ブロウ [DVD]ブロウ [DVD]
◆プチレビュー◆
70年代のカルチャーが満載。デップとペネロペとは、意外な組み合わせだ。

1970年代に麻薬売買でアメリカ裏社会に君臨した実在の男ジョージ・ユング。貧乏を嫌い、友人とカリフォルニアに移り住む。恋人バーバラの紹介で麻薬の小売業を始めた彼は、すぐに商売の才覚を発揮し、みるみる麻薬市場を牛耳るようになる。何度も逮捕されながらも、裏社会で上り詰めていくジョージ。しかし、その彼も、最初に愛した女性を癌で失い、仲間の裏切りや、両親との亀裂に悩む。運命的に結ばれた妻マーサや子供のため、必死で守ろうとした家庭も崩壊、ついには失墜していく…。

麻薬というダークな題材を通してはいるが、これはれっきとしたホームドラマだ。それもとびきり悲しい家庭劇。実在する伝説の麻薬王を描くというから、社会性や緊張感、メッセージ性やサスペンス風の物語を期待して観るとハズレる。この作品で描かれるジョージ・ユングは、70〜80年代の麻薬のほとんどが、彼を通して流れたと伝えられるのが嘘のような、ごく普通の人物。とりあえず、自分が扱う商品であるコカインのテイスティングはするものの、麻薬に溺れてボロボロになるわけではない。彼にとって麻薬は単なる商売品なのだ。

ほんの小遣い稼ぎのつもりでやり始めた麻薬売買が、70年代というドラッグ文化全盛の時代とぶつかり、大当たりしたおかげで大金を手にするジョージ。特に、映画の前半はノリのいいテンポで彼の栄光が描かれる。頂点まで上り詰めて、金や名誉や、愛までも手に入れた彼自身の本当の願いは、幼年時代の自分とは縁遠かった、温かい家庭を築くこと。彼に冷たい母親とは異なり、父親との愛情の絆は深く、それだけにやるせない。あんな家庭だけはイヤだと、なんとかがんばるジョージだが、うまくいかず、妻マーサとの溝は深まるばかり。愛する娘とも引き裂かれる。麻薬という間違った商売道具を選んだことが、誤りだと解っていても、もはやどうすることもできない男の苦悩とあきらめがじんわりと伝わってくる。

物語半ばでゴージャスに現れるジョージの愛妻マーサ。他人の婚約者だった彼女を奪って結婚したジョージとの、ややSMチックな夫婦生活が、おまけのようにチラッと登場するが、マーサとジョージの、人間としての絆の描き方が少し弱いのが残念。むしろ、女性キャラとしては、癌で失ってしまった、最初に愛した女性バーバラの影が残る。

40代にして懲役60年というから、ほとんど終身刑に近い刑を宣告されるジョージ。刑務所の中でむなしい日々を送る彼が、幻を見るラストシーンが素晴らしい。ハッピーエンドかと思って見ていたふやけた頭に、ガツンと一発くらうので要注意。おまけに最後には、実在のジョージの顔が登場して、悲壮感は倍増。ラストのテロップが、麻薬王ジョージ・ユングその人の人生を如実に物語る。

□2001年 アメリカ映画 原題「BLOW」
□監督:テッド・デミ
□出演:ジョニー・デップ、ペネロペ・クルス、レイ・リオッタ、他

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