クライム&ダイヤモンド ~スペシャル・エディション~ [DVD]クライム&ダイヤモンド ~スペシャル・エディション~ [DVD]
◆プチレビュー◆
映画のチラシやポスターを目にした人すら、ごく僅か。こんなイイ映画がどうしてこんなに冷遇されたのか?!と憤慨。

場末のホテルの一室で、偽造詐欺師フィンチの頭に銃が突きつけられている。殺し屋“毒舌ジム”は、フィンチ殺しの報酬金が振り込まれる90分の間におもしろい話を聞かせれば、命を助けると提案。実はジムは、筋金入りの映画フリークなのだ。追い詰められたフィンチは、しかたなく自らの体験を語り始めるが、その話は、ダイヤと脱獄、殺人と美女が絡む、まさに“映画のような”物語だった…。

尊敬すべき人物に対し、その映画を捧げることを「オマージュを捧ぐ」と言う。オマージュとは、もともと仏語で“敬意”の意味。「クライム&ダイヤモンド」は映画そのものにオマージュを捧げている。監督が約10年という長い歳月をかけて書き上げた脚本は、練り込んだ内容と、過去の名作映画への愛が満ち溢れ、映画ファンの心をくすぐるたまらない1本だ。しかも、ただ回顧的な趣だけでなく、個性的なキャラクターと、Q.タランティーノを連想するほどの目まぐるしくスピーディな構成は、クライムサスペンス、フィルム・ノワール、コメディ、ロマンス等、様々な要素を絶妙にミックスしながら進む、非常に現代的なもの。奇想天外なドラマとなっていく展開には目が離せない。

フィンチは、自分の命を救うために、シエラザードよろしく話を始めるが、彼には千夜はおろか一夜の余裕もない。なにしろ90分以内に、映画フリークの殺し屋ジムを楽しませるイケてる話をしなきゃいけないのだから。フィンチが語る物語は事実か否か。「いいね、回想シーンは大好きだ。」と殺し屋ジム。鮮やかなダイヤ強奪に端を発し、刑務所からの決死の脱獄、なりすましたはずの人物の意外な素顔を知らぬままマフィアに追われ、ダイヤを取り戻すため、なんと再度刑務所に入る。そして、ヒロインのテスとのロマンスもあり、ジムも思わず身を乗り出す。「いよいよ来たぞ、これぞ意外な展開。」そんなのあり〜?!の設定がまた楽しい。はたして、フィンチは追っ手から逃れ、ダイヤとテスの愛を手にすることができるのか?話の合い間に、ドジなマフィアの手下や妖艶なドラッグクィーン、アクの強い検視官等が登場して、場を盛り立てる。

個性的な登場人物の中でも、ひときわ魅力的なのが映画フリークの殺し屋“毒舌ジム”。彼の話す言葉の大半は映画の台詞の引用で、ご親切にちゃんと年号まで付け加える。フィンチ殺しを請け負う連絡が入るときも、彼は映画館の暗闇で、ヘップバーンの名画「ティファニーで朝食を」のラストを見ながら、感動で涙ぐんでいるのだからかわいい。そのくせ、ジムは、狙った相手の眉間を一発で撃ち抜く凄腕の殺し屋なのだ。引用する映画も「レベッカ」「深夜の告白」「マルタの鷹」「サンセット大通り」など名作たちばかりで、映画ファンは思わずうれしくなる。報酬の振込先口座を言うときも「マックィーンのM、フォンダのF、トレイシーのT、キューブリックのK…」と説明するジム。こんな殺し屋なら会ってみたい!

映画ファンであればあるほど、劇中にクスッと笑うシーンが多いはず。デビュー当時、ヤング・ジャック・ニコルソンと評されたC.スレイターに殺し屋ジムが「おまえ、話し方がジャック・ニコルソンに似てるな。」などと言う。スレイター「マジで?」と答えて、観客はニヤリ。映画通ならば本当に楽しめる1本だが、あまり知識がなくても大丈夫。だって、映画フリークの殺し屋“毒舌ジム”が映画の中でちゃんと教えてくれるから。

絶対絶命の危機を頭脳とトークで切り抜けるには、映画ネタが必須。最後に殺し屋がみせる“しぐさ”は、映画好きなら誰もが知っている名作のワンシーン。思わず拍手を送ってしまう画面の中に、ジーン・ケリーを見る喜びのおまけつきだ。往年の映画の名シーンを絡めて描く異色のサスペンス。見終わってしみじみ思った。あぁ、映画ファンで良かった…と。

□2000年 アメリカ映画 原題「Who is Cletis Tout?」
□監督:クリス・バー・ヴェル
□出演:クリスチャン・スレーター、ティム・アレン、ポーシャ・デ・ロッシ、他

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