息子の部屋 [DVD]息子の部屋 [DVD]
◆プチレビュー◆
地味で静かで結論をはっきり描かないので、映画の良さは伝わりにくい。

幸せな日々を送っていた精神分析医ジョバンニ一家を突然襲う、長男アンドレアの水難事故死。失意の日々を過ごす残された家族の心は次第にバラバラになっていく。そんな折に、ある少女から息子宛に手紙が届く。

グランプリという最高賞にしては物足りない小粒な作品と感じる人が多いはずだ。美人で優しい奥さん、いい子に育った子供達、医者である自分の仕事はすこぶる順調。幸せというより、平凡だ。それが、息子アンドレアの死によって、妻は虚脱状態、夫婦の仲もぎくしゃくし、大切な弟を失った娘はやるせない気持ちをバスケットの試合中に暴力をふるうことで表す。家族がいかに傷ついているかを日常の些細なことから描く視点が丁寧で、悲しみの深さを物語っていく。何より、父親であるジョバンニが苦悩する姿の描写が秀逸。精神科医である彼は今まで患者の悩みを聞く立場。生来の温和で仕事熱心な性格から、面倒な患者にも理性的に対応するが、息子の死が彼の心に負わせた傷はあまりにも大きく、診療中にこらえきれず嗚咽してしまう。これはジョバンニが初めて患者の真の心の痛みを体験する場面で、非常に印象的だ。

出口のない悲しみで押し潰されそうな家族はいったいどうなるのか?今は亡きアンドレア宛に一通の手紙が届く。それは昨年の夏に出会ったガールフレンドからのもの。劇的とは程遠い静かで控えめな演出は、会話も淡々として語り合うほどの思い出もない。しかし、アンドレアからもらったという数枚の写真には、幸福な息子の笑顔があった。

海岸にたたずむ家族の姿は、その後の人生と希望を暗示している。寄り添うでもなく、離れるでもなく、微妙な距離を保ちながら海辺に立つ家族は、息子の淡い恋の相手を知ることで、ようやく彼の死を受け入れる気持ちになる。家族の死という計り知れない悲しみを、忘れたり克服したりするのではない。事実を受け入れて内包したまま生きていく無意識の決意がここにある。耐え難いほどの悲しみに見舞われても、昨日と同様に朝日は昇り、海はそこにある。家族にセリフはなくても、それでも人生は続くのだと、映画は語りかけている。今までと同じように新しい1日がやってきて生きていかねばならない“残酷さ”。その中に身をおくことでしか、生き抜く術はない。

耳に残る印象的な音楽はブライアン・イーノの「バイ・ディズ・リバー」。傷ついた家族の絆と再生を静かに描くこのイタリア映画は、劇的な醍醐味とは無縁ながら、丁寧なリアリティが光る佳作だ。

□2001年 イタリア映画 原題「La Stanza del Figlio」
□監督:ナンニ・モレッティ
□出演:ナンニ・モレッティ、他
□カンヌ国際映画祭パルムドール受賞

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