ゴスフォード・パーク [DVD]ゴスフォード・パーク [DVD]
◆プチレビュー◆
ジャン・ルノワールの名作「ゲームの規則」を彷彿とさせる内容。観る際は、登場人物の名前より、その性格を把握すると理解しやすい。豪華な家具調度品も必見。

1932年。ある富豪の貴族がゴスフォード・パークと呼ばれるカントリーハウスでパーティを催す。集まった親戚一族やゲスト、彼らに付き添う大勢の使用人。人々が入り乱れる中で、屋敷の主が殺される事件が発生。集まったものは皆、彼に良からぬ思いを抱いていたが、複雑な人間関係は思いもよらない事実を浮き彫りにしていく…。

さすがは群像劇の名手アルトマンだ。両手でも足りない登場人物にイギリス映画界の名優たちを惜しげもなく配し、見事にさばいていく。人間模様も、あれこれ説明などせず、何気ないひと言と、わずかな表情や仕草でサラリと描く。一人一人の人物の思惑を過不足なく描き、会話に真実を隠した脚本はオスカー受賞も納得だ。

英国貴族を描く作品は多いが、本作では貴族よりも使用人の目線で描写するのがユニークなところ。とりわけ様々な約束事のある彼らの生活や仕事ぶりが興味深い。新米のメイドと、英国に不慣れなアメリカ人を登場させて、主人や先輩メイドが彼らに物事を教える形で、観客にイギリス上流階級の暮らしを説明する展開が上手い。

貴族を階上に、使用人を階下に分け、彼らには接点はない…はずなのだが、実は2つの世界は巧妙に交わっている。ハリウッドのプロデューサー付の使用人役ライアン・フィリップが、英国人揃いの俳優の中で、面白い味を出す。彼が上と下を自由に行き来する役なのも巧みな演出のひとつだ。

物語の後半、女中頭のヘレン・ミレンが、良い使用人の資質を述べる場面がある。彼女はそれを洞察力と言い切った。主人が何を望んでいるかを推測し、これから起こる出来事を予測して事前に対処できる能力を持つ人間が優秀な使用人なのだと。誰が、いつ、どこで、何を洞察するか。登場人物の何気ない会話や小道具も見逃さないで。

英国の階級社会の人間のこっけいさや哀れさをシニカルに描き、彼らに押さえつけられた人々の不幸の実態も浮き彫りにする。殺人事件の犯人探しは物語のメインではない。一握りの人物と観客だけが、犯人とその動機を知り、招待客は皆、何事もなかったかのように屋敷をあとにするのがその証拠だ。

アルトマン監督はかなりの高齢にもかかわらずその力は衰えることを知らない。しばらくなりをひそめては、毒のある新作をもって登場。そのたびにアルトマンの復活と騒がれるが、いったい何度復活すれば気が済むのか、この人は。ハリウッド嫌いを公言していても、この才能には誰もが感服するに違いない。(ロバート・アルトマン監督、2006年11月に永眠。)

□2001年 アメリカ映画 原題「Gosford Park」
□監督:ロバート・アルトマン
□出演:マギー・スミス、エミリー・ワトソン、マイケル・ガンボン、他

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