マルホランド・ドライブ [DVD]マルホランド・ドライブ [DVD]
◆プチレビュー◆
ワケがわからなくても好きな作品の典型。音楽も効果的でリンチの才能を堪能できる。

夢にまで見たハリウッドにやってきた女優志願のベティ。留守をする叔母の邸宅をしばらく借りてオーディションを受けることになっていた彼女だが、その家に事故で記憶をなくした美女が助けを求めてやってくる。自分の名前すら判らないその女性が覚えているのは、マルホランド・ドライブという言葉だけ。さらに、彼女のバックの中には大金と不思議な形の鍵が入っていた。リタと名付けられた女性はベティと共に失った記憶を辿るが、やがて不可解な事件に巻き込まれる…。

さあ、困った。いったいどこから解説したらいいのか?!不条理の帝王デビッド・リンチの新作は、そんな悩ましくも魅力的な作品。あえて観客を惑わす世界観で自分のスタンスを保つ。この毅然とした姿勢には、ファンならずとも拍手だ。物語は複雑に絡みあい、時間は錯綜する。これぞまさしくリンチ・ワールド。不可思議でスリリング、それでいてユーモラスで官能的。まったく先が読めない展開に魅了されるファンは多い。

夢の工場ハリウッドの暗黒面の象徴とも言えるのが、実在するハイウェイ、マルホランド・ドライブ。物語はこの道路からスタートする。映画界の内幕暴露のようなオーディション風景あり、リンチお得意のヘンテコな登場人物あり、おまけに、あぁ、女同士でなんてコトを…!というような展開で、気がついたらリンチの世界に首までつかっている有様だ。なにやら物語が解決の糸口を見出したような気配で、気を緩めたとたん、まったく予測不可能な方向に話が進む。シンボリックな青い鍵をさしこむのを境に、映画の中盤で激しく方向転換するストーリーは、説明など無論ない。

美術アカデミー出身のリンチの映像は、どこを切り取っても絵になる、計算された構図だ。屈折した美しさで、ハリウッドの光と闇を描き出す。リンチ作品の特徴である、一癖も二癖もあるキャラたちが次から次へと登場し、映画全体に不気味さを漂わせ、リンチ・ファンを陶酔のマジカルワールドへと導いてくれる。いったいリタの正体は?女二人の関係の行き着く先はどこなのか?劇中で繰り返し登場するマルホランド・ドライブ。その名が出てくるたびに事件は謎につつまれ、現実はねじれていく。

1950年代を思わせる、懐かしくてセンチメンタルな音楽。能天気なフィフティーズの歌声が流れるかと思えば、スペイン語専門の奇妙な劇場で“泣き女”が歌う胸にしみいるメロディで攻めてくる。映画「プリティ・ウーマン」の主題歌で知られる故ロイ・オービソン。彼の名曲「クライング」のスペイン語バージョンだ。相変わらずリンチの音楽センスはピカイチである。

デビッド・リンチの映画を観るのは、一種のドラッグ体験とも言える。往年のディープなリンチファンにとっては、意外とすっきりまとまってるという印象のはず。D.リンチって誰?のビギナーや「ストレイト・ストーリー」の人でしょ?の勘違いファンにはほどよい不条理さだ。ハリウッドを舞台に現実と虚構が交錯するマジカル・ワールド。頭で考えず、感性の波長を合わせよう。そうすればリンチ節にとことん酔える。

□2001年 アメリカ・フランス合作映画 原題「MULHOLLAND DRIVE」
□監督:デビッド・リンチ
□主演:ナオミ・ワッツ、ローラ・エレナ・ハリング、他

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