めぐりあう時間たち [DVD]めぐりあう時間たち [DVD]
◆プチレビュー◆
ニコールの熱演は凄いが、あそこまで顔つきを変えるのなら、彼女でなくても良かったのでは…?という気も。「ダロウェイ夫人」や「The Hours」の小説と共に、V.レッドグレイプ主演の映画「ダロウェイ夫人」もぜひ。

1923年に英国で小説「ダロウェイ夫人」を執筆中の作家ヴァージニア・ウルフ。1949年、LAの閑静な住宅街に住む妊娠中の平凡な主婦ローラの愛読書は「ダロウェイ夫人」。2001年NYではダロウェイ夫人と同じ名を持つ編集者クラリッサが賞を受賞した友人のために祝賀会を計画する。時代も場所も異なる3人が抱える共通の悩みは、生きることへの不安。彼女たちの1日はいつも通りに始まったが、やがてその日は忘れられない決断の日となる…。

この複雑な話を見事に映像化したスティーブン・ダルドリー監督の手腕にまずは拍手したい。前作の「リトル・ダンサー」は心温まる話だがあくまで小品。これほど格調高い映画が作れる監督だったとは正直言って驚いている。昨今よく言われていることだが、舞台出身の監督の力量が確かだというのは、どうやら本当のようだ。

“花は私が買いに行くわ”。この共通のセリフで始まる物語は、3人の女性の1日の出来事を詩情豊かに描くもの。彼女たちが共有するのは、生への懐疑と根底にある同性愛傾向。3人の人生がアンサンブルを奏で、緻密に構成されて意外な結末へと収束していくのだ。精神を病んだウルフは入水自殺を選び、得体の知れぬ不安に苛まされる主婦ローラは死の淵まで行くことに。そして死はエイズ患者の元恋人の看病をするクラリッサの目の前を走り抜けた。彼女たちのすぐ隣に死が潜み、手招きしている。

穏やかな毎日に心から満足することができれば、どんなに幸せだろう。本能のままに生きようとすれば社会的役割との亀裂が生じる。平穏な人生の価値を認めながら、それへの嫌悪感で張り裂けそうな女達。豪華女優競演で話題だが、メリルにとっては余裕の演技、ニコールも付け鼻で美貌を消してまでの熱演だが、実は3人の中で最も困難な役は、ジュリアン演じる平凡な主婦ローラなのだ。理由のない不安と焦燥感を、ほとんど説明もなく表情だけで表してみせる。母親を失うまいと側から離れない幼い息子の視線が痛い。彼女が生きたのは、まだ女性に制約が多く、自分らしく生きたいと願えば大きな犠牲と世間の非難を伴った時代。そしてローラが支払った代償はとても大きなものだったが、それでも彼女はうわべの幸福よりもその道を選んだ。

小さな役にも気配りが効いていて、トニ・コレットやジョン・C・ライリー等、実力派が脇を締める。しかし、突出しているのは、エイズで余命いくばくもない作家リチャードを演じたエド・ハリスだろう。彼は劇中の、ある重要な架け橋の役を担っているが、ウルフ同様、作家の死を代償として、作中の人物に永遠の生を与えている。また、終盤、本来顔を合わせるはずのない二人が出会う場面があり大きな感動を生む。この場面には、思わず鳥肌がたってしまった。

華やかな女優達。美しいポスター。典型的な女性映画だ。自殺願望とも取れる話は、小難しいところもあって、実はかなりネクラだが、散りばめられた巧みな伏線と、構成の妙もあって深みのある傑作に仕上がっている。生と死の意味を問い、最後に生きることを決断する勇気を讃える物語と解釈したいが、見終わって、感動と共になんとも言えぬ不安感に襲われてしまうのが気になるところだ。この作品、観客にとって非常に危険な映画かもしれない。

□2002年 アメリカ映画  原題「The Hours」
□監督:スティーブン・ダルドリー
□出演:ニコール・キッドマン、ジュリアン・ムーア、メリル・ストリープ、他

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