エル・スール [DVD]エル・スール [DVD]
◆プチレビュー◆
南への郷愁が痛いほど伝わる静かな秀作「エル・スール/南」。スペイン内戦の歴史を知ると、深い作品だと判るだろう。

近頃のスペイン映画といえば、ペドロ・アルモドバル監督が有名で、アントニオ・バンデラスやペネロペ・クルスの人気も手伝ってちょっとしたラテンブームともいえる。そんな情熱の国スペインで、静かで美しい作品を作るのがヴィクトル・エリセ監督だ。但し、10年に一度しか作品を撮らない、極めて寡作な映像作家だが。

1950年代のスペインが舞台。エストレリャは目覚めてすぐに理解した。枕の下に振り子を残した父は、もう二度と帰らないのだと。少女エストレリャにとって、父は、振り子で水脈をいいあてたりする神秘的で未知の存在だった。底知れぬ存在である父を慕う幼い日々。しかしそんなエストレリャも次第に成長し、家庭以外での父の一面に触れる。その存在が遠のくのを感じるエストレリャ。スペイン内乱での、いわれのない投獄生活。故郷を捨てたいきさつ。父の心に母以外の女性が住んでいることも感じ取る。そんな父に無言の抗議をするも、自らの悩みの深さを同じく沈黙で返す父。そしてもう二度と父に会うことはないと知ったとき、その父の故郷である南へと旅立つ決心をする。

大学で政治学を選考していたというこの監督のみならず、スペインの知識人の心にはスペイン内乱は深い傷跡を残している。この作品でもフランコ軍事政権によって家族とも決裂し、愛する人とも別れなければならなかった父親の苦悩が描かれている。陰影に富んだ室内の描き方は、暗い画面の中から人物が浮かび上がるカラバッジオの絵画を彷彿とさせる映像だ。ラテン諸国の原色のイメージとはほど遠いシブい色彩の画面と静かな物語に心がなごむ。手のひらにのせたコインの枚数で水脈の深さを知る場面は父娘の絆を感じさせ、成長したエストレリャが父と二人で最後の昼食をとる場面は印象深いものだった。

オレンジの実る南部への郷愁が繊細なタッチで描かれる。ラストで祖母の住む南へと向かう主人公の姿に自らをダブらせ、旅立つ気持ちになるのは私だけだろうか。

□1983年 スペイン映画 原題「EL SUR」
□監督:ヴィクトル・エリセ
□出演:オメロ・アントヌッティ、他


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