2001年宇宙の旅 [DVD]2001年宇宙の旅 [DVD]
◆プチレビュー◆
難解なのに圧倒的に支持される傑作映画。その2001年も、もう過去とは感無量だ。

遥かな過去のある日、猿人たちの前に異様な黒石板が出現。彼らが恐る恐るそれに触ると知性が芽生え、骨を道具にすることを覚える。その骨を空へ放り投げると、それは一瞬にして宇宙船に変じた。西暦2001年、月面上に基地を建設中に、またも謎の黒石板が現われる。その調査のために、宇宙船ディスカバリー号は目標に接近するが、宇宙船の全ての機能を握る人工知能コンピューター、ハル9000が故障、不可解な行動をとるようになる…。

子供向けの冒険活劇のイメージが強かったSFを、極めつけの美しい映像と音楽で、哲学的境地にまで導いた記念碑的作品と言ってよい。難解で、観客に疑問を投げかける内容ながら、未だにこの映画をベストムービーに挙げる人も多く、その後の映画制作に与えた影響は計り知れない。観た人の数だけ異なった解釈がある。そんな偉大な映画なのだ。

冒頭20分間はまったくセリフなし。敵を倒し興奮した猿が空に放った骨が一瞬にして宇宙船に変貌する美しくも戦慄的な場面。数百万年を瞬時にジャンプするセンスに脱帽だが、人類が手にする道具の本質は、人殺しの道具なのだということを意味する怖いシーンでもある。時は流れて2001年。人工知能ハル9000によって全ての機能が制御されている宇宙船ディスカバリー号では人間VSコンピューターの闘いが。ディスカバリー号は時空間の流れを果てしなく越え、無限の彼方へたどり着く。そこには巨大な胎児「スター・チャイルド」が宇宙空間に浮かび地球を見下ろしている。

シュールな展開に頭の中が混乱するが、静かでスケールの大きな映像には思わず見惚れてしまうはずだ。宇宙ステーションのシーンに「美しき青きドナウ」の流麗なメロディをぶつけてくる斬新なセンス。黒石板が現われる度に流れる不気味で破壊的な音楽はリゲッティの「レクイエム」。そしてR.シュトラウスの「ツァラトストラはかく語りき」の劇的な使い方など、音楽テクニックもすばらしい。

しかし、この映画の一番スゴイ点は、その先見的な文明批判の鋭さにある。完全無欠なはずのハルの故障の原因は、人間のミスだ。人間は永遠に過ちを繰り返す。これはハル自身のセリフだが、これこそがこの映画の重要なメッセージなのだ。自らの創造物によって滅びゆく皮肉は、ハルは人間の本性であることも表している。スターチャイルドは、永遠の生命の象徴であると考えたい。過ちを繰り返す人類の未来には悲観的ながらも、空に浮かぶ胎児は、力強い救済の予感を感じさせ、人間を肯定する。人間も宇宙も大きな意思に守られていて、決して孤独ではないのだ。その意思を「神」と見る人も。

皆が驚くようなSF映画を作りたかったというキューブリックの意思は、見事に結実。想像力をかき立てる難解な物語と、完璧な未来空間を描いた映像で、今なお観客を圧倒している。解釈は無限にあるが、最後に希望を感じ取ることができるかどうかが評価の分かれ目だ。

□1968年 アメリカ・イギリス合作映画 原題「2001:A Space Odyssey」
□監督:スタンリー・キューブリック
□出演:ケア・デュリア、ゲイリー・ロックウッド、他

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