パニック・ルーム [DVD]パニック・ルーム [DVD]
◆プチレビュー◆
フィンチャーならもうひとひねりほしかったか。それでも出来は悪くない。

NY。裕福な夫と離婚したメグは、娘サラと二人で大富豪が残した豪邸に引っ越してくる。しかし、越してきた当日に、富豪がこの屋敷に隠した財産目当てに3人の正体不明の男達が侵入。母娘はパニック・ルームと呼ばれる緊急避難用の部屋に身を隠す。しかし、犯人らの探すものは、この部屋にあった。屋敷内を破壊しながら、母娘を追い詰める犯人たち。ドアは内側からしか開かないが、出ると命の危険が。はたして母娘は敵を撃退できるのか…?

デビッド・フィンチャーと思うと何か物足りない。彼特有の不条理さや、きっとものすごい“何か”が用意されていると期待してしまうが、本作はサスペンスの王道を行くが如くの展開だ。そこがこの映画がいまひとつ物足りなく感じる理由なのか。

富豪の元住居に作られた緊急避難用の密室は、パニック・ルームと呼ばれる難攻不落のスペース。隠し財産目当てで3人の悪いヤツが屋敷に侵入してくるが、これが、なんともマヌケな泥棒で、ほとんど行き当りばったりの犯行に近い。この3人のキャラはくっきり描き分けられていて、メリハリがある。富豪の身内で財産分与に不満があるヤツ、借金を抱えてやむを得ず参加したパニック・ルームの設計者、飛び入りで参加した正体不明の男。飛び入り参加っていうのがそもそも疑問だが。

侵入者の目的の謎やパニック・ルームの中でいかに敵と攻防するかを描くかと思ったらそうでもない。出たり入ったり、時には中に入るメンバーが入れ替わったりしながら、極限状況下における心理戦を繰り広げる。10歳の娘サラは、実は糖尿病を患っていて、一定時間毎にインシュリン注射が必要な身体。緊迫感がある設定だが、この娘、反抗期なのか根っからクールな性格なのか、あくまで冷静だ。しかし、命がけで戦う母の姿を見ているうちにうっすらと母親メグに対する尊敬の念が芽生えたりする。

仲間割れや屋敷への訪問者等、お約束の演出を駆使して、物語は解決へと向かうのだが、ジョディ・フォスターの奮闘がすごい。彼女のがんばりがこの映画を救っていると言ってもいい。この時、ジョディは実際に妊娠中。実生活でも二児の母となったジョディ扮するメグは、まさに背水の陣で娘を守ろうと戦うのだ。その姿はほれぼれするほど原始的で、身の周りにある小道具を思いつく限り使って敵を撃退し外部と接触を試みる。知性と野性を感じさせる熱演だ。一方で、自分を捨てて若い女に走った夫と離婚した寂しさを、バスタブで声もなくすすり泣く無言の演技で表現する等、相変わらず繊細で奥深い演技も披露してやっぱりこの人は上手い。

フィンチャーの映像表現は、密室で場所が限られているものの健在で、雨が降りしきる夜の景色や、ダークな色合いの室内など、危機感を盛り上げる役目を果たしている。ピカイチの映像美はオープニングのタイトルで、NYの街のビルの外壁に浮かび上がるスタッフクレジットは、まるでそのまま広告のように見える。これほど洗練されたタイトル・バックは久しぶりに見た。

敵の侵入を防ぎ、身の安全を確保する部屋パニック・ルーム。アメリカでは、犯罪、テロ、誘拐等の暴力事件が起こるたびに、武装した人々が家に侵入した際に逃げ込む安全な場所を作る人が増えているそう。しかし、外部からの攻撃を完全に防ぐ場所は、自らの身を脅かす可能性もある諸刃の剣でもある。実際に、この映画の中で描かれるパニッ
ク・ルームも“完全な”密室ではない。閉鎖された家を舞台に侵入者と戦う映画は今までもあったけれど、そこには、絶対に安全な場所などなかった。今回はそれがあるけれど、所詮隠れていては解決しない。やっぱり出てきて闘わなくては!ということだ。それは「ホーム・アローン」の少年だって知っている。

□2002年 アメリカ映画 原題「PANIC ROOM」
□監督:デビッド・フィンチャー
□出演:ジョディ・フォスター、クリステン・スチュワート、フォレスト・ウィテカー、他

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