トータル・フィアーズ [DVD]トータル・フィアーズ [DVD]
◆プチレビュー◆
ベテランと新米のコンビでスリリングに展開する物語。だが、核の場面の描写がいいかげんすぎる。

CIAの情報分析官ジャック・ライアンはまだ新米のアナリスト。ロシア情報に明るいところを買われ、長官キャボットの下で働くことに。そんな中、アメリカのスーパーボールの会場で、なんと核爆発が起こる。おりからのチェチェン問題で不信感を持っていたロシアの仕業と思い込んだ米国は、全面戦争へと突き進む…。

人気作家トム・クランシー原作で、CIA分析官ジャック・ライアンを主人公にしたシリーズは、今まで、「レッド・オクトーバーを追え!」でアレック・ボールドウィン、「パトリオット・ゲーム」「今そこにある危機」ではハリソン・フォードが主役を演じ、大ヒットを飛ばしてきた。今回はその第4作目にあたり、ベン・アフレックを3代目ライアンに抜擢して、若返りを図っている。ライアンもCIAの新米という設定。

このシリーズは国際政治が舞台で、話は複雑ながらいつも秀逸、切れ者CIAのライアンの魅力で世界中にファンを持っている。そんな主人公を演じるのがベン・アフレック。予想通り、なんとも軽いライアンに会うことになったが、この軽さがストーリーに実に上手く生かされている。モーガン・フリーマンの重厚な演技と対比させてメリハリも効いていた。

上司に意見が通らないほど若くて青臭いだけに、行動的でエネルギッシュな新ライアンには、ラブシーンも用意されていて、シリーズを新鮮なものにしている。アメリカ、ロシア、イスラエスと世界狭しと話が展開するうちに、国際政治の内情が明白になり、その陰に世界制覇を夢見るネオ・ナチ集団の姿が見えてくる。劇中のオーストリア財閥は、実在する超右翼政治団体を想像させて背筋が寒くなった。米ロの緊張関係を操る核爆弾テロリストという設定も説得力があって、これまた怖い。

現在考えられる最悪のシナリオ、核戦争。米ロ全面戦争という十分に起こり得る設定で、リアリティを感じさせるが、まかり間違えば、相手だけでなく自国の息の根を止めてしまう核爆弾の発射スイッチボタンに、なぜ両国が指をかけるのか。それは、やられたらやりかえす、攻撃と防御という力学に基づく選択に他ならない。互いに牽制し合いながら、警戒レベルを上げていく米・ロシアの首脳陣。国家と国民を守るため、両国首脳が苦悩した挙句、ギリギリまで追い詰められる。未曾有の惨劇と偽情報による疑心暗鬼が、間違った道を選ばせる恐ろしさ。恐怖の総和はそこから生まれてくる。

そんなリアルなこの映画の中にあって、唯一不満なのは、核爆発と放射能の描写。今までの映画では爆発寸前で回避されてきた核弾頭が、今回はなんと、20万人の観客が集まるスーパーボールのスタジアムで大爆発してしまう。このムチャな企画がこの映画の斬新さで、爆風を描くCGには目をみはるものがある。しかし、核に対する意識があまりに鈍感だし、爆発後の描写が何とも粗雑で甘い。核爆発の凄惨さと放射能汚染の惨状は、あんな生やさしいモンじゃないだろう!唯一の被爆国ニッポンの国民としては納得できない。

核戦争勃発の危機を描くポリティカル・サスペンスの本作は、正確な情報の重要性と、冷戦後もやっぱり生きている「核抑止力」の大きさを改めて感じさせてくれる。大国の暴走は人類を破滅へと導くことになる。根強いネオ・ナチ神話も健在。世界平和と自国の安全を、核によって樹立するというイデオロギーが生きている限り、一触即発の事態は決してシュミレーションではない。スリリングな国際政治。しかし情報の分析を誤れば、そこには地獄が待っている。

□2002年 アメリカ映画 原題「The Sum of All Fears」
□監督:フィル・アルデン・ロビンソン
□出演:ベン・アフレック、モーガン・フリーマン、ジェームズ・クロムウェル、他

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