ピアニスト [DVD]ピアニスト [DVD]
◆プチレビュー◆
有名な、トイレから引きずり出してのキスシーンがすごい。作品のインパクトは最高だ。

中年になった今も厳格な母親に支配され、名門音楽院のピアノ教授として生きるエリカ。恋やおしゃれとは無縁の彼女の前に、若く才能溢れる青年ワルターが現われ一途に求愛する。しかし、エリカには人には言えない秘密があった…。

題名の「ピアニスト」。この何やら美しく甘いタイトルが、誤解を生みそうで心配だ。中年女性と若い青年の年の差を越えたラブ・ストーリーとか、厳格な母親の支配のもとに育った女性が自立していく物語…と思うととんでもないメにあう。

40をとうに過ぎた中年女性のエリカ先生は人生の全てをピアノに捧げて生きてきた。恋や娘らしい服装までも禁じた母親の支配すら生活の一部となっている毎日だが、どうやら本来の夢であったコンサート・ピアニストにはなれず、名門とはいえ音楽院で未来のピアニストを育てる教授という意に沿わぬ職業についている。更に女の細腕ならぬ細い指でアパートの支払いを背負い、芸術とは程遠い経済面の苦労も覗かせる。ストレスの塊のような日々を送るエリカ先生は、ポルノショップや覗き趣味でバランスを保っているからアブナイ。

そこに登場するのがワルター青年。若く美形で音楽の才能にまで恵まれている彼が、なぜイジワル中年女教師のエリカ先生に恋したのかはこの際問題ではない。二人に妥協点はあるのか?エリカ先生の非常識ワールドにワルターが足を踏み入れるのか、それとも中年女エリカ一世一代の決心でフツーの世界の住民となるのか…。愛し方を知らないエリカ先生よ、歪んだ心を抱えてどこへ行く…。まったく展開が見えないストーリーに引きずられて、ラストまでいってしまう。シューベルトを始めとする格調高い調べと共に、激しくもエグい世界が展開。そして余りにも唐突にやってくるラストシーン。

外面的にはSで内面的にはMの中年女性という難役をこなしたイザベル・ユペール。彼女の演技力の高さには驚くが、この役を引き受ける、座った根性がすごい。

母親との確執で深く病んだ心は、他人と関係を結ぶ方法を知らない。彼女が理解できるのは支配と服従のみ。それを愛に当てはめようとする悲喜劇がこの映画のポイントだ。映画の描く結末に観客は頭を抱えること必至。途中で思わずヒイてしまいそうになるのを我慢して見続けたら、気が付いたらハマッていた。そんな作品だ。カンヌの審査員も驚きのあまり3冠を与えてしまったのでは…。

原作はドイツの女性作家エルフリーデ・イェリネクの小説。ほとんど自伝だそうだが、これがホントの話なんて怖すぎないか?他人とうまく関係を結ぶことができない女性の心の闇を浮き彫りにしたこの映画、嫌悪感や違和感を通り越し、観客を引きずり込む、恐ろしくも奥が深い作品だ。

□2001年 フランス・オーストリア合作映画 原題「La Pianiste」
□監督:ミヒャエル・ハネケ
□出演:イザベル・ユペール、ブノワ・マジメル、アニー・ジラルド、他

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