初恋のきた道 [DVD]初恋のきた道 [DVD]
◆プチレビュー◆
チャン・ツィイーの魅力全開。ロング・ランも納得の秀作。ベルリン映画祭銀熊賞受賞。

華北の美しい村に都会で働く青年が帰ってくる。父の訃報を聞いて帰郷してみると、年老いた母は伝統の葬儀をすると言って周囲を困らせている。病院から故郷の村までの長い道を、人を雇って、父を背負って帰ると頑なに言っているのだ。その様子を見ながら、息子は自由恋愛が珍しかった当時の父と母の恋物語を思い出していた…。都会からやってきた青年教師に恋した18歳の少女。その恋心は手作りの料理とともにやがて彼のもとに届く。だが、時代の波「文革」が押し寄せ、二人は離れ離れに。少女は町へと続く一本道で、来る日も来る日も愛する人を待ち続ける…。

中国とアメリカの合作である本作は、中国映画の伝統である詩的な物語で、愛と家族がテーマ。美しい四季を背景に、純粋無垢な少女の初恋が瑞々しく描かれる。春の訪れや黄金色の麦畑、丘陵に続く一本道、厳しい吹雪の冬さえも、1枚の絵のように美しい。

「愛と感動」のアメリカ映画を見慣れた私たちにとって、初恋を実らせるという、いわばビギナーズラックのような出来事を描く映画には、普通は多少の困難がつきもの。しかしこの映画にはそれはない。村では初めてという二人の自由恋愛を、村人が妨害するかと思えば、そんなことは誰もしない。では親が反対するかと思えば、最初はディの老いた母が心配はするものの、実は娘の恋の成就を心から願っている。ライバルの存在なども、むろんない。時代の荒波の文革で、村を離れる青年を追うディの姿は涙を誘うものの、二人の本格的な恋の成就の説明は字幕のみで、それもあっさり1〜2行。こうして見ると何故あんなに泣かされてしまった映画なのか不思議なほどだ。

ロングランの人気と、観た人にしかわからないな感動の理由は、ズバリ、この映画のシンプルさにある。親しみやすいメロディーと、初恋に全力投球で取り組む少女の一途な思いだけを武器に、この映画は進むのだ。むろん自然描写の美しさはあるが、相手の青年を描くことさえ最小限に抑え、ひたすらディだけを描く。これがいいのだ。だからこそ、最後の葬儀の場面が胸に響く。小さなエピソードを丁寧に描くことで、観るものを徐々に引き込んでいく。監督の確かな手腕を感じた。

ディの作る料理がクローズアップされていたけれど、むしろ、印象に残るのはディの着る赤やピンクの服とヘアピン。モノが溢れる日本の女の子なら、もらったら逆に怒りそうなくらい安っぽい赤のヘアピンを誇らしげに髪に飾り、似合うと折り紙つきの赤のチャイニーズ風はんてんでおしゃれする可憐なヒロイン。

現在をモノクロ、過去をカラーという、通常とは逆の手法をとって綴られるストーリー。美しい思い出を持つ人のみに許される色彩表現だろう。青い小花の碗だけが恋人たちの気持ちを知っている。一本の道から生まれ、40年後に同じその道をたどって帰る二人の変らぬ想い。この感動の震源地は中国だ。

□2000年 中国映画 原題「我的父親母親」
□監督:チャン・イーモウ
□出演:チャン・ツィイー、他

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