ディナーラッシュ [DVD]ディナーラッシュ [DVD]
◆プチレビュー◆
歴史に残る名作、大作ではないのは判っている。でも、ツボにハマり最高に好きなのはこんな映画だ。

トライベッカ地区のレストラン「ジジーノ」は、今夜も空席待ちのお客で長蛇の列。経営方針の違いで対立するオーナーと息子を中心に、店の料理人やお客たちがさまざまなハプニングを引き起こし、雑多な人間関係が披露されるが、ギャンブル好きの副シェフと店の乗っ取りを企む新興マフィアの登場により、思いがけない事態が発生。厨房の忙しささながらに、意外な結末へとなだれこんでいく…。

根っからの食いしん坊の私はいわゆるグルメ映画が大好き。食を描いた作品となると、無条件に観たくなる。忘れられない映画は数々あれど、1本だけ挙げるならば、ストイックな精神世界を描いた渋いグルメもので、数々の賞にも輝いた静かなデンマーク映画「バベットの晩餐会」あたりだろうか。一方「ディナーラッシュ」は、それとは対極にあるような、とびきり面白くスピーディでスタイリッシュな群像劇。食してみると、これが何ともいいお味。

NYに実在するレストランで即興的に撮影されたという映像は、強烈なインパクトとしなやかなカメラワークで、喧騒を極める店の内部を次々に観客に披露する。柔らかくほの暗い茶色で統一された店内と、蛍光灯でギラギラした戦場のような厨房との対比も臨場感に溢れ、使い込まれた道具たちが誇らしげに働いている場所。罵声や笑い声で活気に満ちたキッチンの裏側は、それだけでも充分に観る価値がある。

昔堅気の父親ルイスの始めた家庭料理の店は、今やスターシェフの息子ウードが切り盛りする大人気のトレンディスポットへと様変わり。これが父親にはおもしろくない。オヤジは昔ながらのミートボールや、胡椒で味付けされたソーセージが食べたいのに、何なんだ、息子の作るこのヘンテコな料理は!いくら人気があってもオレは認めないゾ。そんな親子の世代交代のドラマが物語の核となる。

登場する人物は皆、魅力的で、さまざまなバランスの力関係がスリリングで絶妙。経営方針で対立する父と息子はもとより、新興マフィアと昔堅気の胴元、シェフと副シェフの間には美貌の女性スタッフがからみ、芸術家気取りの嫌味な画商と勝気なウェイトレスとのやりとりや、雑学でチップをかせぐバーテンダーもユニーク。そして、そんな客やスタッフたちをあきれて見つめるウォール街の証券マン。まるで演劇の舞台空間のように人々が交差する。おまけに種と仕掛けが満載ときた。

セレブ気取りのいけ好かない客たちの中、スノッブな女性料理評論家の容貌が笑える。女装したミック・ジャガーじゃないのかと一瞬我が目を疑った!また、クィーンズ地区から来た新興マフィアの二人組も、店の乗っ取りを狙いながら、実はトラッドなイタリア料理を好んでいるあたり、設定の細やかさが見て取れる。「普通のボンゴレをくれないか。ヌーベル・キュイジーヌは苦手でね。」

軽い小品ながらこの満足感はどうだ?!わずか一夜の間に、多様な人物を、世代交代、経営危機、芸術論や三角関係、果ては殺人事件にまで、見事にからませてしまう。ドンデン返しがまた小気味良く、この映画がサスペンスでもあったことに気づくのだ。物語は実に破綻なくまとまっていて、短い時間でギュッと濃縮された人間ドラマの結末は、鮮やかでありながら同時にホロリ。なんともおしゃれに盛り付けられた、美味なイタリアン・フルコースだ。

NYのイタリアン・レストランでの一夜を舞台にした新感覚の群像劇。溢れるスピード感としゃれた雰囲気が巧みにブレンド。極上の逸品をぜひ味わって。

□2001年 アメリカ映画 原題「DINNERRUSH」
□監督:ボブ・ジラルディ
□出演:ダニー・アイエロ、エドアルド・バレリーニ、カーク・アセヴェド、他

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