オテサーネク [DVD]オテサーネク [DVD]
◆プチレビュー◆
少女が卵の黄身をすするなど、終始一貫して、食べ物をグロテスクに描く。気持ちわるすぎて目が離せなくなる!

不妊症に悩むホラーク夫妻は子供に恵まれず失意の日々を送っているが、ふとした思いつきから、木の切り株を子供に見立てて可愛がる。オテークと名付けたその切り株は、本当の赤ん坊の様に動き始め、家中の物を食べつくす大食漢に。やがて食べ物だけでは飽き足らず、人間を襲って食べ始める。同じアパートに住む少女だけが、オテークの味方となるが、赤ん坊は、ついには両親まで食べようと…。

「オテサーネク」はチェコではかなりポピュラーな民話。子供に恵まれない夫婦にある日いきなり赤ちゃんが…という物語は、日本の昔話「桃太郎」を思い出す。しかし、その内容は、グリム童話並みの残酷さで、そこいらのホラー映画よりずっと怖い。まさに血しぶきが飛ぶ惨劇と言っても過言ではないのだ。ユーモアと残酷さを交えた物語が辿る結末は、現代への痛烈な風刺にも結びつき、グロテスクだ。

同じアパートに住む少女アルジュビェトカが物語の狂言回しを務める。少女特有のエゴと純粋さを持つキャラクターだが、この子役がかわいくないのだ!おまけにこの少女に欲情する、ロリコン趣味のエロじじぃまで登場するから、頭がイタイ。少女とじーさんのやりとりはR指定もののキワドさで、この映画の隠れた見所だ。

実写とアニメを交えながら物語は進むが、このアニメが一種独特の味があり、民話「オテサーネク」をシュールな映像で説明。劇中劇のように物語と同時進行させながら、いったい最後はどうなるの?!とドキドキさせてくれる。「オテサーネク」の根底にあるのは、飽食に対する批判。無尽蔵の食欲は、実は人間の欲と同じだ。自分の愛するもののためならば、他のどんな人間が不幸になっても構わない。映画は人間の欲望がオテサーネクに命を吹き込むのだと語っている。

チェコの鬼才ヤン・シュバンクマイエル監督。無尽蔵のエネルギーを感じさせる作家だ。映像感覚も独特で、「食べる」という行為を執拗に描くのがお得意の様子。入り口はここだ!と言わんばかりに、唇のアップを多用。全ての欲望はここから入る。そして独特の女性観。錯乱するホラーク夫人、妙な母性本能でオテークをかばう少女アルジュビェトカ、オテークの正体に気付き決断を下す管理人の老女。惨劇の牽引役は全て女性なのだ。

我々にはなじみの薄い東欧の国チェコ。1968年の“プラハの春”とその後のソ連軍介入による崩壊など、国家の激動が多大な影響を及ぼして、文化の土壌が疲弊してしまったことが災いし、結果として、多くの優秀なチェコ映画人が世界各国に散ってしまった。とはいえ、こんな独自の感覚を持った作品を送り込んでくるバイタリティ溢れる不思議なお国。やっぱり世界は広いのだ。

□2000年 チェコ映画 原題「OTESANEK」
□監督:ヤン・シュバンクマイエル
□出演:ベロニカ・ジルコバー、ヤン・ハルトゥル、ヤロスラヴァ・クレチュメロヴァー、他

人気ブログランキング用バナー

←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックしてもらえると嬉しいです\(^o^)/