ゴッド・アンド・モンスター [DVD]ゴッド・アンド・モンスター [DVD]
◆プチレビュー◆
イアン・マッケラン入魂の演技に注目。この作品は掘り出しモノだ。

99年アカデミー賞脚色賞を含む世界の数々の賞を受賞しながら、当時日本では劇場公開も行われず、ビデオリリースのみ。いわくつきの映画となるとますます観たくなるのが常だ。

戦前のハリウッド黄金期に、フランケンシュタイン映画によって一躍人気監督となり、頂点を極めながらも、同性愛者であるために映画界を追われたジェームズ・ホエール。ハリウッドの伝説の監督の最期の日々を描く。

映画界から謎の引退を遂げた名監督ジェームズ・ホエール。彼は老いと病に直面し、日に日に悪化する精神錯乱に怯えて暮らす。正気を失う前に、誰か自分を抹殺してくれと心に願いながら。謎めいた隠遁生活を送るこの老人の庭師として、ある日、若い青年が雇われる。彼こそが自分の苦悩に終止符を打つ男。どうか自分を解放してくれと、友情と同性愛と死への期待感をもって彼を挑発し、この庭師の男に自分の過去を打ち明け始める…。

最初は結構ユーモラスな場面も多く、隠居中でボケ気味のゲイのじいさんと、若くてマッチョなピチピチ兄ちゃんとのラブストーリーかと思っていると、これが実は違うのだ。エキセントリックなホエールの苦悩の日々がフラッシュバックで巧みに描かれ、庭師の青年ならずともジワジワと監督に心が吸い寄せられる。見終われば、これは孤独な芸術家の挫折と複雑な愛を描いた純度の高い感動作なのだと理解した。

主人公のホエールは常に過去に縛られ、昔を嫌悪する。ゲイであり、祖国イギリスを追われた過去、映画監督として栄光を掴んでいた過去。現在の自分の存在はいったい何のためか?自分の人生の価値は何か?と苦悩する姿が痛々しい。死への恐怖と、過去の栄光と挫折が胸に去来し、心の傷に苦しむ孤独な魂。どうか彼に救いの手を、と願ってやまぬ気持ちが湧き上がる。

ハリウッドメジャーの大作のような、わかりやすい感動はない。しかし、ジェームズ・ホエールという謎の多い実在の映画監督を、実話とフィクションを交えて、映画として上手く仕上げている。ラストは、悲しいようなほっとしたような、実に淋しくせつない空気が漂う。

監督役の、イギリスの名優イアン・マッケランは自らゲイであると宣言し、カミングアウトした後の出演だった。彼のユーモアと狂気が、観る者に訴えかけて、素晴らしい。この役は彼しかいない。アカデミー主演男優賞にノミネートされたのも納得だ。かつて静岡ではファンの署名運動により1日だけの劇場公開も実現したという、知る人ぞ知る幻の傑作が本作だ。

□1998年 アメリカ映画 原題「GODS AND MONSTERS」
□監督:ビル・コンドン
□出演:イアン・マッケラン、ブレンダン・フレイザー、他

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ゴッド・アンド・モンスター@ぴあ映画生活