愛のエチュード [DVD]愛のエチュード [DVD]
◆プチレビュー◆
美しいコモ湖の景色が魅力。困難な恋を凛々しくまっとうする姿に拍手だ。

1920年代。北イタリアの高級リゾート地コモ湖畔で、世界チェス大会が開かれる。天才チェスプレイヤーのアレクサンドル・ルージンは亡命貴族の令嬢ナターリアにひと目で恋をする。不器用だが純粋な彼にナターリアもまた強く惹かれるのだった。チェスの天才ゆえに神経を過度にすり減らすルージンは、ナターリアにささえられ決勝まで登りつめるが、勝負が進むにつれ徐々に神経を蝕まれていく。そして、結婚式当日、ついに悲劇が起こってしまうのだった…。

本来チェスにおいては、エチュードというのは専門用語のひとつで、芸術的なエンドゲームのこと。“エチュード”を鑑賞して堪能することはチェスの大きな楽しみのひとつだ。また、ルージンは、相手との勝負に、攻防策、すなわちディフェンスを練り上げる。ルージンの眼には全ての駒の動きが見える。彼の一連の手筋は美しくも見事な“エチュード”で、対戦相手さえも魅了するものだった。

ジョン・タトゥーロとエミリー・ワトソンという、エキセントリックな役をやらせたら右にでるものがいないクセ者俳優がそろっているにもかかわらず、2人とも抑えた演技の中で心の情熱や悲しみを表現していて、素晴らしい。特にJ.タトゥーロの、天才であるがゆえに不器用で、ピュアな心の持ち主のルージン役は、入魂の演技だ。エレガントなファッションや優雅な音楽が、美しいコモ湖畔の風景に映える。撮影には実際にヴィスコンティの別荘が使われていて、そのあたりも見所のひとつ。

チェスにのめりこみ、ナターリアへの想いと過去のトラウマが交錯して精神を病んでいくルージンの運命は、確実に悲劇へと向かう。残されたナターリアは、ほとんどチェスのことはしろうとだが、ルージンの書き残したメモを頼りに、ライバルとの勝負を引き継ぎ、彼に替わって戦う。静かなラストは必見だ。

チェスは頭脳スポーツとしてとらえられ、近い将来にはオリンピックの正式種目として採用される可能性もあるとか。1920年代の競技は時間制限も長く、いったん引き分けとしたり、翌日に日を改めたりと、今とは若干異なるルールながら、高度な神経戦であることは同じ。チェスの駒は対戦相手と色が分けられていたり、ひとつひとつの駒の形が違う上に造形的で美しいので、静かながら非常に映画的な素材なのだ。

□2000年 イギリス・フランス合作映画 原題「The Luzhin Defence」
□監督:マルレーン・ゴリス
□出演:ジョン・タトゥーロ、エミリー・ワトソン、他

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