クイルズ (特別編) [DVD]クイルズ (特別編) [DVD]
◆プチレビュー◆
見る前はミスキャストだと思ったが、ラッジュはなかなか色っぽい。太めのケイトはサドに翻弄されるエロい場面が上手かった。

精神病院と監獄でその人生の大半をすごした作家、マルキ・ド・サド。サディズムの語源となったこの反骨精神に溢れた男の晩年を描く。その退廃的で卑猥な内容から、発禁処分を受けながら、権力に屈することなく挑発的な作品を世に送り出す。禁じられれば禁じられるほど、書くことへの執念が燃える。周囲の人間を少しずつ虜(とりこ)にしていくサド侯爵。だが、遂に彼を監視する目的で、精神病院の責任者が新たに送り込まれ、彼は窮地にたたされる。サドの書くことへの執念は、はたしてどのような結末を迎えるのか?

これだけ主役、脇役ともに芸達者が揃う映画も久しぶりだ。特にジェフリー・ラッシュはすごい。本当は、ちょっとミスキャストかなと思っていたのだ、観る前は。退廃的で猥褻なサド侯爵を演じるなら、もうちょっとツヤのあるタイプの俳優の方がいいのでは?ラッシュは上手いが、色気が足りない感じがするし。しかし、観てみたら、イイんだな、これが!あの鬼気迫る感じはまさにラッシュならでは。色気も意外とあったりするのだ。

ペンと紙を奪われ、書くことを禁じられたサドはまずは、ワインと鶏肉の骨を使ってシーツに書く。それも禁じられれば、自らの指を傷つけ、その血で自分の衣服に書く。衣服を奪われれば、獄中の狂人と小間使いのマドレーヌを使って口伝えで文章を伝える。そして、それが原因で恐ろしい事件が起き、拷問の末、遂に地下牢に全裸でつながれれば、自らの排泄物で壁に書く。まさにすさまじいまでの情念なのだ。18〜19世紀に言論の自由を謳うのは、かくも命がけのことだったのだ。

サドの言動に戸惑いながらも、彼に惹かれずにはいられない若き神父は、ミイラとりがミイラになってしまうのだけど、この、徐々にサドを理解して傾倒していく様子が少し弱かったか。マルキ・ド・サドを心のどこかで理解しながら、愛するマドレーヌが非業の死をとげて、悲しみと怒りですさまじい行動をとり、遂には発狂。彼がこうなるプロセスをもう少しじわじわと描くことができれば、ラストがもっと効果的だったはずだ。

サディズムの定義は、他者に苦痛を与えることで性的な快感を得ること、だそう。その生涯で27年以上も牢獄暮らしをした、サド侯爵の本名はドナシアン・アルフォンス・フランソワ・ド・サド。代表作は「ジュスティーヌ」「ソドムの百二十日」など。「ソドム」は後にイタリアの鬼才パゾリーニによって映画化されたが、まことにすさまじい作品だった。

美徳を知りたければ、まず悪徳を知ることだとはサドの名言。言論の自由がこの作品の最大のテーマだが、かなり挑発的で見応えのある映画だ。

□2000年 アメリカ映画 原題「QUILLS」
□監督:フィリップ・カウフマン
□出演:ジェフリー・ラッシュ、ホアキン・フェニックス、ケイト・ウィンスレット、他

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