シーズンチケット [DVD]シーズンチケット [DVD]
◆プチレビュー◆
悪ガキ、ジェリーとスーエルが魅力的。悲しくも可笑しい、そして心あたたまる佳作。

舞台はイングランドのとある町。15歳のジェリーと17歳のスーエルは学校にも行かず、悪さばかりをして毎日を過ごしている。貧しくつらい現実を生きる2人の夢は、ごひいきの地元サッカーチームの試合をいつでも生で観戦することができるシーズンチケットを手に入れること。一人500ポンドとかなり高額なこのチケットをなんとか手に入れるため、悪知恵をしぼりながらがんばる2人。だが、もう少しで目標金額に達成というところで家族に暴力を振るうジェリーの父親からお金を盗まれる。愕然とする二人は遂に銀行強盗に及ぶが…。

主役の2人の少年、頭のきれる15歳のジェリーと太っちょでお人よしの17歳スーエルのコンビが最高だ。映画のカギとなるシーズンチケットは年間を通して席が確保されるもので、商業的な理由による買占めが多い。値段もさることながら、コネがなくては入手困難なので確実にサッカーが観戦できる以上にステイタスとしても重要。劇中でジェリーは、このチケットを持つことで手に入れることができるものは「敬意」ときっぱり言い切る。

ジェリーの家庭は、暴力を振るう父親を避けて、姉と母とで転居を繰り返している。学校の勉強より、社会での適応性に優れたジェリーは、ろくに学校にも行っていないが頭が良く、家族を愛していて、それが逆に切ない。ちょっと頭の弱いスーエルは、これまたボケかけたおじいちゃんと2人暮らし。両親の顔は覚えていない。現実はつらいことばかりだけど、あこがれのシーズンチケットのためにメゲずにがんばる2人が好感が持てる。稼ぎ方にはやや問題ありだとしても。

喜劇と悲劇の混在するストーリーの中で、ジェリーが語る初めてのサッカー観戦のエピソードが心に残る。それはとても寒い日で、父さんと2人で初めて試合を見た。父さんは自分のコートで僕の体をくるんでくれて、暖かで幸せだった。ハーフタイムに買ってくれた紅茶には、砂糖が2つとたっぷりのミルクが入っていて、あれこそ世界一の紅茶だ…。父親との美しい思い出など持たないはずのジェリーが噛みしめるように語るこの思い出の真実は、実に切なく胸に響く。

2人が応援するチームはイングランドに実在するニューキャッスルユナイテッドというチーム。アラン・シアラーという同チームのスター選手が本人の役で出演している。ヨーロッパや南米のサッカーに対する尋常ではない入れ込みようを理解してみると、この映画をもっと楽しむことができるはずだ。ライバルチームへの異常なまでの敵対心がこの映画でもおもしろく描かれていてジェリーとスーエルもそのあたりの掟には忠実だ。

せっかく貯めた貯金を盗まれ、何もかもうまくいかず、思い余って銀行強盗。もちろん捕まっておなわになるのだけれど、この二人、最後にはちゃーんとあこがれの「チケット」を入手する。そこは誰もがうらやむとびきりの席。ミルクたっぷりでアツアツの紅茶だってある。さて、どうやって?それは見てのお楽しみ。涙と笑いの中にもリアルな現実が浮きぼりにされていて、実は考えさせられる。

□2000年 イギリス映画 原題「The Season Ticket」
□監督:マーク・ハーマン
□出演:クリス・ベアッティ、グレッグ・マクレーン、他

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