ロード・トゥ・パーディション 特別編 [DVD]ロード・トゥ・パーディション 特別編 [DVD]
◆プチレビュー◆
冒頭の回想でオチが読めるのが惜しい。ハンクスは、演技も重いが、体重も重かった。

大恐慌時代のアメリカ。アイルランド系ギャングの殺し屋サリヴァンの息子マイケルが殺しの現場を目撃したために、組織のボスの息子コナーはサリヴァンの妻と次男を殺害。ボスのルーニーはサリヴァンにとっては恩人で父とも慕う人物だったが、組織への復讐を誓ったサリヴァンは、やむなくルーニーと敵対することになる…。

バイオレンス描写満載の傑作時代劇「子連れ狼」の主人公は拝一刀(おがみいっとう)。剣の達人である一刀がなぜ、復讐の旅に足手まといの幼子を連れているのかというと、父として、我が子と地獄の果てまで落ちる決心があるから。冥府魔道(めいふまどう)に生きる覚悟で闘うその姿は、まさに修羅。これもまた、ひとつの親の愛の形か。

父としての行動は全く異なる本作。しかも劇中には2組、更に擬似親子とも言える関係を含めると、3組の父と子が登場し、その感情も複雑で単なる復讐物語ではない。古風なギャング映画でロード・ムービーの形をとりつつ、親子愛を描いた本作のテーマは組織の掟と家族の絆、更に、父親としての愛と責任なのだ。物語は、大五郎よりかなり年上の息子マイケルの回想で始まり、その思い出は、過酷でありながら、同時に輝きのある出来事として綴られている。

ベテランのP.ニューマンがいぶし銀の貫禄で演じ、存在感が抜群。不肖の息子を持つ父として悩み苦しむ姿が何とも痛ましく、渋みもあって見事だ。一方、寡黙で威厳がある父親の、抑えることができない真摯な愛情を巧みに演じるハンクス。あぁ、やっぱりこの人は上手い。残虐な殺し屋を演じるのが、美しさと演技力を併せ持つジュード・ロウ。この殺し屋のキャラが際立って個性的でおもしろすぎるため、劇中でやや浮いているのが気になるところか。

パーディション(地獄)という名の町を目指すふたりの行く道に待つものとは?息子だけは生きてほしいと、親子の別れを覚悟した上の命がけの旅をする父サリヴァン。子連れ狼との決定的な違いがここにある。冥府魔道の道連れになど決してするものか!

父親としての愛情と責任とは何なのか。父は息子に何を伝えられるのか。愛を表すことが苦手な父と、息子を愛するが故に葛藤し、責任を果たせない父。彼らが対峙するシーンは、父親である両者が信頼しあっている分だけ悲劇性が増し、やるせなさと逃れられない宿命を表していて、見ごたえ満点だ。

舞台演出出身のメンデス監督の、風格ある演出と本格的で懐が深いドラマが堪能できる。更に、映画界でも5本の指に入る名カメラマン、コンラッド・ホールの撮影と聞けば、その映像の気品と様式美は約束されたようなものだ。悲劇を予感させる暗い色調の映像が緊張感を醸し出し、父子の“道行き”の物語を彩る。渋い色彩ながら、雪の街のたたずまいや、蝋燭の光などは、絵画のように重厚だ。特に白眉は、クライマックスの夜の雨の中の殺戮シーン。その美しさには、ただため息。

凍てつく冬から新緑の春への旅の中、父が命がけで託した希望を少年は確かに受け取る。澱みなく流れる物語、素晴らしい演出と美しい映像、役者も一流なら、脚本も見事。ご都合主義的な人物も登場せず、余韻の残るラストがまたすばらしい。こんなに完璧だと、逆に悪口を言われるかも…と心配になってしまうほどだ。正攻法で描くのでストーリーの先は読めるが、それが何だと言うのか?!古典の趣を感じる映画はどんな観客をも満足させる。いいものはやっぱりいいのだ!

復讐と救済の旅をする父と子の愛を、新旧3大スターの競演で描くアクション叙事詩。“良い悪人”を演じるハンクスとニューマン。久々に出会った奥行きのあるドラマだ。

□2002年 アメリカ映画 原題「Road To Perdition」
□監督:サム・メンデス
□出演:トム・ハンクス、ポール・ニューマン、ジュード・ロウ、他

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