僕のスウィング [DVD]僕のスウィング [DVD]
◆プチレビュー◆
何よりも魅力的なのはマヌーシュ・スウィングのサウンド。焼け残ったギターの一部を川に流すシーンが泣ける。

夏休みを裕福な祖母の家で過ごす10歳の仏人少年マックスは、ジプシーの音楽に魅せられギター演奏を習うためにロマ族の居住区に通うことに。そこには黒い大きな瞳のスウィングという美少女がいて、マックスは彼女に淡い恋心を抱く。ジプシー音楽とロマの少女。2つのスウィングと共に楽しい夏を過ごすのだが…。

自らもロマの血をひくトニー・ガトリフ監督は、常に自分の作品にジプシーのルーツを投影させている。愛と死、宿命を描いてきた過去の作品とは趣が異なり、本作は少年と少女の小さな恋物語を軽やかな音楽に乗せて描いた爽やかな作品だ。

マヌーシュとは主にフランス北部に住むロマ(ジプシー)の通称で、ジプシー音楽とスウィング・ジャズを融合させたのが、軽快なリズムのマヌーシュ・スウィングだ。マックスはギターの名手ミラルドに弟子入りするが、ミラルドの技術はまさに神業。全編を彩る演奏を聴くだけでもこの映画を観る価値があると言っても過言ではない。

秘密の抜け道や川での水遊び、木の実や薬草の名前を教わったり、時には恋のおまじないも。マックスにとっては全てが新鮮で永遠に続きそうな幸せな日々だったが、やがて切ない別れの時が訪れる。主役を演じる2人の子役の輝きは言うまでもないが、両性の魅力を備える野生味溢れるスウィングの笑顔が、特に印象的だ。

識字率が低く、社会からも冷遇されてはいるが、ロマの人々の自由で誇り高い暮らしはまぶしいほど。ナチスから受けた迫害を語る場面は、ワン・シークエンスでさりげなく描写される。マックスとスウィングを異文化の象徴とするならば、異なる文化の融合をこんなにも優しく瑞々しく描けるものかと改めて感動を覚えた。

音楽は全ての壁を乗り越える。使い古されたセリフだが、ジプシーとアラブ、欧州各地の演奏家のセッションの場面の素晴らしさは本物で、説教臭さなど微塵もない。仏人少年マックスとジプシーの少女スウィングの可愛らしい初恋物語でありながら、ロマの伝統や歴史をも描き込み、味わいとコクのある一作となっている。

□2002年 フランス映画 原題「SWING」
□監督:トニー・ガトリフ
□出演:チャボロ・シュミット、オスカー・コップ、ルー・レッシュ、他

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