タイタス [DVD]タイタス [DVD]
◆プチレビュー◆
時代交渉無視の衣装が冴える。ヌードも辞さない迫力のジェシカ・ラングが見事だ。

首は切る、手首は切り落とす、舌は切る、喉はかき切る、レイプ、子殺し、人肉食い…と、およそこの世の悪行三昧のほとんどを網羅する。残虐にして美しい映画の原作は、偉大なるウィリアム・シェークスピア。 世界一の文豪原作のこの残酷史劇は、あまりのむごたらしさに作者は別にいるのでは、とまで言われ、舞台で上演されることもめったにない作品である。原作は「タイタス・アンドロニカス」だ。

時代は古代ローマ。歴戦の名将タイタスは敵のゴート族の王族を捕虜にして凱旋する。勝利といっても、自分の25人の子供のうち、21人を戦いで亡くすという大きな犠牲を払ったものだった。タイタスは亡き息子たちの魂を鎮めるため、泣いて命乞いをする母のタモラ女王の懇願もかえりみず、ゴート族の王子の一人を生贄に捧げる。目の前で息子の王子を殺された女王は、「必ずやタイタス一族を皆殺しに!」と、復讐を胸に誓うのだった。生き延びたタモラの策略で、次々に血祭りに上げられるタイタスの子供たち。自らも片手を失い、手負いの獣のようなタイタスが最期に放ったタモラへの血も凍る復讐とは…。

映画というにはあまりにも舞台風だ。時代考証まったく無視のその演出は、古代ローマにおいて、皮のジャケット、ナチス風の演説、ビリヤードやムッソリーニ時代の建物など、ほとんどイメージビデオの様相を呈している。こんな大胆な映画でこそ、「炎のランナー」でオスカーを受賞したミレーナ・カノネロの衣装の腕が冴えるのは言うまでもない。残酷すぎる場面の数々も、まるで歌舞伎のように美しく描かれ、2時間40分を越える長編を堂々とまとめている。残酷シーンは苦手だが、豪華で濃厚な料理を味わった後のような気分は稀有なものだった。

根底をなすのは、父タイタスと母タモラの、それぞれ親としての子供への深い愛情が、むごたらしい暴力を生むという悲劇。現代とつながるようなプロローグとエピローグは演出の上手さを感じさせる。豪華キャストに目を奪われるが、ジョナサン・リース・マイヤースのドラ息子ぶりが印象的だ。

しかし…だ。ローマの知将、歴戦の英雄、皇帝の指名権さえ委ねられる賢者のタイタスが、人生の重大な岐路で2度も決定を誤るか?!そもそも、タモラの息子を生贄などにするからいけないんじゃないのか?!とつっこみを入れたくなるのは私だけではないはずだ。それとも、それほどの人物でも過ちを犯すという、シェークスピアの人間考察の深さだろうか。芸術とは残酷にして美しいもの。つくづく濃い作品だ。

□1999年 アメリカ映画 原題「TITUS」
□監督:ジュリー・テイモア
□主演:アンソニー・ホプキンス、ジェシカ・ラング、ジョナサン・リース・マイヤース、他

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