くの名だたるバンドが影響を公言した。音楽、映画、美術など、時代によって評価が真逆に変わる芸術は多くあるが、共通するのは、未来を先取りした尖鋭性を持っていることだ。

元々音楽へのこだわりが強く、過去にも音楽ドキュメンタリーを撮ったことがあるジャームッシュは、自他ともに認めるストゥージズの大ファンで、特にイギー・ポップとは親交が深く、役者として「デッド・マン」「コーヒー&シガレッツ」で彼を起用しているほどだ。ただ、イギーはバンドのフロントマンで一番知名度がある人物だが、彼がソロになってからのエピソードは本作には含まれない。なぜならこれはストゥージズのドキュメンタリーだからだ。そんな公平なスタンスがあったからこそ、メンバーであるロンとスコットのアシュトン兄弟らも、当時の自分たちをストレートに語ってくれたのだろう。首輪のエピソード、デヴィッド・ボウイとの出会い、デトロイトへの愛…。多くの愚行と共に、彼らの唯一無二のスタイルが浮かび上がる本作には、ストゥージズへの愛があふれていて、監督自ら“ストゥージズに宛てたラブレター”と表現しているのも納得できる。残したアルバムはわずか3枚。アシュトン兄弟やスティーヴ・マッケイら、メンバーの3人はすでにこの世にはいない。映像資料としても貴重な1本となった。
【65点】
(原題「GIMME DANGER」)
(アメリカ/ジム・ジャームッシュ監督/イギー・ポップ、ロン・アシュトン、スコット・アシュトン、他)
(ストゥージズ愛度:★★★★★)
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ザ・ウォール



2017年、イラクの砂漠地帯。米軍のスナイパーのアイザックとマシューズは、壊滅した村に潜む敵を狙って5時間潜伏していたが、まったく動きがない。様子を見に行ったマシューズが瓦礫の壁に近づくと、想定外の方向から銃撃され、倒れる。援護に向かったアイザックもまた足を撃たれ、何とか壁の後ろに逃げ込んだ。壁に隠れて身動きが取れないアイザックは助けを呼ぶために無線を手にするが、そこから急に「仲間だ。すぐに助けに行くから、名前とID、正確な位置を言え」との声が。一瞬安堵するアイザックだったが、その声の英語のアクセントに違和感を覚え、それが仲間ではないことに気付く。声の主は米軍から“死神”と恐れられるイラク軍のスナイパー“ジューバ”の声だった…。

イラク戦争で大勢のアメリカ兵を葬った実在のスナイパーと米兵との攻防を描くシチュエーションスリラー「ザ・ウォール」。場所は、灼熱の砂漠にある廃墟の壁の周辺、登場人物は3人のみでそのうち一人は声しか聞こえない。この“開かれた密室”で、主人公アイザックは、負傷している上に、最恐のスナイパーであるジューバに狙われているという圧倒的に不利な状況だ。戦争を扱ってはいるが、その戦いは、激しい銃撃戦や大爆発などではなく、会話で相手を追い詰める心理戦、頭脳戦だ。全編、緊張感に満ちている。

米軍のスナイパーを描いた「アメリカン・スナイパー」は、狙う側の視点から描かれたが、同じ実在のスナイパーものでも、本作は狙われる側を体感でき、それが異様な怖さを醸し出している。実際、ワンシチュエーションものでは、回想シーンや別の場所で同時進行する場面などを組み込むことが多いのだが、本作ではそういう演出はまったくない。それでも知能犯のジューバの巧みな会話による誘導で、アイザックの過去や米軍の暴挙の実態が露わになっていく展開は、まったく飽きさせないものだ。会話は、身の上話のような内容から、この戦争の意義、米国の復興支援の欺瞞にまで及んでいく。ザ・ウォール(壁)とは、イラク戦争の双方の間に絶対的に存在する境界線だ。それでいてその壁は緩く脆く不確かで、正義の所在が見えないイラク戦争の象徴に思える。ほぼ一人芝居で熱演するアーロン・テイラー=ジョンソンの演技力も大きな見所だ。かつてない“手触り”で戦争を描いた異色作である。
【75点】
(原題「THE WALL」)
(アメリカ/ダグ・リーマン監督/アーロン・テイラー=ジョンソン、ジョン・シナ、他)
(会話劇度:★★★★☆)
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スキップ・トレース

SKIPTRACE
香港のベテラン刑事ベニー・チャンは、相棒を殺した犯罪王ヴィクター・ウォンを9年間追い続けていた。ベニーは亡き相棒から娘サマンサを託され、大切に育ててきたが、彼女がヴィクターの犯罪に巻き込まれてしまう。過激な捜査で停職中の身のベニーだったが、サマンサを救うために、ヴィクターの犯罪現場を目撃していた詐欺師のコナー・ワッツを追ってロシアに向かうことに。ロシアン・マフィアに拘束されていたコナーを無事救出し、連れ戻そうとしたベニーだったが、なぜか二人とも追われる身になってしまう…。

香港の刑事とアメリカ人の詐欺師が逃亡劇を繰り広げるアクション・コメディー「スキップ・トレース」。ジャッキー・チェンが生真面目な刑事に扮し、悪徳犯罪王をとらえるため奮闘するアクション映画だが、物語はロード・ムービーの形をとっている。香港、マカオから始まる物語は、ロシアから、広大なモンゴルの草原を抜け、中国へ。遊牧民族や少数民族と触れ合い、彼らの文化や祭り、暮らしぶりを見ながら、美しい自然も堪能できる。ロシアン・マフィアとは何度も激しいバトルを繰り広げるが、どこかコミカルな掛け合いで、笑わせてくれるのも楽しい。ジャッキーのアクションと言えば、その時に身近にあるものや日常生活の小道具を使った創意工夫ある動きが特徴。本作ではそれもたっぷり見せてくれるが、ロシアの人形・マトリョーショカを使ったシークエンスは見事だった。ジャッキーは確かに歳を重ねたが、長年鍛えた身体は今もしっかり動くし、何より観客を楽しませる術(すべ)を良く知っている。

監督はフィンランド出身でハリウッドで大作映画を手掛けてきたレニー・ハーリン。なんとしばらく中国を拠点に映画を撮るそうで、アジアへ出稼ぎか?!と心の中でツッコんだ。それはさておき、ジャッキーの良さを十分に活かし、誰もが楽しめる娯楽活劇に仕上げた腕前はさすがだ。もの静かなジャッキーとお調子者のジョニー・ノックスヴィルのバディ・ムービーとしても相性がいいし、ファン・ビンビンは相変わらずの美女で目の保養である。そして犯罪王を追い詰めたクライマックスには、どんでん返しまで用意されているのだ。安心してみていられるのがジャッキー映画の良さで、ファンもそれを求めている。ジャッキー・チェンには、やっぱりこういうコミカルなアクション映画がよく似合う。
【60点】
(原題「SKIPTRACE」)
(米・中・香港/レニー・ハーリン監督/ジャッキー・チェン、ジョニー・ノックスヴィル、ファン・ビンビン、他)
(安心感度:★★★★★)
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トリガール!

映画「トリガール! 」オリジナル・サウンドトラック
一浪して理系の大学に入学した鳥山ゆきなは、なんとなく流されて生きてきた女子大生。入学早々、独特の理系のノリにカルチャーショックを受けていたところ、一目ぼれしたイケメンの先輩・高橋圭に誘われるままサークルに入部してしまう。そのサークル・TBTは、二人乗り人力飛行機で鳥人間コンテストを目指す人力飛行サークルだった。一緒にコンテスト出場を目指そうと誘われたゆきなは、圭とコンビを組むはずが、実際に組むことになったのは、圭の元飛行パートナーでヤンキー風の先輩・坂場大志だった…。

ノリで人力飛行サークルに入った女子大生の奮闘を描く青春ラブコメディー「トリガール!」。小説家の中村航が、母校の芝浦工業大学の人力飛行サークルをモデルに描いた人気作が原作だ。二人乗り人力飛行機という素材がまず新鮮で、訓練や鳥人間コンテストの詳細も、興味深い。毒舌で体育会系の女子大生、ヤンキー系男子学生、王子様系男子学生と、キャラも抜群に立っている。

本作で最も感心したのは、新境地ともいえる個性派ヒロインを演じる土屋太鳳の輝きだ。今まで演じてきたような、ピュアで胸キュンの美人女子(高校生)役に、いいかげん食傷気味だったのだが、今回は、毒舌で、早口、体力に自信があって、大嫌いなヤンキー風先輩と徹底的に張り合う、ずっこけ女子の役なのだから面白い。しかも、これがかなり可愛い。間宮祥太朗演じる、過去のトラウマから抜けきれない坂場先輩に「チビ!」「痩せろ!」と怒鳴られれば、土屋太鳳のゆきなは「てっぺん取るって?!二次元限定のクローズかぶれが!」とやり返す。コンテストに向け体重を落とし、ヘロヘロ状態になれば、唐揚げ欲しさに本気でジャンプするなど、完全に壊れたキャラを怪演。坂場とゆきなは互いにののりしあい反発することで不思議な化学反応を起こし実力を発揮する凸凹コンビなのだ。すったもんだの末についにコンテスト出場の日を迎えるが、本番の飛行中の掛け合いは、青春映画らしからぬ、まさかの展開が待っている。ちょっとしつこい轟二郎ネタや、全員メガネのヴィジュアルなど、やりすぎ感もあるが、それもまたコメディーの妙味である。それにしても鳥人間コンテスト、こんなに熱く過酷なレースだったのか。色んな意味で驚きの痛快作だった。
【65点】
(原題「トリガール!」)
(日本/英勉監督/土屋太鳳、間宮祥太朗、高杉真宙、他)
(奮闘度:★★★★☆)
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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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