モンスーン・ウェディング [DVD]モンスーン・ウェディング [DVD]
◆プチレビュー◆
濃厚メイクが映えるインド美人に釘付け。祝祭的映像に酔う。

デリーの裕福な家庭の長女アディティが親の決めた縁談を承知して結婚することになる。世界中に散らばる親戚がやってきて、結婚式の準備が進むが、花嫁の気持ちは沈みがち。というのも、挙式目前なのに、不倫相手が忘れられず悩める日々を過ごしているからだ。幾日も行事が続くインド・パンジャブ地方特有の婚礼儀式の中、集まった一族の問題や、ウェディング・プランナーの不器用な恋なども繰り広げられ、それぞれの愛や悩みが、いくつものストーリーを織り成していくことになる…。

ある家族の結婚式を舞台に、そこに集まる人々を描く群像劇のこの映画は、典型的なグランド・ホテル形式。絢爛豪華な結婚の行事は、数日間も繰り広げられ、これがインドの中流家庭の一般のレベルというから、上流はいったいどうなるのか?!民族色豊かな結婚式を背景に、笑いと涙の5つのエピソードが描かれる。

色鮮やかな式の準備と共に、様々な人間関係が観客の目の前に現われる。花嫁のアディティは自らの不倫相手の恋人との未来に絶望しながら、後ろ髪を引かれる。しかも、優しい花婿のことを思うと、自分の不誠実さが我慢できない。お調子者のウェディング・プランナーはメードのアリスに恋をして気もそぞろ。花嫁の従妹で、聡明なリアは、どうやら心の傷があるみたいだし、別のいとこ同士は何やら一目ぼれした様子。それぞれの思惑がからみ、ユーモア溢れるお祭り騒ぎが展開。

まるでインド更紗のように美しく複雑な人間模様の中で、特に光るのは父親ラシッド。セレブな家庭といえども金策に走り回り、娘のために盛大な式をと切に願う姿がいい。伝統的なインドの文化と、欧米的な価値観が混在した一族は、気持ちもバラバラ。家長として親戚をたばね、その輪が壊れないように神経を使う中で、ふと寂しさが募る。嫁ぐ娘の寝姿を見て、「愛情で胸がつまる。幸せになってくれるなら、どんな苦難でも引き受ける。」と長年連れ添った妻にささやく子煩悩なお父さん。我が子同然の姪の身に起こった悲しい出来事にけじめをつけるため、ラストでついに親戚一同の前であることをやってのけるその姿に、拍手喝采だ!

インド映画といえば歌と踊りだが、本作では全て物語の展開に自然な形で登場。アジア特有の陽気な祝祭の高揚とインド独自の官能性には、この上ない至福感が漂う。パンジャブ地方独特の新郎新婦の衣装をつなぎ合わせる儀式は、複雑にもつれてほどけた人間関係を、もう一度優しく結び、全ての葛藤を柔らかく大らかに包み込んでしまう。男と女、親と子、金持ちと貧乏人、近代と伝統など、劇中でさまざまな対比が描かれる。ベンガル人は理性的で禁欲的、一方、パンジャブ人は情熱的で快楽的なイメージだそうでこの部分は本国インドでは大いにウケたとか。

映画のクライマックスは激しいモンスーンの雨の下で行われる盛大な結婚式。プランナーのデュベイのさすマリーゴールドで作った傘の中にも、幸せが見える。過去に降り積もったしがらみをきれいに浄化する土砂降りの雨は、生命力に満ちている。ずぶ濡れの花嫁と花婿の爽やかな笑顔を見ると、大らかな人生賛歌が聞こえてきそう。親子の絆や夫婦愛、家族の結びつきに対する人々の想いは、世界共通なのだ。

苦悩を乗り越える勇気と、何よりも人生を前向きに生きる素晴らしさがメッセージ。浄化作用があり食用や薬用にも用いられるマリーゴールドの花言葉は“真心”。ひとりひとりの感情をみずみずしく描き、そのくせ爽やかにカラッと終わるのがいい。パンジャブ人たちがよく使う言葉“マスティ”は「人生に酔う」という意味だそうだ。

□2001年 インド映画 原題「Monsoon Wedding」
□監督:ミラ・ナイール
□出演:ナジルラディン・シャー、リレット・デュベイ、ヴィジェー・ラーズ、他

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