ベッカムに恋して [DVD]ベッカムに恋して [DVD]
◆プチレビュー◆
サッカーの母国イギリスの女の子の夢がまぶしい。インドの結婚式の絢爛豪華さは毎度ながら驚かされる。女子プロサッカーでは米国がトップクラスであることも頭に入れておこう。

英国に住むジェスはベッカムに憧れるサッカーが得意なインド系の女の子。偶然、公園でプレイする彼女を見た白人少女ジュールズに誘われ、地元の女子サッカーチームに入って活躍するが、実はこのことは両親には内緒。なぜならジェスの家庭は伝統と対面を重んじる典型的なインド人ファミリーなのだ。コーチを巡る恋や家族とのあつれきに悩むジェスだったが、やがて両親に嘘がバレてしまう…。

思えば2002年W杯のベッカム熱は凄かった。日本中ににわか“ベッカム様”ファンが溢れ、さながらイングランドのホーム状態。病み上がりのせいもありプレイは精彩を欠いていたのだが、ルックスの良さのせいか、そんなことはおかまいなしだった。だが、この映画の主人公は違う。ちゃんとベッカムのプレーの素晴らしさを知った上で憧れているのだ。家族の反対にもメゲず夢に挑戦するのは女の子版「リトル・ダンサー」のようだが、ネックとなるのが経済的な事よりも文化の相違だからやっかいだ。

典型的なガール・スポ根ムービーで、ストーリー自体に目新しさはないのだが、いつのまにか映画の躍動感に引き込まれる。チームメイトとの友情や、コーチへの恋心なども定番だが、ヒロインがインド系であることで、家族愛や民族間の文化の違いを描き、社会問題にもアプローチする。家族とサッカーへの夢の間で悩むジェスは英国育ちのインド人。しかしインドで生まれ英国に移住した彼女の両親は、英国で自分達が味わった屈辱を思うと、娘に同じ思いをさせたくない。インド文化への誇りだってある。このジレンマがなんとも切ないわけだ。移民社会の複雑な実態は「ぼくの国、パパの国」でも描かれていたテーマだった。

珍しく普通の青年の役をするジョナサン・リース・マイヤーズに驚くが、やはりこの映画を魅力的にしているのは、大きな瞳と生き生きとした表情の、ジェス役のバーミンダ・ナーグラだ。これが本格的な映画デビューとなるが、この役のためにサッカーの猛練習をしたそうで、ドリブルでかわす姿はなかなかのもの。蹴ったボールをロー・アングルで追跡するのは、ウェゴという特殊な機械を使っている。CGにはないリアルな動きで、芝の香りと疾走感が伝わってくるようだ。

冒頭の場面で元W杯得点王のリネカーが出演する等のサービスが楽しい。ドイツに遠征して負けた時には「ドイツと英国の伝統だ。」と言って、1966年のイングランド大会での“疑惑のゴール”後、両国民が判定をめぐって真っ向から対立し、以後イングランドが伝統的にドイツを苦手としている事をサラリと盛り込む。なかなか、ツウ好みのサッカー映画だったりするのだ。デビッド・ベッカムという選手が、フリーキックと正確無比なクロスを特徴とすることもストーリーに上手く活かしている。当時、スキンヘッドだったベッカムを、ジェスの両親が“ハゲ男”と呼ぶのが可笑しい。

それぞれの立場の人間の歩み寄りの大切さと、家族と自分の夢との間で揺れ動くジェスの心を、笑いと涙で描いていく。人種や性別を超えてつかんだ夢はとびきり晴れやかだ。原題の「BEND IT LIKE BECKHAM」とは“ベッカムのようにボールを曲げろ”の意味。ベッカムの蹴るフリーキックが大きく曲がり、ゴールネットへ吸い込まれるように、自分の力で弧を描いて人生の軌道を上昇させていく姿が最高にまぶしい。

□2002年 イギリス映画  原題「BEND IT LIKE BECKHAM」
□監督:グリンダ・チャーダ
□出演:パーミンダ・ナーグラ、キーラ・ナイトレイ、ジョナサン・リース・マイヤーズ、他

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