ボーン・アイデンティティー [DVD]ボーン・アイデンティティー [DVD]
◆プチレビュー◆
繊細で知的な青年役が多かったマット・デイモンの新境地。アクションも立派にこなしてフェロモン全開だ。女性ファンも急増だろう。

嵐の海で救助された男の背中には銃弾のあとが。その男は記憶が全くなく、皮膚の下に埋め込まれたマイクロチップに、スイスの銀行口座が記されていた。そこで彼は、ジェイソン・ボーンという自分の名を知り、数種のパスポート、多額の現金を発見。驚く間もなく、何者かに命を狙われる。マリーという女性を道連れに逃避行を続けながら自分の過去を探ることになるが…。

「バイオハザード」「ロング・キス・グッドナイト」。これらは皆、特殊な能力を持った人物が記憶を無くすという設定の物語。他の作品が“主人公は何者か?”を一番の謎とするのに対し、本作では、主人公のボーンが実はCIAエージェントだということを観客は最初から知っている。なぜ追われているのか、執拗に命を狙われる理由さえも物語途中で察しがついてしまうのだが、記憶はなくしても、身体が覚えている語学力や戦闘能力を駆使して活躍する様が痛快だ。

今まで繊細で知的な役柄が多かったマット・デイモンが逞しく生まれ変わり、非常に魅力的だ。無駄のない動きで相手を倒し、切れ味のいいアクションを披露する。とはいえ、知性派の名に恥じず、ただ銃をぶっ放すだけではなく、様々な小道具を使って追っ手を振り切るのだ。無線を奪って情報を収集し、ビルの内部の地図を見ながら逃走経路を練り、電話のリダイヤルで敵の正体を探る。銃を使うのを本能的に避けるこの作戦は、単に頭脳戦というだけでなく、主人公の性格付けにも通じている。

記憶をなくした上、命を狙われる。その不安は想像して余りあるが、M.デイモンのどこか頼りなげなルックスがこの役柄にぴったりマッチする。あの幼い顔で、バッタバッタと敵を投げ倒し、激しいカーチェイスやビルの絶壁からのダイブまでも披露してくれるからサービス満点だ。パリの街の複雑な路地や石畳で繰り広げられるカーチェイスの主役は、小回りが効く真っ赤なミニ・クーバー。実際のスピードを考えると逃げ切れるかは甚だ疑問なのだが、この車は劇中のマスコットのような存在だ。

ヒロインを演じるのは「ラン・ローラ・ラン」で鮮烈な印象を残したドイツ人女優フランカ・ポテンテ。彼女が演じるマリーもまた、欧州を放浪しながら自分自身を探している。ポテンテは中性的な雰囲気でとても好演なのだが、マリー自身の役の設定にもうひとひねり欲しかった。いくらなんでもしろうと過ぎるので、足手まといの感は否めない。だから、最後まで行動を共にできず、途中でボーンと離れなければならないのだ。しかし、逃避行の合い間に見せる2人の短いラブシーンはとても秀逸で、ボーンが変装のために、バスルームでマリーの髪を切る場面は印象深い。

主人公は次第に自分が恐ろしい陰謀に加担していたことを知る。かつては非情な任務をこなし優秀なエージェントだった彼が追われることになる原因は、その根本に潜む性格にある。自分自身を認識し、その可能性を知るのは人間の普遍的な願い。主人公ボーンは、記憶を失ったことで、半ば強引に自分探しの旅をするはめになるが、その中で彼が持つ本来の人間らしさが、ボーンを生まれ変わらせようとする。かつての自分を知ってなお、変わろうするひたむきさ。ここに、この映画が従来のアクション映画と一線を画す魅力がある。

□2002年 アメリカ映画 原題「The Bourne Identity」
□監督:ダグ・リーマン
□出演:マット・デイモン、フランカ・ポテンテ、クリス・クーパー、他

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