チェンジング・レーン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]チェンジング・レーン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
小粒ながらも、見応え十分でまさに掘り出し物。おマヌケ顔のベン・アフ、ちょっと見直した!

見知らぬ二人の男が、無謀な車線変更から起きた接触事故でそれぞれの人生を狂わせる。若手エリート弁護士ギャビン・バネックは重要な書類を紛失、大金がからんだ裁判を逃し、アル中の中年男ドイル・ギブソンは別居中の妻から子供の親権を剥奪されてしまう。お互いを憎悪する二人は、憎しみ合い、凶行に及ぶようになる…。

素晴らしい素材があれば豪華な料理が出来るのは当たり前。しかし、腕のいい料理人は、たとえありふれた材料を使っても、工夫しておいしい一皿を作れるものだ。平凡で日常的なハプニングを素材にした本作は、豊潤な資金力だけが目立つアメリカ映画の本当の実力を見せつけてくれる。

描かれるのはわずか1日の出来事。些細な接触事故から当事者二人が憎み合うのは、誠意のない対応への憤りが発端だ。二人にとって、失ったものはあまりにも大きかった。目には目をのリベンジが凄まじく、激化する報復合戦は互いの命さえも脅かす。相手への怒りから、自分自身を見失い、醜い姿をさらす二人。そんな中、ギャビンは会社の不正の事実を知り、ドイルは自らの人間性の欠点に気付いていく。

個人情報の流出の恐ろしさ、自分さえ良ければという身勝手な保身の考え、アルコール依存症、離婚や不倫など、内包する問題は多様だが、この映画の本質は、トラブルに陥った時、人として正しい行動がとれるかどうかを問うものだ。正義と利益の間で悩み、葛藤の末、許し合う瞬間までの道のりが巧みで興味深い。

主演の二人の他にも、ウィリアム・ハートやトニ・コレット、監督としても有名なシドニー・ポラックなど、魅力的で存在感のある役者が脇を固めているのだが、彼らの背景を描く部分は殆ど省かれている。説明不足で不親切にも感じるが、身近な題材でのアイデア勝負の小品としては、逆に省略部分が潔くも見えた。

劇中に性善説を語る部分があるが、人間は本来、善と悪の両方を併せ持つ存在。映画の登場人物も、悪行の合い間に殊勝に反省したりと曖昧さを見せる。悪意と良心が浮き彫りにされ、その間で悩みながら下す決断が生む善良さが、モラルなのではないか。

人はそれぞれ人生という名の道(レーン)を走っている。走る速度も様々だ。思いどおりの速度で走れない時もある。地位と力で何でも出来るギャビンと、何も持っていないドイル。対照的な二人の男の偶然で不幸な出会いは、彼らに人生の“車線変更”を迫ったが、長い1日を終えた二人は、踏みとどまることの大切さを学んでいた。

□2002年 アメリカ映画 原題「CHANGING LANES」
□監督:ロジャー・ミッチェル
□出演:ベン・アフレック、サミュエル・L・ジャクソン、他

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