ドリアンドリアン [DVD]ドリアンドリアン [DVD]
◆プチレビュー◆
果物の王様ドリアンは、割るのに一苦労。新感覚の女性映画だと思う。

香港で売春をしながら金稼ぎに専念する娘イェン。観光ビザで香港に入国した彼女は、大金を手に故郷の中国東北部へ戻る。彼女が金銭を必要とする理由は、離婚して自立するためだったが、いざそうなってみると進むべき道を見失い、迷ってしまう。そんなとき、香港で知り合った少女ファンから彼女宛に小包が届く。中には、強烈な匂いを放つ南国の果物ドリアンが入っていた…。

中国北部から香港に出稼ぎに来た女性イェン。それはもちろん貧しさ故のことで、商売も売春というから、なんだか不幸な女性、耐える姿を想像したくなるけれど、若干21歳のイェンには、そんなかげりは微塵もない。体を張って生きるとは、まさにこのことで、とにかくバイタリティ溢れる姿に圧倒された。商売のときは別として、色気もへったくれもない。住んでる部屋はきたないし、田舎出身の素朴さもない。お客に出身地を尋ねられるたび、上海、四川、湖南、地元よと、男たちを煙に巻く。“食べて、売る”動物なみの行動パターン。派手な化粧と露出度の高い服で、ボディガードのチンピラをひきつれて、路地を闊歩する。こんな風景が良く似合うのが猥雑な街、香港。人種も多様な地元住民は、皆、たくましい。前半は、南の土地香港でのイェンの割り切りとパワーに圧倒される。後半は一転して、雪が舞う中国東北部が舞台。

香港人と、返還に伴う悲喜劇を描き続けたチャン監督だが、この映画では、香港以外の場所からやってきて、街に寄生する人々を主役に据えたのが新しい。都市生活の現実と都会への憧れを、前後半で明確に対比させる。女性が主役なのも初めてだ。香港と大陸を舞台に、人生に迷い生き方を模索する若い女性を描く。今までにない、たくましく新しいヒロインの登場だが、女性映画らしくないところがミソだ。

対比するものは他にも沢山ある。夏の香港の騒々しい雑踏と中国北部の厳しく静かな冬。同じ大陸でも、北部からきたイェンと南からきたファン。主人公イェン本人の、香港での派手さと故郷での落着き。そして、とんでもない悪臭なのに、一度食べると忘れられないとろける甘さのドリアン。見た目も良くないドリアンの美味は、経験しないと解らない。主人公イェンのキャラクターを象徴し、彼女の人生も見た目と違うものであることを示す役割を持つドリアンは、この映画のもう一つの主役と言えるだろう。

前半のシンプルさに対し、後半、急に登場人物が増えるのがやや煩雑で、少し惜しい。イェンは、自分の希望と環境の中で、ベストな人生をおくるため、前向きに試行錯誤する自尊心の強いヒロインで、最後に道を選ぶ彼女の顔は吹っ切れている。稼ぐことより生きることの大切さ、難しさを、イェンと一緒に観客も味わうはずだ。夫、友人、家族、親戚など、しがらみを感じながらも、イェンが見出す新しい人生は、たとえ苦しくても、自分の心に忠実な道。見た目とは違う人生の奥深さに気付き、ひと回り成長したヒロインの姿が清々しい。周囲との触れ合いや心の成長の媒介になってくれたのは、地雷のようなドリアンだった。

□2000年 香港映画 原題「Durian Durian」
□監督:フルーツ・チャン
□出演:チン・ハイルー、マク・ワイファン、他

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