8人の女たち デラックス版 [DVD]8人の女たち デラックス版 [DVD]
◆プチレビュー◆
タイトルはジョン・フォードの遺作「荒野の女たち」(原題「SEVEN WOMEN)が出典か。オゾン流の毒気はやや薄いが、過去の作品を使った遊び心が楽しい。

50年代のフランス。イヴの朝、ある豪邸で館の主マルセルが殺害される。屋敷は、電話線は切られ、大雪に閉ざされた密室状態。身内を中心に8人の女たちが集まっていたが、不倫、妊娠、金銭問題など、全員に殺害の動機があった。長女のシュゾンは、さっそく犯人探しを始めるが…。

やはりオゾン監督はタダモノではない。主役級の女優たちを一堂に集めて作った作品はなんとミュージカル。もちろん正統派ではなくオゾン流だ。50年代のテイストと、往年のハリウッド映画の名女優へのオマージュが満載の本作は、豪華で風変わりな推理劇。シニカルでコケティッシュな感触は一度味わったら、もうやみつきだ。

妻に二人の娘、妹やメイドなど、主に関わる女たちは、皆、殺人の動機が充分。互いの秘密が次々に明かされる過程で、仏を代表する女優たちが、唐突に歌い踊り出す。ドールハウスのようなテクニカラーの屋敷の中では、ミュージカル仕立ての進行も不思議と違和感がない。ファッションも意図的に大仰で、目にも楽しい。しかも8人全員が一人一曲、歌い踊るサービスぶりなのだから嬉しくなる。

オゾン作品と言えば、同性愛や近親相姦、軽いタッチの殺人などがお約束だが、本作でも、思わぬ謎解きの小道具として登場。ポップな中にもちゃんと毒が仕込んであるのだ。いちいち驚いているヒマはない。

大女優から新進気鋭の若手まで、百花繚乱だが、中でも、インパクト抜群なのが女主人の妹を演じるイザベル・ユペール。欲求不満で、家族中に当り散らし、トラウマと心臓病を抱えて暴走中のオーギュスティーヌは、最高に笑える存在。ユペールの確かな演技力が、極上のコミカルさを生んでいる。シットコム(シチュエーション・コメディ)よろしく、笑い声を献上したいほど。彼女の変身後の姿は必見だ。

ミュージカルの不自然さが苦手という人にも、これはかなりお勧めでは。ここまでデフォルメされた展開なら、唐突さがむしろ魅力となる。映画ファンには過去のヒロインのイメージを発見できるお楽しみ付き。メイドのルイーズが大切にしている元の女主人の写真は、故ロミー・シュナイダーではないか!

ラストに明かされる家族の意外な秘密。これは明らかに女たちのドラマなのだ。その証拠に、一家の主の顔は、ほんの一瞬を除いて最後まで画面に登場することはない。美貌とパワー溢れる仏女優たちのノリまくった夢の競演は、映画界の大事件。オゾンの初期の肩書きは“鬼才”。最近ではさかんに“俊英”と呼ばれているが、この人が将来“巨匠”になるのは間違いない。

□2002年 フランス映画 原題「8FEMMES」
□監督:フランソワ・オゾン
□出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ファニー・アルダン、エマニュエル・ベアール、イザベル・ユペール、ヴィルジニー・ルドワイヤン、リュディヴィーヌ・サニエ、フィルミーヌ・リシャール、ダニエル・ダリュー、他

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