王は踊る [DVD]王は踊る [DVD]
◆プチレビュー◆
全身に金粉を塗って踊るルイ14世。皮膚呼吸が心配?!歴史ものは欧州映画に限る。

陽王と呼ばれた若き日のルイ14世は、政治の実権を母親に握られていた。当時の貴族の必須の教養であるダンスを通して人々の崇拝を獲得するルイ。同性愛者の音楽家リュリは、そんな王を心から愛し、権力と愛を得るため、自分の人生の全てを注ぎ込む…。

華麗な時代絵巻の中、権力者に捧げた人生の悲哀を描いた本作は、本物のベルサイユ宮殿で行われたという撮影を始め、音楽、踊り、衣装は、全てこだわりの美しさで目をみはる。バロック・ダンスは解読された舞踏譜によって忠実に再現されたもの。コルビオ監督は歌舞音曲をテーマとしたコスチュームものが得意で、「カストラート」に続き、絢爛豪華な世界を描いている。また楽曲の演奏技法も、古楽として見所(聴き所?)が多い。

希薄な家族愛のせいか、ややナルシスト気味に芸術を愛するルイ14世が物語の核となる。一方、リュリには、音楽という芸術を生業にしながらも、他人を基準に生きるしかなかった人間の悲哀を強く感じる。最初は無力でも、宮廷内の権力闘争の中で政治の実権を握り、真の指導者となっていく王と、最後まで王を基準に自分の人生を歩むリュリ。妻を傷つけ、友を裏切ってまで捧げ続けた愛は、きまぐれな権力者の前では存在しないに等しい。

イメージ戦略のためか「王と音楽家の禁断の愛」などと宣伝されているが、これはこっけいな片思いに過ぎない。最初から王に愛などないのだ。そのことに気付かずに、音楽という「ひ弱」な武器で太陽に接したリュリは、はたから見れば、政治的センスの乏しい愚か者にしか見えない。

これに対してチェッキー・カリョ演じる劇作家モリエールは、リュリの策略に落ちながらも最期まで自分の演劇に対するスジを通した。人を心底笑わせるその才覚は、危険分子といえども王を魅了してやまない。舞台で血を吐きながら息絶える姿は、妥協せずに戦った芸術家そのもの。リュリと始めた、喜劇、音楽、踊りを合体させたコメディ・バレは画期的な舞台芸術で、「町人貴族」「タルチェフ」などの傑作を生む。言葉という強い武器がモリエールの才能と世相に味方した。音楽家リュリの名前は知らなくても、劇作家モリエールの名はたいていの人が知っている。芸術家としてどちらが高みにいたかは歴史が証明してる。

虚実を巧みに織り交ぜながら、歴史の中の秘められた出来事を大胆に美しく映像化するジェラール・コルビオは、自分の得意分野を持つ職人的監督で、ますます期待。きっとこれからもおもしろい解釈で歴史をひもといてくれそうだ。

□2000年 ドイツ・フランス・ベルギー合作映画 原題「Le Roi danse」
□監督:ジェラール・コルビオ
□出演:ブノア・マジメル、ボリス・テラル、チェッキー・カリョ、他

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