マイノリティ・リポート [DVD]マイノリティ・リポート [DVD]
◆プチレビュー◆
物語は2流SF「ジャッジ・ドレッド」と瓜二つ。司法省の役人のウィットワーが元神学生という設定が全く生かされてないのが疑問。ラストにやや不満が残るが、エンタメ映画としては上出来。

2054年のワシントン。プリコグと呼ばれる予知能力者によって犯罪を未然に防ぐシステムが登場。犯罪予防局のチーフであるジョンは6年前に息子を亡くして以来、仕事に熱中していたが、ある日、プリコグによって、彼自身が全く見知らぬ男を殺す犯行を告げられてしまう。システムに疑問を抱いた彼は、逃亡しながら真相を追うが…。

S.スピルバーグとT.クルーズ。現在のハリウッドでこれ以上贅沢な組み合わせがあろうか。自ずと期待感は高まる。但し、スピルバーグの映画に過剰な期待は禁物で、そのことは、情に流されたSFピノキオ「A.I.」で十分に学習済みだ。結果、無欲で臨んだ本作は、娯楽映画の王道を行くもので、存分に楽しめた。

いったいなぜ自分は見た事もない男を殺すのか。この謎を解き明かす形で映画は進むが、ふいに主人公が陰謀に巻き込まれるのはヒッチコックが好んだ手法。古典をイメージしながら近未来SFのビジュアルで魅せるのが面白い。「犯人は誰か?」ではなく、未来形の「何故、殺すのか?」という逆の考え方で構築する物語は魅力的だ。

カルトな人気を誇るSF作家フィリップ.K.ディックは「ブレード・ランナー」などの作者。ディックの特徴である厭世観はやや薄れているが、無機質な色彩の未来世界のビジョンは、彼の世界を効果的に映し出している。

クセ者揃いの役者の中で、英国人サマンサ・モートンが凄い。プリコグの一人のアガサは、いわば地図のような存在で、事件は彼女の見る未来と過去の映像を頼りに解きほぐされていき、最後には真犯人の場所へと主人公を導く。クルーズに支えられるようにして逃げながら、小さな予言を積み重ねて危機を救う場面がスリリング。犯罪のない理想的なシステムも、予知能力者とはいえ、結局は人間が支えている。

近未来もののアイテムはあまり現実離れせず、今あるものに少しだけ味つけした程度のアナログ的なもの。あまり驚かせてはいけないのだ。しかもこの映画で描く未来は安全な殺人のない世界。もはや武器はセーフティなもので十分なのだが、床を飛び跳ねるスパイダーと嘔吐棒にはやや失笑。しかし、最大の変化は交通システムで、壁を垂直に走る車は見もの。トムもこの部分のアクションには気合が入っている。

この作品のテーマは個人を管理する社会への警鐘と、未来は自分で切り開くものだというメッセージ。今、我々はTVを見るが、未来ではTVが私達を見ている。網膜スキャンで特定した個人向けのスポット広告はそう遠くない未来に現れそう。逃亡中のクルーズにビール会社のCMが呼びかける。「ジョン・アンダートンさん、こんな時こそギネスをどうぞ」。余計なお世話だ。彼は今、それどころじゃない。

□2002年 アメリカ映画 原題「MINORITY REPORT」
□監督:スティーブン・スピルバーグ
□出演:トム・クルーズ、コリン・ファレル、サマンサ・モートン、他

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