ウインドトーカーズ [DVD]ウインドトーカーズ [DVD]
◆プチレビュー◆
苦悩する男が十八番のニコラス・ケイジ。脚本が悪いとこういう結果になる。

1944年、激戦のサイパン島に上陸したアメリカ軍は激しい戦闘を繰り広げる。暗号をことごとく日本軍に解読された米軍は、ナバホ族の言語を通信の暗号として採用。心に傷を持つ海兵隊兵士ジョー・エンダースは通信兵ヤージーを護衛する任務につく。ジョーはヤージーを守る任務と同時に、ナボホ族の兵士を生きて日本軍へ渡さないという非情な極秘任務をも課せられていた…。

いわゆる戦争秘話で、ナバホ族というあまり知られていない部族の暗号、心に傷を負った主人公、任務と友情の間での苦悩…と素材はおもしろいはずなのに、残念ながら脚本で失敗している。メリハリが全くないのだ。トラウマを背負った男をやらせるとピカイチのN.ケイジは実に上手いのだが。

ジョン・ウー作品のお約束である二丁拳銃も白い鳩も出てこないかわりに、これまた定番の爆発シーンが前半から炸裂。しかし、いくらなんでも多すぎる。サイパンが激戦の地だったことは判るが、こんなに似たような映像がてんこもりじゃ、どれが一番の山場だったのか判らない。ウー監督はアクション映画の詩人と呼ばれるだけあって、爆破シーンはかなり独創的で、リアリティよりも、スローを多用し、炎の色や方向を工夫して美しく仕上げるのが特徴。そんな芸術品の大爆発は、やっぱりここ一番というところで見せてもらわなくては。人物の描写でしっかりしてるのは、苦悩する男を演じきるN.ケイジくらい。他の人物はその背景すら見えてこない。

しかし、いいところが全然ないわけではない。最近のアメリカ至上主義的な戦争映画ブームの一連の作品とは一線を画す部分がある。それは、人種問題に重きをおいているところ。ナバホ族は通信兵として戦場に借り出されるが、軍隊の中でかなり露骨な差別を受ける。黒人の差別はよくあるけれど、先住民族を暗号として利用したのも秘話ならば、彼らに対する差別を正面から描写したのも珍しい。もっとも、ナバホそのものの事を深く描いてほしかったし、日本人に成りすます場面などは都合がよすぎて苦笑したけれど。

ジョーは、人ではなく暗号を守る事が任務で、もしヤージーが敵の捕虜となったときは、彼の命を奪わねばならない。それ故に、最初はヤージーと親しくなるのを拒む。しかし、常に行動を共にし、ヤージーによって癒される自分に気付いたり、ある事件により、狂気にかられるヤージーの姿に自分自身を見たとき、ジョーの中で何かが変わる。民族の違いや任務による人間性の喪失に視点がおかれているのは注目すべき点だ。最近よくある、戦争は恐ろしいものだが、戦友はすばらしい、みたいな安易なメッセージではなく、人間同士として友情が芽生えていく大切さを感じさせられた。

第二次世界大戦当時、ナバホ族が暗号通信兵として活躍していたという興味深い事実を、よりドラマチックに脚色した異色の戦争映画である本作。脚本次第ではおもしろい映画になったかもしれないのに、残念だ。

ウインドトーカーズとは、暗号通信兵(コードトーカー)と、風を神聖なものと考えるナバホの文化に由来した題名である。

□2002年 アメリカ映画 原題「WINDTALKERS」
□監督:ジョン・ウー
□出演:ニコラス・ケイジ、アダム・ビーチ、クリスチャン・スレイター、他

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