北京ヴァイオリン 特別プレミアム版 [DVD]北京ヴァイオリン 特別プレミアム版 [DVD]
◆プチレビュー◆
演奏は、劇中にも登場する、気鋭の中国人ヴァイオリニストのリー・チュアンユンが担当している。演奏はどれも素晴らしく思わず涙ぐんだ。

一組の父子が田舎から北京に出てくる。母親の形見のヴァイオリンを弾く少年チュンに天賦の才能があると知った父リウは、なんとか彼を世に出そうと、コンクール出場のために北京に移り住むことにしたのだ。しかし、大都会の音楽界では金がモノをいい、その上、少年は今まで経験したことのない競争社会にさらされて、とまどってしまう…。

ハリウッドに進出した「キリング・ミー・ソフトリー」で思いっきり官能映画を撮ってみたら、ズッコケてしまったカイコー監督。中国では禁じられている激しい性描写も、いざやってみたら案外つまらなかったのか、はたまた、やっぱり故郷はいいと思ったのか、久しぶりに中国で作った映画は、大作の印象が強いカイコー監督にしては可愛らしい小品の感動作だ。やっぱり故国が舞台の映画には“らしさ”がある。

田舎の人は純朴で都会人の心は汚れている。基本的にこの構図の上に成り立つ物語だが、大都会で金がモノを言うのは本当のようだ。劇中にも金銭のやりとりの描写が多い。息子の才能を信じて、著名な教授の個人指導を仰ぐため、身を粉にして働く父親と、少年らしく時々女性への関心も見せながら、ヴァイオリンに精進する息子。実はこの親子には出生の秘密が隠されている。お人よしの父親役のリウ・ペイチーは「秋菊の物語」等の名優で、繊細な演技を見せるが、息子チュン役の少年は音楽学校の生徒で演技経験は無いため、心理描写に物足りなさを感じるのが気になるところだ。

全編を豪華絢爛なクラシックの名曲で飾り、ときにはポップスやジャズも使う。それぞれにキャラクターや場面に合わせた効果的な用い方で感心するが、印象的なのは、監督自身が演じているユイ教授に合わせて流れる曲だ。富も名声も得てクラシック界に君臨する彼のバックには、プッチーニのオペラ「トゥーランドット」で華やかさを演出。一方、その彼自身が音楽を志した最初のきっかけとなる思い出を語る時には、ヴィヴァルディの「四季」が流れ、自分も昔は音楽そのものに憧れていたという遠い想いが溢れ、郷愁を誘う。

数々の苦労を乗り越え、成功は目の前までやってくる。セオリー通りの展開かと思いきや、意外な形のラストで驚かされた。凍てつく北京駅でのチュンの渾身の演奏は、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ニ長調。難易度も高くドラマチックな名曲で観客の胸を熱くすることは間違いない。さらに、この駅での演奏と平行して、父子の秘められた過去がモノクロームの映像で語られ、感動は頂点に達する。明るいハイタッチも結論ではなく、今後の展開は観客の解釈に委ねます、と言うことだ。

カイコー監督は文革の嵐を経験し、物質的豊かさの大切さと虚しさの両方を知っている。ただでさえ人間関係が希薄な今の世の中で、こんなに濃密な親子関係が存在するのだろうか?と疑問に思いつつも、親子に係る人々が金品以上の価値観を教えられ、少しずつ変わっていくのが嬉しい。現代中国の功利主義を批判しながら、音楽という最強の武器で観客を感動させる。メロドラマと判っていながら、やっぱり泣かされてしまった。

□2002年 中国映画 英語原題「Together」
□監督:チェン・カイコー
□出演:タン・ユン、リウ・ペイチー、ワン・チーウェン、他

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