トーク・トゥ・ハー スタンダード・エディション [DVD]トーク・トゥ・ハー スタンダード・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
外国語作品がアカデミー脚本賞を受賞したのは、仏映画の名作「男と女」以来の快挙だ。精神科医から何か問題があるのか尋ねられたベニグノが答える「少し孤独なだけです。」というセリフが泣ける。

バレリーナのアリシアと女闘牛士リディア。二人の女は共に事故で昏睡状態に陥り、病院のベッドに横たわっている。看護士のベニグノは献身的にアリシアを世話し常に語りかけるが、リディアに付き添うジャーナリストのマルコはただ途方にくれて涙するばかり。二人の男の間には、いつしか友情が芽生えるのだが…。

P.アルモドバル監督を、スペインの鬼才から世界の名監督へと飛躍させたのは、名作「オール・アバウト・マイ・マザー」。初期の頃の尖がった作品に比べると、随分と一般受けするマルい映画だったせいか世界中から大絶賛され、ある意味、頂点を極めたが、本作ではさらにアーティスティックな要素も加えて観客の五感を刺激する。モジャモジャ髪の彼の頭の中には、悪趣味と無垢な個性が仲良く同居しているのだ。

事故で脳死状態の女たちを愛し続ける二人の姿は、哀しくてちょっぴりグロテスク。過去と現在を交差させながら物語は進むが、ベニグノの愛情はストーカー行為と紙一重だし、嘆き悲しむマルコにいたっては、眠り続けるリディアからいきなりフラれてしまう始末だ。ペドロお得意の、美しくて繊細、でもどこかヘンな愛の世界。奇妙な友情を育む男たちの言動も、状況はかなり悲壮なのに滑稽だったりする。

冒頭とラストを見事につなぐのは、ドイツ出身の前衛舞踏家ピナ・パウシュの舞台。ブラジルのトップミュージシャン、ガエターノ・ヴェローゾの歌もいい。実に小道具が洒落ていて、気が付いたらまんまとアルモドバルの術中にハマッてしまっていた。アリシアのバレエ教師を演じるジェラルディン・チャップリンの存在感も抜群だ。

無償の愛が思わぬ結果をもたらし、新しい運命の接点を用意する。一途な愛は奇跡を生むが、同時にそれはモラルと法に触れることに。このジレンマを、劇中劇のエロティックな無声映画「縮みゆく恋人」のユーモアが和らげる。観客の価値観を覆し、男女のコミュニケーションのあり方を問いながら、その代償まで啓示するのだ。

悲劇か。盲信か。それとも究極の愛なのか。映画を見て確かめてもらうしかないが、この物語がいくつかの実話をヒントに作られたということを知ってほしい。科学や医学では説明できない事柄が、愛から生まれるのだとすれば、それはやはり奇跡と呼ぶにふさわしいだろう。孤独な心が泣きながら語りかける。それがアルモドバル流の、“愛すること”だ。

□2002年 スペイン映画  原題「TALK TO HER」
□監督:ペドロ・アルモドバル
□出演:レオノール・ワトリング、ハビエル・カマラ、ダリオ・グランディネッティ、他

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