レクイエム・フォー・ドリーム [DVD]レクイエム・フォー・ドリーム [DVD]
◆プチレビュー◆
一種のモダン・ホラーにも見える。コッテリと濃厚な悪夢を堪能した感じだ。

TVが唯一の楽しみの孤独な未亡人サラはお気に入りの赤い服を着たいがためにダイエット・ピルを飲み始める。サラの一人息子ハリーは恋人マリオンとのささやかな夢を語り、友人と共に麻薬売買に手を染め、自らも常用者に。薬、麻薬、TV…。中毒に陥り絶望と破滅への道を転げ落ちる彼らの行く末とは…。

分割されたスクリーンの独特の感覚。スピーディに移り変わる風景。臓腑に響く音楽。麻薬でトリップする映像が繰り返し登場し、血液中の薬物が吸収される様子や目まぐるしく開く瞳孔のクローズアップが畳み掛けるように観る者に襲い掛かる。ジェットコースターのような悪夢の映像の応酬だ。様々な撮影方法で表現される幻覚や妄想は強烈で、クスリが切れたときの恐怖がひしひし伝わってくる。

人間誰しも、寂しさ故に、満たされたい、愛されたいと願うもの。その気持ちを満足させるための手段を間違えてしまうといったいどうなるのか。中毒。これがこの映画のテーマだ。人間がボロボロになっていくさまを、これほどまでにリアルに残酷に描いた作品はめったにない。しかもその転落していくきっかけは日常のほんのささいな出来事が発端なのだから、それはまさに肌に密着した恐怖感と言えるだろう。

登場人物たちはごくごく平凡な人たちばかり。孤独な老女サラを演じるE.バースティンの熱演は壮絶だ。彼女が瘠せたい一心でダイエットの薬を服用する場面は、医療不信に陥りかねない。

麻薬を扱った映画はこれまでにも沢山あったが、この映画の特徴はあくまで日常を基準に描いていること。平凡な人間がささいなきっかけで堕ちていく。その果てに待つのは永遠に続く苦しみなのだと厳しく語っている。物語は3つの季節に分かれて構成されていて、希望と可能性に満ちた夏、現実に気付く秋、厳しさを知る冬と続くが、春がないのは、彼らに救いがないことを意味している。人が何かに依存し、中毒に陥った行く先に待ち受けている底なし沼に春は来ない。そして彼らは地獄に落ちてもなお、空しい夢を見続ける。死ぬなどという安らぎは、決して許されないのだ。

この作品を観てもなおドラッグをやろうという子供が果たして何人いるだろうか?!恐ろしい薬物中毒。その壮絶さと転落、さらに中毒に陥った人間の最期をしっかりと見据えよう。彼らに救いはないのだから。

□2000年 アメリカ映画 原題「Requiem For A Dream」
□監督:ダーレン・アロノフスキー
□出演:ジャレッド・レト、ジェニファー・コネリー、エレン・バースティン、他

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