トラフィック [DVD]トラフィック [DVD]
◆プチレビュー◆
オスカー受賞のベニチオ・デル・トロは今後に注目。全員が主役の重みを持つ群像劇だ。

映画は、アメリカの裏社会に根深く浸透する麻薬社会の実態に迫る、かなり硬派な社会派ドラマ。3つの異なったストーリーが同時進行する手法は、ドキュメンタリータッチとでもいいたくなるほど、迫真のもの。アメリカとメキシコを結ぶ巨大な麻薬コネクション“トラフィック”をめぐって、様々な陰謀に満ちた事件が繰り広げられ、じわじわと暴かれていくその闇の実態。問題の根深さに、全ての楽観的な意見を否定するほどアメリカの病んだ部分がうきぼりにされていく様は映画ならではの迫力だ。

個人の力や思いなど無力に近いアメリカの麻薬経済の実態。3つのストーリーが微妙にからみあい、ストーリー展開のうまさをきわだたせる。キャサリン・ゼダ・ジョーンズ扮するヘレナが妊婦という設定を生かして自分の生活と家族を守るためならどんなことでも辞さない女の強さを演じて力強い。彼女がこんなに上手い女優だったとは。夫のM・ダグラスと共演とはいえ、同じ場面には一度も登場しない。

メキシコの警官ハビエル・ロドリゲスに扮する、ベニチオ・デル・トロの上手さと圧倒的な存在感には参った。このラテン系古谷一行殿がオスカーをとるのは納得としても、彼が助演男優賞なら、いったいこの映画の主演は誰だ?全ての役者が主演といいたくなるような秀逸な映画ということか。

しかし、でも、作品賞を逃した理由も理解した。アメリカ人は勧善懲悪が好きだが、この映画はそうじゃない。完全無敵のヒーローは存在せず、誰もが弱い部分を持っている。麻薬戦争はこれからも続くし、家庭内の奥深くまで浸透してアメリカ社会の闇の部分として生き続けるだろう。どんなに正義に燃えた人物がひとつの組織を叩き潰したとしても…。証人のルイスが発する言葉が如実にそれを示していた。「おまえたちは敗戦を認めずに穴にたてこもっていた日本兵と同じだ。麻薬戦争は、とっくにおまえたちの負けなんだよ。」

国家としての働きの前に自分の大切な家族を守りたい…。家庭、仕事、政治、全てに大きな影を投げかける麻薬問題。夜の公園で子供達が野球に興じる姿を見つめるベニチオ・デル・トロが見せる表情には、安堵とも不安とも見て取れる複雑な思いがあった。

メキシコの乾いた砂埃を感じさせる映像。胸にずっしりとした余韻を残し、観客に何かを決めつける見方は決してしない。それは現実を鋭くえぐる上質なリアリティだ。

□2000年 アメリカ映画 原題「TRAFFIK」
□監督:スティーブン・ソダーバーグ
□出演:マイケル・ダグラス、ベニチオ・デル・トロ、キャサリン・ゼダ・ジョーンズ、他

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