太陽は、ぼくの瞳 [DVD]太陽は、ぼくの瞳 [DVD]
◆プチレビュー◆
グラサン姿のモハマド少年が何ともいとおしい。児童映画はイラン映画の得意とするところ。

最近、もっぱら注目のイラン映画。この作品はイラン映画らしい児童映画の佳作。欧米の作品に比べ、劇場でかかるアジア映画の本数は少ないが、映画「うなぎ」がカンヌ映画祭でグランプリを受賞したとき同時受賞をはたした「桜桃の味」のアッバス・キアロスタミ監督のおかげか、随分イラン映画も配給されるようになった。

物語の主人公はモハマドという名の盲目の少年。目は見えないけど、人一倍優しい心を持つ彼は手に触れるもの全てを慈しみ、光をなくした瞳の代わりに、心の目で物事をみつめながら純粋な心を失わずに生きていく。

学問にも秀でた彼は、なんとか周囲に溶け込み皆と同じように生きていこうと懸命に努力する。しかし、自分の再婚のことで頭がいっぱいの彼の父親は、モハマドを愛しながらも、彼の存在を疎ましく思い、いなかの母親のもとに預けるだけでなく、同じく盲目の大工のもとに無理に修行にやってしまう…。

自分が盲目なので誰からも愛されないのだと涙を流すモハマド少年。そんな孫と、身勝手な父親である息子の姿をただ黙ってみつめる祖母の姿。そして父親は自分の再婚話が壊れたとき、全てをモハマドのせいだと考え、急流の川に転落した我が子の死を無意識で願ってしまう。助けるのをためらう一瞬は、観る者の胸をしめつけられる。しかし、はっと我にかえりモハマドを助けるために川に飛び込む父親の姿。自分が間違っていた、どうか息子を返してくれと神に願いながら激しい川の流れに飲み込まれていく…。

イラン映画は内容に厳しい検閲があって、そのためか、児童映画が大半を占めている。この映画、自然描写が大変美しく、緑深い森、そこに白く流れるかすみ、花であふれる草原などまるで一枚の絵のような映像が溢れていた。少し湿った森の緑の描き方は、キング・オブ・アートシアターとうたわれた故アンドレイ・タルコフスキー監督の名作「ノスタルジア」を彷彿とさせる。

熱い紅茶を受け皿に少しずつうつして冷ましながら飲むなど、イランの珍しい生活習慣もおもしろい。野に咲く花を集めて、花びらを鍋で煮詰めて糸を染める場面の色彩も秀逸。悲しい結末のラストは、実は観客に希望を与えるような描かれ方で見終わったあともほっとする。出演者のほとんどがしろうとというこの映画。地味だけど味がある。

□1999年 イラン映画 原題「The Color of Paradise」
□監督:マジッド・マジディ
□出演:モフセン・ラマザーニ、ホセイン・マージゥーブ、サリム・フェイジィ、他

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