シカゴ [DVD]シカゴ [DVD]
◆プチレビュー◆
キャサゼタ姐御のド迫力には恐れ入った。さすがはM.ダグラスのヨメさんなだけある。このお話はなんと実話がベースで、過去に2度ほど映画化されている。チョイ役で特別出演するルーシー・リューが大暴れするのが楽しい。

1920年代のシカゴ。スキャンダル好きで飽きっぽいこの街で、またしても殺人が。舞台スターを夢見るロキシーが不倫相手を殺して逮捕されたのだ。獄中の先客で大スターのヴェルマも同じく殺人罪だが、敏腕かつ金権弁護士のビリーを雇って刑務所の中で脚光を浴びている。彼女を見て刺激されたロキシーは、同じくビリーと手を組んで一躍スターダムにのしあがろうとするが、世間の注目を奪われたヴェルマが黙っているはずはない…。

元は75年に故ボブ・フォッシーが手がけた大ヒット舞台劇。映画「キャバレー」でも有名なフォッシーの演出なだけあって、当然テイストはダークで退廃的だ。スキャンダルを利用してショウビジネス界でのしあがろうとする二人の歌姫と、名声を操るやり手の弁護士の思惑が交錯する物語は、家族愛や人間愛というモラルとはいっさい無縁の世界。しかし、この映画にはそんなものはなくとも圧倒的な魅力がある。

大きな目のアップの導入部から、階段を駆け上るスピーディなショット。名曲「オール・ザット・ジャズ」で始まるオープニングは、文句なくかっこいい。粋なステージを最初からたっぷり見せられたら、もう誰もがこの作品のとりこになってしまう。舞台でキャリアを積んだR.マーシャルは本作が初監督ながら、その手腕は非常に高い。エネルギッシュなパワーが大スクリーンに炸裂、ゴージャスなドラマの幕開けだ。

唐突に歌いだし、不自然に明るいミュージカルを苦手とする人は案外多い。しかし、本作の演出の特徴は、登場人物の空想部分をショウ形式で表現していること。本来、留置所という地味な場所ながら、心象風景を歌と踊りで華麗に演出、華やかなステージとサスペンスフルな裁判を同時進行させる。不自然さは皆無で、その切り替えが実に巧みなのだ。更にこの映画の最大の魅力はブラックさ。なにしろ素材は“美人妻の不倫殺人”。獄中にいる人物が茶番劇の裁判で時代の寵児になり代わるというから、相当にクレージーではないか。さぁ、最後に笑うのはいったい誰か。

出演俳優の達者なパフォーマンスも見逃せない。聞けばキャサリンとギアは経験者。初挑戦のレニーは、二人に比べてやはりちょっと拙い。舌たらずな歌い方はハラハラさせられるが、それが、少し頭は弱いがしたたかでコずるいロキシーというキャラにピッタリ合っていて、結果的に成功しているからたいしたものだ。ギアはタップがもっぱら話題だが、腹話術で人形を操るシーンがアイロニカルで出色の出来。グラミー賞歌手Q.ラティファの上手さは言うまでもないが、気弱で哀れな、ロキシーの夫役のジョン.C.ライリーの歌の意外な味わい深さも捨て難い。

ミュージカル映画のオスカー受賞は60年代の「オリバー!」以来の快挙だ。全員が悪いヤツ。したたかに生き抜く彼らの姿は、なんと痛快なことか。悪の魅力に満ちた男女の原動力は、名声への欲望だ。きらびやかで猥雑、甘美な陶酔感がたまらない。久しぶりに“極上”という言葉が思い浮ぶ、大人のためのエンターテイメント映画の誕生だ。

□2002年 アメリカ映画  原題「CHICAGO」
□監督:ロブ・マーシャル
□出演:レニー・ゼルウィガー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、リチャード・ギア、他

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