SWEET SIXTEEN [DVD]SWEET SIXTEEN [DVD]
◆プチレビュー◆
少年が主人公であるこの映画は、今までのローチ作品のような、厳しさや辛さより、切なさが強く感じられる。実は私はケン・ローチは貧乏くさくて苦手。偉大な監督だと判っていても、毎回、物語の結末が辛すぎるのもイヤ。なのにどうしても気になって見てしまうのだ。ホントに困った監督である。

もうすぐ16歳の誕生日を迎えるリアムの夢は、恋人の罪を被って服役中の母親と、未婚の母である姉と家族揃って暮らすこと。小さなコテージの購入を計画し、そのために友人と麻薬を売り金を稼ぐが、街の組織が彼らを見逃すはずもなくトラブルを巻き起こし、深みにはまっていく…。

英国労働者階級の人々を描き続けるケン・ローチ監督が、少年を主人公に映画を作るのは「ケス」に続いて二度目だ。主人公リアムを演じるのはスコットランドの下部リーグでプレーしていたプロのサッカー選手M.コムストン。彼の、演技経験がないとは思えない繊細な表情が傷つきやすい内面を雄弁に語り、時折見せる硬い演技は、リアムの置かれたのっぴきならない状況を表すのに効果的でさえある。

映画の背景には、家族の崩壊、失業、貧困、虐待、ドラッグなど様々な深刻な問題が横たわるが、本作では、少年の心情に重点を置き、社会問題よりもドラマ性を重視している。声高に社会批判などせず、登場人物が悲劇に向かうプロセスを一歩ひいた視点で淡々と描き、結果的に、主人公をそうさせる社会構造の矛盾を浮き彫りにする手法がいかにもローチ流だ。

リアムが望むのは暖かい家庭のぬくもり。湖畔の小さなコテージを買って母子水入らずで暮らしたいと願うが、そのささやかな夢を実現させるためには、まず資金が必要だ。金稼ぎのために麻薬売買に手を染める愚かしさが悲しいが、そこが15歳の幼さ。母への一途な思いが間違った形となって悲劇を生む姿が痛ましい。

親友のピンボールとの悲しい別れも印象的だが、姉シャンテルとの価値観の違いが目をひく。リアムの夢は母ジーンと共に暮らすことで、それは彼の考える幸福と一致するが、母親の幸せはそうではない。シャンテルはそのことを知っていて、心の中で完全に母親と離別していた。家族を懸命に取り戻そうともがくリアムには、母親を見限ることなどできない。ここに悲劇がある。いくら聡明でも理解できないことなのだ。なぜなら、彼はまだ16歳にも満たない、母に愛されたいと願う少年なのだから。

映画はリアムをより救われない状況に投げ出して終わる。このラストに込められたかすかな希望を感じ取ることが出来るかどうかで作品の評価が分かれるだろう。少年のヒリヒリするような心の葛藤は、観るもの全てを突き刺す痛みだ。その日は彼の16歳の誕生日。辛く苦い朝にリアムは何を思うのか。決してスウィートではない青春を描く本作。暗くて地味だが手応えのある内容で、本当の映画好きにしか勧めたくないビターな1本だ。

□2002年 イギリス・ドイツ・スペイン合作映画 原題「SWEET SIXTEEN」
□監督:ケン・ローチ
□出演:マーティン・コムストン、ウィリアム・ルアン、ミッシェル・クルター、他

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