海辺の家 [DVD]海辺の家 [DVD]
◆プチレビュー◆
みんなで建てる家は絆の象徴。日本の住宅事情とは違う次元で話が展開する。

ジョージ・モンロー42歳。ある日突然、長年務めた建築事務所を解雇されてしまう。さらにガンで余命数ヶ月と宣告されてしまった彼は、残された時間でずっと手付かずにほおっておいた海辺の家を建て直そうと決意する。別れた妻にひきとられた息子サムはドラッグに溺れた無意味な生活を送っているが、そんなサムをジョージは、夏休みの間強引に引き取って、一緒に家を建てようと誘う。激しく抵抗し、憎しみをあらわにするサムだったが…。

アメリカ映画は、伝統的に母娘ものより父と息子のドラマの方が上手い。息子サムと暮らして家を建て直すのを人生最後の目標に定めたジョージ。父親失格だった自分を変えるのにはあまりにも時間が少ないが、とにかく頑張る。最初はジョージ一人だけの作業だったのが、次第に周りの人間を巻き込んでいく過程で、それぞれが抱える心の悩みを浮き彫りにさせる展開が巧み。心にぽっかりと空いた穴を「家を建てる」作業に加わることによって、どう埋めていくかが見所だ。登場人物が皆、自然体で好感が持てるキャラなのも、物語を前向きなものにしている。しかし、人が増えていく賑やかさと対照的にジョージの病状は徐々に悪化する。

予告編や宣伝文句では「家を建てよう!」という新築部分が強調されているが、その前に、オンボロの古い家を壊す作業がある。これが実はとても重要なところだ。ジョージが残り僅かな人生に向き合うためには、今までの自分を一度リセットする必要がある。そのために思い出のつまった家を壊さなければならない。破壊行為に意義があるのであって、単に家を新築するのとは明らかに違うのだ。古いものを壊すという勇気ある決断を下したジョージは、心を一度“更地”にすることで自分自身を変えようと決心していた。

ドラッグ、離婚、同性愛など、今のアメリカが日常的に抱えている問題をさりげなく盛り込んであったり、親子関係が変化していく過程でジョージとその父の関係が、ジョージの口から語られる部分があり、登場人物の背景にただのお涙ちょうだい話にはない深みが加わっている。

この映画で登場する海辺にたつ家は、なんともうらやましい環境で、ため息ものだ。日本人にとって、国土の広さや経済事情からいって、家はあくまで“買う”もの。長い歴史と伝統のあるヨーロッパでは、たぶん、家はそこに“ある”もの。一方、アメリカは西部開拓時代からの伝統からか、家は「作る」ものなのだ。この映画のように全てを手作りできなくても、僅かでも自分の手で作業して完成させてこそ意義がある。歴史が浅いアメリカならではの感覚かもしれない。自らの手で作る家は、どんなに小さくてもそれは家族と幸福の象徴になる。

孤独感の塊のようだったオンボロ小屋が、人の息吹と温かさに満ちた住まいへと生まれ変わっていくのは、周囲の人間みんなで家を支えあっているから。サムの手で家が遂に完成したとき、ジョージの命は静かに消える。夏休みの前とは明らかに違う人間に生まれ変わったサムが、出来上がった家をどうするのかを観てほしい。そこには父親の思いを確かに受け継いだ思いやりに溢れたサムの姿がある。人生の最後に生きた証しを印し、次の世代に引き継ぐものを残したジョージの人生は、十分に意味のあるもので、創造へと続くことを、映画は告げている。

□2001年 アメリカ映画 原題「LIFE AS A HOUSE」
□監督:アーウィン・ウィンクラー
□出演:ケビン・クライン、クリスティン・スコット・トーマス、ヘイデン・クリステンセン、他

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