I am Sam/アイ・アム・サム [DVD]I am Sam/アイ・アム・サム [DVD]
◆プチレビュー◆
あまり似てない父娘だが、一緒にいるだけで幸せそう。実際はこんなに甘くない事は十分に承知だが、それでも二人を応援したくなる。

7歳の知能しか持たない知的障害者サムは、コーヒーショップで働きながら一人娘のルーシーを懸命に育てている。しかし、福祉局から親としての養育能力がないと判断され、ルーシーは施設で保護されることに。一緒に暮らしたい。ただそれだけを願うサムは、愛する娘を取り戻すため、裁判で闘うことを決意する…。

この映画は評価が分かれるだろう。批判的な意見が多いだろうことも簡単に想像がつく。知的障害、親子愛、無理やりひきさかれる展開に裁判と泣かせどころが満載なのも、見る人によってはあざといと感じるに違いない。父娘を演じる役者が上手すぎることも逆効果。物語を現実にあてはめると“こんなに上手くいくわけがない!”。

このテの映画の評価を分ける一番大きな要因は、観る人の映画に対するスタンスで、映画に現実を投影するか、夢を映し出すかの違い。同じ作品を観るのにも、そのときの自分の年齢や置かれた状況、社会情勢などによって全く感じ方が違ったりするし、当日の気持ちのコンディションにもよるところが大きい。

サムをとりまく人々はいい人ばかりだが、実は結構欠点もあり悩みを抱える普通の人。泣けることばかりが評判のこの作品の隠れたウリである笑いに気付かせてくれる。ミシェル・ファイファーのキレっぷりやサムの仲間の障害者グループのやりとりなど、遠慮せずに笑ってみよう。映画ネタも満載で、マニアックなファンサービスもある。ビートルズナンバーは全編に渡って重要な役割だ。

いつも一緒にいたいと純粋に願う親子と、仕事は出来るけど家庭内には問題がある女性弁護士、気のいい仲間に、これまた優しい里親。福祉局の言うことも筋が通っている。知的障害の親と人並み以上にしっかりした子供という設定で、なんとか成り立っているものの、この話は周囲の人の好意によって成立していることには変わりはない。いい人ばかりの登場人物に、実際の障害者の人生はこんなに甘くはないという声もあるはずだ。確かに知的障害を持つ親が親権を争うことが物語の軸になっていて、重すぎる設定であるだけに、そっちに目を奪われがち。でも、この映画の隠れたテーマはもっとシンプル。完全な親はいないし完全な子供もいないということ。こう考えると物語を観る目も変わってくるはずだ。

残念なのは、福祉局が一方的に悪者に描かれていること。できるだけ障害者も一般社会と関わりをという考え方があるからこそ、サムが周囲の人々の助けを借りながら生きていく“甘い結末”にも、好感が持てる。であれば、福祉局の役割も良い方向に向けることができたはず。自分の知能が父親を追い越してしまうのを恐れた娘が勉強を拒むのをみかねた福祉局が手をさしのべるのは、一般的には善行と映るし、そのほうが娘のためには幸せかも…と思った観客も多いはずだ。このあたりの脚本にもうひと工夫ほしかった。父娘を引き裂き対立するだけでなく、歩み寄る設定が展開できなかったのか。

サムとルーシーの父娘は、最後には社会の思いやりと周りの人の助けを素直に借りることで、観客が“こうであってほしい”と願う形そのままに生きていく。サムの真摯な愛情に、リタを初めとする周囲が自分の親子関係を見つめなおすのも、定番ながら好感がもてる展開。世の中の厳しさを十分すぎるほど知っている私たちは、この甘い結末と絵に描いたようなヒューマニズムの実在が難しいことをちゃんと知っている。超楽観的なハッピーエンドは、裏を返せば“こうはならない現代社会”への告発なのだ。だからこそ、このラストに満足して涙するのかもしれない。

□2001年 アメリカ映画 原題「I Am Sam」
□監督:ジェシー・ネルソン
□出演:ショーン・ペン、ミシェル・ファイファー、ダコタ・ファニング、他

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